天空の花嫁の姉って?   作:ざいざる嬢

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グランバニア 運命への抵抗

「私は別にこの部屋のままでいいんだけれど……」

 

「しかしオジロン王はこのまま自分があの部屋を使うよりも坊ちゃん──失礼、アベル様夫婦に使ってもらった方が亡きパパス様も喜ぶだろうと……」

 

 アベルが王になる決意をした翌日、問題が発生した。

 原作では倒れた花嫁がそのまま玉座の間の上に存在する王族の住まう階で介抱を受け、シスターの診察の結果妊娠が発覚する……という流れでその部屋──パパスとマーサが暮らしていた場所を使うことになる。

 けれど私は倒れず、原作とは異なる来賓用の部屋を使わせてもらっている。正直、私の実家の部屋と同等レベルで豪華な部屋だったから、このままでいい──むしろ原作のことを考えればこの部屋の方が拐われにくいからこの部屋がいいのだけど、原作の辻褄合わせなのかオジロンがそこを使ってくれとサンチョを通じて伝えてきたのだ。

 

 確かに王族が住まうに相応しい部屋なのは確かなのだけど、安全面でどうなのかという懸念点がある。

 寝室は外のバルコニーに通じる扉があり、おそらくマーサと原作の拐われる花嫁はここから連れ去られてしまったのではないか、という話もあったと思う。

 そう考えると拐われるリスクを避けるには、そこを避ける必要があると思ったのだけど……。

 

「でも大臣がいい顔をしないんじゃない? アベルの話だと大臣は私たちに対してあまりいい感情を抱いていないようだけど」

 

「それはオジロン王が説得されて了承を得たとのことです。 ……確かに大臣はあまり人柄が良い人物ではありませんが、今回に関してはアベル様の王としての資質を見極めるために厳格にしていると本人は言っていましたので……。いずれお話しする機会を設けますので、その時に親睦を深めてもらえれば」

 

「そう……じゃあ、アベルの判断に任せるわ」

 

 これはダメそうね。アベルならパパスとマーサの暮らしていた──もしかしたら自分が暮らしていたかもしれない場所と言われたら興味を持たないわけがない。

 部屋に関しては諦めよう。代わりにバルコニーの扉の警備を厳重にするか鍵をかけられるようにして対策するべきね。

 

 そして、アベルはオジロンの勧めを受け私たちは部屋を移ることになった。

 アベルは「お城の使用人が控えていてくれるから何があっても安心だね」と、どうやら私のことを考えてくれて受け入れてくれたみたい。

 サラボナの実家でのことを思い返すと、確かにメイドは数人雇っていたし妊娠生活のことを想えば実家の環境に近しい方が安心するんじゃないかと話してくれた。

 ありがたい!ありがたいんだけども原作を知っていると素直に喜べないのよね!!

 でもありがとうアベル!その愛は確かに伝わったわ!!

 

 というわけで残念ながら部屋変え案は失敗。次の策に移ろう。

 

 

 

 

「チェックメイト」

 

「げぇっ!? つ、つえー……」

 

「これで何連勝だ?」

 

「さあ?10から先は数えてねえ」

 

「はい次。 かかってきなさい」

 

「こ、こうなったら……やってしまえパピン!」

 

「今のお前のチェスの腕前でデボラ様を倒してしまえー!!」

 

 今私がいるのは兵の詰め所。ここで私は多くの兵相手に稽古──ではなく、モンスターチェスをしている。

 そう、グランバニアではモンスターチェスが大流行している。それも兵士の任を疎かにするレベルで。

 これは大問題だ。早急に改善……というか問題解決しないといけない。

 そもそも薬を盛られたとはいえ、兵士含めて全員が深い眠りにつくなんて事態あってはならないことよね!!

 なので、この腑抜けた兵士たちの目を覚まさせるために私はモンスターチェスに勤しんでいる。名目上は兵士との交流、戦い方の指導と称して彼らと接触した。

 その結果、彼らがモンスターチェスにうつつを抜かして平和ボケしていると判明したので、これを取り上げるべくモンスターチェス自体を賭けてこうして兵士たちとチェスをしているというわけ。

 

 私の実家にもモンスターチェスがあるから遊び方は知っていたし、パパ、ママ、フローラ、アンディだけじゃないサラボナの人たちを交えて遊んだことがあるからそれなりに私はこのモンスターチェスは強い自信があった。

 カジノ船で出禁を食らった腹いせに賭けモンスターチェスなんかもやったことがある私だ。当然年季が違うわけで……。

 

「はい、チェックメイトね」

 

「ま、参った……」

 

「パ、パピンが負けた……?」

 

「バカな……!パピンは兵士最強の腕前だというのに……!!」

 

「ウゾダドンドコドーン!!」

 

 はい、圧勝。悪いけどこのチェスは没収しましょうか。

 

「約束通りこのチェスは貰うわよ」

 

「ああ、そんな!」

 

「俺たちのチェスがあああああ!!チェスそのものがあああああ!」

 

 兵士たちが涙を流して悔しがっている。そんなにか。

 でも、確かこのモンスターチェスのせいで仕事が疎かになったって後々後悔することになるんだから、それに比べたらマシでしょう。

 

「アンタたちがちゃんと仕事をするなら返してあげてもいいわ。

 手始めに……ピエールとサイモン、こっちに来て」

 

 私が予めアベルに頼んで借りていたピエールとサイモン。

 ピエールはともかくサイモンは人格に問題があるとはいえ、その件の腕前は私も思わず唸るほど。剣の道に関しては真摯だから、腑抜けた兵士たちの尻を叩き直すには丁度いいでしょう。

 ピエールもスライムナイトという騎士道を重んじるところがあるから、そういう意味でも兵士たちへの指導にはピッタリだろうと考えていた。

 二人とも二言返事で指導の話を受け入れてくれてよかったわ。

 

「ふふふ、お任せあれですぞデボラ様。 二度と泣いたり笑ったり出来ないぐらい追い詰めて立派な戦士にしてやります」

 

「サイモン殿、それはやりすぎですよ。 ですが、私たちから見てもあなた方兵士が弛んでいるのは解ります。なので厳しく指導していくつもりなので覚悟してくださいね!」

 

「じゃあ私も見学してるから指導は任せるわよ」

 

 というわけで、無事兵士たちへの意識改革兼強化計画が始まったものの……思いの外兵士たちが弱くサイモンが「そんな腕前ではこの国を守れませんぞ!!」と言いながらキングダムソードで兵士たちを吹き飛ばす姿を見て私とピエールは色んな意味で頭を抱えずにはいられなかった……。

 いくらなんでも練度が低すぎない……?いやサイモンが強いっていうのもあるかもしれないけど……これも何かの策略なのではないかと思わず疑わずにはいられないわね……。

 

 それから、幾日か兵士たちを鍛え上げるべく私も剣を振って見本を見せたりして、そこをシスターに目撃され滅茶苦茶に怒られて、というエピソードがあったが割愛させてもらうわ。

 それよりももっと厄介な事態が起きてしまったから──そう、大臣が私へ直接釘を刺しに来たからだ。

 




実際モンスターチェスってどう遊ぶんですかね?
私はチェスのルールも分かりません(笑)

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