銃声が鳴り響く中、私は何故こんなことをしているのか?誰かに問いかけても、返ってくるのは沈黙か銃声、罵声ばかり。それもそうだ、何せ問い掛けてるのは殺そうとしている相手だし、まともな会話ができる筈もない。殺意を向けられて心が擦り減るけれど、アリウスじゃ珍しくもなんともない……。でも、…それでもやっぱり死ぬのは怖くて、みんな
死にたくない
そう言って…必死に生きようとする様を見せつけられる。誰も好き好んで殺す訳じゃない、私だって同じだ。それでも私は死にたくないから、私と同じかそれ以下の年齢の子供を殺す。
…別にアリウスでは珍しくもない光景だ。そう、珍しくない。だから気にせずに続けて、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して。
…気づけば私は、何もない荒野で倒れていた。
いつまでこんなことすればいいのか?どうして私は生きてるの?
答えは無くて、もう生きるのにも疲れた。そんなときに、
“大丈夫?”
そう言って、誰かが私に手を差し伸べた。
私はその手を掴もうとして
「準備ができた。一緒に来てもらうぞ、タクミ」
扉越しにそんな声が聞こえて、意識を現実に戻す。いつの間にか眠っていたらしい。眠れば必ずこの夢を見る
おかげでろくに寝れたためしがないがそれよりも気になることがある。この恐ろしい声はいつも私たちの訓練を見ている鬼畜冷徹鬼教官サオリの声だ。一緒に来てもらうとは一体?
寝る前の記憶を思い出す。私は確か、朝食をヒヨリから死守したあと、スクワッドといつもの訓練の最中にサオリに呼ばれて、自分の死を覚悟した
だがサオリは少し待っていろと、私をボロい個室にて待機させ、何処かへと消えていった。そして私は案内された個室の中で、訓練の疲れから眠っていたんだった。危ない危ない。もし眠ってたのがバレたら他の奴らの見せしめに、銃の的になって蜂の巣にされて、明日のヒヨリの朝食になるところだった
「タクミ?どうした」
「なんでもないです。すぐに行きます」
そう言って扉を開ける。扉の向こうでは、私を待っていたサオリがドアノブに手を掛けていたみたいだ。危なかった。あと少しで私、サオリ特製ミルフィーユになってたわ、と静かに息を整えて、私の様子を訝しむサオリに質問をする
「それで何処に行くんですか、リーダー」
「それはついてから話す。お前は私について来い」
行き先について質問をしたが、詳しいことは教えてくれなかった。…もしかしてだけど、この前マダムの悪口を歌っていたのがバレたのだろうか?頭蓋骨を切り刻んでミンチにしてやるとかの。だとしたらまずい。アリウスでは、教官達に、大人に逆らうことは許されないからだ。以前にも、仲間に外のことを話して、希望を持たせようとしていた黒いキャップを被った少女が牢屋に入れられて、出てきたときには瞳に光がなく、口から虚無主義を垂れ流す、怪人ヴァニヴァニ星人に改造されていた。とんでもないディストピアだぜ!…あの子は今どこで何をしているのだろう?どうでもいいか!私は改造人間になどなりたくないので、今のうちに弁解でもしようかと、そう思っていたが
「ついたぞ。ここが目的地だ」
考えている間に目的地についてしまった。…ここはあまりきたことがない場所だ。辺りを見渡すと、私の前にはこの辺の部屋と、それこそアリウス全てと比較するまでもない綺麗で豪華な扉がある。で、この部屋が誰の部屋なのか知らない人はアリウスに一人もいない
しかしどうして私なんだ?…嫌な予感がするな。私の占いは当たる
「リーダーはどうするんですか?」
「私はここまで連れてくるように言われただけだ。入室の許可は下りていない」
ほらね、いたっろクソが。…つまり私は、マダムと一対一で話し合うらしい。あのマダムと、この狭い個室で。……どうやら私の人生はこれで終了らしい。短い人生だった…
「失礼します、マダム。ご要望通りに連れてきました」
コンコンとサオリが木製の扉をノックするのを見ながら、瞳を閉じて、
私は私の人生を振り返る。その内容は必然的に内戦時代の記憶が大半を占める。思えば色々なことがあったな〜
最初の仲間達は食い扶持を減らすために、私の寝込みを襲いやがった。もちろん全員殺した。そのあと空腹を誤魔化すために、落ちていた料理本を見ながら石を噛んだり、殺した子供から奪った銃で別の子供を殺して、また奪ったり。ときには大人も殺したけれど、子供と違ってヘイローがないから比較的殺しやすかったな〜
あとアレだ。落ちていたパンを食べて一週間腹痛に悩まされていたこともあった。あれはキツかった(真顔)死ぬかと思ったぜ……まぁ、今から私死ぬんだけどね!なんか腹痛でマダム死なねぇーかなー!入室許可よ、下りるなぁぁ!!
