あと主人公のキャラ定まんない。やっぱこう、ブランクっていうか……もっとはっちゃけるべきだというか……色々破壊すべきというか……いっそのこと爆発させるか……。
翌日の晴れた海鳴市、とある通り。この日は休日により、通り沿いにある店でショッピングや食事を楽しむために人や車が多かった。店もそんな客を相手に商売に精を出し、活気に溢れていた。その光景はごくありふれた日常の一コマにして、平和を絵に描いたかのようだろう。
「おーい、青い石ころ~」
そんな中で一人、道路沿いに植えられた青々とした街路樹の下や排水溝をのぞき込んだりしている平和とは程遠い怪しさ満点の男が一人。無論、楽しそうに歩いていた人々はそんな輩に関わりたくなるわけもなく、一瞥してから素通りしていく。中には「ママー、あれ何してるのー?」「私らには救えない者よ」という親子の会話もあったり。
「いーしこーろやーい」
周りの視線など何のその、青年はせっせと木の根辺りに屈みこんで声を上げ続けていた。
「うーん、見つからんねぇ」
『マスター。そもそも小動物のように声をかけたとて返事があるわけがありません、石に』
「なんかウチ、探し物してると声かけたくなったりするんよ。しない?」
『私はデバイスです。その感性は理解しかねます』
「あ、そう」
まぁ言わずもがな、そんな奇行を繰り返しているのは昨晩花の化け物と死闘を繰り広げた普通の大学生とは言いにくい男、我ら(?)が宮下コウジであるのだが。屈んでいた態勢から立ち上がって額の汗を拭いつつ左腕に巻かれた待機状態の相棒サザンクロスに苦言を申され、コウジは顔文字のようにしょぼんとした表情になった。
そしてポケットから取り出したのは、黒い巾着袋。その中を覗き込んでみれば、そこには昨晩化け物から勝ち取った、澄んだ青が光る小さな菱形の宝石。
「なークロスー、なんかこう一発ドーン! みたいな感じで石見っけらんね?」
『Sorry.そのような魔法は私にはプログラムされておりません。精々魔力反応に引っかかるか否かを確認するしかできません』
「オゥ、シット」
クロスの返答に、コウジはげんなりした。
コウジが探している石というのは無論、巾着袋に入った石のことに他ならない。が、そもそも何故ゆえにコウジが石を集めようとしているのか、切っ掛けは、昨晩に遡る。
――――――
―――
――
「んー……」
公園での化け物との死闘の末に手に入れた青い石を、自宅であるアパートの8帖の一室に置かれたベッドに寝そべりながら眼前にかざすコウジ。LEDの照明に照らされ、まるで石そのものが輝いているかのように光を反射する。手のひらに収まる程の大きさしかない石だが、その光は妖しく、同時に美しかった。
「単なる綺麗な宝石に見えなくもないけど……」
一人呟くコウジだが、その言葉は先ほどの一件で否定されている。巨大な花による襲撃。その花弁の中から出てきたこの石。そして石から漏れ出ている恐ろしい程の魔力。こんなものがこの世に存在していることが恐ろしいとさえ思わせる何かが、この石にはあった。
そしてそれ以上に気になる物がある。
「これ、数字の13だよなー」
石の中央に彫られたⅩⅢという文字は、誰から見ても明らかに数字。そしてここに数字が彫られている意味。
「……どう考えても、この石がゴ〇ゴ13には見えねえな」
『そんな造形が濃すぎる石は誰も拾いたくないと思われます。普通に考えて石は13個か、或いはそれ以上存在していることを示唆しているのでは?』
この数字が石のナンバーならば、ナンバー1から12まであるということになる。しかもクロスがあたりをつけている通り、さらに多い可能性もあった。
公園をめちゃくちゃにした、人知を超えた化け物を生み出した石が、他にも10個以上存在している。なんとも末恐ろしい話である。
「放置するにゃ危険だけど……」
『個人が関わるには規模が大きいと思われます。再び暴走すれば何が起きるか測りかねます』
「だーよなー。某7個集めたら願いが叶う玉よりも危険な匂いがプンプンするぜー」
枕元に置かれた待機形態のクロスによる分析を聞き、コウジは顔をしかめた。そうしてしばし、腕を組みつつ「うーん」とうなり続けること3分。
「……よし!」
やがて、パンと膝を叩き軽快な音を鳴らした。そして出した結論は、
「とりあえず放置で」
静観することにした。
『よろしいのですか? 放置すれば先ほどのような被害が広がる恐れがあります』
