赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている【0830】 作:ピグリツィア
アイズのランクアップがロキによって知らされた翌日、朝食の後。フィンの執務室にはファミリアの三首領とロキが並び、それと向かい合うようにアイズが立っていた。
現在の議題は、赤髪のテイマーが呟いた【アリア】という名称について。
その名はアイズの出自に大きく関わる物であり、フィン達がアイズから情報を得ようとするのも必然だろう。
しかし、アイズとの報答を経て得られた情報は無し。【アリア】についての情報はあれど、【赤髪の
「…纏めると、敵は精霊に関して何かしらの情報を、独自のルートで得ているんだろう。そして、それを利用して何か良からぬ事を企んでいるのも確かだ」
「つまり、新しい情報は無いという事じゃな」
数少ない手がかりが空振りに終わり、主神や首脳陣が揃って唸り声を上げる。
闇派閥の動きがわからない以上『警戒する』以外の対策は思い浮かばない。精々が『狙われているアイズに単独行動をさせない』と言ったところだろう。
「ごめんなさい、力になれなくて…」
「いや、アイズは悪く無いよ。今回の面談も念の為…形だけのものだからね」
「せやせや。あとはフィンらに任せとき」
力になれなかった事を嘆くアイズに対して、フィンとロキは「気にする事はない」と励ます。リヴェリアやガレスもそれに同調すれば、アイズはぎこちなくも調子を取り戻した。
「ともかく、次の遠征では例の
「アイズを狙っていたのは間違いないし、警戒して損は無いだろうな」
「ふむ…やはり、カーリーも最低限の戦闘ができる程度の武装はさせておくか?」
遠征中に大量の食人花や芋虫型をぶつけられたら物資の消耗は避けられないし、場所によってはサポーターを含めた乱戦状態になる可能性も低くはない。
そうなれば一線級に並ぶ戦力を遊ばせる余裕も無いだろうとカーリーの武装についての話になるが…ここからは遠征の話にも繋がる。「アイズの『
「アイズ。外に待たせてるティオネ達を呼んでくれ」
「……うん、分かった」
アイズはフィンの指示に対して一瞬だけ迷った様な素振りを見せてから、執務室の外へと向かった。
その様子を見たフィンは、苦笑いを浮かべつつリヴェリアへと問いかける。
「また『わがまま』かな?」
「恐らくはな。だが、このタイミングとなると…」
アイズの保護者を代表するリヴェリアの予想を聞いたフィンとガレスは「確かに、冒険者ならば…」と理解を示し、ロキはアイズの可愛らしい意地に口角を上げた。
そうして一分と経たない内に、ティオネとティオナ、そしてレフィーヤを連れたアイズが続々と室内に入ってくる。
「し、失礼しますっ!」
「なんか仕事あるの〜?」
「何でもこなして見せます団長っ!」
アイズのランクアップによりやる気が滾っているアマゾネスの姉妹と、重要な仕事を任せられる可能性を前に緊張するレフィーヤ。彼女達を前にフィンより先にロキが口を開く。
「まずウチからやな。フィンにはギルドにバレんように地下水路を調べて欲しいんやけど、行けそうか?」
「ンー、そうだね…」
ロキの言う地下水路の情報を頭の中で纏める最中、もじもじと何かを言いたげなアイズの姿がフィンの視界に入る。
どうしたものかとロキに視線を送れば、ロキは笑いながら肩を竦める。
「アイズ、何か言いたいことがあるのかい?」
「…フィン、少しだけ時間を取れる?」
「内容にもよるけど、とりあえず言ってごらん」
「カーリーと模擬戦をしたい」
リヴェリアの予想通りの『アイズのわがまま』を聞いたフィンは「ンー」と唸りながら、ちらりとガレスの方へ視線を送り、その意図を察したガレスは首を縦に振る。
「一戦だけならそう時間は取らないだろうけど…ガレス、頼めるかい?」
「おう、任せとけ」
「あ、それなら私も見たい!お姉ちゃんも見るでしょ!?」
「まあ、気にはなるけど…」