「入室を許可します」
クソが。…はぁ、現実逃避を終えて、覚悟を決める。
振り返れば自分の人生は、泥の中の腐ったパンみたいな
人生だった。…いや流石にそこまでじゃないな、うん。
じゃあ…オレ、消えっから!
「タクミ、失礼のないようにしろよ」
「はい、わかりました。…失礼します」
失礼のないようにって言われたけどさ、そういう意味じゃないけど失礼しますって入るのはどうなんだろう?
意を決して扉を開く。まず目につくのは奥が広い部屋の中央にある木製のダイニングテーブル。そのテーブルを挟む様に二人掛けの皮のソファーがある。両面の壁には一面を埋め尽くすほどの本が詰め込まれた本棚があり、部屋の奥には一人用の豪華な椅子と机…そして
「あなたの苦労をずっと見ていました」
その椅子に腰掛ける、黒い髪を足元まで伸ばした赤い肌色の異形の大人が、無数の目を向けていた
「本当によく頑張りましたね?」
こちらを労うこの大人こそがアリウス分校を恐怖で支配する異形にして
内戦時代を終わらせた大人。自身をマダムと呼ばせて、神を自称する年齢詐称の生徒会長(笑)である……ん?今なんて言ったんだ、
ずっと見てた?頑張りましたね?マダムが?ん????
「ついに努力が報われ、幹部に昇格する時がきました」
言うはずないだろ!あのマダムが!…………ふぅ、すうっとしたぜ。
そうだ多分聞き間違いだろう。えーと
なんだっけ?努力が報われ幹部に昇格?……言うはずなr
「この機会を逃して仕舞えば、これまでの苦労は水の泡でしょう」
まるで他人事みたいに言うじゃねぇーか、あんたが決めんだろうが!
「値段ばかり気にして欲しい武器を我慢し、
新調や整備を控え節約ばかりの生活。
収入は増えず金は出ていく一方」
そもそもお金もらった憶えがないから、節約とかねぇから!
幹部になればお金貰えるのか?
「将来に希望を待てずvanitasする日々。
━━━そんな現実から抜け出す時が来たのです」
「散らかり倒した狭い部屋を飛び出し、贅沢で余裕のある生活を実現し
トリニティとゲヘナに好き勝手やれる人生にしたいでしょう?」
「世界中があなたを否定しても私だけがあなたを認めてあげましょう」
「………………………」
なんだコイツ(恐怖)急に呼び出して怪文書浴びせてきやがった。
もしかしてツッコミまちか?そうなのか?すいません、当店ツッコミは
セルフサービスとなっておりますので、お帰りはあちらなので帰らせていただきます(早口)
「散々苦しんだのです。もう楽になりなさい」
お家帰して。…お家ここじゃねぇか!…早く帰るために話を進めよう
「それで、幹部になるにはどうすれば良いのでしょうか?」
「幹部の座を望んでいるならやることがあります」
「この爆弾をトリニティで使いなさい」
「使い方は簡単です。誰にでもできます」
「これがダメなら、もう人生を諦めなさい」
突然突き放すようなことを言って、マダムは机に片手サイズの爆弾を置いた。見たことない爆弾だ。形状からして設置型爆弾だろうか?
