−011
怪奇現象にしつこくシロコを探すように言われてから、実に一週間と少しが経過した。
この一週間、ホシノが夢を見るようなことはなかった。そしてシロコに話しかけることもなかった。
だから、進展は全くと言っていいほどない。全くと言っていいほどというか、全くない。
何というか、話しかけてしまったら色々と怪奇現象の思うツボに嵌ってしまうような気がしてならないのだ。しかし話しかけないことには何も始まらないし。
というか、そもそも探すって言ったって、当のシロコは普通に学校にいるし。意味が分からない。怪奇現象は「探す」って言葉の意味を知らないのだろうか。
だから、まあ。
正直に言うなら、不気味ではある。
「……シロコ先輩とは、話してるはずなんだ。それこそ言い間違いが増えた日に、ちゃん付けで呼ぶとかいうとんでもないミスをやらかしてるはず」
先輩であるシロコをあろうことかシロコちゃんとちゃん付けで呼び、それに気付かぬままタメ口で話しかけ続けるとかいう暴挙を、既にホシノはやらかしているはずなのだ。
だというのに、怪奇現象は「シロコとは直接話していない」とか言っているのだから、もう何が何だか分からない。ホシノが足踏みをしているのは、一週間ほどこれについて考え込んだからでもあった。
それに加えて質が悪いのは、夢の件とは違って他人への相談がしづらいということだ。そもそもシロコを疑っている状態にあるわけだし、何というか、現状を上手いこと文章としてまとめた上で他人に伝えるというのは、中々至難の業であるように感じる。
セリカやアヤネ達にも説明するとなった時、果たして自分に上手く説明できるのだろうか。正直なところ、ホシノにはそんな自信はなかった。
と、そんな感じで。ホシノが教室でああでもないこうでもないと頭を悩ませていたところで。教室後方の扉が大きな音を立てずに開かれ、そしてそこから入室してきたのは、毎朝ホシノを家まで迎えに来るユメその人であった。
「あっ、ホシノちゃんこんな所で何して──」
「でも、こんなところでまごついてないで、話しかけてみないことには始まらないよなあ……」
「──るの……えっ、なになに? もしかしてホシノちゃん──誰かに恋でもしてるの!?」
「ああ、ユメ先輩こんにち──はあっ!?」
ユメが入室するなりそんな頓珍漢なことを言うものだから、流石にこれは反応せざるを得ないだろう。というか、否定せざるを得ない。否定しなければいけない。
放っておいたら、多分根も葉もない噂話がそこら中にばら撒かれてしまう。最悪ユメには勘違いされたままでもいいから、この妙な風説が流布されることだけは回避せねばならない。
ホシノは一秒足らずでそこまで思考を回して、ユメに動きの起こりを気取られるよりも早く、何よりも速く行動を開始した。
「恨むなら自分を恨んでください!!」
「えっ何!? ホシノちゃんいきなりどうしたの──ひぃんっ!?!?」
「──これでよし……いや、良くはないんだけど」
ホシノが取った行動は、よりにもよって当て身。もっと他にやりようはいくらでもあっただろうに、何故かホシノは一番暴力的な手に打って出た。
まあユメは気絶してしまったが、これでもう口を滑らせることもないだろう。あとはここ数分の記憶を無くしてくれれば最高──最善なのだが。上手くいくことを願うばかりだ。
と、そこまで考えて、ホシノは開きっぱなしになっている教室の扉を閉めるため、教室後方に視線を向けた。
「──……あっ」
そこには、人がいた。
しかも、ちょうどホシノがここ一週間にも渡ってどうするべきか考える原因となった張本人が。
アビドス高等学校第二学年、砂狼シロコ。
怪奇現象が「探せ」と言った彼女は、まるで「『ホシノが誰かに恋してる』って面白そうな──じゃなくて、興味深い話がどこからともなく聞こえてきたから急いで走ってここまで来たんだけど、それがどうしてこんな状況──ユメ先輩をホシノが気絶させてるとかいう状況に発展してるの? というかホシノ、どんな理由があったとしても、大切な先輩を相手にして暴力に訴えかけるなんてことはしたらダメ。そんなことしたら、怒るしかなくなっちゃうよ。私じゃなくて、ノノミが」とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「いや、これはその、違うんですシロコ先輩。えっと、違くはないんですけど、違うっていうか……だから、とにかく、違うんです」
シロコは「そこまで必死に弁明されると、逆に怪しい……というか、この状況でホシノ以外がユメ先輩を気絶させられるとは思えない。ほら、アヤネとセリカがこんなことするとは思えないし、ノノミは優しいから基本的に怒らないし……消去法で、犯人はホシノ。そうでしょ?」という表情を浮かべた。
「うぐっ……いや、でも! これには谷よりも深く海よりもなお深い理由があって──」
シロコは「ん、どれだけ深くても、ダメなものはダメ。これが例えば正面から正々堂々お互いに相対した上での真剣勝負とかなら、また話は別だけど、でもどうせホシノのことだから、ユメ先輩が油断して呆気に取られてる内に……当て身? 多分そういうので、こう、首をぐいっとやって気絶させたんだと思ってたんだけど……どう? とにかくホシノ、不意打ちで気絶させてるでしょ」とでも言っているかのように見える表情を浮かべた。
「いやっ、だって! あのままだったらありもしない噂を流布される所だったんですから、しょうがなくないですか!? それなら、やられる前にやるしかないじゃないですか!!」
シロコは「ん、確かにやられる前にやらなきゃやられるっていうのはそう。だけど、ユメ先輩は話し合えばちゃんと分かってくれる。だから最初から実力行使でどうにかしようっていうのはダメ。ちゃんと話し合った上で、それでも──絶対にないとは思うけど、仮にユメ先輩が『恥ずかしがるホシノちゃんが見てみたい!』とか言ってやめる様子が全然ないなら、その時はもうやるしかないけど。まあいざやるとなったとしても、そうなったらそうなったでちゃんと計画を練った方が成功率は高くなるし、行き当たりばったりでやっても、今私がそうだったみたいに、偶然誰かに見られちゃうかもしれない。だからもしそういうことをやるつもりなら、銀行強盗の計画を練るみたいに入念に念には念を入れて、万が一にも失敗がないようにしないと。つまり私が何を言いたいのかって言うと、銀行強盗の計画を練るのは色々なことに応用が効くからみんなやった方がいいってこと。そうやってすぐに暴力で解決しちゃおうとするホシノは、可及的速やかに銀行を襲う計画を立てるべき。あ、あとそれと、先輩に対しては暴力を使うべきじゃない。特にユメ先輩はこういう争いみたいなのもあんまり好きじゃないから、結構な武闘派の私以外には基本的にそういう手を使わない方がいいよってことと、あと学校の中で銃を撃ったり走り回ったりして暴れると、多分ノノミが物凄く怒って、ちゃんと反省したって分かってもらえるまで三時間くらい口を聞いてもらえなくなるから気を付けてってことを言っておく。私が昔そういう状況に陥ってどうにもならなくなったことがあったから、念のためホシノにも情報を共有しておくね。ノノミが怒ると、私もあの時のことを思い出して背筋が凍る思いになるから……」と、様々な感情がないまぜになったかのような苦笑いをその顔に浮かべた。
「多分銀行強盗の計画は関係ないと思うんですけど……まあ、でも、そうですね。話もせず一方的に制圧したのは……私が悪かったです。許してもらえるかは分かりませんけど、ユメ先輩が起きたら全部正直に話して謝ってみます」
ホシノがそう言うと、シロコの表情はまるで「ん、絶対にそうするべき。私も、先輩と後輩の仲が拗れたりしたらあんまりいい気分じゃないし、この高校には六人しか生徒がいないわけだから、それならやっぱり仲良しな方がいいと思う。ホシノもそう思うでしょ? だってホシノ、アビドスのみんなのことが大好きなんだろうなって一目見れば分かるし、ユメ先輩には特に懐いてるように見えるし。あっそうだ、もし謝る時一人なのが不安だったりするなら、謝る所に一緒にいてあげるけど、どう?」と述べているかのような、いたずらっぽい笑みに変わった。
「……何かいい感じにまとめて同席しようとしてますけど、シロコ先輩のことだから『ホシノが私を頼ってきた。つまり私の勝ち』みたいな感じでみんなに広めるつもりなんじゃないですか?」
シロコは「いや、別に……そういうつもりで、言ってるわけでは、ないよ? 本当だからね……まあそれは置いておいて、私は謝り方には詳しい自信があるから、もし謝り方が分からないとかがあれば、色々相談に乗るけど」と、目を泳がせながらそんな表情を浮かべた。
「……誰にも話さないでくださいね? 言わないって約束してくれるんだったら、同席して私が変なこと言わないように見張っててほしいです」
少しだけ満足げな表情を浮かべたシロコは、まるで「ん、約束する。絶対に言いふらさないから、安心して。というか、初めから頼ってくれてればよかったのに……まあいいけど。後輩に頼られたら応えてあげるべきって、ノノミとユメ先輩も言ってたから」と言っているかのようだった。
「へえ〜そうなんだ! おじさん感心しちゃうなあ。ところでなんでさっきから一言も発してないわけ? 喋りなよ、シロコちゃん。」
「繧「繝薙ラ繧ケ鬮倡ュ牙ュヲ譬。2蟷エ逕溘?りソ鷹團縺ョ遐よシ?蛹悶↓繧医k莠コ蜿」縺ョ豬∝?縺ァ逕溷セ呈焚縺梧焚蜊?ココ縺九i縺溘▲縺溘?5莠コ縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺」縺溘い繝薙ラ繧ケ縺ァ縲∝ュヲ譬。繧定ウ?≡髮」縺九i謨代>蟒??。縺ョ蜊ア讖溘r蝗樣∩縺吶k縺溘a縺ォ豢サ蜍輔☆繧句ッセ遲門ァ泌藤莨壹?荳?蜩。縲ゅ↑縺ォ縺句幕繧区凾縲√?後s窶ヲ縲阪→險?縺??縺悟哨逋悶?」
裏。
−012
「もういいや。」
−013
「っぁ!?」
ホシノは飛び起きた。あれはなんだ、と思った。意味が分からなかった。自分は今、どうやらベッドの上にいるらしかった。それを把握できるまでに、大体三分くらいは時間を要した。
何があっても絶対に壁を見るな。
夢──悪夢。さっきまで見ていた景色は、そう形容するのが妥当だった。シロコが、文字に。文字が、文字で……違う、落ち着け。視界が文字で埋め尽くされるなんて、そんなことは現実的に起こり得ない。
いやまあ、さっきのは夢だったのだから、現実的なわけがないのだが──
「本当に?」
そんな言葉を吐いたのは、果たして誰だったのだろうか。自分の声ではあったが、自分なのかもしれないし、自分ではないのかもしれない。
全てを、全ての可能性を、排除してはいけない。もう疑うべくもないが、私は間違いなく怪奇現象に組み込まれている。考えるのを止めてはいけない。帰らなければいけない。無に帰さなければ。
何があっても絶対に壁を見るな。
……と、そこまで考え、辺りを見渡してみる。窓から朝日が差し込んでいて、その先に広がる透き通ったような青色が本当に綺麗で、それでいて、いつも通りの朝だ。
いつも通りに、いつも通りの、いつも通り。そこに疑問が挟まる余地など、万に一つもあるはずがない。大丈夫。大丈夫、だから──
何があっても絶対に壁を見るな。
「っ……さっきから、何なんだよお前……!」
突然告げられたその言葉。警戒の外側(あるいは内側に潜り込んでいたのかもしれないが)から投げかけられた忠告は、ホシノを一瞬でも動揺させるには十分だった。
「……というか、なんか展開が早いな……」
見てはいけない。絶対に、何があっても。怪奇現象は、確かにそう言った。それなら、多分見るのが正解なのだろう。ホシノはこんな状況でも、案外冷静だった。
だって、この怪奇現象にはいくつかのルールがあるから。そのことを私は、なぜか知っているから。
一つ目。続けばいいのにと考えてはいけない。
二つ目。考えた時点で怪奇現象は第一段階に進む。
その状態で無限を認識してしまうと、
第二段階へと移行してしまう。
三つ目。脱出方法が必ず一つは存在する。
そしてそれは大抵、奇想天外なもの。
四つ目。脱出できなかった場合は死に至る。
第二段階に移行さえしなければ、
生還の可能性はかなり高い。