双子の要望に対して、フィンは一瞬の思考を挟む。
ロキの要望である『地下水路の探索』は、例の植物型モンスターの襲撃の可能性を考えると二人の助力は必須だ。
しかし、アイズとカーリーの模擬戦を見せれば士気や向上心は更に高くなるだろう。それにここでアイズの能力の上昇幅を見せておけば、来たる遠征の足並み合わせもスムーズに行く。
この選択によって起こる士気の変化や、模擬戦での所要時間を考え…フィンはティオナ達の希望も叶えた方が良いだろうと結論付けた。
「見学しても良いけど、終わったらすぐに戻ってきて欲しいかな。まだやるべき事が山積みだからね」
「はーい!」
「ありがとうございます、団長。レフィーヤも来るでしょ?」
「は、はい!」
盛り上がる三人娘を背景に、フィンはアイズを真剣な眼差しで射抜き、それに晒されたアイズは真剣な面持ちを作る。
「ランクアップ後の調整にも良いだろうし、カーリーにランクアップがどういう物なのかを教える良い機会にもなるから許可を出すけど…くれぐれも、カーリーに合わせるんだよ?彼女はすごく強いけど、『
「大丈夫…だと、思う」
「ほんまにぃ?アイズたん手加減とか出来るぅ?」
前回の模擬戦で苦汁を嘗める羽目になったアイズとしては、ランクアップしたとしても先手を譲るのは避けたい。
しかし、フィンの言う通りカーリーはランクアップに対してあまりにも無知だ。手加減が得意とは言えない自分が先手を取っても大丈夫とも言い切れない。
そんな矛盾に悩むアイズを揶揄う様にロキが茶々を入れると、アイズは拗ねるようにロキを睨み、その向こう脛を蹴り飛ばす。
「お゛お゛う゛っ……!?」
悶絶するロキを他所に、ガレスは「そういえば」と手を叩く。今この場には当事者であるカーリーが居ないのである。
「ところで、カーリーとはもう話したのか?」
「………まだ」
「普通そっちが先じゃろ。拒否はせんと思うがな」
いつも通りどこか抜けているアイズにガレスは呆れつつも、カーリーを呼んでくるよう指示を出した。
前回からそう日を置かずに再びの呼び出しで、フィンの執務室だ。
どうやらアイズのランクアップに際し、上昇した能力の慣らしがてら私と試合をしたいらしい。
「…という訳じゃ。一応聞くが大丈夫か?」
「問題ない。ランクアップがどんな物か見てみたかったし、とことんまで付き合おう」
思い掛け無いタイミングでアイズとの模擬戦の機会がやってきた。
ランクアップ…これに関しては、やはり『百聞は一見にしかず』という奴だろう。少し前にアイズと模擬戦をした事もあるし、ランクアップがリヴェリアに教えてもらった通りの物なら、文字通り見違えるような強さになっている筈だ。
「前回はカーリーにしてやられたらしいけど、ランクアップした今回なら勝てるかもなぁ!目にもの見せてやるんや、アイズ!」
「うん。今回は勝つ」
「これは…期待してもいいんだよな?」
「もちろん。以前のアイズとは一味違うはずだよ」
ロキに発破をかけられ、アイズのやる気もかなり高い。フィンもランクアップしたアイズにかなりの期待を寄せているし…これは一筋縄ではいかないだろうな。
しかし、前回の模擬戦の勝利もある意味では『初見殺し』のような形だ。私から見れば、アイズがランクアップしていない状態でも幾つかの負け筋が見えている。そこを突かれたら、はっきり言って為す術が無いんだよな。さて、どうしたものか…
そうして私がアイズへの対策を考えていると、ガレスが咳払いをした。まだ話は終わってないという事か。
「さて…ある程度暴れても問題ない場所まで行くかの」
「今回は中庭じゃないのか?」
「お前らが全力で戦うには目立ちすぎるからのう、今回は場所を移すぞ」
前回の模擬戦でも中庭の一部が破損していたか。アイズの身体能力が上昇している今、前回と同じように戦えば中庭の被害が広がるのは避けられないだろう。
「武器はどうする?」
「アイズのレベルも上がったし、刃を潰した訓練用の剣では耐えられんじゃろう。お互い自前の武器を持て」
