正義の眷属たちと第四真祖   作:琳華

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第9話 説明不足と大抗争まであと六日

雪菜と再会を果たした古城だったが場所が人通りの多い場所だったので雪菜の格好は元の世界では目立たないが、今は異世界にいる為目立ってしまう。

取り敢えず人通りが少ない路地へと入った。

 

「姫柊、教えてくれ。どうやって異世界(こっち)に来たんだ?」

「どうやってと言いますか。私がここに来れた理由は藍羽先輩と南宮先生と優麻さんが共同開発したこのブレスレットと指輪のお陰です」

「ブレスレットと指輪って」

 

見せられたのはシンプルなデザインなブレスレットと自分の血の従者の証である指輪だった。

 

「この指輪は先輩と霊的パスが繋がっています。それをこの腕輪に刻まれた術式で感知して、南宮先生と優麻さんが協力して刻んでくれた空間制御の術式を使ってこの世界に来ました」

「な、なるほどな。それで凪沙やアヴローラは元気にしてるか?」

「……はぁ。そこで妹である凪沙ちゃんやアヴローラちゃんの心配が先なのは暁先輩らしいですね」

 

雪菜は異世界に来ても変わらない古城に呆れながらも質問に対してきちんと答えた。

 

「心配していましたよ。お二人とも、先輩が居なくなって直ぐに私の元に来ましたから。更に先輩が居なくなって矢瀬先輩がラ・フォリア王女の協力のもと政務にかかりきりですし、学校に関しては南宮先生は戻ってきたら1()()()()授業が遅れている分は戻って来たら補習地獄で勘弁してやるっておしゃっていましたよ」

「マジかよ…勘弁してく、ん?姫柊、今1ヶ月って言ったか」

「はい、そうですけど」

「いや、可笑しいだろ。俺はこっちに来たのは1週間くらい前のはずだろ?実際にこっちに俺が来てからその位の時間しか経ってないはずだ」

 

その言葉を聞いて雪菜は考え始める。

 

「恐らく、この世界と私達がいた世界とでは時間の流れが違うのかもしれません」

「勘弁してくれ」

 

そんなことを聞いた古城は戻った時に待ち構えているだろう多くの補習と政務が待っていると考えると憂鬱になった。

 

「それで先輩は今まで何処にいたんですか?」

「ん、ああ、そうだ。今からお世話になってるとこの神様を迎えに行くんだけど一緒に来るか」

「はい、当たり前です。私は先輩の監視役ですから」

「はは、懐かしいなそれ」

 

古城にとっては1週間雪菜にとっては1ヶ月ぶりのやり取りを懐かしみながらアストレアの元へと向かった。

 

「ところで先輩。先程神と言いましたがこの世界には他にもその神がいるんですか」

「ああ、この世界には天界って場所で神々が住んでいて、まあいろんな理由があるみたいだが力とか封じ込めてこの下界に降りて来たみたいだ」

「な、なるほど。大分不思議な世界なんですね」

「まぁ、俺達からしたら そう感じるよな」

 

古城たちがいた世界も大概不思議な世界なのだが、本人達がその事に気付くことはなかった。

そして、そんな話をしていると店の外で古城を待っていると思われるアストレアの姿が見えた。

 

「あれ、待たせちまったみたいだな」

「もしかして彼処にいる女性が…」

「ああ、俺がお世話になっってるとこの主神のアストレアさんだ」

「随分、綺麗な人ですね。いえ、この場合は女神でしょうか」

「ひ、姫柊?なんか怒ってねえか」

「いいえ、怒っていませんよ」

 

長い付き合いだ。表情などの見なくても声を聞いただけで彼女の機嫌が分かるよになった。

 

「それでまた先輩は女の人を誑かしたんですか」

「誑かしてねぇよ!」

「はぁ、早く行きましょう」

「お、おい待てって」

 

雪菜が不機嫌になった理由に検討も付かないままアストレアの元へと向かった。

 

「あら、古城。もう来てくれ、た…の」

「すいません、待たせたみたいで」

「い、いえ、大丈夫よ。私も今店から出たばかりだから。それより、隣の彼女は」

 

アストレアの視線は古城の隣にいる雪菜に向いていた。

 

「ああ、こいつは姫柊だ。以前、話した俺の仲間で後輩だ」

「初めまして、先輩の監視役の姫柊雪菜です」

「初めまして、私はアストレア。古城が所属したファミリアの主神よ。……所で監視役ってどういう事かしら」

「先輩、ファミリアってどういう事でしょうか」

 

心なしか2人の視線が鋭くなった ような。アストレアに関しては睨んでいるわけではないのだろうが。

 

「ここじゃ人通りが多いから取り敢えずホームに戻ってから説明するんで」

「分かりました。きちんと説明してくださいね。暁先輩」

「きちんと説明してちょうだいね」

 

なんとも言えない雰囲気の中3人はホームへと向かっていった。

 

「それで説明 してくれるのよね」

「説明つっても」

「不躾ですが、アストレアさんは先輩についてどれ程知っているんですか」

「古城について?古城が吸血鬼の真祖で不老不死って事かしら?あと、眷獣って言う魔獣を宿していたり」

「先輩、その程度しか説明してなかったんですか」

「いや、あまり説明してもしょうがないって思ったんだよ」

 

