もう主要キャラクターが勝手に動き廻っているし・・・・
どうやって収集つけよう・・・・
《1993年9月上旬》
アイルランド島とブリテン島に国連軍、イギリス軍、欧州連合軍、欧州喪失国の義勇軍が集結したその総兵力は100万を超え、改装を施した客船《クイーン・エリザベス号》に西ユーラシア大陸連合軍総司令部を発足した。
イギリス政府はこの作戦の為に、国家予算5年分に相当する戦時国債をニューヨーク・ウォール街で発行。無謀とも思われたが、アメリカ合衆国政府が大半の戦時国債を引き受けたのもあって、機関投資家も戦時国債を買い取った。
だがこの作戦『オーディン』はアメリカ政府の政治的な思惑に作戦が始まる前から引き摺られおり、アメリカ政府合衆国主導にも関わらず、アメリカ軍大西洋総軍からは正規軍は参加をしていない。無論作戦会議にもだ。
ただアメリカが何もしていない訳ではない。今回の作戦に用意された補給物資の7割がアメリカが用意し、アイスランド島にアメリカ大西洋艦隊第1、第2艦隊、海兵軍第2軍団及び海上メガフロート移動基地【アラモ】がアイスランド島沖に待機している。
海上メガフロート移動基地【アラモ】は羽田空港24個分の敷地面積を誇り、今回の作戦の兵站基地の役目を担っている。アメリカ空軍の全天候型戦略爆撃機
直接戦闘に参加はしないが、出すべき戦力は出しているアピールだ。これは『もしアメリカに逆らえばどうなるか、解っているよな?』の軍事的恫喝も含まれている。
今回の作戦に辺り欧州喪失国、特に中立国と東欧社会主義同盟諸国に揺さぶりを掛けている。
『最早東西冷戦の時代は終わった。これからはアメリカ合衆国一強の時代だ。アメリカに助けて貰いたかったら、ソビエトを見限り共産主義を捨てこちら側に付け』と。
アメリカ合衆国が動員した戦力と膨大な物資を見た欧州の中立国と東欧社会主義同盟諸国は動揺した。
自分達が束になって戦おうと、百回戦って百回とも惨敗完敗大敗の挙句、宇宙の塵になるのが目に見えているだけに。
そしてフィンランド、スウェーデン、ウクライナ・ベラルーシ解放同盟、バルト三国同盟は、アメリカの政治的要求に屈した。屈したと言うよりも、彼等の場合は最初からそうするつもりだった。
無論ソビエトは激怒したが、今のソビエトはウラル山脈以西を完全に失い、西シベリアまで戦線を後退させ、首都機能をアメリカから間借りしたアラスカ北部に首都機能を移したばかりなので、表面的にはアメリカ政府に抗議はしても実質的には黙認するしかないのが苦しい立場だ。
だが、7月の下旬ソビエト連邦に転機が訪れる。
それに付いては後で述べよう。
今回の作戦に参加する各軍の上層部は、アメリカが新型爆弾の実戦テストを行うだけは知らされてはいるが、新型爆弾に関する詳細は知らされていない。
ただ、アメリカからは、『新型爆弾でBETAを一網打尽にするから、西ユーラシア大陸連合軍全部隊は総力を上げてBETAを引き付けろ』としか言われていない。
新型爆弾に関する詳細と原質をアメリカ政府は取られたくないのか、アメリカ軍を完全に別行動させている。
そもそも何故ロヴァニエミが新型爆弾の実戦テストの場に選ばれたのか?それは『何もない』からだ。BETAがハイヴを建設するまではそれなりの観光地だったが、BETAがハイヴを建設してからは荒れ果てた無人の荒野と化した。
フィンランド政府も復興を諦めているのか、それともそれなりの金銭的見返りを用意されたのか、『それで父祖の地奪還にもなるのなら』と、アメリカ政府の要求に従い新型爆弾の実戦テストの地と認めるしかなかった。
作戦としては至ってシンプルで、『北から上陸してロヴァニエミ・ハイヴに一直線に向かう』と言う物。と言うか、それしか作戦を取りようがなかった。作戦期間は僅か一ヶ月なのと、北欧北部の冬は早い。10月下旬には初冠雪が訪れるからだ。
バルト海→ボスニア湾経由でのフィンランド北部のケミ、イー地方への上陸も検討されたが、バルト海とボスニア湾は狭く、両岸からの光線級属種の集中砲火を受けやすいので、早々に上陸は見送られた。
当然の事ながら矢面に立たされる国連軍、欧州連合軍、喪失国義勇軍とすれば面白くない。自分達を上回る戦力を擁するアメリカ軍は高見の見物を決め込むのだから。
だが彼等には希望はあった。日本帝国から戦術機用のバズーカ砲、無反動砲の2種類の兵器と、バズーカ砲で使う純水素弾、無反動砲で使う下瀬火薬弾の2種類だ。
数が限られているので、使い道は限られている。開発者のタケル・シロガネからは『【母艦級】と【要塞級】以外は使わないで欲しい』と助言を貰っている。
純水素兵器と下瀬火薬の破壊力は重慶市防衛戦で立証済みなのと、『両兵器があと3倍あれば、重慶市は日本帝国陸軍だけで守れたのでは?』と見られていただけに、ロヴァニエミ・ハイヴ攻略の切り札扱いだ。
新OSと新型CPUの採用は準備期間の短さから見送られてしまう。
武は日本帝国政府経由でイギリス政府と国連本部に《オーディン作戦》の1年延期を求めたが、イギリス政府も国連本部も【母艦級】への恐怖心が増さり武の要望は却下された。
武からすれば苦々しい思いだ。【母艦級】の存在を認知させたくて、熊本第6師団に【母艦級】を認知させる証拠を探索させていたのだ。しかし、BETAが1984年から頻繁に地中侵攻を行なった事が原因で、各地の欧州戦線が崩壊し、1991年末には欧州の9割がBETAの制圧下に置かれイギリス本土にも、50万のBETAが押し寄せた。辛うじてイギリス本土防衛には成功したものの、その時の傷跡とBETAへの恐怖心は武が考えた以上に根が深かったのだ。
《1993年9月10日06時00分》
「ファイヤー!」
その号令の元イギリス海軍、フランス海軍、イタリア海軍の戦艦部隊計12隻の艦砲射撃が始まった。