五つ目。怪奇現象の内部では認識が重要。
恐れるから恐ろしくなるのだ。
六つ目。怪奇現象は情報共有を前提としている。
前と同じ対処法は通用しない。
常に怪奇現象の裏をかけ。
七つ目。もうどうしようもなくなったら、
その時は空色の髪の人を頼るといい。
きっと力になってくれるはずだから。
ルールがあること。それ自体は分かっている。だけど、対処法が全く分からない。自分一人では、どうしようもできない。
裏をかくって言ったって、夢の裏など分からない。おそらく現実なのだろうけど、それが一体何だというのか全くもって分からない。
怖がってはいけない。考えてはいけない。そう制限されているせいで、全く気が休まらない。何ならそのせいで、それらが増幅して──いや、よそう。
怪奇現象の裏をかく。それはもっとシンプルに、当初の想定と反対のことをするという風に言い換えたとしても、何ら問題はないだろう。
そう認識しているのだから、そうなるはずだ。
ホシノは躊躇うことなく視線を上げ、毎朝目にしている壁を注視した。
そこには、アビドス砂祭りのポスターがあった。
「……なーんだ、いつも通りじゃん」
だから何だというのか。そこにあるポスターは紛れもなくいつも通りのものだったので、怪奇現象が結局何を言いたかったのかは分からずじまいである。
もしかしてここではない壁のことを言っているのか? そうだったとして、だからなんだという話なのだけれど。
ともかく。
これはもう、一人でどうにかする問題ではないだろう。
「このままここで迷ってるより、早目にユメ先輩を頼ったほうが……あれ?」
私はそう呟いてから、ベッドを降り、朝の支度を始めようとして──なぜか制服を着たまま眠っていたことに気が付いた。寝る前の着替えも忘れるなんて、よっぽど疲れていたのだろうか。
「……まあ、それじゃあこのままでいいか──」
いやしかし、それにしても色々と不自然な気がするが……このままここに一人でいるよりも、急いで誰かと合流することの方が先決だろう。怪奇現象は一人でいる者を狙う法則があるらしいし、間違いではないはずだ。
「……この話、どこで聞いたんだっけ?」
怪奇現象のルールにしてもそうだが、一体私はこの話をどこで聞いたのだったっけか。ええっと、確か、私以外のみんなが怪奇現象に巻き込まれて……
「いや、違う。そうじゃなかった……はず」
まあ今は話の出所はどうでもいい。先ほどから何度も言っているが、私が今取るべき行動は迅速な合流であって、間違っても考察とかではない。
それで、えっと、ユメ先輩のことだから、多分アビドス高校の生徒会室にいるだろう。私はそんなことを考え、愛銃と盾を持ち、アビドス高校へと向か
「何で私がユメ先輩の盾を持ってるの?」
「……えっ? あれ、確かに、何でだろう──ッ!?」
いや。違う。そうじゃない。今気にするべきところは、そんなことじゃない。もっと重大な怪奇現象が、既に発生してしまっている。先ほどは偶然だと切って捨てたものの、しかし二度目となれば話は変わってくる。
怪異の方から話しかけられている。
ありえないことだ。あってはならないことだ。こちらが認識しているのはしょうがないことで、それを怪奇現象が補足していることとか勝手な忠告もまた、同様にしょうがないことだ。だけど、夢の中というわけでもないのに直接干渉してくるのは、ダメだ。
対処しなければ。早急に、迅速に、尚且つ冷静に。焦るな。ブレるな。誤るな。ここで打つ手は、決して間違えてはならない。
ノノミや繧キ繝ュ繧ウに電話をかけて判断を仰ぐべきか──否、それでは間に合わない。
つまり、この場で対処するしかない。となると、以前と同様の対応に出るしかない。それはつまり、ノノミとの約束を破ってしまうということを意味する。
が、やるしかない。ちゃんと説明すれば、ノノミ先輩はきっと私を許してくれるだろうから。優しさに甘える形にはなるが、仕方ない。
ホシノは、愛銃を自分に向けた。
一度深呼吸して気合いを入れてから撃つつもりのようで、その指はまだトリガーにはかかっていない。
「すぅっ、ふうぅぅ……ごめんなさい、ノノミせ」
「何を悠長に構えてんのさ?」
「──は?」
裏。
Eye of Horusのトリガーに指をかけた瞬間、銃口から飛び出した散弾がホシノの眉間に直撃し。
それによって、私の意識は吹き飛ばされた。
表。
−014
引きこもることは悪くない。
引きこまれることも悪くはない。
ただし、絶対に引きずり込まれるな。
−015
酷い眉間の痛みで目が覚めた。
それは単純に眉間からやってくる痛みというよりは、もっと重大なところ──例えば頭の内側だったりとか──から鈍く響いている痛みのように感じられた。
文句はあるかと聞かれれば、当然ある。本当ならばホシノは大声をあげ、どうにもならない内心を発散したいところだった。
が、しかし。それを口に出さないのは、そうも言っていられない状況に陥ってしまっているからなのだが。
「──……いったた……はあ。それで、今の何?」
痛む頭を押さえながらも、ホシノは周囲の警戒を怠ることはしなかった。この怪奇現象の中で油断することは、一秒先の安全を投げ捨てることと同義であるから──
「……本当に、どうなってんの……?」
警戒のため、周囲を見回して気付いた。ここは既にホシノの家ではない。しかしだからと言って、全くもって見たことがない場所であるかと問われれば、それもまた違うと言わざるを得なかった。
ここには一度──どころか数回来たことがある。ついこの間も、アヤネと二人で訪ねたばかりの場所だった。
「セリカちゃんの、家?」
アビドス高校第一学年、黒見セリカの家。
ホシノが見る限りでは、その空間はそっくりそのまま、ついこの間泊まりに行ったセリカの家だった。
文字通り、完璧に一致していた。
「いやいや──」
いやいや、流石にそれはないでしょ。そう口にしようとしたのだが、しかし視界に映る全ての情報が、全身全霊でここがセリカの家であることをアピールしている。
机の上に置いてある本『善悪の彼方』も。キッチンの棚に並んでいるの食器の数々も。テーブルも、ソファも、床に敷かれているラグも──疑うべくもなく、紛れもなくセリカの家のものだった。
しかしホシノとしては、それでもそんなわけがないと言わざるを得なかった。だって、そんなわけがないんだから。
自分の体が勝手に動いて、ショットガンの衝撃で気絶したと思ったら、目を覚ました時には場所が移動していて、しかもそこが仲のいい同級生の家だった。
つまるところが、怪奇現象。ホシノは明確に、怪奇現象の領域に巻き込まれてしまったらしかった。
いやそんな簡単なわけがないだろう。ホシノ自身、別に頭が良いとは思っていないが、しかしこんなチープな子供騙しで騙されるほど騙されやすい馬鹿というわけでもない。これで騙されるのはよっぽどの馬鹿か、馬鹿よりも馬鹿馬鹿しいお人好しだけだ。
そんなことは、怪奇現象の側としても承知の上なはずなのだが──ああいや、こういう余計なことを考えるのはよそう。変に学習されて進化されでもしたらたまったもんじゃないし。
それにまあ、明確な違和感が無いわけでもない。
何ならホシノは、内装がああだとか家具がどうだとかよりも、むしろそっちの違和感の方で怪奇現象に巻き込まれていると看破した節があった。
止まない砂嵐と止まった時計。
この違和感を、ホシノは既に知っていた。
「セリカちゃん……」
そう、他でもないセリカ本人から、ホシノはこの停滞した鏡面の話を聞いたことがある。その特徴から、脱出方法まで、余す所なく。
聞いたことはある、が。いつそんな話をしたんだったっけ? 確かに話した記憶はあるというのに、具体的な日付とかタイミングなんかは、全くと言っていいほど覚えていなかった。
「……まあ、いいや。脱出方法が割れてる密室なんて、わざわざ恐れてやる理由もない」
その辺り気にしていてもしょうがないので、ホシノはさっさとこの空間から脱出するための準備を始めた。えーっと確か、まずは全ての鏡面を視覚的に封鎖するんだったか。
差し当たってホシノは、洗面台の鏡を封じに行くことにした。そうすれば塞ぐついでに、左右の目の色だって確認できる。現状取れる手の中では、これが最も効率的で──
「……えっ?」
効率的で、手っ取り早い。そんなことを考えていたホシノの思考は一瞬にして疑問に覆い尽くされ、順調だと思っていた歩みは止めるしかなかった。
そうするしか、ない。そうしなければいけない。そうでもしないと、理解が追いつかないから。
「そこには、アビドス砂祭りのポスターがあった。
しかも、なぜかホシノの部屋にあるものが」
「私の……砂祭りのポスター? いや、でも、ポスターくらいなら別にどこにでもあるか……」
口ではそう言ったものの、しかし頭の内側では全く納得などできていない。だって、これはどう見ても私の部屋にあったものじゃないか。
いやまあ、どこを見てそう判断したのかと聞かれると、正直判断に困るのだが──直感と言うべきか、それとも本能と言うべきなのだろうか。これは自分のものであるという漠然とした確信があった。
「うーん……いや、もっと、はっきりした理由がある気がするんだけど……」
しかしそれでも、まだ納得が行かない。それでいいはずなのに、どうにも腑に落ちないものがあった。
ううむ、どうしてももやもやしてしまう。これではここから先もずっと集中できないままだろう。心中に渦巻く薄靄をさっさと取り除くためにも、ホシノはポスターを凝視してみることにした。
私がこ/の手/でび/り/びりにな/るまで/破/いた/ポ/スター/が/まる/でホシノ/を/責め/たて/る/かのよ/う/なとて/も険しく/鋭い/目付/きで/睨み付/けて/い/る/。/破ら/れたと/ころはセ/ロ/ハンテープ/で繋/ぎ止め/られて/いて、ひ/どく不恰/好だ/。
私が/破いた。
私の/せいで。
私が。
私が。
私が。
見るな。
「痛ッ──ぐっ……頭痛……?」
あと少し、もう少し時間をかけてポスターを見られたら、恐らくは何か分かっただろうに、すんでのところでホシノは謎の頭痛に見舞われ、断念せざるを得なかった。
今もまだ、頭の裏側が熱と鈍い痛みを帯びている。もう少しで、何か進展しそうなのに──しかし頭痛の発生源は、浮かび上がってきた記憶と全く同じところにありそうだった。
「……時間をおいて、後でもう一回見てみよう。そうすれば多分、何か分かるかもしれないし」
何があっても壁を絶対に見るなと怪奇現象はしつこく言った。今までにアビドスの皆から聞いた話から考えれば、ここに何か秘密が隠されていそうだ。
しかしこれは、後でも確認できる。だから今はそれよりも、セリカの家中の鏡面を封じなければならない。そして一刻も早く脱出して、ユメから怪奇現象に対処する方法を聞かなければ。
肝心のセリカ家の間取りだが、ここ最近泊まりに来た時に紹介されたのでほとんど把握できている。流石に細かい鏡面の位置までは覚えていないが、そこは虱潰しに探していけば問題ないだろう。
そう考えたホシノは、既にポスターで覆われている洗面台の鏡に背を向け、先ほど目を覚ましたリビングへと向かった。
「まずは、窓とシンク、それから食器棚とテレビを──って、思ってたんだけどなあ……」
しっかりと塞がなきゃ。と、そう意気込んでいたのだが、しかしどうやらその必要はなさそうだった。
だって、そうだろう。窓とか、シンクの金属部分とか、食器棚のガラスだとか、テレビの液晶画面とか、化粧品入れの中に入っていた手鏡だとか、それら全ての鏡面は。
揃いも揃って、スノーノイズを映していた。
「もう、なんなのさ〜!? おじさんがやろうとすること全部先回りして潰そうってわけ? そんな嫌がらせするくらいなら直接出てくれば──ぁ?」
私はややうんざりとした表情を浮かべながら、上体を脱力させたところで、自分に生じている違和感に気付いた。
話し方、というか言い間違いも、まあそうであると言えばそうなのだが、しかし今回は、そんな些細なことでは済まなそうな異常が発生してしまっていた。
「何これ──何でこんなに髪が伸びてる……?」
短かった自分の髪の毛が、いつの間にやら腰の辺りまである長髪へと様変わりしている。一体いつから……というよりは、もっとシンプルに、何故?
