SEEDDestinyと言うより、今回はスーパーロボット大戦Lの世界線でアスランとミーアのアスミア二次を書いてみました。
戦いの余暇に二人で過ごすひと時、良ければ!

グラニュー糖さんより表紙イラストも依頼しました
【挿絵表示】



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第1話

 ライブ衣装を身に包んでステージの上に立つ私。会場に来てくれる沢山の人たち、それにカメラを通じて観てくれている──もっと多くの人にも。

 

 

「皆さん。今日は私の歌を聞いて、楽しい時間を過ごしてくださいね♪」

 

 沸き立つ会場。ううん、プラント中のみんなが私を──ラクス・クラインを慕って、愛してくれるのを肌で、投げかける視線から感じる。

 そんな中でマイクを握って歌って、踊るの。ラクスさまの顔で、ラクスさまの声で。みんながそう望んで安心してくれるのなら。

 

 

 

 

 今日のライブはこれで終わり。今は帰りのリムジンで家まで送ってもらっている所なの。

 あちこちで歌って、慰問に訪れたり。歌姫ってこんなに大変だなんて想像もしなかったわ。でも、世界はもっと大変なの。

 

 

 何十年も前から謎の侵略者との戦争や災害が続いて、地球はもちろん──スペースコロニー、プラントで暮らす宇宙居住者も苦しんで。

 そのせいで地球と宇宙の人達との間の戦いまで起こってしまったの。どっちも沢山の人が犠牲になって……ようやく二年前に停戦したけれど、いつまた地球と戦争になるか分からないくらいに、状況は不安定で。

 プラントで暮らすみんなも不安がっていた、こんな時にこそ平和の歌姫ラクス・クラインさまがいたらって思っていたわ。けどラクスさまはずっと前から姿を消して、戻って来ることはなかったの。──だから私が。

 

 

「今の私は、ラクス・クラインだから」

 

 夜の車窓に写る私の、ラクスさまそっくりに整形したこの顔。元の顔の面影なんて、もうどこにもなくて。

 プラントの最高議長であるギルにお願いされて私はラクス・クラインの影武者になったの。声と歌がラクスさまとそっくりだった私だから選ばれて、ラクスさまがいなくなった後に顔を変えて、いつか戻って来るまでの代わりに。

 ギルの都合もあったけれど、私もステージに立って歌うことが夢だったから。そしてプラントには心の拠り所が、ラクスさまが必要なの。──例え偽物だったとしても。

 

(特に今は本当に戦争が始まってしまった。地球に落ちたコロニー、ユニウスセブンの事件はプラントのせいにされて、核攻撃まで。

 また沢山の人が命を……慰問に行った先でも、みんながどれだけ辛くて悲しい思いをしているかも知っているから。ギルも、あの人も頑張っているもの。私も私に出来る事を頑張らないと)

 

 

 

 ────

 

 

 家に戻って来た私。

 綺麗で立派な、ラクスさまとしての私に用意された豪邸。そしてプラント中かみんなが贈ってくれた沢山のプレゼントの山も。

 もちろん豪勢な生活だって。誰もが羨む立場と暮らし、私はラクスさまになる事で手に入れた。……けれど。

 

(ちゃんと上手くやれているのかしら。本物のラクスさまみたいに)

 

 答えなんて分かっているのに。いくら真似ても私なんかじゃあの人みたいになれないって。ううん、きっと誰も代わりなんて務まりはしないんだわ。

 結局はみんなの事を騙しているだけなの。ただの偽物にすぎない自分、だけど──

 

(私の姿、似合ってるって言ってくれたから)

 

 偽りの歌姫だとしても、あの青い髪の軍人さん──アスランは言ってくれたの。

 二年前に議長だったパトリック・ザラの息子で、プラントの軍事組織ザフトのエリート。そして、ラクスさまの婚約者だった人。

 私は自分の携帯を触って、試しに連絡を入れてみるの……でも繋がることはなくて。当然よね。だって今アスランはミネルバって言う戦艦に所属して地球に降りているもの。軍人としてのお仕事もあるし忙しいのよね、きっと。その代わりにメールを。私はラクスさまの代わりとして頑張っていること、アスランの様子はどうかなって彼に伝えるの。そして時間が出来たらまた連絡を返してくれたらって。