砲撃の弾種は徹甲弾、榴弾、重金属弾の3種類。それらを交互に打ち分け砲弾の雨を降らせる。戦艦部隊の艦砲射撃では数が足りないので、貨物船を改造した砲艦やロケット弾艦からも上陸地点に向けて砲撃を加える。
無論BETAも光線級属種で反撃に出る。瞬く間に着弾する砲弾やロケット弾の数は激減するが、重金属運弾が効力を発揮し始め、レーザーの命中率と集束率が下がる。
それを見越していた人類軍は低軌道からの宇宙装甲駆逐艦HSSTからの軌道爆撃を開始。事前偵察と偵察衛星からの情報で上陸地点に、師団規模のBETAが展開しているのは知っている。低軌道衛星からも軌道爆撃が開始され、BETAのレーザーを減衰させる重金属運をより広範囲と高密度に展開させ、次に大量のロケット弾の雨を降らせBETAの頭上に叩きつけられ、次は純水素爆弾だ。
「すげえ」
上陸艇に乗っていたイギリス軍兵士は感嘆した。上陸地点の沿岸部には数十ものキノコ雲が立ち上がる。
メタンを加えた純水素爆弾の爆心地の温度は摂氏2000度にも達する。
どんな環境にも適応し、絶対零度の極寒でも耐えられるBETAも一溜りもないはず。
欧州連合側は日本帝国政府に下瀬火薬弾も軌道爆撃に使うよう求めたが、日本帝国政府は毒性が強い下瀬火薬を海岸線橋頭堡や針路上に使うのは危険と判断。また重慶・ハイヴ攻略戦を控えた今、これ以上の純水素爆弾、下瀬火薬の提供と使用はてきないでいた。
「小隊長、あれも日本帝国からのプレゼントですか?」
「ああそうだ。数が少ないので、今回は一回限りそうだ」
「でもあれなら、BETA共は一匹残らず死んだのでは」
「だといいがな」
「違うんですか?」
「奴らにはどういう訳か、死の恐怖が存在していない。だから動ける限りは、最後まで戦うからな」
「・・・・・・・」
「上陸は出来るだろうが、上陸してからが本番だぞ。気を引き締めていけよ」
「サーイエスサー!」
《07時00分》
機甲戦術機部隊が上陸に成功し橋頭堡を確保。
それに併せて地上部隊も上陸。
損耗率は3%未満で殆どが砲弾とロケット弾が多数。
西ドイツ軍第7機甲師団の戦車将校が呟く。
「BETAの連中め、多少は知恵を身に付けて来たか。要塞級と光線級の数が思っていたよりも少ない。後方に温存しているな」
海岸線から内陸10キロに渡って橋頭堡を確保したが、BETAの規模と残骸数からして、光線級の数が少ないのは余りにも不自然だったし、重光線級に至ってはゼロだ。
こうなって来るとBETAが重光線級や要塞級の温存に出ているのは明白となる。
「これは面倒な事になるぞ」
ロヴァニエミ・ハイヴに近付けば近付く程、重光線級の待ち伏せ攻撃を受けやすくなるだろう。
海軍の艦砲射撃は内陸部に移り、上陸した陸軍の長距離野戦重砲部隊とロケット砲部隊も、絶え間なく内陸部に向けて攻撃を加える。
戦闘工兵部隊は複数もの桟橋を設営しては、海岸線に鋼鉄鉄板を轢いては道を整え、BETAの残骸処理に当たる。
「要塞級と光線級のアンブッシュなんて歓迎したくありませんよ。命が幾つあっても足りない」
「まったくだ」
「大隊長、師団司令部から通信が入りました」
「何と言って来た」
「『第7機甲師団所属の全戦闘大隊は、戦術機部隊の援護の元前線を50キロ南に押し上げろ』との事」
西ドイツ陸軍将校は肩をすくめる。
「やれやれ、前進をしなければ何も始まらないか・・・」
上空を大隊規模の戦術機部隊が内陸へと飛んで行く。
「仕方ない。大隊全車両パンツァーフォ!」
60台もの【レオパルドⅡ】戦車、随伴歩兵を乗せている戦闘装甲車、補給小隊、整備小隊、工兵小隊の車輪が一斉にディーゼルエンジンを唸らせて進み出した。
地獄の1丁目へと。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
その頃帝国陸軍参謀本部では、巌谷榮二少佐と白銀武がロヴァニエミ・ハイヴ攻略戦を分析していた。
「今のところは作戦は順調だな」
「はい、今の所はです。ロヴァニエミ・ハイヴまでは順調に進むでしょうけど、そこからが本番ですから」
(やはり自分と言うイレギュラーが原因で、歴史の流れが加速している・・・)
武はそう実感するしかなかった。
本来なら【母艦級】の存在が認知されるのは2002年になってからだし。新OSも世界に広まるのは2003年になってから。
しかも重慶・ハイヴ攻略は2010年・・・・・。
否が応でも皮膚感覚で理解するしかない。
でも同時に自分の国が戦場になるのを回避するには、これしかないのも確かだ。イタズラに時を浪費すればBETAは間違いなく日本本土に押し寄せて来る。国土の広さに反比例し、平野部の居住面積が限られているこの国では、一度BETAの上陸を許してしまえば万事休すだ。帝国軍や斯衛軍が精強を誇ろうと、間違いなく国民多数が犠牲になる。
武は鬼になるしかなかった。帝国軍と斯衛軍にBETAと互角以上に戦う武器を与えるから大陸の死地に赴けと。
今、日本全国の工場と工廠は崇宰恭子である政威大将軍の大号令により重慶・ハイヴ攻略に必要な兵器や軍需物資の生産をフル回転を始めている。
吐き出された兵器や軍需物資は海を渡り、上海へと。
「重慶・ハイヴ攻略戦の準備が整うのは早ければ10月上旬でしたね巌谷少佐」
「そうだ。準備が整い次第、即座に作戦開始だな」
「例の物はどうなっています?」
「お前さんの方で設計図と起爆装置を用意したのと、思いの外中国とソビエトの両政府が協力的だったので、予定通りに進んでいる。まあ中国もソ連も、これ以上アメリカのジャイアン化を阻止したいのが本音だな。まあそれに関しては日本帝国政府も同様だが」
巌谷少佐の脳裏に『呉越同舟』の言葉が浮かぶ。
