リーサ姫の疑問については過去の異変を解決するアレン達やユバール族の重鎮達にも共有された。
彼等としてもそれに関しては盲点だったので、各々が出来る対策が必要だと結論に至った。
ユバール族としてはグランエスタード王国や砂漠の国との戦闘交流会を頻繁に行うと言う事だ。
今はルーラやキメラの翼で少人数だが交流を深めている最中の両国だが、より関係が深まれば砂漠の女王ネフティスにも極秘に伝えて備えを万全にする必要があった。
砂漠の国へまだ伝え無いで伝えるにしても関係がもっと深まった後で極秘に伝達するのは、現状これがリーサの杞憂によるところが大きいからだ。
彼女や賛同したアレン達も自覚はしているが、これに関しては何の確証も無い話だった。だから、同盟国とは言え確証も無い戯言に付き合わす事は出来ないから建前が必要だった。
その一環が戦闘交流会である。魔法武器の生産体制の確立は確かに急務であるが、そもそも戦える兵士が居なければそう言う緊急時に対しては焼石に水である。
ユバール族は本来、戦闘には不向きな人達が産まれやすい一族だった。だから、過去の一族の守り手はダーツ1人だったし、魔除けのトゥーラを弾けた人もジャンだけだった。
恐らくキーファが過去に残らず掟の件をどうにかしたジャンがライラが結ばれていたとしても、守り手不足なユバール族は少し多い襲撃でも守り切る事が出来ず一族滅亡は待った無しだっただろう。
それが過去の異変を解決出来ていなかった少し前の現代でユバール族が居なかった理由だった。だけど、キーファが過去に残った事でマリベル達が植え付けた戦う為の可能性が花咲いたのだった。
現代に残っているユバール族には少なからずキーファの血筋が経由している。それはつまり戦闘を苦手とする一族に戦闘の天才たるロトの勇者の祖が加わった事を意味している。
それ故にアイラを筆頭に守り手達だけでは無く、現代のユバール族全員が何かしらの魔法や武技を習得した戦闘民族に生まれ変わったのだった。
そんな戦闘民族だからこそお互いに刺激し合える関係となり戦力増強が図れる様になるのだった。
それに対してアレン達はと言うとそんなに大きくは変わらない。これまで通り旅はするけど、これまでアレンばかりに半ば押し付けていた情報収集を全員が意識して現代に持ち帰る様にする事だけだった。
特にマリベルやアルスなど魔法に長けた者達は錬金学で得た知識や現在足りない課題についても共有されている。
次の異変がどう言う場所なのかは不明だけど、錬金術が持つ課題を解決する為の糸口を見つける様に注意を払うつもりでいたのだった。
アレン達は半月程度アイラと交流を深めた後、旅の準備を整えてから次の異変解決へと向かった。
「これが、時渡りの旅の扉なのね……」
「あぁ、そうだよ。俺達はこれを使って今回の様に過去世界へ転移して、その時代の問題を解決してきたんだ」
「と言う事は今回も魔王軍に襲撃を受けている国や街を助ければ良いの?」
「全部が全部、それで解決って訳じゃない。問題によっては復興の手伝いで数ヶ月滞在する事もあるんだが……」
「ねぇ、アレン……。なんかこの世界、平和過ぎないかしら?」
過去世界に降り立ったアレン達が散策を進めていると近くの宿場町へ辿り着いたが、何と言うかモンスターは徘徊するのに物々しい気配は無く現代に近い雰囲気だった。
困惑しているアレン達を他所に戦士風の若い青年が物珍しそうにして彼等に近付いてきた。
「おや? アンタ達もダーマ神殿で転職しに来たのか?」
「ダーマ神殿……?」
「それに、転職ってなによ?」
「おいおい、冗談はよせって……。ダーマ神殿はここから西へ道なりに進んで行けばあるダーマ神を祀る大神殿だ」
「そして、そこの神官達はダーマ神の加護を用いて生物の可能性、人類が積み重ねて来た叡智の結晶である数多の職業へ就く事で才能を開花させる場所……」
「何だ、兄ちゃん。やっぱり、分かっているじゃんか。まぁ、そう言う事だからアンタ達も一度行ってみて試して来ると良いさ。俺は一足先に行って勇者になってくるぜ!」
戦士の言葉を引き継ぐ様にしてアレンの口からダーマ神殿についての説明が溢れた。
それを聞いた戦士風の若い青年は満足そうに頷き、ニカッと爽やかな笑みを浮かべながらアレン達を後にした。
それとは対照的にダーマ神殿について説明をしたアレンはとても苦しそうにしていた。
まるで現代の酒場でホットストーンを初めて見た時と同じ頭が割れる様な痛みを感じ、その表情から大量の汗が流れ落ちていた。
「ちょ、ちょっとアンタ……!?」
「アレン、大丈夫……!?」
「ハァッ……ハァッ……。ごめん、ちょっと、頭痛が……。でも、少し、休めば、大丈、夫……。うっ……」
心配で駆け寄るマリベルとアルス達を彼は心配させない様に痩せ我慢をして笑っていたが、押し寄せる頭痛に耐えられず膝から崩れ落ちてそのまま意識を落としたのだった。
順番は前後しましたがダーマ神殿編開始しました。
そして、ここからアレンの失った記憶についても少しずつ触れて行こうかと思います。
また、それに伴い独自設定や解釈マシマシなのでご了承の程よろしくお願いします。