 

(でも、アスランは必ず返事をくれるから。遅くなってもちゃんと……必ず)

 

 離れ離れになっていても、互いに繋がり合っているから。

 だから私も──

 

 

 

 ────

 

「──アスラン? 地球の様子はどう?」

 

『あいも変わらずと言った所だ。各地で起こる戦いにミネルバも対応を続けている。正直いつ平和になるかは分からない。けれど早く全てを解決させて、ミーアの事も安心させたいと思っている』

 

 待ち望んでいたアスランとの通話。その日は私も休暇で、ふかふかのソファーに座ってゆっくりお話していたの。

 

「アスランは優しいのね。でもそうね、早く世界中が平和になって欲しいわ。宇宙も地球も、ナチュラルもコーディネーターも関係なく」

 

『ふっ、俺なんかよりもミーアがよっぽど優しい。それに忙しくて時間がとれなくてすまなかった。もっと早く連絡出来れば良かったけれど、丁度ベルリンの戦いの前後で……色々と大変だった』

 

 

 

 

 地球の反プラント派閥、ブルーコスモスの軍隊が巨大兵器を使って、ベルリンの街を焼き払った事。私もその事は知っていたの。あんな事になるなんてなんてショックだけれど、アスラン達は街を守るために戦ったのよね。彼は正義の味方ですもの。

 

「また多くの人が犠牲になったのね。でも、アスランが無事でいてくれて良かったの。

 私がみんなの前でラクスさまとして頑張れるのも、アスランが応援してくれるから。……だから」

 

 携帯からこぼれる、アスランの含み笑いの声。それからこんな事も話してくれた。

 

『ミーアのためにも俺はいなくなったりしないさ。それに良かった事もある、シンの大切な人だったステラ・ルーシェ──兵器として利用されていた彼女を救い出す事が出来た。フリーダムのパイロットのキラ、それに『LOTUS』の協力があったおかげだ』

 

 LOTUS? 初めて聞く言葉でした。

 

「ねぇアスラン、LOTUSって?」

 

 私が聞くと、アスランはこう答えてくれた。

 

「地球防衛のために組織された部隊の事だ。ブルーコスモスと違い国連の親プラント派閥プリベンダーが他組織とともに設立し、平和のために各地を渡って脅威の対処に当たっている。

 ユニウスセブンの落下阻止の時にも尽力してくれた。阻止は出来なかったが、彼らの助けがなければもっと酷い被害が出ていた。そうなっていたらプラントも完全に世界の敵になっていたはずだ」

 

「そうなのね。地球にいるあたし達の味方かしら、ふふ、少し心強いかも。

 地球だけじゃなくてプラントの、ギルの助けにもなってくれるかしら」

 

「ああ。議長が望むのも地球と宇宙、全人類の平和と共存だ。きっとこれからも彼の助けになると思う」

 

 良かった。安心して口元をゆるめて、今度は私の方からこんな話を振るの。

 

「──ねぇそれと、アスランはランカちゃんって子、知ってる?

 フロンティア船団の新しいアイドルで、プラントでも人気なの」

 

 フロンティア船団、それは別の宇宙か現れた宇宙移民船団のこと。別宇宙って言っても平行世界で、向こうの地球で色々あって宇宙移民を試みたんですって。

 この宇宙にやって来たのは驚きだけど船団の政府や住民の方は友好的で、同じ宇宙居住者と言うことでプラントとも協力関係なの。一緒にヴァジュラって言う怪物まで現れたのも大変だけど、それはザフト軍や船団の統合軍のみなさんが頑張ってくれて、何とかなっているみたいだから。

 

「ランカ・リーの事か、もちろん。地球でも有名になっているくらい人気で、俺も聞いた覚えがある。明るい声の良い歌だ」

 

「うんうん。プラントでも人気になっていて、彼女自身も可愛いし、本当に良い歌よね。

 今はあまり見ないけどシェリル・ノームさんも素敵な歌だったわ。フロンティアの人達って、私達の世界よりアイドルの文化が進んでいるのかも。……憧れちゃう」

 