北京政府もソビエト政府にしても、今度の作戦に全面的に協力する意味を理解している。北京政府からすれば重慶・ハイヴを放置すれば、来年の今頃にはBETAが北京に押し寄せて来るのは確実だし、ソビエト政府も西と南からの挟撃を許せば、西シベリア戦線は破綻し、一気に東シベリアに押し込まれてしまう。
それだけは何としてでも阻止したい両政府。
今回の作戦に10個師団20万の派兵を行う統一韓国にしても同様だ。重慶・ハイヴを放置すれば、自国内への【母艦級】の強襲を許しかねない。そうなれば国家滅亡の危機。ただ、作戦全般の主導権が、ハイヴ攻略に必要な戦力を保有する日本帝国軍に主導権を握られているのは不満ではあるが。
「それを聞いて安心しました。重慶・ハイヴが陥落すれば一定量のG元素が手に入りますから、より強力なEMP兵器とガンマ線レーザーの開発も一気に進みます。そうすればオリジナル・ハイヴ攻略も可能になります」
(準備は万全ではないけど、今の重慶・ハイヴはフェイズ2未満のはず。成功する確率は低くないけど・・・)
「辛いか・・・?」
「ッ!」
「お前さんがこの国を戦火から遠ざける為に、戦術機の開発や新兵器に新装備の開発に血眼になっているのは理解しているつもりだ。その反面多くの兵士達を死地に追いやる辛さもお前さんは良く理解している。全くお前は上出来過ぎるぞ。わははははははは!」
巌谷少佐は大笑いしながら武の頭を撫でる。
「まあ気にするなと言う方が無理かもしれないが、皆覚悟を持って戦いに望んでいる。君が気に病めば、逆に皆の覚悟を侮辱するだけだぞ」
「はい・・・」
「まあ重慶・ハイヴ攻略に成功すれば、一度は落ち着くはずだ。そしたらなあ、唯依ちゃんとのお見合いをだな!」
「巌谷少佐。お願いですから、そこから離れて下さい」
「もしかして唯依ちゃんの事は嫌いか?」
「違います。寧ろ好みに近いです」
「だったらだなぁ」
「自分では釣り合いが取れないからです」
「そんな事はないぞ。あっちの方もその気だからな」
武は自分が庶民の小学生で、発明家として多忙を理由に巌谷少佐経由で押し寄せる見合い話しを断っていたが、それもそろそろ限界に近い。
(でもなぁ、見合い相手の中に煌武院悠陽や御剣冥夜が含まれていたのは驚いたな)
それ以外にも月読真耶と月読真那の見合い写真も。
崇宰恭子は政威大将軍に就任早々、武家村の改革を掲げ、向こう3代までの武家間の婚姻を禁じた。
これ以上の血族婚が相付けば、武家間の血が濃くなり過ぎて武家が滅亡しかねない。
それに危機感を抱いた彼女は、先述の婚姻規制を行った。
それ事態は良いとして、その一方で破談してしまった縁談や婚姻が幾つも発生。『ならば!』で元譜代武家で、煌武院家の直系の血の流れを持つ武に集中してしまう。
その上で煌武院家は双子姉妹のカードを切り出す。
『もし宜しければ姉妹丼 (ゲフンゲフン) 両手に花はどうですかな?武殿。これに月読家従姉妹もお付けしますぞ』
これに対抗したのは皇族と宮内庁だ。余計な横槍が入らなければ、武と純夏がくっつきENDだと思っていた。そんな所に、余計な横槍が入り始めたので、鑑家に皇位継承権権を持たせる事た上で、2人を許嫁にしてしまおうと動く。
そんで巌谷少佐は唯依姫が第一夫人なら、武が複数の愛人を持つのもありと裏でほくそ笑む。
(唯依ちゃん、競争相手は多いが頑張れよ)
両拳を握りしめながら瞼に涙を浮かべる。
篁家の家督問題は男子長兄相続の思想が根強い武家村なので、
「・・・重慶・ハイヴ突入隊の中に懲罰部隊送りにされた元武家が多数含まれていますが、帝国軍としてはどうなのでしょう?(全くこの人は…)」
重慶・ハイヴ突入部隊に不安要素が存在している。
現斯衛・帝国軍混成部隊【93式不知火】60機。
元を含めた斯衛軍部隊【82式瑞鶴・改】60機。
帝国陸軍部隊【77式撃震・改】60機。
計180機。
ほぼ全員が戦術機乗り歴10年以上の熟練者で、パイロットとしての能力に武は不安には思っていない。寧ろこ『んなにベテランパイロットを揃えて大丈夫なのか?』と思ってしまう。
一番の不安要素は《元を含めた斯衛軍部隊》だ。
この部隊の衛士60名中48名が元武家保守派で、一度は謀反の容疑で逮捕され、懲罰部隊送りされた経歴を持つ。
「全く問題が無いと言えば嘘になるな。まあ中には謀反に反対していたのも居るが、謀議に参加をしていたのもあって謀反人として逮捕されてしまったのもいる」
日本帝国の法律では武家が謀反を起こした者は、三等親に至るまで謀反人扱いをされ、家族は北海道の僻地か千島列島送りが法律で決まっている。
「・・・・・・・・」
「崇宰恭子殿下が流石に家族まで巻添えはと思い、恩赦か名誉回復目的で逮捕された保守派に二者択一を迫ったらほぼ全員がハイヴ突入を選んだ」
「・・・・・・・・」
「聞こえは言いが、突入の先陣を任せる辺り、突入部隊の主力たる【不知火部隊】の楯になって、名誉ある戦死を要求されているのは確かだな。ああそうか、【瑞鶴・改】の第2大隊の隊長はお前の母方の叔父だったな・・・・」
「はい・・・」
白銀家は徳永家とは付き合いがあるとは言い難いが、年末年始は徳永家の招待で、帝都・京都で過ごす事も。
「まあ大丈夫だろ~。手を挙げて参加した連中は、幽閉生活を余儀なくされている家族の為にも、死ぬ気で特訓の日々を送っているのだから」
幽閉=人質
突入部隊の指揮官は近々中佐に昇進予定の巌谷榮二少佐で現斯衛・帝国軍混成【93式不知火】部隊第1大隊長を兼任しており、副大隊長には斑鳩崇継が少佐として抜擢に。
斯衛軍は斑鳩崇継を少佐として突入部隊の副隊長も兼任させようとしたが、帝国陸軍が『実戦経験が無い者を副隊長に出来るかあー!』と猛反対を受け、当の崇継本人も辞退したのもあって武の叔父・徳永健光少佐が突入部隊副隊長兼任で収まった。