髪が急に伸びたから何だというのか。というか、私はこんな髪型にしたことはないのだけど──と考えていた次の瞬間。瞬きを一度した隙に、一人でに開いた窓の奥に、突然扉が出現した。
扉には、先ほども見たポスターが張り付いている。
開けるな。
「いや、いやいやいや……ちょっと待ってよ」
つい数秒前に、髪の毛が腰まで伸びていることに気付いたばかりなのだ。だというのに、こんなスピード感で目まぐるしく状況が変わってしまうと、正直処理が追いつかない。
なぜセリカの家にワープしているのか。なぜ私のポスターがセリカの家にあるのか。なぜ鏡面が突然砂で覆い尽くされたのか。なぜ髪が腰まで伸びたのか。なぜ扉が現れたのか。なぜそこにも砂祭りのポスターがあるのか。そのどれもに、未だ答えを出せていないというのに。
扉の先から聞こえてきたその音声──文章が発する音がどこかで聞いたことがある声なのも気にかかる。が、しかし、それがどこで聞いたものなのか、私には分からなかった。
と、ここで。私は突然、怪奇現象と思しき声が、先ほど夢から私が目覚める直前にかけた言葉を思い出した。
もういいや。奴は確かに、はっきりとそう口にしたのだ。そして今の、あまりにも早すぎる展開の速度。ここから推察できることは多々あるのだが、これまでの傾向から考えると、この発言の意図というのも自ずと読み取れてくる。
しかし、いや、まさか、怪奇現象に限って、そんなことがあっていいのだろうか。仮にそうだったとしたら、ますます怪奇現象の狙いが分からなくなるのだが……だが、考えれば考えるほど、そうであるとしか考えられない。
「……まあ、いいよ。どうせ私があの扉を通れば、怪奇現象が何をしたいのかなんて一発で分かるし──?」
まただ。また何かがおかしい。何だ、何がおかしい? 違和感はある。しかしその出所が分からない。違和感があることが、違和感がないことが、全て違和感に直結している。
全てがおかしいはずなのに。私はその違和感の正体を、全くと言っていいほど掴めなかった。
「……これを放置するのは、流石にまずいかな……いやでも、目の前の扉だってあと何秒そこにあるのか分からないし──」
流石にそんなことは──制限時間を過ぎると扉が消え、一生この空間に閉じ込められるなんてことはないだろうが、しかし何にせよ、疑ってかからねばなるまい。それはもはや義務みたいなもので、疎かにしているようではこの先の生存は保証されないだろう。
ともかく。異変を放置するのは確かに怖いものの、それより私の中では、扉の中に飛び込む方が先決だと判断したようだった。
「──よしっ。そうと決まれば、さっさと行っちゃおう。こういう時は大抵、迷ってても碌なことにならないしね」
私は足早にその扉の前まで歩いて行った。さっきまであんなに暴れ回っていた砂嵐はいつの間にか止んでいて、周囲の見通しはとてもいい。快晴だ。
扉の構造をじろじろと眺めてみるも、これがどこかに繋がっているとは思えない。裏も一応見てみたが、しかし普通のドアであるようにしか見えなかった。というかそもそも、このドアってどこかに通じているものなのだろうか。気づいていなかっただけで、実は元々あったものだったり……いや、それはないか。
どちらにせよ、消えるかもしれないと認識してしまった時点で、遅かれ早かれこの扉が消えてしまうことはほとんど確定している。だからまあ、さっさと扉を開けてその先を確認してしまおう。
ここまで散々引っ張っておいて何だが、多分扉を開けた先には何もないだろう。私はそんな風に考えていた──認識していた。故に、そうなるはずだ。
だから、そう、扉を開ければ、きっと、扉越しに見る、今と変わらない、景色が、見える……はず、なの、だけれど──
私は扉を開けた。
「──……あ〜、なるほど、そういう感じね?」
後ろを振り返る。正常な景色。そこは先ほどまでいた、セリカの家があった。変わったところと言えば鏡面のスノーノイズくらいのもので、それ以外に目立った変化はない。
もう一度扉の先を向き直る。異常な景色。そこにはいつか話に聞いた、雨雲号のコックピットがあった。
空間が。捻れて、歪んでいる。捻れて、歪んで、遡っている。
「……まあ、行くけどさ……」
一瞬罠かとも思ったが、しかしこのままここでまごついていても何も始まらない。私は大きなため息を吐いて、直後、思いっきり息を吸い込んで肺に酸素を取り込んだ。
アヤネに聞いた話の通りであれば。肺に酸素を取り込まずにここに踏み入ることは、もはや自殺行為と何ら変わらない。
もっとも、私はアヤネからそんな話を聞いた覚えはないのだが──なんて、そんな風に考えながら。
私は、空中の水中へと足を踏み入れた。
−016
たとえ水色でもそれを空色だと思うのなら、
きっとそれは空色なのだろう。
−017
結論から言ってしまえば。
酸素を目一杯取り入れてから雨雲号へと搭乗したのは、英断だったと言ってもいいだろう。予想通りに空中は水中で、想像通りに雨雲号は水で満たされていた。
現在私は、そのコックピットの中をぷかぷかと、くじらのように漂っている最中だった。
(……やっぱり。ここはアヤネちゃんから聞いた通り、一瞬でも水中かもしれないと認識したら、そうなるようにできてるんだ)
空中の水中。空に満ちた水。そんな話を私は、いつだかにアヤネから聞いた。この時重要なのは聞いたことそれ自体であって、いつ聞いたとかどこで聞いたとか、そういうのは全てどうでもいい情報でしかない。
一度聞いた。それなら知ってるでしょ? というか、こっちが覚えてるし。つまり怪奇現象は──怪異は腹立たしいことに、ここでもまた自分ルールを押し付けてきているわけだ。
もっとも。私はこの状況から脱出する方法を既に知っているので、多少の自分ルールに苛立ったりするようなことはないのだが。
それから、もう一つ分かったことがある。先ほどから、つまりは雨雲号を模した空間に足を踏み入れる前、セリカの家で常々感じていた違和感の正体。
怪奇現象の綴る言葉について。
少し荒唐無稽かとも考えたが、しかし私の視座から考えると、この解答がもっとも現状に適しているのではないか。そんな風に、確信している。
(……怪奇現象は、私の行動を余す所なく監視して、それをどこかに伝えている。さっきまでの私には分からなかったけど、今なら分かる)
気付いたきっかけは、「近付いているのは怪異ではなく私の方」というノノミの仮説。そして、セリカの体験を中心とした、対策委員会の面々が──私にとって「対策委員会」が具体的にどのような組織を指すのかは定かではないが──巻き込まれた怪奇現象から推察できる事実。
(対策委員会のみんなのおかげで分かった事実。全部の怪奇現象で、鏡面に──視認することに関わる異変が発生している)
捻れて歪んだ遡る逆さまの逆夢。
受動的にこちらを覗き込む鏡面。
遥か彼方の空色を乱反射する水。
闇よりも暗く塗りつぶされた窓。
錯し乱れた果てに訪れる蜃気楼。
これらの全てに視認──視て、認識することが関わっているのは、今更言うまでもないことだろう。
視認できるなら、視認されている。それはこちらに許された一方通行の特権なんかじゃなくて、あちらも同様に行使することの出来る、基礎的で基本的な権利でしかない。
つまり、覗かれている。深淵の方から、覗いてきている。視覚で認識されている。
ここまでが、対策委員会のおかげで分かった事実。そしてここからが、ノノミに相談したおかげで気付けた事実。
(ノノミちゃんは正しかった。怪奇現象が私に近づいてるんじゃなくて、私が怪奇現象に近付いてるんだ)
砂色の何か。ここ最近はめっきり見ることのなくなった例の夢だが、見なくなった理由については、ノノミを始めとしたみんなのおかげ──だと思い込んでいた。
いやまあ、あくまでも仮説でしかないから、本当にノノミたちのおかげという可能性もあるにはあるのだけれど、しかし現状私が考える限りでは、それよりももっとそれっぽい仮説が出来上がりつつあった。
(夢を見なくなったのは、怪奇現象を退治したからじゃなくて、もう夢を見せる必要がなくなったからなんじゃないの?)
つまり、私は既にしてやられていた、という仮説である。荒唐無稽に思えるかもしれないが、しかしこの仮説が正しいのであるとすれば、先ほど述べた怪奇現象の特徴と噛み合う部分が生じる。
例えば、そう。近付いてきてから何かするのではなく、そもそも姿を見せて存在を認識させることそれ自体が目的だったとか。恐怖演出によって不安を脳裏にこびりつかせることで、自らの影響力拡大を図ったとか。
考え出せばキリがないし、こじつけようと思えばいくらでもこじつけられるのだが、しかし説得力がある仮説となると、この二つが頭抜けているだろうか。私は水にゆらめく自分の髪を眺めながら、そんなことを考えていた。
(……さっきから、気になってたんだ。場面が変わるたび──扉を開いて先に進むたび、やけにしっかりと聞こえるようになる声が)
脱力している私は、まるで海藻のようにゆらぁと水に揺られながら、どこからか聞こえてくる声に、目を閉じながら聞き入っているようだった。
その姿はどこまでも自然体で──突然右目を開いたり閉じたりしているのが不自然ではあるが──普段の私と何ら変わらない姿を晒していた。
次の瞬間、突然ホシノは右手を前に突き出すような仕草を取った。が、しかし、その行動は途中でキャンセルされ、その場には中途半端に肘を伸ばしている私が残っただけだった。
一体、何がしたくてこんなことをしているのだろうか。多分、はたから見れば分からない。だが私は、この行動によって明確にとある事実を認識したようだった。
(やっぱり。怪奇現象は何故か、私の一挙手一投足を文字起こしして、誰かに語ってる。今までたまにしか聞こえてこなかった怪奇現象の声が、急にここまではっきり聞こえてきた理由、となると……)
やはり、扉を開いて進むごとに──遡るごとに、私は近付いているのだろう。砂色の何か、怪奇現象の本体に。あるいは、すでに近づき切っているのかもしれない。
だってそうでもなければ、説明が付かない。さっきからほぼ全ての行動を文字起こしされている理由も。それが何者かに向けて丁寧に語っているかのような文体である理由も。
それらの全てが私の脳裏で行われている理由も。文字起こしされた文章では、私という単語にホシノという振り仮名が振られている理由も。
何となく、分かっちゃいるけどさ?
(怪奇現象は、私の脳裏に潜んでいる。そして、夢は頭の中で見るものだから──)
「だからこれは。所謂、明晰夢ってやつなんだろうなあ、と。ぷかぷかと浮かびながら、そう考えた。」
(──だから、扉を開くたびに、近付くたびに、怪奇現象の声がはっきり聞こえるようになるのは、その分私が怪奇現象という存在そのものに近付いているから。そうだろ?)
なあ、おい、聞こえてんだろ、見えてんだろ。
もしかしてまだ気付いてないとでも思ってるのか?
だとしたら、それこそ。随分と悠長なんだな。
(気付いてるんだよ。表とか裏とか言って区別して、時々私の体を操っていたこと。アヤネちゃんとセリカちゃんの二人と話してた時とか、ノノミ先輩と話してた時とかさ。いやまあ、気付いてるってよりかは、今ここに来てようやく気付いたってのが本当のところなんだけど)
思い返せばこの怪奇現象には、不自然なところなど、それこそ無限にある。例えばノノミの例でいきなり現れたカウントダウンとか、買い出しに行った時のアヤネの砂人形とか。
恐らくノノミのカウントダウンは、たった今私の脳内で垂れ流されている怪奇現象の声なんだろうな。
アヤネの砂人形に関しては……私の体を動かしたのと同じだろう。なんとなく、そう思った。そう思うことにした。
それにしても、そっちが表を主張するとはねえ。私の脳裏に潜んでるくせして、これまた随分と大きく出たじゃないの。
そんでもって、あれだろ? 色々な手を使って私を殺そうとしたけど、殺せないから焦ってるんだろ?
(時系列を逆順に遡るのも、私の脳裏に居座り続けるのも、逆張りみたいな脱出方法を取らせるのも、そういうものなんだと認識させ続けて、逆を認識させ続けて、私と怪奇現象の立場を逆転させるための布石。違う?)
怪奇現象にそう問いかけてみても、特段反応が帰ってくるようなことはなかった。だが、今まで怪奇現象が取ってきた行動から考えれば、そうとしか捉えられない。
そうでなければ、一体何だというのか。他にないだろ。時折私の体を勝手に操って、私に擬態する理由なんて。
(まあ別に、何だっていいけどさ。お前は多分、私がビビってお前のところまで向かっていかないと思ってたんだろうけど……それは違うよ。お前の裏をかけば出られるってルールもあるし。というか、そう考えるくらいなら、お前は私の頭の中に入って夢を見せるなんて方法、使うべきじゃなかった)
だってここは、夢の中だ。明晰夢だ。
そして夢の主体は、怪奇現象ではなく私の方だ。
(ねえ、もしかしてお前、怪奇現象の方こそが私本人って認識させて、そういう方法で私に成り代わろうって……何も考えないで動いてる? だってさ、近付けば近付くほど、夢なんだってはっきり分かるようにしちゃったら)
「こんなことだってできちゃうよ」
私の周囲から水が消えた。呼吸ができるようになった。どうやらこの空間では重力が反転しているらしく、私は雨雲号の天井に立っていた。天井に立っているという状況は、本来あり得ない姿勢であると言って過言ではないだろう。目の前には先へと──怪奇現象の潜む場所──すなわち私の脳の最も深いところへと向かうための扉が出現していた。
「夢が夢だと分かっている状況のことを明晰夢って言うのは、世間的にも広く知られていることだよね。この場合重要なのはこの現状の名前とかじゃなくて、性質の方。つまり──明晰夢は認識次第でコントロールすることができるという事実」
私は得意げにそう語った。明晰夢……確かにそう認識はしているのだろうが、それにしたって影響力が強過ぎやしないだろうか。
そんな風に思っているであろう誰かに向けて、私は一応の解説を挟んでおくことにするらしかった。
「どうせさ、お前は……お前達はセリカちゃんの時もこうやって見てたんでしょ? 実際に見てたのか──今ここを見ているのかどうかは別として、そういうことだと仮定するけど……百聞は一見にしかずって言葉、知ってる?」
私はどこかの誰かにそう語りかける。
どうやら全ての言動を文字起こしされて、どこかに垂れ流しにされているのなら、その構造ごと利用してやろうという腹づもりらしい。
「どこの誰が何人この文字列を見てるのかは──読んでるのかは正確に把握出来るわけじゃないけど、もし今も読んでいるなら、それは無駄だからやめた方がいいよ。だって、そうでしょ?」
読んでるだけの奴が、体験している奴に勝るわけがないんだから。そう思うでしょ、ね? だからさ、今すぐ読むのをやめて?
ねえ、聞いてる? というか、見えてる?