「これはなんでしょうか?」
そう言いながら、その爆弾に手を伸ばそうとして
「それはヘイロー破壊爆弾。あなた達を容易く殺せる物です」
私は、伸ばしかけた手を止めた。そして恐る恐るマダムへと質問した
「ヘイロー…破壊爆弾?」
「ええ、そうです。その名の通り、これはヘイローを破壊する爆弾。
私の手で特別に用意しました」
ヘイローを破壊する。その言葉に私は━━━恐怖した。もしかして私、
トリニティで汚ねぇ花火をあげるのかしらねぇ?…嫌ねぇ?(震え声)
「私はこれで何をすれば良いのでしょう?」
声の震えをなんとか隠して、私はマダムに尋ねた
「トリニティの予言の大天使、百合園セイアのヘイローを、その爆弾を使い、暗殺なさい」
「百合園セイア?」
私じゃない、よかった!人間爆弾回避!
…それで誰だろう…知らない名前だ
「詳細は知らなくて結構。百合園セイアは私の計画の邪魔になる可能性があります。だから殺すのです」
マダムは忌々しそうに百合園セイアの名を呼ぶ。そして私に向かって 話し始めた
「そして、あなたをこの任務に選んだのは、この暗殺を確実に成功させるためです」
「私を?」
なぜ私なのだろう?重要な作戦ならば他のスクワッドにでも任せれば良い。あいつらは皆、私よりも実力が上だ。それに、トリニティ関係なら尚更だ。スクワッドのリーダー錠前サオリは、マダムの忠実な駒だからな。だからこそわからない。なぜ私なのだろう?(一行目に戻る)
「私以外の、スクワッドは使われないんですか?彼女達の方が適任かと愚行します」
「あなた以上の適任はいないと、私は確信しています。あなたならば、スクワッド全員と交戦しても勝てるでしょう」
その沢山ある目は節穴か?見ればわかるが、私そこまで強くないが?
………もしかしてだがこいつ、適当言って言いくるめて、私をボロ雑巾の様に使い捨てようと言うのか!?…ありえるな
「何故ならあなたは、このアリウスで一番と言ってもいいほどにトリニティを憎んでいると、私は知っていますから」
よかった。関係無さそうだ。でも憎しみ?どういうこった?私は表情筋が死んでいるため感情が表に出ない。アツコにも言われた。【貴方の感情はわかりづらい】と。…仮面被ってる君に言われたくないね!だから憎しみなど、他人からは観測できない筈だし、そもそも私、トリニティ憎んでいないし
「憎悪の余り、トリニティへの憎しみの歌を歌っていたでしょう?」
歌バレしてやがる。だが憎しみの歌?なにそれ知らん。トリゲヘ宛の
呪詛は毎日朝礼の時歌わされるから、私だけじゃない筈
「醜悪な脳をくり抜き、頭蓋を切り刻み、四肢を捥いでミンチにして、達磨にしたお前に無理やり飲ませてやると。…私でも震えるほどの憎悪でした」
アッッッ!(小林製薬)めっっっちゃ知ってるんですけどそれ(震え)
いやでもそれはトリニティに向けたんじゃなくてぇ!
マダムへの日頃からの恨みを込めた憎しみの歌なんですよぉ!(慟哭)
…いや、まだ間に合う!誤解をといて説明すればきっと…!
『実はそれマダムへの歌なんすよ』
『何ッ!?そうか!?サオリ、やりなさい!』
『vanitas vanitatum』
『ぎゃー!私の心臓がー!!』
…やめておこう、うん。世の中、知らない方がいいこともある。廊下に
いるサオリに聞こえれば、私は八つ裂きミルフィーユとなるだろう
…よし、ワタシアリウス!ワタシトリニティコロス!(自己催眠)
「アッ、キカレテイマシタカ」
「えぇ。お花摘みの帰りに廊下から聞こえました」
なにがお花摘みだ!お高くとまりやがって!(催眠解除)
おまえどっちかといえばゲスだろうが!訓練の最中に、私たちが痛めつけられるのを上から見下ろして悦に浸ってんの、知ってんだからな!?ゲスならゲスらしく、途中で漏らせばいいだろぉん!?