訓練では上級指揮官が相次いで戦死ないし負傷で指揮が取れないで、繰り上げで斑鳩少佐が指揮を取る想定した訓練も行われてはいたが、巌谷少佐を始め部隊の大半が戦術機パイロット歴10年以上のベテラン揃いでは、突入部隊副隊長のゴリ押しは無理で終わる。
「・・・お前さんは国内で留守番だ」
「えっ!?」
「『えっ!?』じゃない。お前さんは斑鳩崇継と裏で結託して重慶・ハイヴ突入部隊に参加しようとしているだろ?」
武はどうしてそれを知っている顔をする。
「く、くくくくく!実は富嶽重工から連絡があってな。斑鳩崇継の機体だけ、複座仕様に変更依頼が斯衛軍から来たと連絡があってな。即座にピン!と来たよ」
「アチャー!」
武は頭を抱えた。そっちの方から巌谷少佐に連絡が来るとは思っていなかったのだ。
今度の作戦では帝国陸軍向け36機は光菱重工が、斯衛軍向けは富嶽重工、河﨑重工がそれぞれ12機を担当している。
光菱重工なら即座バレの可能性は高いが、富嶽重工か河﨑重工なら巌谷少佐や父親にバレないと高を括っていた。
「前にも言ったが、お前さんは何があったら国家の一大事だからな。実機乗りは禁止で、シュミレーターで我慢しろと言ったはずだがな」
「ごめんなさい巌谷少佐・・・」
「そんなに心配か武君?」
「はい・・・」
武からすれば今回のロヴァニエミ・ハイヴ攻略、重慶・ハイヴ攻略は共に1、2年早いと考えていた。
日本帝国軍のハイヴ突入部隊には、一月に渡ってハイヴ内での高速機動戦術をレクチャーはしたし、武から見ても十分に合格水準だった。だがそれでも不安は尽きず、斑鳩崇継と裏で交渉して『彼の機体に便乗させて』と頼んだ。
斑鳩崇継にしてもシュミレーターで見せる戦術機乗りとしての天性の才能とGへの適性の高さから、足手まといにならないと判断して、予てから斑鳩家と懇意が合った富嶽重工に自機の複座への変更依頼を出すに至る。
「だが我々には残された時間は少ない・・・」
「はい・・・」
「フウ・・【母艦級】か。厄介な物を作ったなBETAは」
だからこそ、武を危険な戦地には出したくないのだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《作戦開始3日目》
案の定懸念された通り人類軍はBETAのゲリラ戦に苦しめられていた。数はそんなに多くはないが、普段は休眠状態にして西ユーラシア連合軍側に察知されない様にし、西ユーラシア連合軍が近くを通ると休眠状態を解除。地面の下から突如として表れ、1番近い西ユーラシア大陸連合軍に襲い掛かる戦術だった。
実に効果的でその都度、西ユーラシア大陸連合軍の足が止まる。
重光線級と要塞級こそはいないが、軽光線級の数体が必ず存在する為に、戦術機部隊と戦車隊に必ず損害が出る。
西ドイツ陸軍第7機甲師団所属第1連機甲連隊第2機甲大隊もだ。
「畜生め。これで我が大隊は18両もの《レオパルドⅡ》を失ったぞ」
大隊長は吐き捨てる様に言う。
本来なら作戦3日目にはロヴァニエミ・ハイヴを包囲しなければならないのだが、執拗なまでのゲリラ戦が原因で予定の2/3しか前進出来ないでいた。
既に艦砲射撃の射程距離から遠く離れており、効果的な援護は期待出来ない。
戦術機部隊が光線級属種を見付け次第、手当たり次第に潰して回っているが、旧OSと旧型CPUを搭載していない戦術機では、光線級属種のアンブッシュで損害が続出する。
新OSと新型CPUはレーザー反応があると、機体の方で即座にランダム回避を取り、初撃の直撃を避けようとする。
旧型OSと旧型CPUでは出来ない芸当で、レーザーの初撃を回避出来るかはパイロットの技量次第なのだ。
「やはりBETA共は西ユーラシア大陸連合軍を内陸部に引き込む作戦だった様だな・・・」
海上移動型メガフロート【アラモ】の司令部でアメリカ合衆国軍大西洋総軍司令官ジーン・コニリー大将は、無感動の無表情の顔で面白くなく呟く。
これまでのBETAと言えば物量の一点張りで、戦略や戦術は勿論の事、作戦も無いと思われていたが、大深度を掘削しながら掘り進む【母艦級】の存在で、その評価を根底から見直す必要に迫られていた。
今度の作戦でも西ユーラシア連合軍の先鋒各部隊は、作戦3日目にして30%を超える損耗率を出し、後続の部隊との交代を余儀なくされている。
「ゲリラ戦や待ち伏せ攻撃をしているBETAの中に、小型光線級も多数含まれています。西ユーラシアの機甲部隊と戦術機部隊も苦戦を強いられています・・・」
大西洋総軍参謀長ジャミトフ・ハイマン中将が淡々と経過報告をする。
「それ以外にも西ユーラシア連合軍司令部からは、我が軍の参戦を促す通信文も幾つか・・・・」
「ふん、困っているのなら、困っていると素直に言えないのかね彼らは」
「それでどうなさいますか?」
「援軍は出さない。我が軍はあくまでもアイスランド島とグリーンランド防衛が主任務だ。後方支援は次いでしかない」
「畏まりました」
2人は根っからの保守派でアメリカ第一主義者だ。
ユーラシア大陸をアメリカに寄生するだけの寄生虫として見下し、その見下しを隠そうとしない。
アメリカに厄介事を平気で持ち込みアメリカを利用するだけ利用して、アメリカの若者を自分達の利の為に死なせる事を躊躇わない寄生虫共として見下す。
何故そんな連中の為にアメリカの若者を死なせなければ為らないのだと。
ユーラシア大陸を奪還したければ、自分達の血肉を大量に吐き出して、BETAを自分達の力で駆逐すればいいと。
自力で何とか仕様としている日本帝国の方がまだ増しと考えている節も・・・・・。
「ですが、問題はワシントンDCの方です」
「・・・・・・・・・・・・」