「向こうの世界はこことは違う歴史を歩んでいるようだから、ミーアの言う通りかもしれない。

 確かにランカもシェリルも歌姫として才能があると思う。けれどミーアだって同じくらい歌姫としてやれていると思う。君の歌も俺は好きだ」

 

 優しいアスランの言葉。嬉しいけど、でもやっぱり複雑な気持ちが少しだけ、胸の中に残ったままで。

 

 

 

 

 いつもよりもたくさん彼と話せた気がする。アスランの声を聞けた幸せな時間、でもそれも終わりに近づいていて。

 

「今日はミーアと話せて良かった。……本当に」

 

「私もよアスラン。おかげでまた、ラクスさまとして頑張れるから」

 

「君も大変なのは分かっている。だから、あまり無理はしないで欲しい」

 

 気にかけてくれるアスランについ笑顔になってしまう。私は分かったって、そう言って伝えるの。

 

「そっか。じゃあまた、ミーア。今度は俺から連絡するよ」

 

 彼からの別れの挨拶。同じようにお別れを言おうとしたけど──その前に。

 

「アスラン、待って!」

 

 私は彼を呼び止めて、ある事を話すの。

 

「ねぇ、アスランは地球にいる事が多いんでしょう? 私、ギルに話して今度どこかでお休みをとる予定なの。

 その時に地球に降りてアスランに会いたいの。声だけじゃなくてあなたの姿を見て、触れ合えたらって」

 

 ちょっとワガママな頼みかもしれない。でも、アスランが地球に行ってからずっと会えていなかった。だから地球に行ってでも会いに行きたくて。

 考えているのか、アスランからの答えが返ってくるまで少しかかった。だけど彼は──。

 

「分かった。ミネルバは各地を転々としている。ミーアが無事に来れそうな所に立ち寄って、暇が取れそうな時には俺から連絡を入れる。

 君を待たせてしまうかもしれないが、きっと時間を作る」

 彼の答え。私は嬉しさが出た声で応えてしまう。

 

「はいっ! 私のために、ありがとうアスラン! あなたに会えるのを待っているから」

 

 

 

 彼との通話を終えて、お風呂に入って寝間着に着替えてベッドにつくの。

 寝室まで立派で、ピンク色の大きな、お姫様が使うものみたいなベッド。寝そべったらまだ少ししっとりとした桃色の髪がベッドに広がるの。

 そうして横になりながら携帯の画面を開いて、前に撮った写真を見返す。

 

「……ふふっ」

 

 アスランが地球に向かう前、無理を言って一緒に撮ってもらった二人の写真。ザフトの赤服を纏った彼の隣で、ライブ衣装の私がくっついて二人で撮った……まるで恋人同士みたい。

 

(あの時のアスランってば、恥ずかしがって少しそっぽを向いちゃってたから。今度はもっと親密になって……そうしたら)

 

 今度は地球で会ってくれるって、約束してくれたから。とっても、とっても楽しみなの。

 

「おやすみなさい──アスラン」

 

 寝る前に写真に映るアスランに微笑みかけて、軽く口づけする。それから瞳を閉じて眠りに……。

 

 

 夢の中で一足早く、彼に会うことが出来たらいいな。

 

 

 

 ────

 

 アスランとの約束からしばらく経ったの。

 ギルとプラントのみんなのためにラクス・クラインとして活動しながら何日も、何日も、彼と会うのを楽しみにしていて。

 そしてついに──その日が。

 

 

 

 

 

「ここがニホンなのね」

 

 シャトルから降りて、私は地上に一歩、足を踏み出すの。

 お忍びで地球に来たから目立たない格好で。長い髪は束ねて上から帽子を被って、目立たないような服装を。だけど傍にはボディーガードの人がちゃんといて。

 

「お気をつけください。ここはプラントではないと言う事を、お忘れないよう」

 

「分かっているわ。でもこの国はプラントとも中立でしょう? だから大丈夫よ」

 

「念のためです。世界が不安定な今、いかなる場合でも警戒しなくては」

 

 ──嫌だな。本当に早く平和になってくれたらいいのに。

 

 

