シャンフロで商人プレイする奴の話   作:白詰

30 / 30
シャンフロで商人プレイする話その23

 

時間は、サンラクが闘技場にて綺麗な謝罪をするよりも少しだけ前のこと。

 

この後やってくるサンラクの処遇を話し合うために、周りからさりげなく距離を取ったペンシルゴンとオイカッツォの二人。

 

とはいえ、ある程度の打ち合わせは前日に済ませているので、本当に軽く流れを確認するだけ――のはずだったのだが。

どうにも雰囲気がおかしいと、どこか嫌な予感を感じながらも、オイカッツォは恐る恐る自分の中にある予感をペンシルゴンにぶつけてみた。

 

「……ねぇ、なんかアクマリーすんごいキレてない?」

「いやー、ちょっと前提の食い違いというか、そもそもの条件が変わっちゃったというか」

「……あ、あー!そういえば俺、ちょっとお手洗いに「逃げれると思う?」デスヨネー」

 

 

どことなく歯切れの悪い言葉、厄介事(サンラク)火種(核弾頭)をさらに担いできた気配を感じて、即座に離脱しようとしたオイカッツォの肩を掴んで離さないペンシルゴン。

地獄への道連れはひとりでも多くしてやる、そう言わんばかりに力の入った両手に、思わずHPが減っていないか心配になりながら、両手を上げたオイカッツォはその片道切符を仕方なく受け取った。

 

 

「サンラクくんのやらかしの被害額が想像より2桁くらい多かった」

「ㇵ?」

「だからアンちゃん以外のクランメンバー全員ブチギレ。正直、今日がなかったら多分何人か黒狼と組んでカチコミに来てる」

「……えーっと、ちょっと待って。元がどれくらいだっけ?」

「おおよそ1000万って計算だったね」

「それに?丸がふたつ足りないって?」

「アンちゃんに聞いたら確実な額が分かるよ。代わりにもっと桁が増えるんだろうけど」

 

 

冗談はやめてくれ、そう言いたいのをグッと飲み込んで。代わりに大きな、それはもう大きな溜息を二人で吐き出した。

元々の計算から跳ね上がった被害額は、たとえ払ったとしても今の旅狼にとっては大損害なんてレベルではない。

いや、この場合、もし当初の予定通りにサンラク(主犯)マニー(誠意)を差し出して、それで本人(アンバー)から許しを得たとしても、周りが絶対に納得しないだろう。

むしろ逆効果になるだけだろうし、そもそも、その被害額を気軽に許せるような相手に渡しても、正直意味はないだろう。

 

となれば金銭ではなく、しかし、相手クラン――少なくとも、今この場に来ているアクマリー()が納得するような物を提供しなくてはならない訳だが。

 

幸か不幸か、この二人には彼女が確実に喰いついてくるであろう餌がひとつあった。

 

「まずサンラクくんがノーネームっていうのをアクマリーにバラします」

「異議なし」

「で、そのままサンラクくんをアクマリーのサンドバック(怒りの捌け口)にします。あ、その前に私達もやっとこう。何発くらいいっとく?」

「最低10発――いや、衆目に晒しながら正座させてよう。アイツにはそっちの方が効く」

「そうだね、彼も羞恥心はあるし――うん。そっちでいこうか」

 

 

少しの良心か、それともゲーマーとしての無意識のルール順守だったのか。

 

 

ギリッギリで身バレには繋がらないだけの身内情報を、一切の躊躇なく売りとばすことにした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「――と、そんな訳なんだけど。なにか弁明は」

「いやもうホントすいませんでした」

 

 

聞いていた話と違う。

 

怒髪天を超えていそうなほどにキレているアクマリーに謝り倒し、被害者本人から仲裁されてようやくの解決を見た後。

そう呟いたサンラクは、ぐるん、と下手なホラーゲームよりも恐怖しそうな速度で首だけこっちに向いたペンシルゴンに、これまでのやらかし(詳細)を聞かされ、そっと謝るしかなかった。

 

実際、サンラクがノーネームだという情報を流すという事は、それはそのままペンシルゴン(ノーフェイス)オイカッツォ(プロゲーマー・ケイ)の身バレにも繋がるということで。