「連邦議会では上院議員のジョアン・レベロ、ホワン・ルイ両議員を中心とした国際協調派の動きがかなり活発になっているとの報告も入っています」
「・・・・・・・・・・・・」
「アメリカ軍内部でも太平洋総軍司令官グリーン・ワイアット大将。ペンタゴン統合作戦本部室長ドワイト・グリーンヒル大将が頻繁に連絡を取り合っているとの事」
「心配ない。大統領が我々の保守派の支持を失う政策を取るはずがないからな。それに我々にはG弾と言う切り札があるのだからな」
「はい」
G弾。
BETA由来の物質にしてBETAの主要エネルギー物質と見られているG元素。
G元素にエネルギー負荷を加えると、その数万倍以上のエネルギーを発生させてしまう物質。 カナダ領アサバスカ湖で数tものG元素を手に入れたアメリカ合衆国政府とアメリカ軍は狂喜乱舞した。G元素の仕組みを解明し、自分達でそのエネルギーを自在に制御出来れば、地球上からのBETAの一掃のみならず、月の奪還も夢ではないと。 アメリカ合衆国政府は一時期閉鎖していたロスアラモス研究所を再開させ、アメリカ中から各種専門家を集めG元素の仕組みと原理の解明に当たらせていた。 だが驚くべき事に、G元素の仕組み原理は一向に解明出来ないのだが、運用事態は核エネルギーよりも使い勝手が良く、僅か1kgのG元素から発生するエネルギー量は軽く1メガt(TNT火薬100万t)に匹敵した。集められた科学者や研究者達はG元素に恐怖すら覚える者も。
何はともあれG元素を利用した新兵器の開発が幾つも持ち上がったのだが、最後の最後に決まったのが、【XG-70戦略航空機動要塞計画】だった。だが【XG-70航空機動要塞開発計画】は予想以上に難航してしまう。
主要機関であるムアコック・レヒテ坑重力機関の開発が上手く行かず、ムアコック・レヒテ坑重力機関から発生する重力多重干渉が原因でテストパイロットが相次いで殉職。
ムアコック・レヒテ坑重力機関から発生する膨大なエネルギー制御にも失敗して、試験機が爆発木っ端微塵に吹き飛ぶんでしまう。
アメリカ政府と軍は【XG-70】開発は時期尚早だったと判断して、無期限凍結に至る。
だが両者共に【XG-70】開発計画は公表しなかった。
むしろ徹底した《箝口令》を引いた。
何故なら試験機には僅か10kgのG元素を搭載していたにも関わらず、爆心地を中心に直径10kmにも渡って重力以上が感知され、演習場の標的物が全て消滅したからだ。
それが原因でG元素を利用した兵器開発は、G元素の仕組みと原理が判明するまで、これも中止ともなった。
戦局もそれ程切羽詰まっていた訳でもなく、未だ時間はあると思われていたのも大きい。
国連を含めた利害関係の表面化は東ドイツとベルリンの陥落から始まる。
アメリカ軍内部ではジーン・コニリー大将、グリーン・ワイアット大将、ドワイト・グリーンヒル大将の3大派閥に分かれてしまう。
思想的に近いのはコニリー大将とワイアット大将なのだが、同属嫌悪が原因で2人の仲が悪く、ワイアット大将は多少柔軟性もあってか、利があれば国際協調派のグリーンヒル大将とも手を組む事もする。
「日本帝国のタケル・シロガネの件はどうなさいますか?」
産軍複合体を中心に武を日本帝国から引き離せないのなら謀殺すべしの意見が主流になりつつある。
「放っといていい。これ以上アメリカに寄生されたら堪らないからな。自分達で何とかしようとしているのなら、タケル・シロガネの好きな様にさせてやれ」
「・・・分かりました」
ハイマン中将にしても、日本帝国政府が24時間体制で、武の警護をしている以上は暗殺の確率はかなり低いとしか言いようがない。下手に実行して失敗するよりは余程増しと言える。一つ間違えれば、動かぬ証拠を握られてしまえば一気に最悪の事態になりかねないだけに。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
フランク・ハイネマン教授はノークロック社の自分専用のオフィス・ルームで失望の極みに合った。
理由は簡単。日本帝国の最新の軍事技術をギミック満載した【YF-23BLACKWIDOWⅡ】が次期主力第3世代機としての採用が見送られたから。
ハイネマン教授は満を持してロックウィード・マーディン社が開発中の【 YF-22Aラプター】とのコンペティションに【YF-23BLACKWIDOWⅡ】をぶつけた。
結果は【YF-23BLACKWIDOWⅡ】の完勝に終わる。
ロックウィード・マーディン社も到底【YF-22Aラプター】に万が一にも勝ち目なしと諦めていた。
だが蓋を開けて見れば、アメリカ軍が正式に次期主力第3世代機として採用したのは完敗した筈の【YF-22Aラプター】の方だ。
当然の事ながらノークロック社は激怒しアメリカ政府と国防省に抗議をしたが、『【YF-23BLACKWIDOWⅡ】は戦術機にしてはあまりにも過剰装備過ぎてランニングコストが悪過ぎる。その点【YF-22Aラプター】はランニングコストが数段優れ、量産性、整備性にも優れ、アメリカの軍事ドクトリンにマッチした最優秀機』として、ノークロック社の抗議を一蹴した。
実のところコンペティションで完勝した【YF-23BLACKWIDOWⅡ】が不採用になった理由は、G弾の開発に目処が立ったので、ハイヴ攻略を前提にした戦術機は最早不要との判断と、日本帝国の最新の軍事技術の比率が高くて国産品推進法『バイアメリカン法』に抵触し、自分達の今の技術ではデッドコピーを作るのにも時間が掛かるからだ。
『なんてこった。液晶画面技術、半導体チップの製造技術はアメリカの十年以上先を行き、水素系技術は二十年以上も先を行っているぞ・・・』