 でも、ちゃんと地球に来ることが出来て良かった。

 アスランに会いに歌姫の活動を休んでここまで来た事。勝手なお願いだったかもしれないけれどギルも分かってくれて手筈を整えてくれた。

 

(アスランは今は日本に。まさかLOTUSに所属しているなんて)

 

 前に話してくれたLOTUSと言う組織、プラントはその協力としてミネルバとそのクルーを派遣したの。もちろんその中にはアスランも含まれていて、今じゃ彼もLOTUSの一員と言うことみたい。

 ちょっと驚きだったけれど、アスランが今いる所も、日本にあるLOTUS関連の組織の施設だって話だし。

 

「無事に地球についたことだし、早く行きましょう! きっとアスランも待ってくれてるもの」

 

 

 

 ────

 

 宇宙港から出て、日本の街中を車で移動しているところ。

 運転は彼がしてくれて私は助手席に。座席に座りながら携帯を開いて、アスランからのメールを確認しているの。

 

(メールでは、日本にあるJUDAの施設にいるみたい。LOTUSに関わっているグループの一つで、表向きは医療機器メーカーの大企業、実態は加藤機関って言う世界支配を企む秘密結社に対抗するために設立された組織って話だけど)

 

 それからしばらく車は走って、目的地に到着するの。

 私は外に降りて前の風景を眺めます。

 

「ちょっと、変わった建物かも」

 

 街にある三角形型の大きな建物。JUDAの社員寮で、LOTUSの人達も使っているみたい。

 アスランはJUDA本社がLOTUSの拠点って話をしていたから、その関係もあるかも。

 

(この中にアスランがいるのかしら。正面の入口から入って、受付にはどこまで話したら良いのかな?)

 

 どうしようか私が少し考えていると、急に目の前が両手に覆われて真っ暗になった。そしてすぐ背後からの声も。

 

「──俺が誰だか、分かるか?」

 

 私にとって馴染のある、大切な人の声。思わずくすりと笑い声をこぼして応えるの。

 

「はい。だって貴方に会うために、地球にまで来たんですもの。……アスラン」

 

 そう告げると視界を覆っていた暗闇は晴れて、私は後ろに振り返るの。

 

「地球にようこそミーア。服装と帽子、髪を結んでいて一瞬躊躇したが、それでも君だと分かった。

 その姿もよく似合っている」

 

 深い海のような蒼い髪の青年、優しい軍人さんで、私の正体を知っている数少ない人。何より心の支えになってくれる好きな人、アスラン・ザラと今こうして再会出来て──。

 

「アスランっ!」

 

「!?」

 

 思わず彼の胸の中に飛び込んでしまいました。驚きを見せるアスランに私は続けて。

 

「本当にアスランなのね……会えて嬉しい。ずっとまた会いたいって思っていたから」

 

 心からの嬉しい思い。彼も分かってくれたように私の顔を見て、微笑みを投げかけてくれた。

 

「君が元気そうで良かった。俺に会いに来てくれて、光栄だ」

 

 その後、私について来てくれた護衛の人にも言ったの。

 

「──ここまでミーアを連れて来てくれて感謝する。後の事は俺に任せてほしい」

 

 立場的にはアスランが上司なのかしら。びしっと敬礼して彼は従ってくれた。

 

 

 せっかく会えた大好きな人。ザフトの赤服ではなくてオフの格好な、赤いネクタイをつけたシャツのから紺色のジャケットを羽織った私服姿。アスランって顔もいいもの、軍人さんよりどちらかって言ったらモデルに見えるわ。

 

「君に会うから服も張り切って用意したんだ。あまり服選びは慣れていないが、似合うだろうか?」

 

 私の視線に気づいたアスランは照れて、上着の襟を少し引っ張りながら尋ねたの。

 

「もちろんよ。赤服のアスランも格好良いけど、今の服装も何だかモデルさんって感じで、つい見とれちゃった!」

 

 ニコッと笑顔で、正直に答えてあげる。それを聞いた彼ってばさっきよりも照れて赤くなっちゃって……可愛い!