古城のあまりにも適当な説明に雪菜は呆れていた。

 

「説明不足な所があるので、補足しながら説明します」

「え、ええ。お願いするわね」

 

アストレアは戸惑いながらも雪菜の説明に耳を傾けた。

 

「先輩は私達がいた世界に4人しか存在しない吸血鬼の真祖であり世界最強の吸血鬼です」

「世界、最強?」

「ええ、そうです。そもそも真祖という存在は簡単に一国を滅ぼせる存在です」

「ええ、それも以前聞いたけど……他の3人の真祖にも監視役が付いているのかしら?」

「いいえ、現状監視役が付いているのは先輩だけです」

「そう、なの?」

 

不思議そうな顔を向けるアストレアに古城は苦笑いを浮かべていた。

 

「そもそも先輩は当初は存在しない非公式の真祖でしたから。それが存在すると分かり、しかも力の制御が出来ていないと判明した為監視と抹殺の為に派遣されたのが私です」

「ま、抹殺……」

「いや、俺も最初戸惑ったぜ。姫柊の説明を聞いた時は」

「そして今は公式に認められた存在です」

 

公式に認められたとはいえ、古城が第四真祖だって事を知っている者は数が少ない。

 

「更に真祖は夜の帝国(ドミニオン)と呼ばれる領地を持っていて、帝王でもあります」

「え、古城って王様なの!?」

 

アストレアはここ一番驚いていた。

 

「そして吸血鬼は『血の従者』または『血の伴侶』と呼ばれる存在を作ることができます」

「『血の伴侶』って…」

「簡単に言うと体の一部を交換して、それを触媒に霊的パスを繋ぐことで『擬似吸血鬼』にする方法です。取り分け、真祖や旧き世代や貴族の従者に成れば莫大な魔力の供給に不死の呪いの共有やそれに伴う再生能力を得ることが出来ます」

「そ、 そうなのね。その…古城にも居るのかしら?」

「ああ、いる。と言うか姫柊が俺の血の従者の1人だ」

「え?」

 

アストレアは驚きながら雪菜に目を向ける。

 

「ええ、まぁ。こほん。先輩の場合は私を含めて12人の従者がいます」

 

雪菜は古城からはっきりと肯定された事に嬉しさを滲ませていた。

 

「か、数は決まっているのかしら。じゅ、従者の数って」

「いいえ。数は特に決まっていません」

 

その言葉に安堵の表情を見せるアストレア。それを見て雪菜は古城を睨み、急に睨まれた古城はなんでだと言いたげだった。

 

「説明は以上です。何か質問がありますか?」

「いいえ。特にないわ。ありがとうね」

「それではファミリアについて説明をお願いします」

 

今度は雪菜が説明を受ける番になった。

 

「まず、この世界にはヒューマン以外にも数多くの獣人やエルフなどといった多くの種族と神々がいるわ」

「はい、実際に見てそれは理解しています」

「そしてこの世界は終末を迎えようとしています」

「終末ですか?それは一体どう言う事ですか?」

「まず一つはこの世界にはダンジョンが存在していて、これを攻略する事がこの世界を救済する事に繋がります。二つ目は三大クエストの最後の一つ隻眼の黒龍の討伐。これらを完遂しなければこの世界は滅びます」

 

あまりにも衝撃的な話である為に雪菜はどんな言葉を掛ければいいか分からなかった。

 

「そして下界に降りてきた私達神々は下界に住む子供達達に恩恵を与えることでファミリアを作る事にしたの」

「そのファミリアと言う組織はみな同じような目的で作られたんですか?」

「いいえ。神々によって目的は異なるわ。私はこの都市の平和を守る為に活動しているわ」

「なるほど。分かりました。では先輩にも恩恵を与えたんですか?」

「ええ、古城にも私の恩恵を与えたわ」

「そうですか」

 

それを聞いた雪菜の機嫌が悪くなったと古城は感じた。

 

「それは解除することはできないんですか」

「おい、姫柊!」

「できるわ。本人が望むか与えた神が死ぬかすれば」

「そうですか。ある程度のことは理解できました」

 

こうして互いの説明を終える事ができた。

 

「それより姫柊はあとどれ位この世界にいられるんだ?」

「いえ、一度戻ろうと思います。先輩の現状を報告したいので」

 

そう言うと雪菜は戻る準備をし始めた。

 

「あ、先輩これを」

「なんだこれ?」

 

渡されたのは黒い指輪だった。

 

「これがあれば先輩は私達と連絡を取れるようになります」

「どうやってだ?」

「先輩が魔力を流せば大丈夫です」

「なるほどな」

「それでは戻ります」

 

雪菜の足下には魔法式が展開され、光と共に姿を消したのであった。

 

「まさか古城が王様だったなんて」

「いや、俺も柄じゃないんすけど」

「うふふ、そうでもないわよ。所で古城」

「なんすか」

「もし、なんだけど…私が血の従者になりたいって言ったらどうする?」

「え?」

「あ、気にしないで頂戴。ちょっと聞いてみただけだから」

 

なんとも言えない雰囲気になったが、雪菜と短い再会を果たした古城は元の世界に戻れる日は近いのではないかと思った。

 

 

 

 

『大抗争』まで、あと六日。

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