「ポケモン、育ててないなぁ。」
すでに日も落ち、外には夜行性のポケモン達が現れだす頃
息子は突然そのようなことを呟いた
「イガレッカ?」
「うん。かれこれ2年は旅してるのに、一匹もポケモン育ててないなぁって。」
「イガレッカ。」
「皆を育てたのは前のことだし、今のやり方で捕獲とか育成は授業でやって以降、一切やってないからさ。」
私は夕飯作りの手を一旦止めると、息子の方を見てみる
息子は自分の膝に顔を乗っけてリラックスしている赤いポケモン…えっと、イベ何とかを撫でながら話をしていた
どうやら今日のポケモンバトルで活躍したポケモンのケアをしているようだった羨ましい
今日は朝から色々あった
まず、キョウヘイ君とヒュウ君の見送り
彼らはついこの前にスクールを卒業し、トレーナー資格を得てポケモントレーナーになった
そして今日はその旅立ちであり、私と息子は2人の見送りをしにヒオウギシティまで行ったのだ
キョウヘイ君は、アララギ博士の助手さんから初めてのポケモンを貰い、ヒュウ君のポケモンとバトルした後、息子と色々話をして旅立って行った
3人ともとっても楽しそうに話している姿はとても微笑ましかった
チャンピオンになるまではお別れだ!なんて話していたけれど、この後またすぐにヒオウギジムに挑むために戻ってくるだろうから、早めの再開をするんじゃないかしら
その後はサンギタウンに戻り、アデクさんとポケモンバトルをしていた
相変わらずアデクさんのポケモンは息子のポケモン達にちぎっては投げちぎっては投げされ、最終的には如何にも悪技みたいな見た目の飛行技で吹き飛ばされて負けていた
そして今、家に帰宅しお風呂を済ませ夕飯の準備をしている
ポケモンを育ててない、か
確かに考えてみれば、息子はポケモンを育てたりしていない
あの子の周りには沢山のポケモンが寄ってきて、勝手にゲットされに来るが、そのポケモン達は皆既に育ちきっている個体ばかりなのである
しかも衰えない
普通なら何ヶ月もバトルせずにグータラしていたら、能力は衰えていくものだ
世のトレーナー達、それもポケモンバトルに重点を置く人達にとって自身のポケモンのコンディション維持は最重要事項だと言われているくらいだ
うーん不思議
強くなり過ぎるといちいち鍛錬とかしなくて良くなるとかあったりするのかしら
「初めてで育てやすいポケモンって誰だろ?」
「イガレッカ!」
「イベルタルはもう育たないでしょ?やるとしても努力値振り直すかミント嗅ぐぐらいだよ?」
「イガレッカ!!」
「二人だけで旅に?…うーんそういうのは考えてないかなぁ。少なくとも皆と再会するまではやらないと思う。」
「イガレッカ…。」
息子と赤いのの話を聞く限り、ポケモンを育てることにかなり前向きな感じだった
それは…ちょっと困る
ポケモン育成というのは非常に時間のかかる行為である
野生個体なら早くて数ヶ月、卵からならその倍以上は時間が必要になる
私は考える
息子のことだ、一度始めたら最後までやり続けることになるだろう
何なら旅と並行してやり出して、うちに帰るのが今までよりも何倍も遅くなる、なんてことになってしまうかもしれない
それだけは嫌だ!息子にはずっと家に居てほしい!
それができないのなら定期的に帰ってきてくれないと、寂しさで爆散してしまう!
「うーん…とりあえずフォーゼと誰かの卵から育ててみようかな?時間はかかるだろうけれど。」
「イガレッカ!イガレッカ!」
「バリバリダー!」
「ゼドアーッ!」
「皆は卵グループ的にフォーゼとはムリでしょ?」
「ドドギュウウーン!」
「アルセウスは…できなくはないか。一度シント遺跡まで行かなきゃならないけど。うーんあそこまで行くのもなぁ…ウォロさんに遭いそうだし。」
息子がやろうと決めた途端、周りの奴らが我先にと群がっていった
どうやら誰が最初に自分の子どもを息子に育ててもらうかアピールしているようである
やめろお前ら!下手に刺激するんじゃない!
「ブモ…?」
どうにかしなければ、そう考え周りを見回すと周囲が騒がしくなったことで昼寝から起きたランボルちゃんが目に入った
ランボルちゃんは寝ぼけ眼でキョロキョロと周りを見た後、私を見て首を傾げていた
どうやら寝起きで何もわかっていないようだ
………!!!!!!
この時、私に天啓が舞い降りた
ランボルちゃんで良いんじゃね?
生まれたばかりのポケモンを育てるよりも、野生の個体に1から戦い方を教えるよりも
何年も人との生活を経験していて、偶にではあるけど不審者撃退とか、会社での付き合いでバトルしているランボルちゃんの方が圧倒的に育成期間は短くなるのではないか?