前回の試合では少しだけ良い訓練用の剣を使ったが、試合後にはガタガタになっていた。それよりもさらに激しい戦いになると武器の方が先にダメになるだろうな。
刃を潰してない武器を使うとなると、大きめの怪我を負う可能性もあるが…その程度で引っ込むほど私も腑抜けてはいない。
「念の為ハイ・ポーションも幾つか持っていくが…あまり大きな怪我はしてくれるな」
「分かってる。あくまでもこれは『模擬戦』って事だろ」
「そういう事じゃ…まあ、アイズがそこら辺を弁えられるかは分からんがの」
念を入れるガレスの言葉に、アイズは視線を逸らすことで応える。どうやらアイズも自身がそこまで気が回せるか分からないらしい。
まあ、よほど実力が隔絶してなければなんとかなる。ガレスも近くで見てくれているだろうし、どうにもならない事にはならないだろう。
「じゃあガレス、そっちは任せるよ。カーリーとアイズも後悔の無い、良い戦いをするんだ」
「うん」
「ああ、分かった」
さて、先達に【ランクアップ】がどんな物か見せてもらおうか。
ガレスの先導で着いたのは、ダンジョン上層の奥まった場所にある小部屋。
試合をするのには丁度良い広さで、袋小路な事もあって他の冒険者が来る事も無い。なんとも都合の良い場所だ。
「アイズがんばれー!カーリーもがんばれー!」
「ランクアップもしたし、流石に前回みたいな負けはないと思うけど…読めないわね」
「が、頑張ってください!」
ティオネとティオナ、それにレフィーヤの声援を背に、大剣をしっかりと握り、何度か振って調子を確かめる。
前回の探索で散々振ったから調子は掴めているし、いくら素材が安物だとは言えども椿が耐久性を重視して作った代物だ。今回のアイズとの戦闘にも難無く耐えるだろう。
向かい合うアイズも、自身の体の調子を確かめるように剣を数度振った。ランクアップ直後は急激に身体能力が上がると聞くし、慣らしが必要なんだろう。
「よし、双方準備は出来たか?」
「…うん」
「大丈夫だ」
ガレスの言葉にアイズと共に返事を返し、大剣を肩に担ぐ。
ランクアップ…それは急激な身体能力の上昇に、場合によっては新たな『発展スキル』を得る機会となるらしい。
アイズの機動力はランクアップ以前で既に私を凌ぐ物だったし、これは手を抜けないだろうな。
「それでは…始め!」
ガレスの合図と共に、私は『本気の構え』を見せる。所謂『殺す気で行く』と言った所か。もちろん殺す気は無いが。
「ひっ!?」
「っ、【
「アイズ!?」「バカッ!?」「むっ…」
そんな私の心構えに触発されたのか、アイズは速攻で魔法を展開した。微かに聞こえた悲鳴や、アイズの行動に驚く声…アイズが先に魔法を使ったのが予想外だったんだろう。
アイズの魔法と同時に私もEGOを発現させる。前回よりも数段と身体能力が上がっているらしいし、今回の初動は観察の為に後手に回ろう。
アイズの選んだ手は速攻。魔法を発動すると同時に身を屈め、矢のように真っ直ぐ、最速の突きを…脳天目掛けて入れてくる。
目でぎりぎり追える速さのそれを、踏み込みの予備動作と剣の構えから軌道を読んで受け流す。
「うっそぉ!?今の受けられるの!?」
「まさかあの奇襲に反応するなんてね…直線的だから読みやすいとは言っても、捌けるかは別よ」
「ふむ…」
背後に回ったアイズは続けて剣を横へと振り払い…それを受け止める。力も確かに強くはなっているけど、まだ私の方が上みたいだ。
問題は速度だな…まだアイズ自身が自分の身体能力に慣れていないからどうにかなっているが、このまま行けば防御はともかく、反撃の隙は出来そうにもない。
「っ!」
「速い、な!」
動きの止まったアイズに対して反撃を仕掛けるが…すぐに距離を取られる。純粋な速度では負けているし、いざとなれば空中軌道も出来るアイズを追うのはかなり厳しいだろう。
「アイズ…」
「ごめんガレス、後で聞く」
