転生したらトカゲさんだった件   作:蓮太郎

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第二十五話 トカゲの目にも涙

 

「えー、この度は誠に申し訳ございませんでした…………」

 

 俺ことメルト・ダウンは皆の前で正座させられていた。

 

 罪状は事情を説明せず逃亡した事。

 

 えっと…………なんだっけ、厄災級のなんかを倒した際の余波とかミリムから逃げたことでだいたい一週間ほど留守にしていた。

 

 逃走する際に森の木々を傷つけたし、ミリムが俺を追いかけたことで更に大量の樹木を破壊してしまった。

 

 その後は特に何の連絡もなく隠れ続けていたので彼等は怒っているのだ。

 

 戻ってきてあいさつした瞬間に皆を呼ばれたのでミリムもまだ居るのかと焦ったが、彼女は彼女で仕事があったらしく自分の国に帰ったのだとか。

 

 それで追われることは無いと安心したのだが、また来た際になんかを倒した際のことを聞かせてもらうと物凄い釘をリムルに刺していったらしい。

 

 そのことも面倒だったと物凄くぐちぐちと言われた。

 

 それだけでなく、やはり実力を隠して全部明かさないまま行方不明になったことも皆心配していたらしい。

 

 そこは申し訳ないというか、まさか心配されるとは思わなかった。

 

「全く、あれだけのことを出来るから隠すのは分かるけど、ああいうことをやるなら事前に言ってくれよ?」

 

「ハイ、スミマセンデシタ」

 

「あと、あれだけの実力があるなら訓練とか任せてもよかったんじゃないかと思ったんだけど?」

 

「いや、俺は挑戦者を叩きのめす役割だから」

 

「そこ黙って、言い訳はなしで」

 

「ハイ、スミマセンデシタ」

 

 しょんぼり、しおらしくしていればあとは時間がどうにかしてくれる。

 

 俺の考えた処世術だ。申し訳なさそうにして相手に優越感を与えて機嫌をよくしてもらう、これが一番回避しやすい方法ーーー

 

「しおらしくして怒られるのを回避しようとしてるのバレバレだぞ」

 

「な、何だと!?バカな、基本的に通用するはずなのに…………!」

 

「お前、ほんとどんな所で育ったんだよ」

 

 親なしボロ家の人がよく居なくなる(物理)ブラック会社勤めです。

 

 大体これで機嫌良くなるはずなのに、ここでは通用しないというのか!?

 

「リムル様、こいつ何が原因で怒られてるかわかってないですよ」

 

「あ、こいつ呼びまで格下げされた…………」

 

「うん、まあ何となく察せるけどさ。なんで怒られてるか分かってる?」

 

「全部押し付けて逃げた事」

 

「間違ってないけど、理由の一つだな」

 

 皆が頷いているが、俺の知らない間に何があった?

 

 魔王カリオンとの国交を開くため使者をお互いに遣わすことは聞いた。

 

 ミリムも居なくなって他は特になにも無いはずだが…………

 

「全く分からないという顔をしてますね」

 

「何回も言うけどさ、みんな心配してたの分かってるか?」

 

「し、知ってはいるが…………」

 

「ヴェルドラだって何かあって封印されたりしたんだ、何があってもおかしくないんだよ」

 

「それもそうだが、そこまで心配する必要は…………」

 

「あるんだよ」

 

 皆が何を考えてるか分からない。

 

 必死にない頭を絞って原因を考えている中、その様子を見ていたシオンが笑った。

 

 まるで笑いをこらえきれないように、それに連鎖するように皆が笑い始める。

 

「やっぱり分かってないですよ」

 

「全く、強すぎるってのも困るな」

 

「強者故、ですよ」

 

 リムルだけでなくシュナやベニマルすら賛同し始める。

 

「仕方ありますまい。見た目に反して長く生きてきた魔王ミリムはともかく、メルトは心も若者。それも荒んだ環境で育ったとみます。人の心に触れる機会も少なかったのでしょう」

 

 な、なんだ?ハクロウまで変なことを言い出したぞ!?

 

「みんな、本心から心配してたんだ。お前が居なくなって寂しいってな」

 

「さ、寂しい?そんなことはないだろ。たかが一個人に」

 

「メルト、こっちを見ろ」

 

 抱っこされていたスライム形態から人型になり、正座する俺に近づいてきた。

 

 少しうつむいていた俺の顔を両手で挟み、そして無理矢理見上げさせ…………

 

「こ、この、力を抜けって!上がらないだろ!」

 

「うぐぐぐぐ、そうなったら上げたくなくなるだろ!」

 

「真面目に聞け、この馬鹿!」

 

 ついに根負けした俺は顔を上げた。

 

「ここにはお前が考える悪意は全くない。お前がどう思おうと、お前は俺たちの仲間だ」

 

 何を言われたか、すぐに理解できなかった。

 

 仲間、そういうのはとっくの昔から居なかった。

 

 例え仲良くなったとしても、俺の前からすぐに消えていった。

 

 そう、小学校を中退してから金のために犯罪以外は色々とやって来た。

 

 些細な小遣いを稼いで飢えをしのぎ、そして最終的に就職できたのが原子力発電所。

 

 粗悪な環境によって危機感知を持たない同僚は次々に倒れて消えていった。

 

 一部は行方不明となったりしたが、何かやらかして何処かへ連れていかれたのだろうと心を殺して思っていた。

 

 だから、リアルに仲間と呼べるものは誰一人いなかった。

 

 だが、今は違う。

 

「う、うわーーーん!」

 

「「「「「泣いた!?」」」」

 

 このような温かみに触れてしまっては、心が痛んで感情が決壊してしまう!

 

 だめだ、耐えられない!

 

「うぐぐ、こ、こんなことが、あっていいのか!?こんなに優しくされるなんて…………わーーーん!」

 

「ちょ、誰か拭くもの持って来てくれ!どんだけ荒れてたところなんだよ!」

 

 物凄い情けない姿だが、リムルは後に語った。

 

『元、とはいえ一人の人間が一つのコミュニティで優しくされただけで泣く未来ってどれだけ絶望的なんだ』

 

 メルトが全部話していないのが悪いとはいえ、思っているよりも悪い未来を想像したリムルは物凄く心の栄養が奪われていく気がしたと、締めくくった。

 

 だが、俺は本当にいいのだろうか?

 

 この場は俺が泣いたことでうやむやになってしまったが重要なことを忘れている。

 

 俺は『世界の敵(レイドボス)』という、いつ破裂するか分からない爆弾だという事を。

 





 99%杞憂なんだけどね、この世のすべての生物が愚かすぎてワールドエネミー化しない限りは。

 そして優しさに触れて大号泣のメルト。仕方ないね、同僚がばったばったと倒れていく中で自分だけ少し長く生きていたせいで何も知らない故人の関係者から責められたり上層部から責任を負わされたりしてたからね。

 誹謗中傷はあれどまだネットのみがギリ平等だったのが救いか(なお知り過ぎたら…………)

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