 私はもっとドキッとさせたくなって彼の左腕に組んでくっつくの。

 

「み、ミーア!?」

 

「顔を真っ赤にしちゃってどうかしました? ふふっ♡」

 

「その……少しくっつき過ぎじゃないのか!? ほら……その……」

 

 彼の見下ろす視線の先には、腕にピタッとくっつけてみせる私の胸。ちょっとエッチかもしれないけど、わざとやってみた色仕掛け。アスランの反応についクスクスと笑っちゃう。

 

「ともかく、あと少し身体を離してくれ。このままじゃ俺も動きにくいから」

 

 少し困らせすぎちゃったかも。言われた通りにちょっと身体を離すと、アスランもほっと息をついて私に伝えた。

「改めて地球にようこそ、ミーア。俺の方も時間には余裕がある、この街の範囲内でなら今日一日、君を案内してあげられるとも」

 

「アスランと地球の街を二人で……それってデート、ってこと?」

 

 私の言葉に彼は照れて頭を掻きながら呟いたの。

 

「ミーアがそう望むなら、俺は構わない。君が地球で楽しんでくれるのなら」

 

 ふふっ! とっても嬉しい。

 今日はとっておきの思い出が出来そうな予感♡

 

 

 

 ────

 

 アスランと二人でニホンのデート。

 私はさっき立ち寄った駅で貰った街の観光パンフレットを見ながら彼と話すの。

 

「ニホンのことは私も色々と調べたのよ。中でも『お寿司』とか気になって、食べたいって思っていたから。お昼はここのお店で食べましょう!

 老舗の名店って書かれているわ、アスラン! きっと美味しいのよ」

 

「街にこんな店があったなんて、気がつかなかった。俺も気にはなるからミーアの言う通り昼はそこにしようか。

 ただ昼までには時間がある。その間は……そうだな、ここの自然公園にでも行って散歩するか。広い公園で景観もいい、ゆっくり歩きながらミーアと話が出来ればいいと思う」

 

「そうね。アスランとは電話越しでの話ばかりだったもの。二人で散歩しながらお話しましょう。会って話したかったこともたくさんあるから」

 

 ニホンに来たのは朝早くで、アスランと再会したのも午前中だったから。

 お昼までは彼の提案で公園の散策に。プラントの中の人工的なものではない豊かな自然と、どこまでも続く青い空。

 

「やっぱり地球って良い所ね」

 

 思わず呟く私に微笑みかけてくれた彼の横顔。それだけでも会いに来た良かったって思ったの。

 

 

 

 公園を歩きながら二人でお話。

 私はラクスさまの代わりにプラントの歌姫としてどんな事をして来たのかを。最近はグラビアみたいに水着で撮影をしているって話したら、アスランってば顔を赤くして『ラクスはそんな事しないだろ』って。

 ふふふっ。私もつい、そうかもねって言っちゃったの。だけど少しでもラクスさまの代わりにならなきゃだもの。ラクスさまじゃない私がそうするなら出来ることは全部やらないとって。

 そう言うと彼は、偉いなって……一言だったけれど心から私を褒めてくれたの。

 アスランもアスランで色々教えてくれたの。彼とミネルバのクルーが配属されたLOTUSってどんな組織かについて。

 

「複数の組織が関わっているだけあって、メンバーも様々なんだ。並行世界から来たフロンティア船団の人間もいれば、光子力研究所、NERVと言った所からも人員とロボットが配属されている。そうだな……マジンガーZはプラントでも名前が知られているだろう? モビルスーツ以外のロボットも数多く、興味深くある」

 

「私もちょっとは知っているのよ? うーんと、エヴァンゲリオンにダンクーガでしょ、後……擬態獣と戦っているゴーダンナーとかもかしら!」

 

「ふっ、ミーアも詳しいんだな。後はラインバレルと言ったJUDA所属のロボット──マキナも、操縦するパイロットは殆どが中学生で驚きもした。他にも同じ年頃の子が戦いに出ている事には俺もショックを受けたんだ。

 ザフトだってまだその年齢なら養成学校にいるはずだ。事情がある事は知っているが、少しばかり複雑だな」

 

「まだ子供のパイロットもいるのね。アスランはちゃんと面倒見てあげているの?」

 