一息ついたタイミングで、眉を顰めたガレスがアイズに声を掛けているが、アイズはそれに構う余裕も無いようだ。
再び突きで距離を詰めてきて数撃…この攻撃は『慣らし』か。さっきの攻撃より数段軽いが、明確な隙が無い。揺さぶって隙を作る為の攻撃だな。
「ねえ、あれ…」
「完全に見切ってるわね。アイズの攻撃は予備動作が大きい方だけど、そう簡単に対処できる物でもない筈なんだけどね」
後一歩、踏み込んでくれば反撃出来なくは無いだろうけど…アイズは距離を取って、いざとなればすぐに私の間合いから離れられるような攻撃を選択している。やりにくいな…。
「やっぱり攻められてないわね。さすがに機動力の差が厳しそう」
「一応、攻撃を受け流す時に牽制程度なら返せてるけど…いや、牽制が出せてるのがおかしいのかな?」
アイズが攻撃を仕掛けて来ては引き、仕掛けて来ては引きを繰り返す事、三度。自身の身体の感覚を掴んだのか、アイズは一度距離を大きく取って『受け』の体勢に入る。前回のリベンジといった所か。
「…来て」
「ああ」
アイズと私の能力を考えれば、アイズの選択は愚行もいい所だが…所詮は試合。命を賭けた戦いでも無いし、主目的はアイズの調整だ。多少の遊びは入れても良いだろう。
アイズの誘い通り、真正面から全力の振り下ろし。轟音と衝撃の中、アイズは……耐え切った。
「受けきった!」
「効いてはいるみたいだけど…有効打って程ではなさそうね」
体勢は有利、ここからさらに追撃を加えようとした所で、アイズは私との間に強風を差し込んで自らを弾き飛ばす。至近距離での打ち合いは徹底して避ける方針のようだ。
再び距離が開きアイズは一度、自らの手を開閉する。多少は効いてるみたいだけど、少し痺れた程度だろう。動きに支障はなさそうだ。
「力はまだ負けてる…でも速度はこっちのほうが上だね」
「厄介な事にな。さて、どうやって捕まえようか」
まずは私の距離に持ち込まないと勝ち目はない。だがアイズの速度に追い付いていない私じゃ能動的に距離を詰める事はできない。アイズの警戒心からして、安易な誘いには乗ってこないだろうし…難しいな。
攻撃は見切れるし、フェイントにも対応できている。だが、それだけだ。どれだけ受けても攻めに繋がらない。
都市に居た頃のEGOなら、このまま消耗戦を続けても良い勝負が出来たかもしれないが…今は無理だ。どこかしらで強引な攻めを入れないと勝ち目はない。
「アイズはランクアップした身体能力に慣れつつあるけど…」
「カーリーの方もアイズの動きに適応してるから差が開かないわね」
攻撃を受け流し続ける間に勝機を探すが…アイズは消極的な手だ。攻められるほどの隙が無い。
時間を掛ければ掛けるほど不利になるのはこっちだが…どの攻め手も後に続かない、体力の無駄にしかならないものばかり。これは…無理だな。
「まいった。これ以上はEGOが持たない」
「………」
そんなこんなで都合30分。アイズの攻撃を受け続けるだけでこっちのEGOを維持する能力が尽きた。
こっちから攻めるには能力…特に速度が足りなかったな。
「…アイズの勝ちじゃ。納得は行ってなさそうじゃがな」
「30分凌ぎ続けてたねぇ」
「正直、少し引いてるわ。明らかに速度で圧倒しているアイズが有効打を与えられてないし…」
EGOが本調子であればもっと粘って持久戦に持ち込めたし、武器がミミクリーであれば打てる手も大幅に増えただろうけど…今の状態じゃこれが精一杯だな。
「アイズは少し消極的すぎる気もしたが…カーリーの技術に関しては、儂から見ても立派な化け物じゃな。そりゃ下手に攻められんって感じじゃ。何をどうしたらそんな技術が身につくんだか…」
「防戦一方だったし、レベル差は感じたけど…もはや未来予知と言っても良いくらいの見切りで渡り合ってたんだから、恐ろしいわね」
ガレスやティオネは私の技術を賞賛してくれているが…戦いは結果が全てだ。私ももっと強くならないとな。
