鈴ちゃん好きが転生したよ!( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん( ゚∀゚)o彡°鈴ちゃん   作:かきな

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タイトルは明快と冥界をかけましたが、内容とは一切関係ありません




第三話 波乱を孕んで明快HADES

 

 昼休み

 

 午前の授業を切り抜け、戦士たちは束の間の休息を得る。そうして来る5、6時間目に備えるのだ。

 

「と言っても氷雨はいつも寝てるだろうに」

 

「寝てません。あれは戦略的休息です」

 

「どの辺に戦略要素があるんだよ」

 

「あはは」

 

 昼食を終えて、教室で一夏とシャルと談笑していると、なんだか廊下の方が騒がしくなっていくのに気が付いた。

 

「どうしたんだろう」

 

 僕が廊下に視線を向けると、一夏とシャルも同様に視線を向けた。しかし、ざわざわとした喧騒はいつものことのようにも思えるし、特筆しておかしいという所も見られなかった。

 

「いつも通りじゃね?」

 

 一夏がそういうとシャルもそれに同意を示した。なので僕もあまり気にしないことにしたんだけど、ちらりと見えた人影に僕は気のせいでは言ことを確信した。

 

 そしてその人物は喧騒を引き連れて教室へと入ってきた。

 

「氷雨」

 

 馴染みのある抑揚のない声。そう、ペイルライダーが教室にやってきてしまったのだ。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 僕は立ち上がるとペイルライダーの元へ駆け寄る。

 

「なにしてるのさ。部屋で待っててって言ったよね?」

 

 そんな僕の言葉を余所にペイルライダーは突然僕の首に手を回し、抱き着いてきた。その突然の行為に周りの喧騒は一瞬治まる。いや、これは場が凍ったという表現がしっくりくるね。

 

 もちろん、僕も凍ってますよ。ええ。でも、身長差を埋めるようにつま先立ちになってるペイルライダーの姿を少し可愛いと思ってしまう自分がいるのは否定できない。冷めてないね、むしろ燃えてる。いや、萌えてる。

 

 ペイルライダーは一旦僕から離れて視線を僕に合わせてくる。じっと見つめられると、どうにも怒れない。

 

「氷雨に会いたくなりました」

 

 そう言って再びペイルライダーは抱き着いてくる。今度は手を腰に回して僕の胸に顔をうずめるように、だ。先ほどよりも体を密着させてくるので、ペイルライダーの人より少し低めの体温が伝わってきた。う、嘘でしょ。これが、ペイルライダーの萌え力?

 

「だ、だからって……」

 

「迷惑でしたか?」

 

 そんなセリフを上目遣いで吐いてくるのだから手に負えない。なんなんですか。なんなんですか!!

 

「迷惑といえば迷惑だね」

 

「でしょうね」

 

 でも、どれだけ可愛くとも事実は事実なわけで。それはペイルライダーの方も理解しているようなので、少ししたらスッと僕から離れた。

 

「ちょ、ちょっと氷雨!」

 

 声の下方へ振り返ると、問い詰めるかのように迫ってくるシャルが見えた。

 

「あ、シャルル」

 

「こ、この子は誰なの!?」

 

 どういうわけか語気を強めて問いかけてくるシャルだけど、その質問自体はもっともなものだった。周りの人たちも同じ疑問を抱いているのか頷いて同意を示していた。

 

「え、えーと。色々説明しにくいところはあるわけなんだけど、疑うことなく聞いてくれる?」

 

「え? う、うん」

 

 僕の前置きがよくわからないものだったからなのか、シャルは勢いを失ったように萎んでいった。

 

「この子は人のように見えるけど、違うんだ」

 

「?」

 

 そうだよね。意味が分からないよね。そりゃ、そんな顔になるよね。目を点にして僕とペイルライダーに視線を行ったり来たりさせるシャルに僕は答える。

 

「この子は……」

 

「初めまして、シャルル・デュノア。私は氷雨の“パートナー”、ペイルライダーです」

 

 ん? 抑揚のない語り方のペイルライダーだけど、今のは若干音量に違いがあったような気が……。

 

 ペイルライダーの言葉に唖然としたシャルだったけど、段々その真実を自身の中で噛み砕いて消化していったのか、徐々に表情が変わっていった。まあ、どうしてかわからないけど、変わっていった先の表情が敵意剥き出しなんだけどね。

 

「そ、そうなんだー。初めまして、ペイルライダーさん」

 

 笑顔を浮かべているシャルだけど、若干口元が引きつっているのは何故だろうか……。というか、シャルは驚かないのかな。ISが人になってるのに……。

 

 周りの人たちには僕の言ったことが聞こえていなかったのか、皆が一様に不思議そうな顔をしている。あ、考えなしにばらしたけど、これって聞かれたらまずいんじゃ……。

 

「大丈夫です。氷雨の声に指向性を持たせ、周囲に逆位相の音波を発生させ、シャルル以外の人間の耳には届かないよう考慮しました」

 

「あ、ありがとう。さすが、ペイルライダーだね」

 

「それほどでもありません。ですが、もっと褒めてもいいですよ」

 

「むー」

 

 なんだろう。シャルが何故か悔しそうに唸っているので、ペイルライダーを褒めるのはやめておこうかな。

 

「というわけなんだ、シャル。あまり周りの人には言わないでくれるかな?」

 

「……氷雨が言うならそうするよ」

 

 え、なんで不服そうなんですか?