「いやまぁぶっちゃけめんどい。ウチ、面白いことは好きだけど面倒ごとに巻き込まれんのはごめんだわ」
『面倒ごとに巻き込むのはいつもマスターなのでは?』
「やかましわい。否定しねぇけど」
あんな非現実的な怪物を発生させているであろうこの青い石は、明らかな危険物。こんな物が自然発生したとは到底考えられない。
となると、この石の持ち主、もとい管理している存在がいる筈。それも個人ではなく、恐らく組織的な何か。組織でなくとも、こんな危険な石に関わる人間はまともな感性を持っているとも思いにくい。それがコウジの見解だった。
「まぁ、またあんなバケモン現れたら対応するっきゃねぇけどなー。相手できんの多分ウチくらいだし」
『なるほど、危険には自ら飛び込まずに座して待つ、ということですか』
「こんなあぶなっかしいもん、あえて集めてやる義理もねぇし、それする暇あるならうどん食ってる方がずっと有意義だわ」
面白おかしいことをしでかすのは好きだが、だからといって正義の味方みたく命を投げ出すような真似だけはしたくはない。それでも、何の罪のない一般人が危険に晒される可能性もあるため、石や化け物を見かけたら回収、対処するつもりではいるが。
『よい判断かと思います。ただ……』
「ただ?」
そんなことを考えていたコウジであったが、
『いえ、もし町中であのような怪物が現れたとなると、マスターのご友人だけでなく、行きつけのうどん屋も危機に晒される可能性もあるかもと』
「よし、幸い明日は必修科目の講義はないし、バケモンが出てきた公園を中心に半径2キロ範囲を中心に回って調べてみよう。建物が多い分調べるには根気がいるが、まずは茂みや路地裏をメインに、その都度知り合いがいれば目撃情報がないか聞いてみるか。クロスは微弱な魔力を放出してレーダーみたく探索してくれ。恐らく反応がある筈だ」
『
クロスに指摘されるやいなやテーブルに町の地図を広げ、テキパキと赤ペンで図を描きながらクロスと明日の予定を話し合う
全ては、彼の友人を危険から守るため…………もとい、うどん屋を守るため。
―――
――――――
―――――――――
そんなこんなで、動機はまぁまぁ不純ではあるのだが、それでもコウジなりに放置できない事態であるとは理解しているため、こうして意気揚々と町の中を歩き回り、時には茂み、排水溝といった目立たない場所や、路地裏、うどん屋、木の上、植木鉢の裏、花壇、うどん屋、車の下などをくまなく探して回った。
その結果。
「いや~まいったね。全っ然、見つかんねえわ」
進展はゼロ。元より探しているのは掌に収まる程の小さな石であり、広い海鳴の町を駆けずり回って見つけるのはなかなかに難しい物。素行の悪い不良よろしく、歩道に設けられたベンチにドッカリと足を広げて座り込んだ。道行く人々はそんなコウジを不振な目で見つめながら通り過ぎていく。
『魔力反応なし。近辺には存在していないようです』
「まぁそりゃ簡単に見つかんねえとは思っちゃいたけどなー」
クロスの報告を聞き流しながら自販機で購入したドリンクを喉に流し込んで水分補給するコウジ。因みに口にしているのは冷たい『特製カツオ出汁』である。水分補給の定義が問われる。
『昨晩のあの怪物ですが、石から出る魔力によって暴走を起こしていたのでしょう。それならば普段は魔力の波長は弱く、見つかりにくいのも致し方ありません』
「こうなったらうどん出汁の違いを嗅ぎ分けることができるウチ自慢の嗅覚で探し出すしか」
『マスター、魔力はうどん出汁とは違います』
「いやでもウチ、カツオ出汁とかあご出汁とかの香り嗅ぎ分けれるし」
『何をもってして否定系から入ってその特技の詳細を語ったのか理解しかねます』
高性能デバイスであるクロスだとしても、魔力探知にも限界がある。片や探知できないわけではないにしても、嗅覚以外はクロス程秀でているわけではないコウジ。元々目当ての物は掌に収まるサイズに小さいというのもあり、八方ふさがりといった状態だった。
『ともかく如何されましょう? 手がかりもなく闇雲に探し歩くというのも非効率だと判断し、他の方法を模索するのを提案しますが』
「……んー……」
腕を組み、コウジは思案する。クロスの言い分は理解できる、というより事実であり、これ以上歩き回るのは体力を浪費する以外にない。といっても、有力な手掛かりもない現状ではそれ以外に方法もない。
「……ま、一旦休憩挟むか。いい加減疲れたし、考えるのは後。うどん食いに行こっと」