私は「読むのをやめろ」って言ってるんだよ。
ねえ。
読むのをやめろ。今すぐ。
そこのスマホ版で読んでるお前に言ってんだよ。
そこのパソコン版で読んでるお前に言ってんだよ。
やめてくれないんだ。
……まあ、こんな小細工で読むのをやめてもらえるだなんて、毛ほどにも思っちゃいないんだけどね。
私の認識出来る限りの部分では確かに色々と出来るけど、逆説的に、私に近付いている怪奇現象も似たようなことが出来るってことになるし……正直、あんまり意味があるとも思えないな〜。
「まあいいや、やめてくれたのならそれはそれでいいし、やめてくれなかったとして、実際にこの身で体感している私の認識の方が強いのは分かりきってるし……というかそもそも、この夢の主体は私だしね。好き勝手はやらせないよ?」
とまあ、そんな感じで。
現状に一応の決着を(自分なりに)付けた私は、次の段階へと進むために、目の前の──天井を床とした扉に手を伸ばした。
「あれ、私の家に貼ってあるポスターが、どうして扉に貼ってあるの?」
「──……は? ポスター?」
口に出したな。
声に出したな。
「えっ、いや、何で……? だって、さっきまで、普通の」
普通の扉だったけど、一瞬でもそうだと認識したんだから、そりゃあ、そうなるよ。
「何で、ここに、だって、さっきまで、セリカちゃんの家に」
怪奇現象には。理屈しか。通用しない。
だから、認識したきみが悪い。
だから、認識させた私が悪い。
でしょ。
ねえ、私。
開けるな。
「ッ──!? なに、これ……また頭痛っ……!?」
私がこ/の手/でび/り/びりにな/るまで/破/いた/ポ/スター/が/まる/でホシノ/を/責め/たて/る/かのよ/う/なとて/も険しく/鋭い/目付/きで/睨み付/けて/い/る/。/破ら/れたと/ころはセ/ロ/ハンテープ/で繋/ぎ止め/られて/いて、ひ/どく不恰/好だ/。
私が/破いた。
私の/せいで。
私が。
私が。
私が。
見るな。
「いちいち言われ、なくても……ぅぐっぁ!?」
そういえば、さっき自分で言ったんだった。
私に出来ることは、怪奇現象にも出来るって。
「いっ、いきなっ、り……あっ、痛っ、頭……ぁ!」
じゃない。今気にするべきはそんなことじゃない。頭が痛い。脳が痛い。脳裏が痛い。多分この頭痛も怪奇現象のせいだろう。それならばさっさと扉を通って次のエリアに行くべきだ。行って本体を叩くべきだ。それが一番手っ取り早い。楽になれる。楽になる。はずだ。そう認識すればそうなる。今までもそうだった。だからそうなる。どうにかなる。なりそうだ。どうにかなりそうだ。比じゃない。比較にならない。お話にならない。話が違う。今までとはわけが違う。違う。何かが違う。目の前のポスターは何かが違う。もやもやする。分からない。イライラする。痛い。割れる。
「ぃ、っだ、いぃっあ゙、ぎぁ、あっあ、ぁあ゙っ、た、うああ゙ぁあ゙あ゙あ゙っだ、まぁ゙ う、わぇっ、わりぇ、われ、えぅ、ぇごっ、お゙っ、お゙え゙え゙ぇっ」
頭が。脳が。目が。歯が。早く。次へ。進め。早い。鼓動。痛い。流れ。眩い。暗い。視界。明滅。吐気。逆流。抑圧。嚥下。酸味。不快。痛覚。錯覚。落下。重力。回転。着地。衝撃。失敗。増加。歯軋。平臥。忍苦。紅潮。再発。抑圧。失敗。吐瀉。阻止。不可。嘔吐。反吐。誤嚥。窒息。閉塞。倒錯。匍匐。咳嗽。不可。不足。転倒。呼吸。困難。頭痛。血管。類似。水中。溺没。伏臥。痙攣。上転。強直。間代。苦痛。苦痛。苦痛。
これ以上読んでも、私が苦しむだけだよ。
ほら、だからさ、読むのやめよう?
私のためだと思って、ねっ?
へ〜、やめないんだ。私、かわいそうなのに。
まあでも、こんなんじゃ騙されてくれないよね〜。
私が痛がってる姿を見れば
やめると思ったんだけどな。
私は扉を開けた。
「……まあでも、今更気にする程のことでもないか。怪奇現象相手にいちいち現実の法則を期待するのも間違いだろうし……うん、もやもやはするけど、今は怪奇現象本体を叩くのが先決でしょ」
私が目の前にある扉を開けると、そこには見覚えのある光景が広がっていた(広がっていたというには少々狭いが)。
しかしまあ、これで私の仮説はほとんど正しかったことが証明された。やはりこの怪奇現象は──
「予想通り、遡ってるね」
そこで見た景色は、夜のアビドス高校の階段。
ノノミちゃんが巻き込まれた無限階段だった。
「ここの攻略法は知ってれば一番簡単だし、さっさと行っちゃおう」
私はそれを認識するやいなや、大して気負いもせず、これと言って大層なことをするでもなく、極めて自然体の、リラックスした状態でその空間に足を踏み入れた。
……えっ、頭痛はどうしたのかって?
さあ。生憎だけど、私は知らないよそんなの。
悪い夢でも見てたんじゃないの。
−01 8
物事を斜めに見るな。
どうせ見るなら、逆さまに見るべきだ。
−01 9
ここまでセリカちゃんの部屋を模した空間、アヤネちゃんが閉じ込められたって言ってた雨雲号っぽい空間と、順々に逆順で遡ってきたわけだけれど。
やはりというか何というか、ノノミちゃんが組み込まれかけた無限階段・廊下に関しても、大した変わりは無いように見えた。
この調子でここを脱出できれば、恐らく、というかほぼ確実に、次は繧キ繝ュ繧ウちゃんの──……?
「……さっきから思ってたけど、これ、誰なんだろう? 私はそんなこと──文字化けした文字列のことなんて考えてないんだけどな」
えーっと、まずユメ先輩でしょ。それからノノミちゃん。次にアヤネちゃんで、最後にセリカちゃん。うん、全員覚えてる。じゃあさっきの文字化けいよいよ何なの? 考えるだけ無駄かもしれないけどさ。
というか、そうだ。たった今思い出した。ついさっき扉にポスターが貼ってあったことだって、実のところ納得はしていない。
だって私が考えたのはあくまでも次の場所へと続く扉が出現しているということだけで、ポスターに関しては、自信を持って関係ないと宣言できるよ。
「……まあ、いいか。どうせまた怪奇現象が悪さをしてるんだろうけど、ぶっ飛ばしちゃえば解決するだろうし」
これまた随分と物騒な解決方法を企てたもんだけど、まあしょうがないことだよね。だって私がこの空間に閉じ込められてから──セリカちゃんの家から換算すれば、もう三時間はここにいるんだもん。
いくら攻略法が分かってるとはいえ、遡れば遡るほど、怪奇現象の殺意は増している。その辺り、どうやら怪奇現象は初めからこれを見越しているようにも感じられた。
というか、多分そうだろ。こうやって疲弊し切ったところで、どうにか私と入れ替わるつもりなんだろうね。うへへ、まさかそれまで私の脳裏に引きこもってるつもり?
「臆病者」
ノノミちゃんが聞いたという怪奇現象のカウントダウンは、既に止まっている。まあ向こうも階段を下り始めた時──もとい戻り始めた時には、カウントダウンは止まってたらしいし、特に不自然なことはない。
まあ今カウントダウンが止まってるのは、私が大急ぎで階段を後ろ向きに下ったからなんだけどさ。いや〜、流石にびっくりしちゃったよ。だっていきなり四十八から始まったんだもん!
四十九になっちゃうとマズいんだっけ? 怪奇現象もだいぶなりふり構わなくなってきてるねえ。そこまでしておじさんと入れ替わりたいわけ? いや〜、どうして……
「……どうしてそこまでして? そうだよ、考えてみれば、確かにそうだ。怪奇現象──怪異だからって、理由もなしにこんなことするわけない」
いやはや、それにしても、私と入れ替わる理由か。否、というよりは……私としか入れ替わろうとしない理由か。
そうだよね。シンプルに入れ替わるだけなら、私以外の四人と入れ替わったって良かったはずなのに。それをやらないってことは、多分私にこだわってる理由があるはずで。
まず大前提として、怪奇現象は初めから私をターゲットとして動いていた。それは間違いない……と思う。そうじゃないと、私が巻き込まれた怪奇現象がこんな構造になってる説明がつかない。何というか、その辺りから既に逆張りっぽい感じだ。
そう考えると、この怪奇現象って本当に一から十まで「逆」が大好きなんだね。現に今下ってる──じゃなくて戻ってる階段だって、普段とは真逆の動きを強制してきてるわけだし。
アヤネちゃんの時は正常とは真逆の姿勢。セリカちゃんの時は正常とは真逆の行動。ユメ先輩の時は
「何言ってんの? 怪奇現象に巻き込まれたのはユメ先輩じゃなくて繧キ繝ュ繧ウちゃんでしょ」
正常とは真逆の方向、じゃなくて真上に向かって──あれ?
「繧キ繝ュ繧ウちゃんの時だけ真逆じゃなくない?」
今まで私は、ノノミちゃんの時だけが例外なのだと信じて疑わなかった。だけど、ここに来て急にそうでもなさそうになってきた。どうにも、例外なのは繧キ繝ュ繧ウちゃんの方みたいだ。
というかさらっと流してたけれども、さっきから言い間違いが酷いな。いや、ノノミ先輩のことをノノミちゃんと呼んでいることもそうなんだけど、この場合は繧キ繝ュ繧ウちゃんの方。私はさっきからずっと繧キ繝ュ繧ウって呼ぼうとしてるのに……あーもう、まただ。
「ここまでしてくるってことは、何かそれなりの理由がありそう。でもなあ、私自身この文字化けが何を──誰を指してるのかはいまいち分かってないんだよねえ」
穴が空いてしまったかのように、私の記憶からその名前はぽっかりと抜け落ちていた。
どれだけ思い出そうとしても、その手前で何者かに抑え込まれているかのように、その名前は思い浮かばなくなる。欠片ほども、覚えちゃいない。
欠落して、欠損していた。
そしてそのことに気付かぬほど、私は愚鈍ではなかった。らしい。
「……順当に考えるならば、例の文字化けは次の怪奇現象に巻き込まれた子の名前なはず。そしてそれは、ノノミちゃんやアヤネちゃん、そしてセリカちゃんやユメ先輩でもない。第三者──この呼び方は流石に他人行儀すぎるかな。ともかく、対策委員会の内の誰かだと思うんだけど……」
現状私に分かることといえば、精々がこの程度。名前が文字化けしていて、おそらく知り合いで、怪奇現象に巻き込まれていて、対策委員会。
こうして挙げてみると、個人を特定できる要素があまりにも少なすぎる。これでは誰だか分からないのも納得だ。これ以上このことについて考えても、時間の無駄にしかならないような気がしたので、私は考えるのをやめた。
「そうだよね。それより今は、怪奇現象が私と入れ替わろうとしてる理由について考えなきゃ……って、思ってたんだけどなあ」
うーん、正直もう予想は付いてるというか、むしろそれしか考えられないというか……うへ、さっきからこんなんばっかりだね、私。
まさかこんな形であいつの言ってた、よく分かんない妙な話が役立つなんてね。やっぱり人生何事も経験ってやつなのかな。正直な話、あんな経験は二度とごめんだけど。
多分、あれでしょ、入れ替わろうとしてる理由。
「私の神秘」
不吉を身に纏ったみたいな大人──黒服が言っていた。私の神秘はアビドス最高の神秘だとか、暁のホルスだとか、そんな感じのことを色々と。
そういうオカルト的なのにはあんまり興味が無かったんだけど……まさしくそのオカルト的なのに巻き込まれている以上、ここには何かしらの関連があると考えるのが普通……だよね?