「むしろ彼ら彼女らの方がしっかりしているさ。若さゆえの活気もある、みんな良い奴ばかりだし……退屈もしない。

 事が落ち着いたらミーアにも紹介したいと思っている」

 

 何だか楽しみね。その時にはラクスさまって偽るんじゃなくて、ちゃんとミーア・キャンベルとして皆さんにも自己紹介が出来ればいいなって思ったの。

 

 

 

 ────

 

 お昼には約束どおりお昼ご飯にお寿司を食べに行ったり。

 

「んっ! とっても美味しい! この赤いお寿司、マグロって言うのかしら? 口の中でとろける感じっ」

 

「ミーアの口に合って良かった。他の寿司も好きなだけ食べていい。そうだな……タイと言う魚の寿司とかも美味しそうだ。今度はそれを頼んでみるか?」

 

「待って、今はエビのお寿司を味わっているの。──こっちはプリッとしてお魚と違う味と食感。このお店のお寿司ってどれも美味しいわ! アスランもほらっ、もっと食べましょう。二人で食べた方がずっと美味しいもの」

 

 私が満足して食べているのを、アスランは自分のことみたいに嬉しそうにしてくれたわ。でも彼ってば自分からはあんまり食べないの。だから私からもそう言って二人一緒に食事をするの。

 あの人も美味しそうにお寿司を食べてくれて、つい見つめちゃったわ。

 

 

 

 お昼の後はいよいよデートの本番! ニホンの街をアスランが案内してくれたの。

 

「プラントの街に勝るとも劣らない都市だ。ここの通りにも色々と店もあるし人気も多い。ミーアが好きな所に行ってみよう」

 

「ならまずは洋服を色々見てみたいの! 地球のお店にはどんな衣装があるのか、私も楽しみにしていたから。

 アスランと一緒に、ねっ♡」

 

 まるで恋人にするみたいに手を繋いで、私はアスランを引っ張って連れて行きます。

 街の通りを巡って、気になったお洋服屋さんをいくつも立ち寄ってみるの。

 

「私はピンク色が好きだけど、黄色の服も悪くないわね」

 

「欲しいものがあるなら俺が払う。ミーアが好きなのを選んでくれ」

 

「ならお言葉に甘えちゃうわ! えっと……その服と、こっちの服。あっ! このワンピースも可愛くて気に入っちゃった!」

 

 アスランと楽しいお買い物。こんなに親しい人と二人でお買い物も初めてで、ずっとワクワクしちゃう!

 だからつい張り切っちゃって……その。

 

 

 

「あはは……ずいぶん買い物したな」

 

「はい。でも、私の買ったお洋服、やっぱり私が……」

 

 たくさん服を買っちゃって、その袋まで全部アスランが持ってくれて。ちょっと申し訳ない気持ちになっちゃうの。

 

「俺は全然平気だ。それよりも君が喜んでくれた事が大事だ」

 

 ふっと微笑んでアスランは言ってくれたの。優しい声で、こんな事も続けて話すの。

 

「ミーアはラクスの代わりとして振る舞ってくれている。姿と顔まで変えて、それでも君に出来る事を頑張ってくれている。

 ステージで歌いたいと言う、君の夢を叶えるためなのもあるだろう。けれど彼女の代わりで歌っているミーアは、どこか辛そうにも見えた。モニター越しで笑っていても本当の笑顔ではないとも」

 

「……」

 

 アスランの言う通りだった。心の内を見られた感じで俯いてしまう私。

 

「だからこそ嬉しい。ミーアが幸せで、心からの笑顔が見れたことが」

 

「──アスラン」

 

 私は彼と顔を合わせて……また、笑っちゃう。

 

「私の方こそ、貴方が傍にいるだけで幸せなの。だから──」

 

 思わずその先の言葉を言いそうになってしまった。

 

「どうかしたのか?」

 

「……ううん、何でもないわ」

 

 でも今は我慢。私も、アスランも今はそれどころじゃないから。いつかこの状況が少しでも落ち着いたら……その時には。

 

 

「ねぇ、アスランっ!」

 

 街の街頭ビジョン──モニターに映るある映像と音楽。通行する人たちも大勢足を止めて映像に釘付けになっている。

 アスランもそれに気づいて視線を向けていました。

 

