600年前、“竜帝”が“プレイヤー”を喚ぶ。
500年前、“呪いの王”が“八欲王”を鏖殺。
400年前、◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️。
そして現在……
※両面宿儺ご本人ではありません。あと思い付きなので続くかも分かりません。
ヤルダバオト──デミウルゴスはその悪趣味な仮面に隠された双眸を見開く。
無数の悪魔を従え、王都リ・エスティーゼを、立ち塞がったアダマンタイト級の冒険者チーム、“蒼の薔薇”を筆頭とした有象無象を蹂躙せんとしていた偽りの魔王は、然れどその寸前で硬直してしまう。
宛ら、蛇に睨まれた蛙のように──。
「……何者ですか?」
距離にして約50m。そこに立つのは、“桃色”の頭髪をした和装の男。顔に刺青があり、若く青年と言って差し支えの無い外見にも拘わらずまるで老境のような雰囲気を身に纏っている。
目の前の敵対者達はもはや眼中に無い。突如として現れたその男の放つ強烈な“存在感”の前ではこの場にある何もかもが霞む。
何よりも驚愕すべきなのが、そんな存在がここまで接近しているのに今の今まで全く気が付いていなかったということ。
「なっ……貴様は……っ!?」
すると仮面の吸血鬼──“イビルアイ”と名乗っていた有象無象の中では最も強い力を有していた少女が声をあげる。
「──“両面宿儺”! 王都に来ていたのか!」
「随分と愉快なことになっているな? キーノ」
心底嫌そうにその名を呼ぶ声に対し、男は嘲りを多分に含んだ笑みを浮かべた。
リョウメンスクナ──それが男の名だとデミウルゴスは認識し、ナザリックが未だに把握出来ていなかった強者の実力を見極めんと観察し──。
「──さて」
瞬間、ぶわりと冷や汗が全身から噴き出す。
こちらを視た。
ただそれだけだというのに、先程までのデミウルゴスの思考は全て掻き消され、一つの感情に支配される。
──“恐怖”。
呼吸すらも忘れてしまう。それは自らの死を幻視させられ、本能的に相手が自分達よりも圧倒的に格上の化け物であると悟る。
それこそ、我らが主たる“至高の御方”よりも──。
(は?)
己は、今何と考えていた。
(ば、馬鹿な! そのようなことがあるはずが──!?)
あまりにも不敬。己が思考を恥じ、この身に流れる血液が沸騰しそうな程の激情に駆られようとしたその時であった。
「ははっ 何だお前」
男が笑う。
デミウルゴスの胸から血が噴き出したのは、それとほぼ同時だった。
「がぁっ……!?」
「少々見縊っていた。三枚に卸すつもりだったが、なかなかやる」
遅れてやってくる激痛に顔を歪める。これを眺める男の顔はまるで新しい玩具を見つけた童のよう。
「どれ、少し味見してやろう」
「ッ! 悪魔の諸相──」
攻撃された。
辛うじてそう認識出来たデミウルゴスはその身を変化させる。
力の差は歴然。故にまともに戦うつもりはなく、僅かでも気を逸らした隙に逃亡するつもりだった。
キンッ
尤も、
「あ────?」
時既に遅し。
仮面に罅が入る。何かが撫でるような感覚がしたかと思えば、視界が
デミウルゴスは困惑し、そのまま息絶えた。
「おっと……すまんすまん。存外、軟らかかった」
崩れ落ちる肉塊に、触れるまでもなかったと男は些か拍子抜けした様子で心にも無い謝罪を述べた。
一部始終を見ていた冒険者や王国兵士達は戦慄する。あれだけの強さを誇っていた魔王ヤルダバオトが、何も出来ぬまま瞬く間に葬り去られたという事実に。
思うがままに暴れていた配下の悪魔達は主の死に茫然とする。駆け付け、英雄になる予定だった“漆黒”もまた同様だ。
皆が、動けない。
「思いの外、食い出が無かったな。此奴の輩の方に期待するか……」
唯一、男だけが仮面が砕け、露になった蛙のような醜悪な素顔を物足りなさげに見下ろしつつ、そう呟く。
今この時、この瞬間、アインズ・ウール・ゴウンは、ナザリック大墳墓は、漸く思い知った。
──この世界に君臨する、“呪いの王”を。