「ソウデスカ。キキグルシイコエヲキカセテシマイ、モウシワケゴザイマセン」
「構いませんよ。おかげで私は、あなたという強力な生徒を見つけることができたのですから。」
…生徒、か…まぁ、この女の思惑はどうあれ。
このアリウスから出られるならそれでいいか。
私は今度こそ、爆弾を手に取る。…トリニティにも
百合園セイアにも恨みはないが、
それはそれ、これはこれ。
断ればあの女のことだ、文字通り人生を諦めさせるような
拷問をするだろう。もとから私に拒否権はない
「百合園セイア暗殺任務、確実に遂行します。」
「えぇ、期待していますよ。…さぁ、もう下がりなさい」
マダムはそう言って、私を部屋から退室させた。期待してる、ねぇ?
…心にもないことを
タクミがいなくなり、部屋にはマダムとサオリだけとなった。
サオリは、タクミの実力が、教え子が評価されて喜んでいた。あいつの努力はずっと見てきたが、まさかマダムに認められるとほどとは。そんなふうに浮かれたサオリへマダムは、思い出したかのように声をかけた
「そうでしたサオリ、一つ聞いておかなければならないことがあります」
マダムのその言葉に先程まで感じていた喜びを隠して、サオリは答える
「はい、マダム。なんでしょうか?」
「最初に聞いておかなければいけないことを聞いていませんでしたから。サオリ、彼女は何ができるのでしょう?」
「……は?」
その言葉にサオリは唖然とした。先程まで感じていた、喜びも消えて、
質問の意味を確認する
「マ、マダム。それは…、何を聞いているのでしょうか?あいつの得意分野についてでしょうか?それともよく扱う銃器の種類について?もしかして、今までの功績についてですか?」
「彼女の全てですよ。私は彼女について、何も知りませんから」
「…」
サオリは静かに問いかける
「…あいつの努力を見ていたのではなかったのですか?」
「苦しみが報われると、労いの言葉をかけていたではないですか…!」
思わず感情が入る。だがマダムはそんなサオリの様子に気づかず、
上機嫌で語る
「ええ、確かにそう言いました。実際、私も見ていましたから」
「彼女の無駄な努力も、報われることない苦しみも。全て…酒の肴に見ていましたから」
今度こそ、サオリの顔から表情が消えた
「…でしたらなぜ、あいつを、タクミを選んだのですか?」
「なぜって、決まっているではないですか」
マダムは邪悪な笑みを隠そうともせずに、残酷な事実を告げる
「片目が見えず、病弱で、特別なことは何もない不良品。この機会に処分しようかと思いまして」
マダムの言葉を理解したくないと、脳が拒絶している。あいつは…こんなふうに殺される為に努力してきた訳じゃない。目眩を抑え、なんとか言葉を捻り出す
「……そうでしたか」
「ええ、他にアレを起用するならば、銃の的くらいでしょう」
アリウスはマダムに支配されている。大人が子供を搾取し、歪めた教えを伝え、偽りの憎しみを埋め込んだ。大人に逆らう意思を持たない従順で使い捨てられる少年兵を作る。それがアリウスだ。…私は、そんなこと、とっくの昔に知っていたのにな…
「作戦はもうすぐです。駒の調整は頼みましたよ、サオリ」
「…はい、わかっております。マダム」
私は絶望の中で部屋から出て、マダムの部屋から離れてすぐ、堪えきれない感情が溢れ、思わず床を殴りつけた
「ッ!…」
どうやら強く叩きすぎたみたいで、拳から血が馴染んでいた
幸い、あまり音は響かなかったみたいだ。…痛みで頭が冴えてきた
タクミとは、私がマダムの言いつけを破り、独房に入れられた後に出会った。あの頃私は、全てを虚しいものと思い、幸せを願うことを諦めていた。だが、片目が見えずとも虚しさをかけらも感じない、生きようとする目で私に喰らいつくあいつを見ているうちに、私も影響されて、教える楽しさを思い出したんだ。あいつに教えているつもりが、その実、私が教えられていたんだ。それに、私以外のスクワッドも、あいつのおかげで未来を見ている。あいつには感謝してもしきれない…
━━そんなあいつが捨て駒にされるのを、私は、黙って見ているのか?