 

 予鈴が鳴り響き、昼休みは終わりを告げた。周りでこちらの動向を伺っていた人たちも自分のクラスへそそくさと帰っていく。何せここは千冬さんが担任のクラスだ。予鈴が鳴ったのにこの周辺にいたのでは千冬さんに何をされるか分かったものではない。

 

 ……まあ、それも含めて千冬さんが好きだという稀有なファンもいるわけだけどね。

 

「じゃ、ペイルライダーさん。“僕ら”はこれから授業だから」

 

 シャルが何か勝ち誇ったようにそう言う。え、どういう意味?

 

「そのようですね」

 

「うん。さよら、ペイルライダーさん。いこ、氷雨」

 

 そう言ってシャルは僕の手を取る。半ば強引に教室の中に連れて行かれそうになる。

 

「えと、じゃ、じゃあ、ペイルライダー。また、放課後ね」

 

 そう僕が言うも、ペイルライダーは返事をしない。返事の代わりに少し口角を上げるだけだった。

 

      ◇   ◇   ◇

 

 授業

 

「……どういうつもりだ、篠ノ之」

 

「え、ええと。あ、あはは」

 

 5時間目の座学が始まる。担当教員は千冬さんだ。普段は真面目に受けている僕だからいつもならこんな風に授業中に千冬さんに睨まれることなんてないんだけれど、今日の僕は一味違う。何故なら……。

 

「私がこうして氷雨の側にいることは何の問題もありません」

 

 何故なら、膝の上にペイルライダーを抱えているからさ! もうなんなんですか!!

 

 しかし、あれだね。膝の上にすっぽり収まるんだからペイルライダーは華奢だねって違う! そう言うことは重要だけど、今は重要じゃないんだよ。

 

「篠ノ之、こいつは何を言っているんだ」

 

「ええと、事情はあるんですが、この場で話すとなると、少し問題があるのではないかと思いまして……」

 

「問題ない。話せ」

 

 なんで事情知らないのに問題ないとか言っちゃうの? もしかして、問題があったとしても千冬さんがどうにかしてくれるの? あ、自分で言っといてなんだけど、千冬さんなら本当にそうしてくれそうな気がするね。

 

「ええと、実はですね。僕の専用機であるペイルライダーが昨日、僕が意識を失ったのをトリガーに形態移行をしまして」

 

「ほう。それと、そこのやつは何の関係がある?」

 

 千冬さんは薄々分かってるんだろうけど、なんでこんなこと聞いてくるんだろう。何か考えでもあるのかな?

 

「それが、トリガーが僕の心的外傷だったからなのか、特殊移行というものを行ったようで、その結果、ペイルライダーの待機状態が人型になって」

 

「それが、こいつということか」

 

 そう千冬さんが結論付けたことで、教室は喧騒に包まれた。そりゃそうだよね。みんな驚くに決まっているよね。

 

「静かにしろ!」

 

 その喧騒を千冬さんが鎮めると、クラス全体に向けて千冬さんはペイルライダーの処遇を話し出す。

 

「今回は篠ノ之の専用機が異例の形態移行をした。これは然る調査を学園側でした後に公式に発表する。故に、発表までは機密事項というわけになる」

 

 千冬さんの声がみんなにしっかりとした圧力をかけていく。なるほど、力技で解決するんだね。

 

「機密事項を漏らしたものが、どういう末路をたどるか。貴様らでも分かるな」

 

 安い脅し文句のような気もするけど、千冬さんが言うと喉元にナイフを突き立てられているかのような錯覚に陥る。もう、背筋が凍るようだよ。

 

 そんな感覚に陥っているのは僕だけじゃないらしく、周囲を見回すと青ざめた顔をするクラスメイトの姿が目に映る。原因が僕にあるからなんだか申し訳ない気分になっちゃうね。

 

 しかし、そうした口止めだけで止まるようなものなんだろうかという疑問はあるものの、こういう処置を取らないとペイルライダーが自由に動けないだろうという気もする。国外へのリークも可能性としてあるけど、その最たる代表候補生たちは顔見知りだから何とかなるし、例外のラウラは千冬さんの言葉には絶対服従だから大丈夫だろうし、あれ? 案外何とかなってるのかな?

 

「今日は特例としてそこで授業を受けることを許可する。だが、明日からは別に席を用意する。分かったな」

 

「了解しました、織斑先生」

 

 こうしてペイルライダーがこのクラスで授業を受けることになった。

 





この頃のシャルはまだ氷雨のことが好きな男装女子の頃ですね

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