ハイネマン教授が大きく進化させ、日本帝国から持ち帰った【YF-23BLACKWIDOWⅡ】に改名させた戦術機にアメリカの技術者達は絶句するしかなかった。
『まるでZERO FIGHTER Shockの再来だ』
多少の大袈裟と誇張もあるが、そう表現が用いられた。
液晶画面と半導体チップの技術各差は十年開きがあると追いつくのは至難の業とされ、水素系技術はアメリカでは基礎研究の段階に過ぎない。
武の発案と設計図の元、光菱電気と光菱重工が開発した最新型レーダー【
これが可能になったのは武が開発した《高純度石英粉末》があればだ。
石英粉末は
武の資源問題の最終目標は海底資源の採掘及び水と海水から高純度な《水素》《マグネシウム》《ウラン》を抽出し、国内で調達可能な《マグマ》と海底の《泥》を使っての人工島の建設他、希少鉱物資源の抽出だ。武はそう遠くない内に南半球の資源輸出国からの資源輸入は先細りになると見込んでいるので、表向きは人工島の建設としながらも、それを名目にして資源問題も解決仕様と考える。
人工島には食料プラントの建設他、資源備蓄プラント、兵器製造工場の視野に入れており、倉庫とそこで働く人達の住まいは竹筋コンクリートか段ボールハウスかを考えていた。
アメリカ政府と産軍複合体としては今まで周回遅れと見下していた相手が、実は自分よりも数週先を走っていた現実を見てショックを受けたとも言える。
『これらを考えて発明したタケル・シロガネは本物の天才だ』
『だけど9歳の子供がこんなハイ・テクノロジーを考え付くものか?』
『考えて作ったから存在しているのだろう、違うか?』
完全国産化に力をいれるにしても、その間は日本帝国に何かと依存するしかなく、ライセンス・パテント料千数百億ステイツドルの流失が懸念され、国防と経済の両面からアメリカの国益に反すると見做されたのと、ハイネマン教授が日本帝国に近い立場も危険視された。
【YF-23BLACKWIDOWⅡ】は大幅に性能を強化された日本帝国の【93式不知火】の兄弟機とは言わないまでも、従兄弟と言っても差し支えない機体に仕上がりもした。
アメリカ政府と国防省が難癖を付けたランニングコストもそんなに悪くはなく、武曰く『理想的な第3.5世代機にして次期主力戦術機のテストヘッド機に仕上がった戦術機』と高評価を与えた。
武が【YF-23BLACKWIDOWⅡ】が不採用になったとの悲報が入った時思わず『嘘だあー!!』と自宅で叫んだと言う。
【YF-23BLACKWIDOWⅡ】は勝負に完勝して、政治に完敗した機体になってしまう運命なのだろう。
そんな失意のドン底に逢ったハイネマン教授の元に1人の人物が訪れた。
訪れた人物は元西ドイツ陸軍現国連第3軍所属のクラウス・ハルトウィック大佐。
「私に何か用ですかなハルトウィック大佐・・・」
「貴方を私が進める《プロミネンス計画》に招聘したくお伺いしたのです・・・」
「《プロミネンス計画》?」
聞いた事がない計画に首を傾げるハイネマン教授。
「はい、今アラスカの国連第3軍ユーコン基地で《先進戦術機開発計画》、通称《プロミネンス計画》を進めています。その計画に戦術機開発の第一人者であるフランク・ハイネマン教授に技術顧問として参加して欲しいのです」
国連第3軍ユーコン基地はユーコン基地を中心に南北に240kmにも及ぶ広大な敷地面積を持つ。
ユーコン基地それ自体も要塞化されており、基地施設内には十万人もの元欧州系難民が住み基地関係の仕事に就く。
アラスカ産の石油・天然ガス発電所、石油・天然ガス精製所、燃料コンビナート郡、医療施設、学校等、映画館、遊園地、教会寺院等が完備される予定。
富士教導団や北海道を除けば、戦術機の演習場に事を欠く日本帝国の現状からすれば羨ましい限りと言っていい。
まあアメリカの保守層からは嫌味や皮肉の対象扱いだが。
「確か私が知る限りでは、国連は《オルタネイティヴ計画》を進めていると聞いていますが?」
「私はもう既に国連の《オルタネイティヴ計画》を見限っています」
「理由をお伺いしても宜しいですか?」
「人類とBETAの間に交渉は成立し得ないからです。もし本当に交渉が可能なら、地球はここまで酷い状況にはなっていないからです」
国連主導で進められている《オルタネイティヴ計画》は異星起源種たるBETAとの正体を調べるのと、コミュニケーションが可能かどうかを探る計画だ。
だが残念な事に《オルタネイティヴ計画》は第3段階まで進められながらも、一度も上手く行った試しはない。
ただ《オルタネイティヴⅢ》では、BETAには何か信号な用なものが存在し、その信号でやり取りをし、人類を生物とは見なしていないばかりか、自然災害として見なしている可能性が高いだけに留まった。
国連では《オルタネイティヴⅢ》ではこれ以上の成果は期待出来ないとし、新たに《オルタネイティヴⅣ》を立ち上げる動きが出始めている。
この動きに1番反対をしているのが《オルタネイティヴⅢ計画》の推進して来たソビエト政府なのだ。
『スワラージ作戦で一定の成果を出した以上、《オルタネイティヴⅢ計画》の打ち切りは性急である!』
として国連に抗議をし《オルタネイティヴⅢ》の計画の続行を訴えている。
ソビエト政府の言った通り1992年夏に行われた
《
だが作戦は無惨な失敗を遂げた。戦術機に乗せられハイヴの最深部に到達した少女達で生還したのは僅か数人だけ。
最深部で師団規模のBETAの襲撃を受けてしまった。
それに比して判明したのはBETAには人間的思考回路は存在していないのと、人類を自然災害か何か程度にしか見ていない程度だった。
国連上層部は成果に比して得るものが少なく、自分達の娘や孫娘と同じ年頃の少女を敢えて犠牲にするソビエトの計画に嫌悪感を持ってしまったのも大きい。