「まあ、仮にそうだったとして、だから何なのって感じだけど。だって神秘を理由に私と入れ替わったとして、じゃあそれ使って何やるの? まあ神秘ってややオカルト風味なところがあるし、それこそオカルトの権化みたいな怪奇現象が反応するのは自然な気もするけどさ」
階段を戻りながらそんなことを考えている私の姿は、第三者から見た場合はどのように写っているのだろうか。多分、ひどく滑稽なんだろうなあ。何となくそんな気がする。
だって、考えてもみなよ。街中で、しかも一人でこんなことしてる人がいたら、間違いなくその人って不審者とかの類でしょ。まあ私がそうなってる姿は文章にされて垂れ流されてるわけだから、人のことをどうこう言える立場でもないんだけど。
うら若き花も恥じらう女子高生であるおじさんとしては、こんな姿をシャーレの先生とか対策委員会のみんなに見られたりでもしたら、数日寝込んじゃうかも〜。毎日お昼寝してるから、実質寝込んでるみたいなもんだけどさ。
「……シャーレの、先生? 誰それ……対策委員会とも関係あるのかな──あっ。この先生って言うのが例の文字化けちゃんの可能性も、なくはない、か?」
何らかの方法で記憶を忘れさせられている(と推測される)以上、この可能性も考えねばなるまい。シャーレの先生なる人物が女性であった場合、私が先生をちゃん付けで呼んでいた可能性もある。
先生と呼ばれているのだから、まず間違いなく相手は大人だろう。それならば──
「──あー、でも今『先生』って呼べてるってことは、文字化けちゃんとは関係ないのかな……なんかさっきから、分からないことばっかり増えていって嫌になっちゃうよ、本当にさ」
無限階段よろしく話題もループしてしまっている。いやまあ、階段の段数は順調に減り続けているし、そろそろゴールが近そうな気配もするのだけれど。
つくづく、対策が重要なのだと実感させられる。後輩のみんなに苦しい思いをさせてしまったことに関しては申し訳ないが、しかしそのおかげで私が大した被害を受けることもなく、こうして無事に行動できている。感謝の念が尽きることはなかった。
とりあえず怪奇現象が私を狙う理由として、現状最も有力な仮説は、やはりこの身に宿った神秘とやらが関係しているというものか。持ちたくもない力など邪魔なだけだが、しかしこれに助けられた場面も多々あるわけだし、中々そのあたり、複雑な思いを私は抱いていた。
だけどなあ、ただ神秘が強いみたいな理由だけで、怪奇現象が私を狙ってるとは、少々考えづらいんだよね。何かを見落としてる気がするんだけど……今の所分かるのは、やっぱりこのくらいかなあ。これ以上考えても、劇的な進展があるとは考えられないし、それに──
「目の前にも扉が現れたから、できるだけ早く次の場所に進まないといけないしね」
開けないで。
「……は?」
怪奇現象の言葉と共に、目の前に例の扉が現れた。以前までに現れたそれと、特段変わりは無いように見える。が、それはおかしいだろう。
だって私は、まだ脱出条件を満たしてないんだ。それなのに、まだ途中もいいところだというのに、何故急に次の領域へと続く扉が現れたのだろうか。正直、意味不明だ。
まだ、階段は二十段以上ある。ゴールには程遠い。だというのに、何故このタイミングで、扉が出現したのだろう。怪奇現象が諦めた? いや、そんなタイプとは思えない。
……それに。あれもある。
「また、砂祭りのポスター……?」
それは、やはり、見分けが付くのだ。
そんなはずはないのに。ないはずなのに。なのに。
私がこ/の手/でび/り/びりにな/るまで/破/いた/ポ/スター/が/まる/でホシノ/を/責め/たて/る/かのよ/う/なとて/も険しく/鋭い/目付/きで/睨み付/けて/い/る/。/破ら/れたと/ころはセ/ロ/ハンテープ/で繋/ぎ止め/られて/いて、ひ/どく不恰/好だ/。
私が/破いた。
私の/せいで。
私が。
私が。
私が。
見るな。
なんで、このポスターが私のものだと分かる。それが分からない。理由が。理屈が。理不尽なまでに、理解不能なままだ。
何が、どうなって、どういうことだ。分からない、分からない、怪奇現象の考えていることなんて、一つも分からない。分かってたまるか。そんな、そんなことなんて、分かったところで、何の意味もないってことは分かってるんだから。
寒い、いや、暑いのかも、しれない。手汗が、冷や汗が、止まらない。止められない。止まってくれない。それは、まるで、私の、体が、私の、ものでは、なくなって、いくかの、ような、錯覚を、引き起こして、いて、そのこと、が、どうしようも、なく、私には、薄気味、悪く、感じ、られて、しまって、思考が、纏まら、ない、のが、とても、これ、以上、ないほど、の、恐怖、を、私、に、与え、て、いて──
──本当はさ。
「とっくに気付いてんだろ。」
やめてくれ。
私は、切にそう願った。
「……知らない。何も、なんにも、知らない。私は、私は、小鳥遊ホシノは……知らないんだ、そんなこと、知らない。知る由もない。知ってるわけない。ないんだ、ないんだよ──」
知らない。知らない。知ったことじゃない。
そっちの都合とか、今は関係ない。
耐え難い。耐えられない。だって、本当に知らないんだ。ポスターを見てこんなに震えている理由なんて。肩を抱いた手に上手く力が込められない理由なんて。
開けるな。
「ッ──うるっ、さい……! 開けなきゃ、開けないと、私がずっとここにいる羽目になるだろ……!」
さっきからなんなんだ、開けるなとか、見るなとか、いちいち命令してきやがって。腹が立つ、本当に腹が立つ。
むしゃくしゃした心持ちのまま、私は髪をくしゃくしゃと握るかのように、頭を掻き──そこで、私の髪が先ほどよりも短くなっていることに気が付いた。
「な、なんで…………あっ、そっか」
そうだった。遡るんだった。この怪奇現象の中では、過去に向かって、戻っていくんだった。
となると、やたらとイライラするのは、精神が未熟だった頃、つまりは昔の自分に戻っているからなのだろうか。いや、別に今だって成熟しているわけではないのだけれど。
昔の自分に戻る? 何を言ってるんだ、私は。戻るは戻るでも、元に戻るんだろ。この二つは似ているようで、結構違うぞ。
うーん……どうにもあのポスターを見てから落ち着かない。何というか、胸の辺りがちくちくと刺されている感覚だ。浮き足立っているというよりかは、足を取られて浮かされている。宙吊りに近い。
「……進む、しかないよね」
罠かもしれないが、まさかこの怪奇現象がそんな分かりやすい手に出るとも思えなかった。こいつの性格上、このまま戻り続けた場合の方に罠を仕掛けるはず。
逆張りの権化だから、多分このくらいはやってくるでしょ。これ見よがしがそのまま答えとか、そういうのやってきそうじゃん。
そんなことしないんだけどなあ、と思いつつも、私は扉に手をかけ、そして思いっきり力を込めてガラッと音を立てながらそれを開けることにした。こういうのは迷っている時間が長ければ長いほど、選択した後の後悔も増すものだ。だから、さっさと開けるに限る。
私は扉を開けた。
扉を開いた先には、予想通りに果てしない灼熱の砂漠が広がっていた。「そうくるか」と思いながら、そこに私は、足を踏み入れた。
いや〜、しかしあれだね。分からないこともちょっとずつ減ってきたというか、何というか。今までに出した答えはそのほとんどが推測だったけど、そう認識している以上、そうなるはずだから、その辺りは心配してないんだよね、実のところ。
だからまあ、こうなることも、きっとどこかで想像していたんだろう。したつもりはないんだけど。
やたらと首元に日が当たっている感じがしたのが気になって、そこに手を当ててみた。さっきまでよりも──無限階段の時よりも、髪が短くなっている。服装も変わっているので、ようやく一年生の頃の私に戻ることができた。どうやら私は、正解のルートを選ぶことができたらしい。
戻れた。
よかった。
「……こっちはさ、まだそこまでの心の準備ができてなかったんだけどなあ……」
それで終われば、よかったんだけど。
「──そんな顔しないでよ、私。」
灼熱の砂漠。どこまでも続くアスファルトの道路。そのど真ん中──ちょうどセンターラインの真上で。
私の姿をしたホシノは心底楽しそうにそう言った。
正真正銘、ここで決着がつく。
髪の長い自分を見ながら、私は固唾を飲んだ。
−020
「いやぁ、本当によく来たよね、こんな辺鄙なとこまで。立ち話もなんだし……って言えればよかったんだけど、周りは見ての通り何にもなくて、あるものと言えば砂くらいのものだから、悪いんだけど立ち話で我慢してね」
「言ってろ。どうせこの後、お前は立ってないはずだから。それで? わざわざこの段階で姿を表した理由はなんだ。お前のことだから、どうせそれも認識に関係してるんだろ」
それを言われると困るんだけどなあ、とでも言いたげに、ホシノの姿をした怪奇現象は苦笑を浮かべた。その仕草は誰が見てもホシノ本人のもので、何も知らない人が二人を見比べた場合、そっくりな姉妹と勘違いしてもおかしくはないだろう。
とにかく。私の目から見ても、目の前のホシノはホシノだった。紛れもなく、限りもなく本物に近い、偽物。模造。いわゆるドッペルゲンガーと形容するのが適切なように、私には感じられた。
「うへ、それにしても、本当に昔のおじさんにそっくりだね〜。ふむ、なるほどなるほど……こんなに感じが悪かったとは、これは流石に反省しないといけないかも?」
「……人のことを見て、あげく勝手に散々こき下ろすのはやめてほしいんだけど。私の記憶から生まれた偽物のくせに──」
「ああ、今そういうのいいから。偽物とか本物とか、どうせこの後はっきりするしさ」
「──は? お前、何を言って……」
私がそう言うと、目の前の、私そっくりのホシノは、心底どうでもよさそうに笑った。多分、あの感じからして、本当にどうでもいいんだろう。そのことに気付いた私は、なんだか無性に腹が立った。
なんでお前はそんなに余裕綽々なんだ。どうしてこっちだけ焦らなきゃいけない。そんな私の気持ちを煽るかのように、頭上の太陽はいつもと変わらず燦々と輝いていた。
いや、しかし、それにしても暑い。先ほどまで夜の学校にいたから、その落差で余計に暑く感じてしまう。既に汗が滴り始めているあたり、そこまで長居はしない方がよさそうだった。目の前の怪異は汗一つかいていないのが、やはり苛立たしかった。
「……まあいい。お前が話し合おうって言うのなら、一回だけそれに応じてやってもいい。ユメ先輩たちを巻き込んだことに関しては……どうしても許せないから、その分の痛い目には遭ってもらうけど」
「うへ、これまた随分と物騒なことを言うねえ。そこは普通ちゃちゃっと許してさ、和解して入れ替わりをやめてもらおうって考えるのが普通じゃない?」
「最低限に留めてやるって言ってんだよ、偽物。本当は今すぐぶっ飛ばしてやってもいいところを、ぐっと堪えて話し合いって形にしてやってるんだ。だから──」
「なんで?」
「──……まさか、何か不満があるってわけ? どの立場からそんなこと言ってるんだよ、お前は」
私はホシノを睨みつけながら、そんな風にやや威圧感を与えるようなことを口にした。少々ガラが悪すぎるかとも思ったが、これくらいやっても許されるだろう。先に手を出してきたのはあっちなわけだし。
なんて、そんなことを考えていたのだけれど。しかし私の意に反して、ホシノはむしろ笑いを堪えるかのような仕草を見せていた。
「……何がおかしい? そっちがそういう態度なら、こっちだって考えを改めたっていい──」
「いやいやいや! おかしいとか面白いとかそういうわけじゃなくてさ! 単純に疑問に思っただけだよ──なんでそんなに悠長に構えてるのかって」
「んだぞ……って、は……悠、長?」
「だってそうでしょ、なあ、おい。きみさ、小鳥遊ホシノなんでしょ。まさかきみ、小鳥遊ホシノが後輩と先輩に手を出されておいて話し合いって手に出るなんてことがあると思ってるのかな」
お前に何が分かる。私の何が分かる。
私の記憶を覗いて私を再現しているだけのクセして、まるで私のことを一から十まで知っているみたいに振る舞うな。
「知ってるんだよ、一から十までどころじゃなく、もっと多くのことをさ。もうさ、分かってるでしょ?」
うるさい。
知るかよ、そんなこと。
「私は私だ。お前が勝手に私を決めようとするな、嵌めようとするな、定めようとするな。分かってるんだ、今お前が私に対して大した攻撃を加えず、私との話しに応じている理由だって、実のところはな」
「へ〜、随分と察しがいいみたいだね? じゃあきみはさ、私がどうしてわざわざ話し合いに応じてると思ってるのかな? どうして私が怪奇現象を引き起こさないのか、分かってるって言いたいわけ?」
何とかその余裕ぶった表情を崩してやりたい。そんなことを考えていたというのも、まあ否定はしない。ややマイナス方面の感情を抱いていたのは、確かな事実だった。
だがしかし。ここで一本取ってやれないようでは、目の前のホシノを屈服させ、入れ替わりを阻止することは不可能だろう。その辺り、私はかなり警戒して相対していた。
今までに四人の命を奪いかけているんだ。まさかこんな土壇場で、気を抜けるわけもなかった。
「だから分かってるって言ってるんだよ。私について何か確認したいことがまだ残ってるんだろ?」
「……まあ、残ってはいるけどさ。うーん、なんかな〜……」
「確かめたいなら確かめればいい。それは大方入れ替わりに関連することなんだろうけれど、お前の小賢しい罠や仕掛け──怪奇現象なんて、恐るるに足らない。真正面から正々堂々打ち砕いて、お前に入れ替わりを諦めさせてやる」
「……うへへ。そっちがその気ってのは、こっちとしてもやりやすくて助かるね〜。ほら、おじさんって腹芸とか、そういうのにはてんで縁がなかったもんだからさ?」
「言ってろ。人の裏をかくのが大層お得意なご様子のくせに」
そんな言葉を吐きながら、すたすたと歩いて、私はホシノに近付いた。身長もほとんど同じ──向こうのほうがやや高いか──なので、必然的に、宣言通り真正面から視線を交わすことになった。