「フロンティア船団のアイドル、ランカ・リーか。地球でもここまで人気になっているらしい」

 

 綺麗な緑髪で天真爛漫な女の子。映像の中で元気に歌う姿、見て聞いているだけでも明るい気持ちになれてしまう。

 

「……きーみは誰とキスをするー」

 

 ランカさんの歌う曲、『トライアングラー』の歌詞を、自然に私は口ずさんでいた。

 

「とても素敵な歌。これが、正真正銘の歌姫なのかしら。同じフロンティア船団のシェリルさんや、ラクスさまのように」

 

 憧れを覚えてしまう。私だって本当はあんなふうに……なりたかったから。

 

「ミーア、やっぱりまだ──」

 

 アスランは何かを言おうとしてくれた。でも、そんな時に声をかけた方がいたんです。

 

 

「……あれ? ここでアスランさんに会うとはビックリだ」

 

「一緒にいる女性は誰でしょうか? 一鷹さん」

 

 

 

 ────

 

 時間は夕暮れ。

 黄昏色に染まる空と、沈み行く夕日。街はずれの海辺に私は来ていたの。

 

「浩一から聞いたんだけど、ここの海辺、ちょっとした隠れスポットなんだ。海も浜辺も、ここから見える夕日だって綺麗だ。たまにカップルがデートに来たりもするしさ」

 

 ここに案内してくれた活発そうな男の子、南雲一鷹くんは私とアスランにそう話してくれる。

 街頭ビジョンを見ていたらパッタリ出会った子で、アスランと同じLOTUSに所属しているパイロットで、十五才でまだ子供なのに、自分の持っている『ラッシュバード』って言うロボットに乗って戦っているんですって。

 

「良い所を教えてくれてありがとう。すまない、俺達の都合に付き合わせてしまって」

 

「大丈夫っすよ、俺も休みで暇していましたし」

 

 一鷹くんの傍には水色のショートヘアと瞳の可愛らしい女の子もいたの。

 

「ふふ、それで一鷹さんが散歩に出た時に偶然お二人に会って。きっと何かの縁と思いますから」

 

 彼女はアリスさんって言って、人間そっくりだけど一鷹くんのお世話をするために作られた家政婦アンドロイドなんですって。

 アンドロイドって言っても、こうして笑っている仕草を見るとそうは思えない感じがしちゃう。一鷹くんはアスランと私を見てこう話すの。

 

「アスランさんとそれに……ミーアさんでしたね。

 プラントの歌姫、ラクス・クラインの代わりをしているなんて。俺も驚きだ」

 

 アスランは二人にも私の事を話してくれました。本物のラクスさまではないと、少し驚いてはいましたけど受け入れてくれたんです。

 

「すまないが他のみんなには秘密にしておいてくれ。ミーアが俺に会いに来たのもお忍びで、あまり公にしたくはないんだ」

 

「分かってますよ! 二人の事はアリスとの秘密にしておきます。

 ただ……それにしても」

 

 一鷹くんは少し顔を赤くして私の格好に視線を向けます。

 

「ミーアさんのライブ衣装……近くで見るとその、俺には少し刺激的というか」

 

「あら? ドキドキさせてしまったら、ごめんなさい」

 

 私は服を着替えて、プラントでラクス・クラインとして活動しているライブ衣装を纏っていました。

 

「ハロ! ハロ!」

 

 ついでにハロまで持って来ていたんです。ハロは砂浜の上を跳ねながら私について来てくれるの。

 

「どうしてまたその衣装に着替えたんだ? 俺は何も聞かされていないんだが?」

 

 戸惑うアスランに私はイタズラめいた笑みを向けて、一鷹さんにこう言うの。

 

「じゃあ一鷹くん、写真をよろしくね!」

 

 彼は左手でぐっと親指を立てて、右手で小型のカメラを持ってくれていました。

 アスランはまだよく分かっていない様子で、その様子も可愛くて。私はワクワクした気持ちのままで彼の手を引いて海辺を駆けるの。

 

「だからどう言うことなんだ……!? 言ってくれないと分からない」

 

「いいからっ! ちょっとだけ一緒にこうしたいの」

 