「……そうだな。もういい加減、我慢の限界だ」
私は決意を新たに、スクワッドの待つ部屋へと向かう
そうだ、たとえ全てが虚しくても、それは諦める理由にはならない
あの日、懲罰房から帰ってきたサオリは、その目から光を無くしていた。私たちに外のことを話したせいで、サオリは幸福を望まなくなるように‘再教育’されたらしい
その日からスクワッドの空気も暗くなって、ミサキはサオリがあんなふうになったのを自分のせいだと思って、自傷癖が悪化した。ヒヨリも以前は楽しそうに雑誌の内容をサオリに口にしていたが、今では静かに一人で読んでいる。私はその空気がいやで、けれどどうすることもできなかった。マダムに、喋ることを禁止されていたから。アズサはサオリに何があったのか問いただしたけれど、返ってくるのは嫌になる程聞いてきた教訓。サオリの心は、完全に折れてしまっていた。…あの時までは
ある日、サオリが包帯まみれの子供を連れてきた。サオリが子供を拾ってくるのはよくあったから、みんなそこまで気にしてなかったの。でもその日から、サオリの雰囲気が少しづつ明るくなっていて(私たちくらいしかわからないだろうけど)サオリに、何があったのか聞いてみたの。そしたらサオリ、骨のある奴がいるって、嬉しそうに話しだして、あんなに喋るサオリはもう見れないって、みんな思っていたのに。その日からまた、スクワッドの空気が以前みたく明るくなっていった
最初に仲良くなったのはヒヨリだった。訓練のあと、ヒヨリがお腹を空かせてたときに、自分の食糧を分けてくれたらしい。なんでも、捨てるのも勿体無いからあげるって。それ以来ヒヨリはタクミの後をついて回るようになった。…最近はタクミの朝食をくれないかと頼み込んでいる。ヒヨリ…流石にどうかと思う
次に仲良くなったのはミサキだ。最初はタクミを警戒してたけれど、ある任務のとき。ビルの壁が崩れて、タクミとミサキとヒヨリが個室に閉じ込められたことがあったの
アズサとサオリ、二人と一緒に急いで瓦礫をどかしてた。ミサキは閉所恐怖症で、狭いところだとパニックを起こすかもしれないから。結局、ミサキ達を見つけられたのは、夜になってからだった。サオリが心配の余り、道の安全性を確保した瞬間に走り出して、アズサと二人でヘトヘトになりながら追いかけたことを覚えている
サオリの背中に追いついて、近くでヒヨリの声がしたから声の方に向かったの。そしたらそこには、手を振ってるヒヨリと、眠っているミサキ。そしてミサキの手を握ってるタクミがいた。あの時のミサキの寝顔は(本人は絶対に認めないけれど)見たことないくらい安心しきってた。そのあと、みんなでアリウスに帰る途中もタクミの手を離さなかったから、仕方なくタクミが背負って帰った。それからミサキは、何かと理由をつけてタクミと一緒にいるところを見かける。…そのことをヒヨリが指摘すると、ヒヨリのほっぺを思いっきり伸ばしてた
アズサとタクミは自然と仲良くなっていた。二人とも虚しさなんて吹き飛ばすくらい明るいからか、一緒にいることが多かった。訓練の時や任務で移動するときも一緒。…叱られるときも大体二人一緒だった。アズサがトリニティへ入学することが決まったときは一番に喜んでいた…あの二人を見る時のサオリは、眩しいもの見るように目を細めてたっけ
タクミがきたから、スクワッドは、以前よりも明るくなって
タクミがきたから、みんなが生きる気力を抱けた
タクミがきたから、私はまた、笑顔になれた
だから、マダムがタクミを使い捨てにするって聞いて、サオリがみんなで逃げることを提案したとき、だれも反対しなかった
「ミサキ、準備はいいか?」
「問題ないよ、リーダー。いつでも行ける」
ミサキは携帯式対空ミサイル、セイントプレデターを壁に掛け、かつてないほどに張り切っている。その様子からは、以前までとは比べ物にならないやる気がみえる
「ヒヨリ、あまり荷物を大きくするな、急いで行動するからな」