「アイズ〜!そんな不満気になってどうするの!確かに諸手を挙げて喜べるような勝ち方じゃなかったけど…それでもすごく強くなったじゃん!」
「…カーリーを倒したかった」
アイズとしても今回の勝利は満足の行く物ではなかったらしい。
まあ、気持ちは分かるが…だからと言って、易々と倒される訳にもいかないな。
「いや、あの技術を持っている相手となると、ステイタス抜きに考えたら文字通り10年は早いわよ。テルスキュラのトップ層でももう少しは隙があったと思うし…」
「本当に色んな人と戦い続けたんだな〜って、経験を感じる戦い方だった!アイズは一歩でも攻めてたら足を止められるって分かってたんでしょ〜?」
アイズが受けに回ったあの一撃でお互いの力関係が割れた。
正面からの斬り合いなら私が押し込めたのだろうが…アイズが私の土俵に上がる必要は無い。今回の結果もあの時点で読めただろうな。
「それで…レフィーヤはどうしたんだ?」
「あ〜…カーリーの気迫に驚いちゃったみたい」
「ご、ごめんなさい…」
ティオネの影に隠れるレフィーヤは、まだ怯えを抑えきれていない様子だ。
そういえば、レフィーヤはまだ殺意や威圧に慣れていないんだったな。また怯えられてしまったか…。
そしてゆっくり近づいてくるガレスは、面白い物を見たと言わんばかりの笑みを浮かべている。彼も今回の戦いは見応えがある物だったらしい。
「どうじゃカーリー、ランクアップがどんな物かはわかったか?」
「嫌と言う程にな。EGOの調子が良かったらもっと粘れたし、ミミクリーを使えたら打てる手も増えたんだけどな…しかし、本人の努力次第とは言え、たった一つレベルが上がるだけでここまで見違えるとなると、本当に破格の強化だな」
正直な感想は『ずるい』だ。
金も掛けず、ひたすらに戦っているだけでこうなれるなら都市でも翼の一つとして君臨できる特異点だろう。
欠点と言えるのは…即効性の無さか。都市の強化施術なんかは、基本的に施術したら相応の効果がその場で発揮される。
そう考えると都市向きではないかもしれないが…全身義体でもなければ、恩恵の効果も問題無く発揮されるだろう。即効性が欲しいなら外部骨格や他の強化施術と組み合わせれば良い。
総評としては『翼の特異点クラス』か。他の特異点と組み合わせればいくらでも応用できる、とんでもない技術だな。
そんな事を考えていると、ガレスが妙な視線で私の方を見てくる。何か言いたい事があるらしい。
「なんだガレス、その目は」
「そうじゃなぁ。お主はレベル1じゃよな〜、とな…例外とは言え、レベル1がレベル6の猛攻を30分凌ぎ続けたんじゃよな。しかもその武器で…」
じっとりとした視線を送ってくるガレスの言葉で、私はこの世界における自らの異常性をはっきりと理解できた。
レベル一つの差でこうも変わるのなら、4や5の差なんてどんなスキルやアビリティでも埋めようがないか。
都市で言えば、碌な強化施術も受けていない9級フィクサーが完全武装の1級フィクサーと打ち合えてるみたいな事態だ。それは確かに騒動にもなる。
「…本当にヤバいんだな、私は」
「ああ、本当にヤバいんじゃよ、お主は」
自分がオラリオにおいてどのような『爆弾』か改めて実感できた。
この事実が露呈すれば…それはもう、とんでもない大騒ぎになるだろう。自身の立ち回りにはより一層、細心の注意を払うとしよう。
「さて、さっさと帰るぞ。あまり遅くなればフィンにどやされる」
「やることも多いって言ってたしな。まあ、私にはあまり関係無いだろうが」
遠征の準備をしたり、最近動きの多い
しかし、オラリオの問題はオラリオに詳しい人間に任せるべきだし、私は文字通りの『異物』だ。フィンとて私を使うのは、ある程度取れる手段が少なくなって来てからにする筈だから…しばらくは暇になりそうだ。
とりあえず、帰ったらロキに仕事がないか確認しておこう。なかったら遠征に向けた勉強をすれば良いだろう。
多分またかなり間が開きます。次は遠征云々を書けたら更新しますよ。