 手を繋いで、私は彼と浜辺を駆けるの。

 

「ミーアっ!?」

 

 どぎまぎなアスランを連れ、潮風を感じながら駆けて、回って。そして白い砂浜の上に連れて来て手を離すの。

 

「ここなら良さそうかも、ふふ!」

 

「……?」

 

 私はようやく、彼にどうしたいのか伝えることに。

 

「私、地球に来たら綺麗な場所でライブをしたかったの。

 他には誰もいない、一鷹くん達と……そしてアスランだけが観てくれる内緒の、ミーア・キャンベルとしてのライブを」

 

 だから、アスランには近くで観てもらいたくて連れて来たの。

 

「……そう言うことか。その為に衣装まで用意して」

 

 夕日のせいかな、アスランの照れ笑いの顔が少し赤くなっているように見えたの。

 

「分かった。ミーアの特別なライブ、少しも見逃しはしない」

 

 本当に真面目な人。私も微笑み返してから両瞳を閉じて、右手を喉元に当てて気持ちを整えるの。そして──。

 

「♪〜 ♪〜」

 

 

 私は歌うの。誰かの真似ごとではなくて、心から自分自身として。アスランは目を離さずに見守ってくれている。心から歌を聞き入ってくれているのが分かるの。

 これが私の望んでいた歌。地球で、大切な人の前で歌う事が出来る。一番に幸せな時間でした。

 

 

 

 ────

 

 私としてのライブ。十分に歌い終わって、アスランに訪ねます。

 

「私の歌、どうでしたか?」

 

 彼は嬉しげに微笑んで答えてくれました。

 

「今までで観た最高のステージだ、ミーア。君の声と歌も……俺は大好きだ」

 

「そう言ってくれて嬉しいわ。私も、アスランの事が大好きよ」

 

 アスランの傍に歩み寄って、私は彼の首元に両腕を絡ませて寄せるの。

 

「今はラクスさまの代わりでしかないけれど、いつかきっと、ミーアとしてステージに上がってみせるから。だから、その時には……私と」

 

 エメラルドみたいな彼の瞳を見て、ドキドキとした胸の高鳴りを覚えます。そんな私にアスランは口を開いて。

 

「……すまない」

 

「──そう」

 

 仕方ないわよね。アスランは素敵な人だから、私とは釣り合わないって。

 それでも悲しくなって少し目を伏せてしまっていると、彼は続けて言ってくれました。

 

「世界は今も混乱の中で、俺は平和のために戦わないといけない。

 だからすぐに答えは出せない」

 

「……」

 

「けれど少しでも平和が戻って、ミーアがミーアとして歌えるようになった時には俺も答えを決める。

 俺もそれまでは待っている。君の望みではないかもしれないが、時間が欲しい」

 

 それは彼なりの真摯な気持ち。だから……私は。

 

「大丈夫ですよ。その時にきっと──聞かせて下さいね」

 

 今はそれで十分なの。

 夕日は地平線に沈んで、代わりに空には一番星が煌めいて。私たちは大切な約束をまた交わしたんです。

 

 

 

 ────

 

 次の日の朝、私はアスランに見送られて地球を後にしたの。

 シャトルは大気圏を出て宇宙空間に出た所、これからプラントへと戻る所。私は窓に映る地球を眺めます。

 

(つい昨日まで、あそこでアスランとデートしたのよね)

 

 宇宙に浮かぶ巨大な青い星。もう名残惜しいって思ってしまう。そしてあるものを取り出して、窓の景色と一緒に眺めてみます。

 ──それはあの海辺で、アスランと二人映った写真でした。一鷹さんが撮ってくれた写真を現像してもらったんです。

 

 

 アスランの手を引く私と、照れている彼の姿。青春の一ページって感じの良い一枚。もちろん私が歌っている所とかも、他の写真だってあるの。

 

「アスラン、私の大好きな人」

 

 まだ答えは分からないけど、私の想いは伝えられたから。この想いと恋心。それを胸に秘めて、私はまたラクスさまとしてプラントで頑張ります。

 だから……。

 

「……貴方も平和のために、頑張ってください」

 

 今は道は違っても──きっと願いは同じなのですから。


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