「は、はい…詰め込めるだけ雑誌と食料をリュックに詰めましたから」
ヒヨリも持っていけるサバイバルグッズや全員分の食糧、趣味で集めた雑誌をリュックに詰め込み、重量級ライフル、アイデンティティを背中に背負う巨大なガンケースに収納している…リュックがはち切れそうだ
「姫、そろそろ行くぞ」
【うん、サオリも、その装備で大丈夫?】
「ああ、大丈夫だ、問題ない」
アツコの装備するSMG、スコーピオンEVO3
サオリの装備するAR、アリウス製アサルトライフル
どちらも問題なく機能する
「えへへ、人生は辛いものですけど、苦しいものですけど。みなさんと一緒なら怖くないです……んぇ?」
「これからはアリウスから追われる身……まぁ、いいか。あいつが死ぬくらいなら、このくらいは」
【そうだね、みんなで脱出しよう】
各々が決意を胸に士気を高める中、この部屋に入る影が一つ
「そろそろ消灯の時間だよリーダー。トラップは?」
「問題ない。各部屋にトラップも仕掛け終わった。念の為、回避された後のトラップ、それも回避されたあとのトラップも仕掛けた」
サオリは、ここに来るまでに、他のアリウス生の部屋にトラップを仕掛けていた。逃走がバレたときのため、少しでも時間を稼ぐためだ
「それじゃあ、タクミ。逃げるぞ」
そして、この逃走劇の引き金となった人物、タクミ。彼女はその手に6連発型軍用リボルバーグレネードランチャー、ウォーマシンを持ったまま直立つしていた。返事がない、ただの屍のようだ…
「タクミ?どうしたんだ?ボーッとしているが…はっ、まさか!どこか体調が悪いのか!?…ッすまない!!私は気づいていなかった!!」
サオリはそう言ってあなたの…いや、私の肩を掴み前後に揺らしている
サオリはすごいな、本当に気分が悪くなってきたよ、うん
「ちょっリーダー!そんなふうに揺らしたら余計気分悪くなるよ!……それはそうと、タクミ、本当に大丈夫?具合悪かったら言ってね?私も………その、心配r「うわぁーん!おしまいですぅ!リュックが弾け飛びました!やっぱり人生は辛く苦しいものなんですねぇ」…ヒヨリ」
揺れていた視界が元に戻ると、そこにはミサキによってほっぺがグニグニされているヒヨリの姿があった。まぁ、詰め込みすぎだもんな、アレ
…さて、現実逃避はやめだ。みんなが私の為にアリウスを裏切って、一緒に逃げてくれる。…うん、正直すごい嬉しい。こんなに暖かな気持ちになったのは生まれて初めてってくらい
「ミサキ、そこまでにして別のリュックに詰めるぞ。ヒヨリ、怪我はないか?ないならいい…今度は一緒に詰めような?」
サオリのおかげで大体なんとかなった。サオリはすごいな(小並感)
…よし、私も覚悟決めるか
「サオリ、ミサキ、アツコ、ヒヨリ、心配かけてごめんなさい。私は大丈夫ですから、いきましょう」
みんなが私に視線を向ける。どうやら大分心配されていたらしい…。
心配をかけてごめんと思っているのも本当だ。でも、それと同じくらい
に、心配されて嬉しく思っているんだ、私
「大丈夫なんだな?ならいい……さて、これより作成内容を説明する」
リーダーの一言で、意識が変わる。そうだ…
「今回の作戦は、アリウス分校、およびアリウス自治区からの脱出、および生還」
外の世界は、どんななのだろうか?ヒヨリの雑誌でみた通りの世界なのか?
「想定される敵はアリウスの全ての大人、子供だ。作戦目標はアリウスの外に繋がるカタコンベ」
それとも、アリウスと変わらず、恐怖に支配されているのだろうか?
「そこに辿り着くまでに、誰一人欠けてはならない、いいな……よし」
まぁ、どんな場所でいいさ…だって
「それではこれより、アリウス脱走作戦を開始する」
何があっても、みんながいるから。怖くなんてない…さぁ
「アリウススクワッド、これより作戦行動を開始する」
行こうか
続きます
※時系列的におかしかったのでアズサの描写を修正しました