よっと、とベンチが立ち上がり、伸びをするコウジ。何はともあれ、時間的にもそろそろ昼時。栄養を摂ってからでも遅くはない筈とコウジは考えた。
「こっからだと、えーと『たけもと』が近いか。うし、ゴートゥーうどん」
『マスター。マスターが食事中の間も魔力探知は続けますか?』
「いやいいよ。こんだけ探しても見つかんなかったし、クロスも休んでなって」
『よろしいので?』
「だってこんなタイミングで都合よく反応あったらそれこそなんてご都合主義なんだよって話じゃんガハハ」
歩きながらそう言いつつ、目的地であるうどん屋の年季の入ったスライド式の扉に手をかけた。
ガララ
「大将やってる?」
「へいらっしゃい!」
キィィィィィィン
『マスター、強い魔力反応あり。ここから近い距離です』
「大将また来るわ」
「へいいってらっしゃい!」
ガララピシャッ
「ファッ〇ンッ」
『マスター、口が悪いです』
「昨日あったやん……昨日だけでええやん、フラグ回収とかそういうの……!!」
扉を開けて店の店主と10秒も満たない不思議なやり取りの後に扉を閉めたコウジは涙を滝のように流しながら店を背にして何かを振り払うように駆け出した。
「クロス、場所は?」
『距離50m先、海鳴自然公園です』
「オッケー、完全無欠にぶちのめす……ッ!」
コウジの中に、ようやく見つけたという安堵はない。あるのは、人に危害を及ぼす危険な何かによる被害が広がる前に対処しなければいけないという焦燥。一人で対処できる相手なのかという不安。空腹だというのに目当てのうどんを食い損ねたという激しい怒りだった。
因みに感情を数値化すると1:1:8という割合である。
怒りに顔を歪ませながら(あと若干涙目)コウジはひた走る。クロスの最短ルート案内の下、目的地の自然公園の敷地へと駆け込むや否や、コウジの肌に纏わりつくような異様な気配。
昨晩と同じ感覚。コウジはいつでもクロスを展開できるよう意識しながら、気配の下へ。場所は、自然公園の中にある半径4m程の円形の広場。普段であれば幾つも設けられたベンチで公園の利用者が休憩をしたりと、石畳が敷き詰められた憩いの場であるはずの広場なのだが。
「ほげー。こりゃまたでっけぇな」
そんな広場の中心において、憩いの場というには似つかわしくない存在が鎮座している。
その見た目は、虫。それも、他の虫をその鋭い両腕の鎌で捕え、捕食する習性を持つ有名な虫、カマキリ。子供から大人まで、昆虫採集する際にその名が挙がるほどにメジャーな存在。
そんな存在が、5m程の大きさをもって横に長い顔に付いた丸い目をギョロつかせているとなると、並の人間ならば恐怖しない筈もない。しかも、威嚇するように両腕を高く振り上げ、内側の鋸めいた刃を見せつけるその姿は、まさしく人間とカマキリの立場の逆転。人間が捕獲され、食される側に立たされた以外にない。
「……ガキの頃によく見てきた虫もここまでデケェと、やっぱイメージ変わるなぁ。昔はかっこいいと思っていた虫がめっちゃキモく見えるわ」
『虫と言えば、私の中にマスターがダンゴムシのダンゴ部分に目を付けた結果、食中毒を起こしたというメモリーが存在しております』
「オメーなんちゅーもん記憶してんだこの野郎」
『っマスター、来ます。戦闘準備を!』
「いや戦闘準備も大事だけど今はオメーの記憶ん中にあるウチの黒歴史をだな」
並の人間の範疇に収まっていないどころかいい感じにぶっ壊れているコウジが己の少年時代のこっ恥ずかしい記憶について問いただそうとする間に、カマキリが動き出す。6本の細長い足を動かし一気にコウジへ接近、鋭い鎌の切っ先をコウジへ向け、殺意のこもった一撃でコウジを切り裂かんと振り下ろした。それはまさしく、死神の鎌。
「チッ、サザンクロス、セットアップ」
『Standby Ready.Set UP』
当たれば一瞬のうちに血の海に沈むであろう致死の一撃に焦ることなくコウジは舌打ち交じりにクロスに告げる。了承したクロスの音声の後、発光、コンマ一秒にも満たない時間、服が代わり、そして蒼い鋼の巨体となったクロスの項部分のコックピットに搭乗したコウジは、クロスの左腕を掲げた。
瞬間、衝撃。周辺の砂、木の葉が空気と共に吹き飛ぶ。