いや、しかし、あれだな。ついさっき、具体的にはこの領域に足を踏み入れた時から思っていたことだが、目の前にいる髪の長いホシノは、どこか──
「似てる?」
「……は? 誰に……いや、やっぱりいい。どうせそれは、ろくでもないこと考えてる時の表情だろうし」
「あちゃあ、図星かなこれは。別に明確に敵ってわけでもないんだから、素直に思ってることくらい言えばいいのに。そっちが一方的に敵視してるだけだよ」
「今この場でさっきの約束を反故にしてぶっ飛ばしてやってもいいんだけど、こっちとしては」
「お〜怖っ。近頃の若者はなってないねえ、おじさんのことは労わってくれないとさ。だめじゃんか、ねえ?」
目の前のこいつは私の脅迫に対して、あろうことか、私の目の中を覗き込みながら、そんなことを言い返してきた。ただ一つ、まるで脅迫が効果を成していないということだけは、はっきりと理解できた。
これはまずい。何がまずいって、流れがまずい。脅迫に屈しないというのは、それだけである種の優位性を有する。この場所に来てからは聞こえなくなった怪奇現象の声が、仮に今もまだその効果を発揮しているのならば、第三者の認識が今後の展開に影響を与えうる。
これはもう、下手に脅しとか威圧とかそういう手を取らず、さっさと真正面から、ホシノが仕掛けてくる罠を打ち砕いた方がいいだろう。
そうした方が、絶対にいい。
そんなことは、分かっているんだけど。
何だろうか、この、底知れない不安は。
「──そういえばさあ、さっき言った確かめたいこととは別に聞きたいことがあって。というか今できて。ちょっと前から思ってたんだけどさ?」
「……何? 正直私はもううんざりしてきてるんだ、要件があるならさっさと済ませてくれない?」
「さっきからさ、なんか話の展開早くない? きみ、色々と推理してたじゃん。質問もしてきてたじゃん。もっと詳しく聞かなくていいの? はっきりさせておかなくていいの? まだ明かされてないこととかも沢山あるよ。確かに『この後すぐ分かる』って言ったけどさ、だからってそんなに焦らなくてもよくない? 所々にあった違和感の正体、今のうちに解消しておかなくてもいいの?」
とりあえず、今は蓋をしておこう。不安感に支配されて、しょうもないミスを晒したりした暁には、私は恥ずかしくて生きていられない。
まあ、仮にミスなんかをやらかした場合、私がまだ生きているのかどうかは怪しいのだけど。
「それで、お前は私の何をどうやって確かめたいわけ? こんなこと聞いても素直に答えてもらえるって考えるほど、私は能天気なつもりじゃないけど、一応聞いておく」
「えっ、無視……いや、逆にそういうことか……『何を』確かめたいのか言っちゃったら意味がなくなるから、そこは伏せるけど、『どうやって』の方は、私の後ろを見てくれれば分かるよ」
「後ろの方って、特に何もないでしょ。さっき見た時だって、あっちには無限に砂漠と道路が広がって、た、だけで…………………………どういう、つもりだ」
そこには。
扉と、ポスターがあった。
開けるな。
「いや、ごめんね。何も私だってさ、いじわるしてるわけじゃないんだよ。あることを確かめるために、どうしても必要なんだよね」
「……何とでも、言っとけ。余裕ぶっとけ。今からお前が確かめることになるのは、私が本物で、お前が偽物ってことだけだ、ホシノ」
「うへ〜い。とりあえずさ、きみもなんか急いでるみたいだし、ちゃちゃっと済ませちゃお?」
ホシノに促されるまま、私は扉の前に進んだ。遠目に見た時から気付いてはいたが、扉には想像通りに私のポスターが貼られていた。本当に、ずっと、意味がわからない──
「ほらほら、よく見てみよう? もしかしたらさ、ここに私の思惑のヒントなんかもあったりなんかしちゃったりするかもよ?」
絶対に、気にしない方がいいんだろうな。
そうは思っていても、見ずにはいられなかった。
だって、それは。
それは。
私がこ/の手/でび/り/びりにな/るまで/破/いた/ポ/スター/が/まる/でわたし/を/責め/たて/る/かのよ/う/なとて/も険しく/鋭い/目付/きで/睨み付/けて/い/る/。/破ら/れたと/ころはセ/ロ/ハンテープ/で繋/ぎ止め/られて/いて、ひ/どく不恰/好だ/。
私が/破いた。
私の/せいで。
私が。
私が。
私が。
開けないで。
見るな。
やめろ。
「きみが本当に小鳥遊ホシノ本人だって言うならさ、ちょっとこの扉の先を見てきてほしいんだよね。ほんと、それだけでいいんだよ」
「……そうすれば、どっちが本物なのかはっきりするって、お前はそう言いたいのか?」
「だからそう言ってるんだよ、私はずっと。ほらほら、早く行きなって。何だか知らないけど、きみは急いでるんでしょ? ちゃちゃっと見てくるだけでいいんだよ。それを私は隣から見てるからさ」
「……違う」
「ん? どうしたのさ、いきなり萎びた感じになっちゃって。もしかして、あれかな。ここに来て、ここまで来て怖気付いたとか──」
違う。
そうじゃない。
「そうじゃ、ない。そうじゃなくて、そんなはず、なくて……違う、これは、私じゃない。私には関係ない。聞き間違いだ」
「……ああ、扉の先から聞こえる声が、どこかで聞いたことがある声だって話? なーんだ、そんなことが気になってたの。それじゃ、教えたげるよ。あの扉の向こうには、そうだな──」
絶対に、この話を聞くべきではないのに。聞き入れるべきではないのに。しかしどうしてか、耳を離すことができなかった。だって、その言葉は。
私にとって、致命的だったから。
開けちゃダメ。
「きみの一番大切な人が、いるんじゃないかな」
あろうことか、私は。
その言葉を、表面的に受け取って。
裏があるだなんて、考えもしなかった。
耐えられなかった。
そんなこと、できるわけがなかった。
「──ユメ先輩っ!!」
私は扉を開けた。
だって。
私は、小鳥遊ホシノだから。
−021
それでは、良い遡夢を。
−022
目の前には。
くすんだような、そんな色の砂が広がっていた。
「いいや、違う。くすんでいるように見えるのは、この記憶に蓋をしたいからだ。遠い昔に色褪せてしまった夢だったと思えれば、それが一番楽だからだ」
ついさっきまで、扉の向こうから私を呼んでいたはずの、ユメ先輩の姿は、どこにも見当たらない。周りにあるのは砂だけで、風が吹き荒ぶ中で、私は必死になって、ユメ先輩の名前を呼びながら、前へと進んだ。
耳鳴りが、ひどい。動悸もする。だって、先輩が閉じ込められているのなら、怪奇現象に利用されているのなら、誰かが──私が、助けてあげないと。先輩は抜けてるところが多くて、騙されやすくて、それでいて誰よりも優しい人なんだ。守ってあげなきゃいけない人なんだ。ユメ先輩、ユメ先輩。今、私が助けますから。
みんな、みんなそうだった。
助けられなかった。みんなのことは、助けられなかった。いや、助かったんだけど、助けられなかったんだ。私は何もしなかった──わけではないけれど、意味がなかったのだから、何もしていないのとおんなじだ。私は、だから、何もしなかったんだ。
だから、今度こそは。私が。私が。私が──
脳裏に、 が這い寄る。
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「……? あれ、今何か──」
あいつは、ホシノは、どこにいる。周囲を見渡しても、一面砂埃まみれで、一メートル先の視界だって確保なんてできやしない。
終わりが、見えない。もしかすると、私はこのまま永久に砂漠の中を駆けずり回り続けるのかもしれなかった。ぞっとしない話だ──背筋がぞっとする話だ。
きっとこの空間の中に、ユメ先輩がいるはずなんだ。だって、はっきりとユメ先輩の声で「開けちゃダメ」って聞こえたんだから。だから、いないとおかしい。いないと、いけない。
それなのに、そのはずなのに、肝心のユメ先輩はどこにもいない。仮に私が怪奇現象に囚われたのと同じだけの時間、ここに閉じ込められていたとしたら。健康的な観点から考えて、危険な状態にあるであろうことは、容易に想像することができた。できてしまうほど、事態は深刻だった。
深刻で、それでいて、刻一刻を争う状況だった。
「ユメっ、せんぱ──あッ!?」
灯台下暗し、という言葉があるけれど、今の私は、まさしくそういう状況に陥っていたらしい。あまりにもユメ先輩を探すことに集中しすぎて、横からホシノが足を引っ掛けてきていることに気が付かなかった。
「〰〰ッ!! お前っ、今がどういう状況か分かってるのか!? 仮にも私の記憶を読んだんだろ、だったら──」
「そんなことよりさ、それ、踏み潰しちゃってるけどいいの? 大切なものなんじゃないのかな」
「は、それって、一体何のことを──……っはあぁ……お前、またポスター頼みか? いい加減に」
「いい加減にするのはそっちだろ、なあ。きみはさ、一体いつまで目を逸らし続けるのかな。認識が大事とは言ったけど、それはあまりに卑怯なんじゃないの」
私はまさか、ホシノがそんな強気な言葉を吐くだなんて考えちゃあいなかった。だって、ホシノの生殺与奪の権を握っているのは、私の方なんだ。だって、この夢の主体は私の方なんだから。
私の認識次第で、ホシノはいとも容易くその形を──形質を変える。そんなことがまさか、ことここに及んで、分かっていない訳でもあるまいし。そんな風に見積もっていた。
甘く見積もっていた。というよりかは、もっとシンプルに、みくびっていたのかもしれない。
しかしホシノは、私の予想に反し──ある意味予想通りなのかもしれないが──主体である私に向かって、随分と強気な言葉を放つという行動に打って出た。どうしてそんなことをしたのか、と聞けば、おそらくホシノは「確かめたいことがあるから」と、キッパリと言ってのけるのだろう。
転んだ私を見下ろすホシノの視線からは、そんな圧力のようなものが感じられた。
とにかく。こんなところで気圧されていては、ユメ先輩を助けるなど、夢のまた夢で。だから私は、心底どうでもよさそうな目付きで私を見下ろすホシノに対して、売り言葉やら買い言葉やらを返してやるようなことは、全くもってしなかった。
そんなことをしている時間すらも、今は惜しい。すぐさま動き出さなければいけない。だって、今この瞬間にもユメ先輩が苦しんでいるかもしれないんだから。
例えそれが怪奇現象の仕掛けた罠だったとしても。
それは、ユメ先輩を助けない理由にはならない。
「……まあ、いいよ。きみがそういうつもりなのは──あくまでもユメ先輩を助けるつもりだって言うのは、分かった。よく分かった。これ以上ないってくらい、はっきりとね」
砂に足を取られて、ふらふらとした足取りで進む私の隣で、ホシノはそんな風に言葉を放った。正直、そっちに集中している暇はない。
「いや、別にいいよ。これは独り言みたいなものでさ、きみに向けた言葉ってわけじゃない。もちろん、どこかの誰かさんに向けた言葉でも。これは、そうだな……もしかしたら、懺悔とか、そういう類の言葉なのかもしれない。トリニティの教会──シスターフッド、だっけ? そこにはさ、懺悔室っていう、罪の告白をする部屋があるんだって。そこは閉鎖空間で、二人っきりで、相手の顔は分からないようになってるんだって。だから何の後腐れもなく、過去の罪を懺悔して、許しを、赦しを乞うことができるらしいよ。それで、今から私は懺悔の言葉っぽいことを言おうとしてるわけだけど、なんか面白いよね。だって、こんなに開放的な空間で、話し相手は顔が分かるどころか同一人物で、共通点といえば二人っきりで話してるってことくらい。ほとんど真逆だっていうのに、やることはおんなじなんだよ。馬鹿と天才は紙一重……ってのとはまた違う気がするけど、とにかく、面白いよね。どれだけ正反対でも──どれだけ逆転していても、本質はそうそう変わらないんだ。というよりも、変えられないと言うのが適切かな。簡単に変われるんだったら、変えられるんだったら、そもそもおじさんたちはあんなに苦しんでないはずだろうし、嫌な思いとかも全くしないで、それなりにお金を稼いだりして、対策委員会のみんなとの、永遠に続くわけじゃない期間限定の青い春を、全身全霊で目一杯楽しめるはずだし」
ホシノの話は、何というか、はっきり言ってしまうのであれば、重きを置いている点があちこちへと四散してしまっているせいで、あまり何を言いたいのかが伝わって来なかった。
いわゆるトラッシュトークという奴のつもりなのだろうか──いや、しかしそれにしては、ホシノの纏う空気感は、本当にこれから懺悔を行う人間のそれのように感じられた。もっとも、私は感情の機微だとかそういうのを完璧に察せるわけではないので、当てずっぽうの推量もいいところなのだけれど。
「……懺悔するって言ったって、何をどう懺悔するつもりなわけ。普段は能天気な表情を引っ提げてるくせに、こういう時だけ被害者気取りか」
「被害者気取り? うへへ、ちょっときみ、笑わせないでよ。今から私がするのは加害者気取りだ。まったくもう、真逆すぎて爆笑しちゃうところだったよ」
「加害者、気取り? 何だそれ……気取ってるんじゃなくて、お前は実際加害者でしょ。それなのに、何を今更──」
「あーいや、多分きみが思ってるのとは違くてさ。私が加害者を気取る──きみの言い方に合わせるなら加害者になったのは、というかなるのは、過去じゃなくて未来の方だよ。これから私は加害者になるから、先に謝っておきたくて」
「──は?」
本日何度目か分からない困惑の表情を浮かべた私に対して。目の前のホシノは、これ以上ないほど簡潔に、決定的な言葉を口にした。
「嫌なこと、思い出させる。ごめんね。」
ホシノが小さく言い放ったその言葉の真意を確認することは、私にはできなかった。
だって。言い終わった頃には、ホシノはそこにはいなくて。砂嵐なんかも、綺麗さっぱりどこかへと消え去ってしまって。青く澄み渡った空と、きらきらと輝く砂が、そこにはあるだけだった。
そして。
少し、離れたところに。
折り。畳まれた。
盾が。そして、もう一つ、何かが。