そしてこれがBETAが人類に興味を持つきっかけとなり後の損害度外視の日本帝国侵攻へと繋がる。
ソビエト政府極秘計画《
第二次世界大戦以降ナチス・ドイツの超能力開発計画の影響を受けていたソビエトでは、超能力研究開発が国家計画として進められていたが、中々思い通りには行かなかった。
この問題が《
日本帝国の皇族や仏教、神道の巫女には、超能力的因子を強く持つ可能性が高いと言う情報だった。
ソビエト政府はこの情報に飛び付いた。そして汎ゆる手段を嵩じてでも皇族や巫女の遺伝子情報を集めよと、在日ソビエト大使館へと命令が出る。
『時間は掛かる・・・』
そう見ていたソビエト政府だが、思いの外に様々な遺伝子情報が短期間で集まり、ソビエト政府の手に入る。
そこから先はソビエト政府が考えていた以上に、《
だがここで国連とソビエトに重大な手落ちが起きる。
ボパール・ハイヴから生還したのは僅か数人・・・・
それ以外は全員死亡したと見做した事だ。
実は十名程がBETAの捕虜となり、ボパール・ハイヴの深遠でエロス飼育(R-18禁推奨)されていた。
遺伝子調査は徹底して行われて、捕虜とされた少女達が持つ特殊能力に興味を持ち、東アジア系の遺伝子が少女達が持つ特殊能力を与えているのに気付く。
この遺伝子情報解析の結果がBETAの司令塔《重頭脳級》に西進の一時中止と東進最優先を決意させる。
ーーーーーー閑話休題ーーーーーー
「見限るのは早すぎませんかな、ハルトウィック大佐?」
「国連のオルタネイティヴ計画は最早失敗です。私が進める《プロミネンス計画》こそが、ハイヴ攻略の最適解かと」
「根拠はあるのですかな?」
「根拠は〘重慶の奇跡〙です。OSとCPUを新型に変える事で、戦術機の性能を一世代分もアップデートさせる。あれは見事としか言いようがありません。我々は未だ第一世代機の性能を最大限に引き出せていない証拠になりました。アレを世界規模で実現させたいのです」
「だったら私の所ではなく、タケル・シロガネを《プロミネンス計画》に招聘すべきではないかね?」
フランク・ハイネマン教授は《YF-23BLACKWIDOWⅡ》が今回のコンペティションに落ちた事で、自分の時代は終わったと実感していた。このままひっそりと引退をするつもりでいたのだ。
(タケル・シロガネには技術的遺産は託した。ミラ母子も日本で順調に暮らしている。だったらこのまま引退するのも悪くはない)
「それに付いては私も悩みましたが、彼は未だ十歳にも満たない子供ですので、私達大人の都合で親元から引き離すのはどうかと。それに日本帝国が彼の出国を認めるとは思えませんので」
「それもそうですな・・・」
武本人は【不知火95型】【不知火97型】【高等練習機吹雪】。吹雪の姉妹機にして実機型【雪風】そしてTank擬きの自走砲【玄武】の開発に取り組み始めている。
斯衛軍技術開発第一部部長の篁裕唯少佐と、秘書兼助手のミラブリジッス女史も参加している。
【不知火シリーズ】の5機種は光菱重工、富嶽重工、河﨑重工が開発を担当し、【玄武】の方は遠田技研が開発を担当する事が決まっていた。
【玄武】の開発を担当する事になった遠田技研工業は武に対して色々と言いたそうな顔をしたが、まさか大の大人達が9歳の子供に対して目くじらを立てるのは流石に器量狭いと世間に思われるのが嫌で、懸命に堪えた。
「それに今度の結果を踏まえて、日本帝国は余計に彼と彼が今後開発するであろう新技術の数々を国外に出そうとはしなくなるでしょう」
「だから私ですか?」
「ええその通りです。今すぐに返事とは申しません。ですが出来るだけ早く、返答を頂けたらと思います」
クラウス・ハルトウィック大佐はそう言うと、ハイネマン教授の部屋を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
西ユーラシア大陸連合軍は悪戦苦闘をしながらも、H8ロヴァニエミ・ハイヴに到着し取り囲む。
この時点で西ユーラシア大陸連合軍の損耗率は15%に達している。
本来ならこの時点で戦力の再編成に取り掛からないといけないのだが、【母艦級】への恐怖心から、撤退も後退も出来ない。もしここで後退や撤退をすれば、欧州最後の砦イギリス本土とアイルランド島を失いかねなかった。もしそうなれば欧州奪還は未来永劫不可能になると。
「ファイヤー!!!」
この一声の命令の元西ユーラシア大陸連合軍の全ての重砲と多連装ロケット砲が火を噴く。
低軌道衛星からは低軌道爆撃が始まり、重金属を満載したコンテナが装甲駆逐艦HSSTから分離し、大気圏内に突入して行く。
BETAもこれまで温存していた重光線級が数百のレーザーを解き放つ。
戦艦部隊の艦砲射撃が無い分、重金属雲の展開が遅い。
西ユーラシア大陸連合軍将兵はまだるっこしい差を感じながら、重金属雲の密度が増すのを待つ。
大気圏突入コンテナ郡がロヴァニエミ・ハイヴの頭上に姿を現すと、BETAの光線級のレーザー攻撃が大気圏突入コンテナに向けられ、レーザーが突入コンテナを貫く。
だが大気圏突入コンテナが撃墜されるのは作戦当初の計画通りだった。
コンテナは分解すると大量の重金属をばら撒きロヴァニエミ・ハイヴ上空を灰色に覆い尽くす。
十分な密度の重金属雲が展開を確認した西ユーラシア大陸連合軍は、火砲の全てを徹甲弾、榴弾に切り替え、機甲部隊と戦術機部隊に前進展開を命じる。
この時点で西ユーラシア大陸連合軍とアメリカ軍との間に齟齬が生じていた。
西ユーラシア大陸連合軍はアメリカ軍の新型爆弾に頼らなくても、ロヴァニエミ・ハイヴを落とす気でいたが、アメリカ軍の方はどうかと言うと、戦局を問わずロヴァニエミ・ハイヴに新型爆弾【G弾】を使用する気満々。
「どうやら前進を開始始めましたか・・・」