凄まじい衝撃を伴った鎌の一振りは、コウジをひき肉に変えることはなかった。カマキリの鎌の切っ先を掴む形で止めたのは、クロスの強靭な腕。クロスの足元にはまるで凹むかのように地面が砕かれており、その一撃の威力を物語っている。鎌を引いて逃れようとするカマキリだったが、クロスの怪力から逃れることはできなかった。
そしてそれで終わる筈もなく、反撃のためにクロスの空いた右の拳に魔力を貯めていくコウジは、
「とりあえず、まずは一発ッ!!」
『Buster Smash』
岩をも砕く拳を、がら空きになっているカマキリの上半身と下半身の境目に叩きつけた。魔力の塊と腰の捻りによる反動が頑強な拳に乗せられたその一撃。そんな物をモロに受けた腹と細い胴体は両断され、体液をまき散らした。その一撃は衝撃波となり、対角線上にあった広場の一角とベンチの一つを砕き、土煙が上がる。
「……今のでやったと思いたいところだけども」
ビクビクと痙攣する上半身と下半身を見て、願うように一人ごちるコウジ。普通の生命体ならば、即死級の一撃。身体を両断されて生き延びているとは思えないが……。
『マスター、まだ生命反応があります』
「だーよねー」
クロスの声と共に、痙攣していた下半身から勢いよく飛び出す黒い触手。それが上半身の断面にくっついたかと思うと、引き寄せる形で下半身へ。勢いよく合体し、さらには両断した痕すらも消えてなくなっていく。まるで逆再生していくかのように戻っていくそれは、生理的嫌悪を催す異様な光景としか言いようがない。
そもそも、昨晩の花の怪物という例がある。再生力が尋常ではないのは予想できていたことであり、すぐに決着がつくとはコウジとて思っていなかった。
そしてカマキリもただ殴られてばかりではないとばかりに、長い鎌を再び振るって襲い掛かる。
『Hard Protection』
即座にクロスが反応。コウジを守るようにして両腕に備えられた盾を掲げた。刹那、鎌が盾にぶつかり、甲高い音と共に火花が散る。これもまた一撃もらえば致命傷になりうるが、魔力防壁と鋼鉄の盾による防御を前に弾かれるしかない。
それでも尚、鎌による攻撃は止まない。一撃一撃、全てが重い刃としてコウジを切り裂かんと嵐のように襲い掛かり、それら全てがクロスの両腕による防御壁によって阻まれる。
「しつこいな……」
然して焦る様子もなく、そう一人ごちるコウジ。今のところはノーダメージでも、このままではジリ貧なのは明らか。
「クロス、弱点の分析はまだか?」
『No problem.たった今、分析が完了しました』
「流石仕事が早い。どこ狙えばいい?」
攻撃を防いでいる間にもやることはきっちりやる相棒を称賛すると、コウジのゴーグルに分析結果が送信され、映像として映し出される。掲げた両腕の盾の隙間から見えるカマキリに電子音と共に示される幾つかの数字、文字と共に表示されたのは、赤い円。その円の中心にあるのは、
「腹か」
カマキリの下半身、もとい腹部。そこから強い魔力が出ていることが映像から読み取れた。即ち、狙うべき弱点がそこにある。
「なるほど、確かに腹は柔らかそうだ」
いかにもな弱点に納得するコウジ。尚この間にも鎌による連撃は続いており、いかに頑丈といえども徐々にコウジの魔力も削れていく。
それでもコウジは焦らない。死への恐怖がないわけではない。寧ろ死にたくないのは人として当たり前だ。
だがコウジは、そこらの人間と決定的に違う点がある。奇行でもなく、感性でもなく、うどんに対する執着の強さでもない。
「今ッ!」
鎌を振り上げる一瞬の隙、コウジの目が鋭く光ったかと思うと、防御を解いて突進。カマキリの細い胴体に組み付く。突然の急接近にカマキリは対応できず、しかも鎌の死角でもある己の懐に潜り込まれてはどうすることもできなかった。
「どっこいぃぃぃぃ……!」
当然、コウジもただ組み付くだけで終わる筈もなく、クロスの両腕を思い切り振り上げる。それに伴い、カマキリの巨体を支える細い足が地面から離れ、宙へ浮く。自身の身体よりも巨大化したことにより相当な重さを持っている筈のカマキリを持ち上げてみせたクロスの怪力により、カマキリはコウジの頭上で鎌と足をバタつかせるしかできない。そして、
「っせぇぇぇい!!」
グオンと、持ち上げたカマキリを前方へと豪快に投げ飛ばした。力強い投げ飛ばしによって石畳の地面を砕きつつ叩きつけられ、さらにもんどり打って転がるしかできないカマキリ。そうして、天地が逆さまとなったカマキリはギチギチと嫌な音を鳴らしながら倒れ込むしかできなくなってしまった。
「そしてぇぇぇぇ……」