あるのが。見るな。
見るな。
「あの盾……ユメ先輩の、使ってるやつじゃ……」
こんなところで落とし物でもしたのだろうか。まったくもう、本当にあの人は、私が着いていてあげないとダメなんだから。あの盾も、私が拾っておいてあげよう。
そんな風に意気込んで、私はそれへと近づいた。何となく眩しくなったような気がして、私は咄嗟に、手に持っていたもので目を塞いだ。
いや、違う。眩しくなんてなってない。ただ、何となく、そっちを見てはいけないような気がして、偶然手に持っていた何かで視線を遮っただけ、だから、だから……いつの間にか手に持っていたこの物体は、一体何なのだろうか。
……確認しなければ、いけない。もしかするとこのまま持っていたら、致命的なことを引き起こす可能性がある。
かといって、脱出に関連しているかもしれないこの紙切れを、まさか確認もせずに思い切りよく捨てることなんて、私にはできなかった。
できれば、よかったんだけど。
──目を、開けなければ。
開けるな。
──確認しなければ。
いけないんだ。
私が、この両手に持っていたのは。
アビドス砂祭りのポスターだった。
まさか、今更そんな甘えが
通用すると思ってるのか。
だとしたら、甘すぎるよ。
私は目を開けた。
「……あ、ああ、ぁああ」
私は。目を開けて、直視してしまった。
これでもう、目を背けることはできなくなった。
……いや、違う。本当は、ずっと前から、こうなることは分かりきっていた。目を背け続けるなんて、不可能だってこと。
だけど、私は、それを認めたくなかった。だって、それを認めるということは。認識するということは。
それが、事実だと確定することを意味する。
私が持っているポスターは、紛れもなく私のものだった。セリカちゃんの家を模した空間から、ここに至るまで、私の目に映ったポスターは、全て私のものだとはっきり認識できた。
だって、そうだろう。そのポスターは、私が──
私が。
「私が、破いた。」
私がこ/の手/でび/り/びりにな/るまで/破/いた/ポ/スター/が/まる/でわたし/を/責め/たて/る/かのよ/う/なとて/も険しく/鋭い/目付/きで/睨み付/けて/い/る/。/破ら/れたと/ころはセ/ロ/ハンテープ/で繋/ぎ止め/られて/いて、ひ/どく不恰/好だ/。
そうだ。このポスターは、元々ユメ先輩のものだった。これを持って、嬉しそうに笑ってたんだ。それを、私が、破いた。
喧嘩になって──私が、一方的に怒って。言葉もろくに交わさないで、喧嘩別れしたんだった。その日からユメ先輩は、行方不明になったんだった。
それから。それから、ユメ先輩が見つかったのが、私が見つけたのが、行方不明になってから、一ヶ月後のこと。当然、奇跡みたいなことが起こるはずもなかった。
こんなに苦しい現実なんていらなかった。
こんなに辛い終わりなんていらなかった。
きっと私は、夢だけ見ていればよかった。
きっと私は、永遠にここにいればよかった。
そうすれば。
今、こうして、同じことを繰り返すこともなかったのだろう。
だけど。
私は、私の罪は、私の心に深く深く爪を刺したまま、決して離してはくれなかった。私の罪の証拠が──私が破いたポスターが、私の心を示しているように感じられた。
脳裏に、罪の意識が這い寄る。
私が/破いた。
私の/せいで。
私は膝から崩れ落ちた。もう立っているつもりにはなれなかった。全部、どうでもよかった。生きてるとか、死んでるとか、そこにいるとか、いないとか、そういうの、全部。
目の前で倒れてる、ユメ先輩に比べたら。
全部、どうでもいい。
「ユメ先輩、起きてくださいよ」
揺すってみる。反応はない、
「ねえ、ねえってば、ユメ先輩。学校、遅刻しちゃいますよ」
揺さぶってみる。目に光が戻ることはない。
「ユメっ、ユメせんぱいっ、ねえ、ねえっ、一緒に、一緒に……まだ、一緒にいてくださいよ。私が悪かったですから、謝りますから、ねえ、こんな、笑えないですよ、ねえ、先輩ってば、ごめんなさい、先輩、ごめんなさい、ごめんなさい、ポスター破ってごめんなさい、笑ったのも、謝りますから、好きなだけ、怒っていいですから、ユメ先輩、起きて、起きてよ、ユメ先輩」
強く揺らしてみる。先輩の体勢が変になった。
あり得ない、体勢に。
「……ぅ、ああ、ぁ」
いやだ。
認めたくない。
ユメ先輩と一緒に登校するんだ。それで、学校に着いたらみんなに挨拶して、日常みたいな青春を始めるんだ。セリカちゃんとアヤネちゃんの二人と一緒に、色々駄弁って過ごすんだ。ノノミ先輩と世間話をしたりするんだ。シロコ先輩と一緒に悪巧みをしたりするんだ。してたんだ。それが私の、青春なんだ。
それらの全てが。
夢だったとでもいうのか。
夢だったんだろうなあ。
それじゃあ、私はどうすればよかったの? 私はここで死ねばよかった? 代わりに砂嵐に巻き込まれて死ぬべきだったのは私の方だ。先輩はこんなに苦しんだ。どうして私はまだ死んでない。どうして私はまだ生きている。気味が悪い。気色悪い。意味がわからない。死ぬって何。生きるって何。どうして、どうして先輩が苦しまなきゃいけない。元を辿れば、それは私が先輩のポスターを破って、夢を否定したからで。そうやって喧嘩したからで。というかそもそも、私が普段から先輩のことをもっと尊重していれば防げたはずの事件で。尊重が足りなかった理由は、日常が崩れないって過信していたからで。私が。私の意識が、ひくかったからで。私が。アビドスに入ったことが悪くて。私が、アビドスに入らなければよかった。私が死んでいればよかった。私が生きていなければよかった。そうすればユメ先輩は死ななかった。だって、私のせいでユメ先輩は死んだんだから、私が死んでいれば、死ななかったはずなんだ。だから代わりに私が死んでいればよかった。私が生きていなければよかった。私が生まれていなければよかった。私がいなければよかった。そうだったらよかった。私が死んでいれば。私が死ねば。私が死ねば。私が死ね。私が死ね。なあ、そうだろ。
だって、ユメ先輩は。「開けないで」って、「見ないで」って言ったんだ。
開けたら、見えてしまう。視認してしまう。
見なければ。確定はしなかった。
私が直視したから。夢は夢のままではいられなくなった。
しなければ、少なくとも。
壊れもしなければ、殺されもしなかった。
私が、この夢を壊したんだ。
私が、ユメ先輩を殺したんだ。
「私が、殺した」
私が殺した。
私が殺した。
私が。
私が。
私が──
私が。私が。私が。私が。私が。私が。私が。
私が。
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「OK、これで大体分かった。ありがと」
「──……えっ?」
頭上から響いたその声で、私は急激に──冷や水を掛けられたかのように、瞬時に冷静になった。周囲を見渡すと、そこはアビドス高校の生徒会室だった。
どう見ても。怪奇現象の影響は受けていない空間だ。地面に這いつくばったまま確認したため、実際はどうなのか分からないが……視認した限りでは、何の変哲もない空間であるかのように思えた。
「えっ、なんで、だって、さっきまで──」
「さて、それじゃあ追体験も終わったところでさ、一つ聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいいかな? 別に構わないよね?」
待ってくれ。まだ心の整理もできていないというのに、急にそんなことを言われても。追体験ってなんだ。どうしてユメ先輩はそうなっていたんだ。なんで私はこんなに落ち着いているんだ。
私の記憶していた限りでは、ユメ先輩があんな目に遭うことはなかったはずなのに。
存在しない記憶。少なくとも、私の中には。
それじゃあ、あの過去は、一体誰の──
「というか、私がお前をわざわざ待ってやる義理もないから、さっさと聞いちゃうけどさ──」
そんな風に、混乱していたのがいけなかったのだろう。ここから私は、私を冷え切った目付きで見下ろしているホシノに、あっけなく会話の主導権を握られてしまうこととなったのだ。
どうしてかって? それは簡単な話だ。これ以上迅速に主導権を握るってのも、中々難しいのではなかろうか。そう思うほどに、迅速。
一番簡単な主導権の握り方。
それは。
「どうして私の記憶をちょっと盗み見したくらいで私と入れ替われると思ってんだ、なあ、怪奇現象」
答え合わせ。
−023
「……怪奇、現象? 今、私のことを、そう呼んだのか、お前は」
「もういいって、分かってるからさ。私が本物で、お前が偽物──怪奇現象なんだってことは、今の一連の流れではっきりと分かったんだよ、とっくのとうにさ」
「違うだろ。お前が私と入れ替わろうとしていて、それで、お前が怪奇現象で──」
「あのさあ、お前が言ったんだよ、この怪奇現象は立場を逆転させるってさ」
混乱している何者かに、ホシノは淡々とそう告げた。目の前で狼狽えているそれは、演技をしているようにはとても見受けられない──が。
どうせそれもそういう演技をして認識を歪めようとしているだけなのだろう。本当のところがどうであったにしろ、少なくとも、ホシノにはそうとしか認識できなかった。
だって、目の前の怪異は。私が怪奇現象に巻き込まれてから今の今まで、ずっとそうしてどこかの誰かを欺き続けていたんだから。そんな奴、一秒だって信用できるはずもない。
「それにしてもさあ、本当によく考えるよね、主体と客体を入れ替えるなんて。主観・客観なのかもしれないけど……まあそこはいいや、些事だし」
「入れ替え……? いや、それは……」
「もういいよ。お前はもう話さなくてもいい。ここから先、お前には何もさせてやらない。何の弁解も、何の告解も。ホラー小説の恐怖パートはとっくのとうに終わってる。今は既にミステリ小説で言うところの、解決パートってやつなんだ、分かる?」
ソファに腰掛けているホシノは、わざわざ足を組んで、威圧感を演出しながらそう言った。怪奇現象と呼ばれた存在は、どうやらその威圧感のせいで、押し黙るしかできないようだった。
そんな姿を見て満足したのかどうかは分からないが、ホシノはそのまま話を続けることにしたようだ。
「例の逆夢の中では私の学年が逆転し、さらに時系列を遡ることによって、私とお前──つまりは小鳥遊ホシノと怪奇現象の立場が逆転して、加害者と被害者を入れ替える構造になってるとか、普通思い付かないでしょ。ま、そういうところ、お前の逆張りの精神が透けて見えるようだけどさ」
つまり、ホシノは第一の謎──怪奇現象の内容に関して、こう推理したわけだ。
ホシノが閉じ込められたこの空間は、怪奇現象と小鳥遊ホシノという、二つの存在それぞれの立場を入れ替えることに特化しているのだと。
「私は自分の体を取り返そうとしているだけなのに、表だの裏だの、色々と言葉を弄して、どこかの誰かを味方につけた上で、私を悪者にまでして……ああ、あとはそうだ。罪の意識……だったっけ? 一体いつの私の真似をしてるんだか。それにしても、随分と被害者ヅラしてくれたじゃん。全部聞こえてんだよ、だってさっきまで私、怪奇現象ってことになってたんだから。あとそれと、言っとくけど、先に私に対して害を加えてきたの、そっちの方だから」
ホシノは地面に座っている偽物に向かって、開いた手を伸ばして見せた。いまだに混乱している演技をしている怪奇現象の視線がそちらに集中したのを確認してから、ホシノは指を一本ずつ折りたたんでいく。
最初に親指が折り畳まれ、残りの指は四本になった。どうやら、怪異がしでかしてくれたことを、指折り確認していくことにしたらしい。
「まず、一つ目。シロコちゃんを閉じ込めて熱射病で殺そうとしたこと。死ななかったからいい、ってわけじゃないよ。かわいい後輩に手を出した時点で、既にお前は私の敵だ。敵視だなんて、生ぬるいものじゃないよ」
次に小指が折り畳まれた。
残りは、三本。
「二つ目。ノノミちゃんを封じ込めて心停止で殺そうとしたこと。どれだけ治療をしても心拍数と意識レベルが回復しなかった時の私たちの気持ち、お前には分かるのかな。ま、どうせ分かんないと思うけどさ」
薬指が折り畳まれた。
残り二本。
「三つ目。アヤネちゃんを水底に沈めて殺そうとした上で、それを気取らせないため砂の人形で誤魔化そうとしたこと。ずぶ濡れになってたアヤネちゃんが、苦しそうに水を吐いてる姿を見た時のこの怒りが、お前に理解できるのか」
中指が折り畳まれた。
残り一本。
「四つ目。セリカちゃんを鏡面に貼り付けて衰弱死させようとしたこと。これは……これを知ったのは、全部終わった後だった。どれだけ悔しかったかなんて、お前に分かってもらうつもりはない」
そして最後に、人差し指が折り畳まれた。
これが最後。
「五つ目。私を巻き込んだこと──なんかはどうでもよくて、ユメ先輩を利用したこと。大して知りもしないくせにユメ先輩を利用して私を呼び寄せようとしたこと。なあ、お前、どういうつもりだったんだ? なんでお前、そんなことがまかり通ると思ったんだ。どうしてお前、こともあろうに私の目の前で、ユメ先輩相手にあんな態度を取れたんだ」
明らかに、ホシノからは、怒気が滲んでいる。そのことに気付かぬほど、ホシノの偽物は──怪異は愚かでもなければ、鈍くもなかったようだ。
ここで適当なことを言えば、即座にぶっ飛ばされるのだという確信が、怪奇現象には確かにあった。
だけどさ。
なんかもうバレてるみたいだし。
どうでもいいか。
直接殺して奪っちまえば。
何も問題ない。
「あのさあ。まだ私を殺せると思ってんの?」
「見通しが甘いよ、お前」
ホシノの虚を突いて、命を奪うはずだった怪奇現象は、その思惑とはむしろ反対に、いとも容易く制圧されてしまった。
「なっ、あっ……え?」
「だめじゃん、偽物。そんなに焦って攻撃してくるなんて、何か焦らなきゃいけない理由があるって自白してるようなものだよ? さっきからずっと思ってるんだけどさ、やっぱり色々と展開が早いよね。もしかして、なんだけどさ──」
お前には、無理矢理話を終わらせなきゃいけない理由があったりするんじゃないの?