何なら最近はだらけすぎてお腹周りが少し…かなりふくよかになってしまっていて、そろそろダイエットをさせようなんて考えていたところだ
「ねぇ◯◯?もしよければなんだけど、私に1つ案があるの。」
「お母さんから?何々?」
「ランボルちゃんはどうかしら。初めてなら難しすぎないほうが良いと思わない?」
「ブ、ブモ?」
私は息子に近づき、そう提案してみる
ランボルちゃんがえっ?みたいな声を出したけど無視する
「ランボルちゃんを?」
「うん。丁度ダイエットがてら運動でもさせようかなって考えてたの。」
「あー、ちょっと太ったもんね。でもいいの?僕がやろうとしてるのってポケモンバトル用の育成なんだけど…」
「大丈夫よ。何やかんやランボルちゃんにちゃんとしたバトルのやり方って教えたことなかったから。それに私はあんまりポケモンバトル得意じゃないし、それなら◯◯にお願いしちゃおうかなって。」
私の言葉に息子は考えるように顎に手を当て少し俯く
さぁどうだ、これならある程度早く終わるだろうし、私のポケモンだからそう遠くに連れて行ったりもしないだろう
更に更に経過報告とかを聞いたりすれば、一緒にお話する時間も増えるし私にとっては一石三鳥!
流石私!完璧すぎるプランだわ!
「じゃあそうしよっかな。いい、お母さん?」
「ええ!ランボルちゃんをよろしくね。ボールは後で渡すわ。」
「うん!よし、やる気出てきた!皆手伝ってくれる?目標は…とりあえずアデクさんのバッフロンにタイマンで勝てるぐらいで!」
「イガレッカ!」
「ババリバリッシュ!」
「そうだ、ボンバーにも手伝ってもらおうかな。同族同士仲良くやってくれそうだし。」
「楽しそうなのはいいけど、今日はもう遅いから明日ね。ほら、もうすぐご飯できるから準備しておいてね。」
「はーい!」
こうして私発案のプランは上手く成功し、息子の旅立ちを遅延させることに成功した
私は達成感で満たされ、ルンルン気分でキッチンの方へと歩いていった
「ブ、ブモゥゥ…。」
不安そうな顔でコチラを見るランボルちゃんを見ないふりをして
この後、戻ってきたランボルちゃんがまるで歴戦の勇士のような姿になっていたりとか
本当にアデクさんのバッフロンを弾き飛ばしてしまったりだとか
会長のポケモンをうっかり6タテしちゃったりだとか、色々あるのだけど、まぁ気にしなくていいわよね。
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・育成熱が高まってしまった
主人公
キョウヘイとヒュウの旅立ちを見て、自分も1からポケモン育てたいなぁってなっていた
ランボルちゃんを育成には前世の仲間達の力を借りた
一度やってみて、思ったより時間がかかる(2週間ぐらい)ことがわかったので、前世の仲間達全員と再会するまでは控えるように決めた
・息子と少しでも長くいられるならパートナーだって犠牲にする
母親
息子が旅から帰ってきて家にいてくれることに幸せを感じていた
が、息子がまた何処かに行ってしまいそうなことを言い出したので自身のポケモンを犠牲にして何とか引き止めた
まぁ、この後すぐ次の旅に出るんですけどね
・ランボルちゃん
バッフロン
母親の手持ちポケモン
遊ぶより食べるより寝ることが好き
基本的に専用の寝床で寝ているか、ボールの中で寝ている
突然、レベル100達に囲まれて昼夜問わずひたすら扱かれまくった結果、元チャンピオンぐらいなら張り合える程度の力を手に入れた
主人公のことは、弟分くらいに思っていたが今回の件で鬼軍曹ぐらいの認識になった
・この世界のポケモン育成
①レベル、ステータス
明確な数値による指標は存在していない
あくまでこれができるならこのぐらいかな?といった感じ
人によって独特の評価方法があったりする
②レベルの上げ方
一定のレベルまでは、トレーニングや料理、アイテム等で上げられるがそれ以上はポケモンバトルでしか上げられない
バトルに関しては、ゲーム同様強い相手ほど得られる経験値が多いが、極端にレベルの低い相手は幾ら倒しても経験値を得ることはできない
瀕死になっても経験値は多少得ることができるので、主人公のようにひたすらレベル100と倒される前提で戦わせまくるみたいなレベルの上げ方もできる
③3値
種族値はステータス同様、数値化できるほど解明されてはいないが、この種族はこれが得意ぐらいのことはわかっている
個体値はポケモン毎の個性ぐらいにしか思われていないが、ジャッジの様な個体値を見ることができたり、王冠渡せばVにしてくれる謎の人も存在はしている
努力値はほぼ知られていないが存在する
こちらも個体値と同じく、ふわっとわかる人は存在している
④性格
性格によって好む技の種類が存在するため、攻撃が強いポケモンでも物理技を覚えたがらないみたいなことが起きる
具体的に言うと、オノノクスがドラゴンクローより竜の波動を使いたがるとか
サザンドラが電磁波ステロ追い風みたいな起点技しか使いたがらないとか
⑤育成にかかる時間
野生の場合は、既に多少育っているのでレベル上げは楽なのだが、公式戦等で使う場合はルールを教えなければならないので時間がかかる
逆に卵から育てる場合は何もわからない状態なのでルールは教えやすいが、育成に時間がかかる
なので最初は、誰かの下である程度育てられたポケモンから始めるとやりやすい
⑥レベルダウン
ポケモンの寿命や生活態度によって、身体機能が低下することによりレベルダウンが発生することがある
なので一度レベルを80とかまで上げたとしても、その後一切バトルさせなかったりボールの中で放置とかすれば55レベルくらいまで下がったりする
なのでポケモンバトルを専門にやっている職業の者は、ポケモン達の能力維持のために定期的にトレーニングやバトルを欠かさないようにしている
ちょっとした説明回でした