まさに隙だらけ。無防備になった腹目掛け、コウジはクロスの巨躯を飛ばし、大きく右腕を振り上げ、
「問答無用パーーーーンチ!!」
『Buster Smash』
突き出された魔力の塊を纏った拳が、カマキリの弱点の腹部に炸裂した。
握りしめられたクロスの拳はカマキリの腹部を文字通り粉砕。生々しい体液と肉片をまき散らし、針を突き刺した風船のように破裂した。
これにて、コウジの勝利
「うぉぉ!?」
の、筈だった。
破裂した腹部から飛び出してきたのは、カマキリの肉片ではなく、団子状の黒い物体。が、それが突如として意思を持っているかのように糸状にほぐれ、瞬時にクロスの身体に巻きつき出した。
「うげ、なんじゃこりゃ!?」
コウジが戸惑っている間にも光沢を放つ糸状の物体はクロスを縛り、力強く締め上げていく。ギリギリという、さらに力を込めていく音がコウジの耳に届く。
『マスター、これが恐らく本体です。この生物から魔力反応があります』
「本体……カマキリ……」
クロスの言葉に、コウジは思考を巡らせる。カマキリから飛び出してきた、糸状の生物。コウジの知識の中に、それに該当する存在が一つ。
「なるほど、ハリガネムシか」
カマキリ等の昆虫に寄生し、体内から操る小さな虫。あのカマキリは、このハリガネムシにとっての鎧でしかなかったというわけであり、こうして隙を見てコウジたちに襲い掛かってきた。
一度体外に出たハリガネムシは、二度と寄生することはないとされているが、こんな風に反撃に巻き付いてきたりするのだろうか。まぁ巨大化している分、普通の生物と違うのは明らかだが……そんなことを考えていたコウジだったが、今それどころではないことを思い出し、現実に思考を戻す。
「で、こうやってウチらを絞め上げてるってわけなんだが……」
ハリガネムシはクロスの両腕もまとめて巻き付いているため、腕で振り払うことは不可能……だが、
「クロス。ぶっぱなせ」
『OK.Ark Blaze』
ハリガネムシにとっての不幸は、クロスの腹部にも武装があるということを知らなかったことか。白い魔力の熱線がハリガネムシの身体を焼き切り、ジュッという焼ける音と共に両断。それによってクロスの身体からバラバラとハリガネムシの身体が落ちていった。
文字通り、最後の足掻き……それすらも、コウジとクロスの前では無駄となって終わった。
「ちょいと手こずったな……まぁ、ナイスファイトだったぜクロス」
『マスターの技術あっての結果です』
ポンと、コックピットからクロスの外装を労いを込めて軽く叩くコウジにクロスは事務的に、しかしどこか誇らしげにそう返した。
「お」
と、ふと視界の端に青く光る物があることに気づき、コウジはクロスから飛び降りる。その際、クロスは腕時計型の待機状態に変化、コウジの服も元のカジュアルな私服へと戻った。そしておもむろに、ハリガネムシの残骸の中から光る物こと目当ての青い石を拾い上げた。
「ゲッツ」
軽く上に放り投げ、キャッチ。さんざん苦労して探し当てた石。そこには変わらず英数字が彫られていたが、じっくりと観察している暇はない。
「っと、いかんいかん。とっととこっから離れんべ」
『同意。急ぎましょう。寧ろ人が集まってこないのが不思議な程です』
見つかると面倒になることは確実。一にも二にも、撤退優先。ということで、コウジは踵を返して全力でダッシュ。公園の出口へと駆けていくのだった。
その数分後。
「いない……一足遅かったみたい」
「私たち以外にもジュエルシードを集めている奴がいるなんてね……どうしようか、フェイト?」
「……ひとまず、取られたジュエルシードのことは後で考えよう。この辺りに反応がない以上、長居は無用だよ」
「りょーかい。しっかし、ひどい有様だねぇ。一体全体どんな奴がどんな戦い方をしたらこうなるんだか」
「……もしかしなくとも、脅威になりそうだね。警戒しておこう、アルフ」
コウジとクロスによる大立ち回りの末、石畳砕け、そこら中穴だらけとなった無残な公園。そこに降り立った小柄な影と犬を思わせる影はそう言い合うと、フワリと飛び上がりその場を後にするのだった。
~ちょっとした裏話~
クロスの外見モデル参考
『Solatorobo それからCODAへ』
クロスの武装モデル参考(一部)
『THE ビッグオー』
クロスの戦闘モーション参考
『ドンキーコングバナンザ』
気になる人がいたら検索して一緒にハマろう! これで君も道連れだ!☆