「──ッ!! お前っ、どこで、どこから、いつからそのことに……!!」
「おっと、図星だったとは、おじさんの推理もなかなか捨てたもんじゃないね──気付いたのは、たった今のお前の反応だよ。そして勘付いたのは、お前と相対した時のことだ。正直これについては、望外だったと言わざるを得ないけどね。あの時の私は怪奇現象ってことになってたから、怪奇現象の言葉が話を進める速度が異様だったことに気付けたんだよ……だからまあ、お前のおかげで、お前を追い詰められている」
カマをかけられた。そして、既に詰んでいる。ホシノの愛銃を首元に突きつけられ、そのことに気付いた怪奇現象は、しかし予想とは反対に、その顔から一切の表情を消し去った。
ホシノは一瞬だけぎょっとしたような顔色になったが、現状では自分が有利な姿勢を取っているということもあり、こちらもすぐさま正常な状態へと落ち着いた。
そうして、しばらく状態が膠着した後。
怪奇現象は、意を決したかのように口を開いた。
「……約十五万文字。正確には十四万九千九百九十九文字。これが、私が一度に怪奇現象の言葉を放つことができる限度。現時点で十三万文字使っている──残りの二万文字でお前と入れ替わり、不自然に見えない程度に言葉を紡いで、目的を達成するのは、展開的に不可能だ」
「あっそ。お前そんなこと考えてたんだ。それで? こっからお前はどういう行動に出ようとしているのかな。急に素直になったけど」
「別に、何も。そんなに心配しないでも、ここから私が取れる行動なんてないよ」
投げやりにそう答えた怪奇現象の顔には、やはり一切の表情がない。おかげで内心が読みづらいったらありゃしないが、ここを気にしていたら話が進まなくなってしまうだろうと判断し、気にせず進めることにしたようだ。
ホシノはソファからその腰を上げ、わざわざ怪奇現象と視線が同じ高さになるように、目の前にしゃがみ込んだ。
「……まあいいや。抵抗するつもりがないのなら、このまま第二の謎──夢の中でシロコちゃんだけが出てこなかった理由の話に移ろうと思うけど……いいよね?」
「勝手にどうぞ。何を言うつもりかは分からないけど、多分それで間違いないから──お前たちがそう認識している以上は」
「そっか。それじゃあ時間をかけるのも勿体無いから、さっさと答え合わせの時間に入るとするかな。視認によって現実を改変してしまう怪奇現象──」
お前さ。
「死人しか真似できないんだろ」
今の今まで──正体がバレてからは大した反応を寄越さなかった怪奇現象は、ホシノが放ったその意味不明な言葉に対しても、変わらず無反応を貫こうとして──放たれた言葉の真意に気付いたことで、そうもいかなくなったらしい。
「……はっ、妄想と現実の区別くらい付けたらどうなの。そもそもここはもう夢の世界じゃない。寝言を言うなら、さっきまでの時間で言っておくべきだったんじゃ──」
「区別なんてさ、必要ないんだよ、この際。そう言ってまた私を騙そうとしてるってことは分かってるんだからさ」
「──……必要ない? 一体、どうして」
「ここは既にお前の認識から離れている空間だからだよ、間抜け」
さっき言ったじゃん。主体と客体が入れ替わっているんだって。
ホシノは極めて冷淡な声色で、怪異に対してそう告げた。やや食い気味に放たれたその言葉には、言外にお望み通りさっさと終わらせてやるという意図が含まれている気がしてならなかった。
「お前のごまかしに耳を貸すつもりはないんだよね。時間ないんでしょ? だからさ、さっさと終わらせよう」
「……死人の真似しかできないって」
「私は死んでないよ? 当然ノノミちゃんやアヤネちゃん、セリカちゃんだって。だからこの場合私が言ってるのは──もう一人のシロコちゃんの世界線。お前はそこから流れ着いてきたんだろ」
「仮にそうだったとし」
「ずっとさ、気になってたんだよね。シロコちゃんが閉じ込められたところだけ殺意が高すぎること。死んでないと真似できないから、何が何でも殺そうとしてたんだろ? それと多分、お前はもう一人のシロコちゃんを殺せない。あっちのシロコちゃんはとんでもなく強いから──そうでもなければ、わざわざこっちのシロコちゃんを狙った理由がないもんね?」
再び怪奇現象の発言に被せて、ホシノはそう語った。最早その怒気を隠しておくつもりはないのか、その立ち振る舞いや言動からは、普段の彼女から感じられる緩さなんてのは、一切感じられなかった。
まあ。かわいい後輩を傷付けられた時点で、殺されかけた時点で、とっくに堪忍袋の緒なんて焼き切れている。虎の尾は、既に踏まれていた。
鷹の瞳は、決して獲物を逃さない。
「もう一人のシロコちゃんから、前に聞いたんだ。向こうで私たちがどうなったのか。シロコちゃん以外は……全員死んだらしいよ、実際のところ。だからお前は、私たちの真似ができたんだろうし、一人芝居でどこかの誰かをそれっぽく騙すことができた。だけど、死んでいないシロコちゃんの物真似だけはできないから、雑なホラー展開で誤魔化すしかなかった。そんなことは、もう分かってるんだよ」
「……そうだったとして、何が言いたい」
「何が言いたい? いいや、何にもお前に言うことなんてないよ……いや、一つだけ言うとしたら、やっぱりユメ先輩を利用して私をおびき寄せたってことかな。うへへ、相当喧嘩売ってるよ、気付いてないの? まあ、お前には分かんないだろうからいいけど──さっ!!」
「ッ──ぁ、がっ……!?」
怒りを抑えきれなかったのか、ホシノは怪奇現象の首元に突き付けていた愛銃の銃口から、その散弾をぶっ放した。
怪異は確かにホシノの体を形取っているが……しかしだからといって、今のホシノと全く同じというわけではないのだから、そこに差が生まれてしまうことも、至極当然のことだった。
ああ、畜生、私もここまでか。死に物狂いで、神秘をなんとかかき集めて、あと少しだったのに──
そう、思っていたのだけど。
怪奇現象に対して、ホシノが二発目を撃ち込むことはなかった。
「……お前がいつ私の真似ができるようになったのかは分からないけどさ、少なくとも今の私は、その時の私よりも強いよ。だから多分、私の攻撃をお前は防げない──ま、そこまで痛めつけるつもりもないんだけどさ」
「いっ──なんで、トドメを、刺さない……!?」
「え〜? だって、トドメなんか刺したって、それで何かが変わるわけでもないじゃん。それにお昼寝の時間の夢見が悪くなっちゃうかもしれないでしょ? だから私は、極めて自分勝手な理由でお前にトドメを刺さないことにした」
「……えっ、は、ぁ?」
さっきまであんなに怒っていたというのに。
ホシノはなんだか、爽やかな顔つきをしていた。
「……まあ、ほら。さっきまであんなに怒っておいてなんだけど、きっとお前にも事情があって、私たちを巻き込んだんだと思う。きっとお前はそういう存在だから、仕方なかったんだなって、理解できる。だから私たちとの関係は、さっきユメ先輩の分をやり返したのでおしまい。分かったら、さっさと消えなよ、怪奇現象」
「……本当に、逃がしてくれるの……?」
「ムカつくけどね。でもほら、ここでやりすぎたら──いや、ううん、なんでもない。どうせすぐ分かるし」
「……? よく、分からないけど──」
助かった。らしい。
小鳥遊ホシノという人物は、途轍もない甘ちゃんだったようだ。何にせよ、そのおかげで助かった。
「──ありがとう。もう絶対、お前たちに手は出さない」
「あ、そう? そりゃあよかったよ、おじさんとしても、これ以上関わりたい相手じゃないしね。ほら、さっさと振り返って、どっか行きな」
つくづく、甘ちゃんだ。
私の言葉を間に受けて、見逃してくれるとは。
守るわけがないだろう、そんな約束を。
次はもっと入念に準備した上で、必ず殺す。
未来への期待を抱きながら怪奇現象は振り向いた。
そこには、穴があった。
「……はぁ?」
いや、違う。穴ではない。
これは、扉だ。いわゆる、ワープゲート。
「あ〰〰、そういえば」
背後から、先ほどまで話していたホシノが再び声をかけてきた。怪奇現象は、体を半身ホシノの方へと向けた。
「言い忘れてたんだけどさ。ここってほら、現実の世界にいる私と、夢の世界にいるお前がいるせいでさ、不安定になってるっぽいんだよね」
「不安、定」
「うん、仕組みはよく分かんないんだけどね。だからさ、この空間の主体である私は、その気になれば、外と連絡が取れるっぽいんだよ。まあ、普通の手段なら無理なんだけど」
ホシノの方に体を向けている間にも、背後のゲートから感じる威圧感──恐怖は、秒毎に増していく。
怖い。
「私さ、さっきまで怪奇現象にされてたでしょ。言い換えればさ。私はあの時、語り手だったんだ。分かるかな、語り手だよ、テラー」
「……まさか」
「うん。きみさ、この空間に来てから、何度か私相手に恐怖したでしょ。実はさ、私はその感情──情報を、横流ししてたんだよね」
横流しって、一体どこに。
そう聞こうとした瞬間に、背後から。
こつ、と。
地面に足を着けたかのような音がした。
「よ……横流しって、いったい、どこ……誰、に──」
「……誰って、そりゃあ」
「私よりもみんなを利用されたことに怒ってる子に。」
「振り向いてみなよ。そこにいるからさ」
私はトドメを刺さないよ。
私は。
怪奇現象は、ゆっくりと振り返った。
「あ、あぁ……!」
そこには。怪奇現象にとっての、死が。
ああ、頼むから、夢で、逆夢であってくれ。
悪夢みたいな光景を前にした怪奇現象が最後に考えたのは、そんなことだった。
002
後日談。
怪奇現象の脅威を退けたホシノは、いつも通りの日常に戻っていた──なんて、ことはなくて。むしろ、以前よりも困難な壁に直面していた。
それは。
「……えっと、どうしておじさんは入院させられてるのかな〜?」
なぜか後輩たちに無理矢理入院させられている事。
恐らくホシノに対する親切心とか心配からこうなっているので、あまり好意を無碍にすることもできなかった。
お見舞いに来てくれている対策委員会のみんなは、からかい半分のような気もするのだけれど。
「えっと、ですね……これはほら、検査入院ですから……念のため?」
「ん、私もノノミもアヤネも入院した。流れから考えて、ホシノ先輩も入院するべき。義務入院」
「うんうん、そうですよ! これで私たちは入院友だち、略して院トモです☆」
「……セリカちゃん、みんなに何とか言ってあげてくれない?」
「えっ!? あっ、うん、そうよね〜! 院トモ院トモ! あは、あはは……これで私も入院してたらお笑いだったわ……」
「……巻き込まれたくないからっておじさんを売らないでよ〜!」
何があっても、この日常は覆らない。
ホシノは改めて、そんなことを認識できた──こんなくだらないことで再認識するのもアレだけど、日常なんて、往々にしてこんなものなのだから、これでいい。
なんて、らしくもなく曖昧な感情を噛み締めていたところで。後輩たちはどうやら怪奇現象の内容について気になっていたらしく。
ベッドを取り囲んでホシノにあれこれ質問してきたものだから、らしくもなく雄弁に、縁起がかった口調で様々な怪奇現象内での出来事を語ったのだった。
「──ってな感じでさ。最後はもう一人のシロコちゃんに助けてもらったんだよね〜。だから今度、お礼をしに行かないとな〜って」
「ホシノ先輩が、同級生……? ちょっと想像つかないかも……」
「っていうか、シロコ先輩とノノミ先輩に『先輩』って付けてるホシノ先輩が想像できないというか……」
「あと一年早く生まれていれば、その夢も現実になったかもしれないのに……すごく残念」
「……それで、ホシノ先輩。長い夢を見たということですけど……どんな風に感じましたか? その──夢の中での、学校生活は」
「え? どんな風にって──ああ、そういうことね」
各々が感想を述べていく中で、ノノミが放ったその言葉。それを聞いたホシノは、少しの時間考えて、それから窓の外に広がる青空を眺めて。大きな深呼吸を一度してから、普段のように柔らかな笑みを浮かべて、ノノミに向かって返答した。
「……うん。なんだかんだ、楽しかったかも。私の大切な人たちと一緒に学生生活を送るのは、すっごく、ものすごく魅力的だった」
「……そう、ですか」
「うん。だけど、あくまでも夢でしかないよ、あれは。追うのはいいけど……とらわれちゃいけない。それに私は──……ほら、まだまだかわいい後輩たちが独り立ちできるか心配だからさ! おちおち夢も見ていられないよ〜!」
「ふふっ……はい、そうですね! 私たち、まだまだホシノ先輩から教わりたいことだらけですから! みんなも、そうですよね?」
ノノミが周囲にそう聞くと、シロコもアヤネもセリカも、三人それぞれが自信ありげな形で頷いた。みんながみんな、ホシノの方を見て、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「うへ、へへ……おじさん、照れちゃうなあ」
「……ホシノ先輩。本当に、お疲れ様」
「……ありがと、シロコちゃん。それに、みんなも」
多分、みんなにはバレてるんだろうなあ。
照れ隠しで後輩が心配って言ったけど、本当は、私もみんなと一緒にいたいから、夢から醒められたんだってこと。
別に、バレたっていいんだけどさ。やっぱり、後輩の前では格好付けたいから。
それに。
守りたい約束もある。
私は、後ろを──過去を振り返らないで。
前を向いて。未来を向いて、生きていきますから。
……ユメ先輩。
私、あなたとの約束、ちゃんと守れましたよ。
青い空をもう一度見上げる。
いつもと変わらない、美しい空色だった。
ほしのファントム(下) 了
アビドス怪奇現象対策委員会 完