ジャミトフ・ハイマン中将は哀れなと思った。戦局を問わず新型爆弾【G弾】をロヴァニエミ・ハイヴにアメリカが使う気でいるとは知らずにと。
「まあ事前警告はしてやれ。流石に一度は撤退する時間的猶予は与えてやろう」
「・・・事前警告は何時ごろなさいますか」
「投下開始1時間前だ。BETAを十分に引きつけ、数をある程度減らした上でだ・・・まあまだ早かろう」
その頃帝都・京都では政威大将軍の崇宰恭子が、西ユーラシア大陸連合軍参加国から、懇願に近い陳情を受けていた。
「つまり大使の皆様方は『重慶・ハイヴ攻略を中止し、ハイヴ突入部隊をロヴァニエミ・ハイヴ攻略に回せ』と申したいのですね・・・・・」
「正しくその通りです政威大将軍殿下」
大使の1人が恭しく頭を下げる。
「理由をお聞かせ願えますか?」
恭子の近侍や側近は『受ける!』なと首を左右に振る。
年内中に重慶・ハイヴ攻略しなければ、BETAが【母艦級】を使い、帝国本土直接侵攻の危険度が増すからだ。
彼女もそれは解っている。だが立場上大使達の話しは聞かなければならない。
「ロヴァニエミ・ハイヴ攻略には欧州だけではなく、西ユーラシア大陸の命運が掛かっているからです」
西ユーラシア大陸連合にしても誤算が合った。
まさかアメリカがあそこまで知らぬ存ぜぬを決め込んでH8ロヴァニエミ・ハイヴ攻略作戦に、不参加を決め込むとは思っていなかった。
そりゃあアメリカの現政権が保守派の後押しを受けてのモンロー主義政権なのは承知だったが、【母艦級】の脅威が存在しているのにそこまでして不干渉を決め込むとは思ってもいなかった。
そもそもモンロー主義とはアメリカ合衆国第5代大統領モンロー氏が提唱したドクトリンで、『アメリカ合衆国は欧州の政治情勢に干渉しないが、欧州諸国も南北アメリカ大陸に干渉するな』の声明を出した事から始まる。
アメリカが第一次、第二次と二つの世界大戦に沿う簡単に参戦をしなかった理由の一つだ。
西ユーラシア大陸連合諸国はアメリカの直接参加を促す為に、欧州・西ロシア諸国への政治的干渉を認めた。政治的干渉と言う利権をアメリカに与えれば、モンロー主義を引っ込めてロヴァニエミ・ハイヴ攻略『オーディン作戦』に直接参加するだろうと。
だが彼らの目算は完璧に外れた。アメリカ合衆国政府はモンロー主義を拡大解釈はしたが、あいも変わらず後方支援のみに徹して動こうとしない。
西ユーラシア大陸連合軍に血を流せるだけ流させて、自分達だけ新型爆弾を使ってのハイヴ攻略成功の果実を手に入れる気満々なのだ。
それでは堪らぬと西ユーラシア大陸連合諸国は日本帝国に泣き付いて来たと言う訳。
要約すると重慶・ハイヴ攻略を後回しにして、ロヴァニエミ・ハイヴ攻略を最優先しろと。
「お断りを致します」
恭子は政威大将軍として一刀両断をする。
「理由をお聞かせ願えますか?」
「もう既に重慶・ハイヴ攻略の準備は最終段階に入り、中止は出来ない段階に入っているからです」
そう、重慶・ハイヴ攻略は待った無しだった。
【母艦級】の存在が無ければ、重慶・ハイヴ攻略を早期実施する必要性は無かったかもしれないが、【母艦級】の存在が重慶・ハイヴ攻略を後押しする。
何よりも【母艦級】の全貌がはっきりとしないのが問題。
予想では多数の【要塞級】と【重光線級】を運搬する輸送能力を持つ事と、トンネルの大きさから割り出された大きさは全長1800mから2000m、全高全幅180m〜200mと推定された。
帝国政府と帝国軍は【母艦級】の推定された巨体に慄然すると同時に開いた口が塞がらなかった。
『冗談ではないぞオイ・・・』
『幾ら何でも大き過ぎるだろ』
『これでは移動する地下要塞じゃないか・・・』
重慶市から長崎県までの距離は1700km程。BETAがその気になれば、日本帝国本土侵攻は可能な距離との判断を帝国軍参謀本部は結論を出した。
最早こうなって来ると、国家的リソースに余裕がある今しか重慶・ハイヴ攻略するしかないとの判断に傾く。
帝国本土防衛準備は手に付けたばかり、国家的リソースも下手に時間を掛ければ、ジリ貧になり、BETAの東進それ事態の阻止も難しくなって来ると。
「そこを何とかなりませんか・・・?」
西ユーラシア大陸連合諸国も必死だった。何時イギリス本土にBETAのロヴァニエミ・ハイヴ、リヨン・ハイヴからの大深度地下侵攻が始まるのか分からない以上、少なくともどちらか一方は潰して置きたいのだ。だからこそアメリカの欧州諸国情勢への干渉を敢えて認めて来た。
西ユーラシア大陸連合諸国が援軍として求めているのは、今回の重慶・ハイヴの攻略部隊の主役とも言うべき部隊突入部隊だ。
「今からではそう多くは送れないでしょうが、せめて【Type93・Shiranui】部隊だけでも、軌道降下でロヴァニエミへと送って欲しいのです」
「・・・申し訳ありませんが、大使の皆様方の要望は聞くことは出来ません・・・。お引き取りを願います」
生産ラインがようやく整ったばかりの3つの工場に無理を百も承知で造らせた60機もの【93式不知火】は、日本帝国軍は虎の子の切り札に等しい。それを重慶・ハイヴ攻略ではなくロヴァニエミ・ハイヴ攻略に使えは、とてもではないが日本帝国政府としては訊けるものではなかった。
政威大将軍崇宰恭子はそれだけ言うと、席を立ち会見部屋から立ち去った。
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
総攻撃開始から数時間後、ある通信が西ユーラシア大陸連合軍に激震が走る。
『ロヴァニエミ・ハイヴはフェイズ3であらず。繰り返すロヴァニエミ・ハイヴはフェイズ3であらず。ロヴァニエミ・ハイヴはフェイズ5と要認』
この時点で西ユーラシア大陸連合軍の損耗率は30%に達していた・・・・・。