ネット上では有名になってしまってはいるが、実態は平均的高校生にすぎないサンラクと違い、体裁を気にするべき顔を持つ二人にとって最も警戒すべき情報を流したというのは、つまりそういうことなのだろう。

 

 

「……なんか悪いな」

「え、急に気持ち悪。なんか悪いものでも食ったのかお前」

「ちょっとちょっと、私の知り合いに医者なんて居ないんだけど」

「人が己の行いを反省してるだけでこの言われようは酷くないか」

 

 

とはいえ、今のやり取りだけで何か分かる程度には、この二人とも長い付き合いなわけで。

 

 

「うっし!ちょっと燃料補給してくる」

 

 

改めてこれからの決戦に向けて気合を入れ直そうと、サンラクは台所へと向かうのであった。

 

 






ちなみにカッツォがアクマリーが近所の同僚だと気づいてなかったので、サンラクの情報だけ漏らすつもりが芋づる式に3人ともバレた模様。

あくまでカッツォだけがバレただけで、サンラクとペンシルゴンはまだセーフ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

成り代わりリンクのGrandOrder(作者:文月葉月)(原作:Fate/)

 気がついたら、ハイラルにて『リンク』という金髪碧眼の少年になっていた元ゼル伝プレイヤー。▼ 躊躇いながらも、成ってしまったからには『リンク』に恥じない生き方をしようと努めた彼は、ゼルダ姫に会い、マスターソードの主となり、『勇者リンク』その人として戦いの運命に投じることとなる。▼ 自らが『リンク』となったことで、その運命の過酷さと理不尽さを思い知った彼は、『…


総合評価:30276/評価:8.35/連載:143話/更新日時:2023年12月17日(日) 14:24 小説情報

ポケモントレーナーの日常?(作者:チャンピオンズやってる人)(原作:ポケットモンスター)

ポケモンの世界に生まれた転生者が旅に出る話▼(世界線がゲームかアニポケかも分からないしエンジョイクソボケなので何をやらかすか分からない)▼アニポケ時空になりました。▼タグは随時追加予定です。▼アンケを投げています。▼基本最速10票を採用していますが見逃しなどあり複数が10票越えしていた場合は1番多い票数の案を採用する予定です。よろしければ適当でもええのでポチ…


総合評価:4124/評価:8.54/連載:10話/更新日時:2026年04月26日(日) 19:00 小説情報

オーバーロード 傾国狐の異世界日記(作者:破戒僧)(原作:オーバーロード)

ユグドラシル最終日。『傾国の悪女』(ロールプレイ)として知られる1人のプレイヤーが、ギルドホームと共に異世界に転移した。ナザリックが転移して来るよりも、400年も前の時間に。▼これは、わけのわからん状況にパニック寸前になりつつも、頼れるNPC達に手伝ってもらいつつ、なんだかんだで割と欲望のままに異世界生活を楽しんでいく、一人の『狐』がしたためた、なんてことは…


総合評価:4794/評価:8.22/連載:121話/更新日時:2026年05月04日(月) 21:40 小説情報

キヴォトス企業、アーキバス・コーポレーション(作者:透明だ…気分がいい…)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスに“大人”として転生したブルアカミリしら転生者が、この世界の技術力を駆使すればACを造ることも夢ではないと希望を抱き、企業として奮闘する話。▼尚、キヴォトスで社会人として揉まれた結果、性格も企業となってしまった。▼


総合評価:12284/評価:8.89/連載:22話/更新日時:2026年02月25日(水) 19:12 小説情報

テスカになって冥界で魂を導く話(作者:ナイ神父)(原作:Fate/)

▼此処はミクトランパ、なんの因果か死後に冥府の神に成った男は今日も冥府にて死者と語らい魂を導く▼だがここに来る戦士は皆違う世界の存在で…?▼・作者が思いついた死んでほしくかったり諸々様々な作品の人を冥界でテスカトリポカ成り代わり主が導く話です▼・その都合上多重クロスオーバータグを付けていますが各々のシリーズではテスカトリポカ以外は他作品と繋がることはありませ…


総合評価:4320/評価:8.55/連載:5話/更新日時:2026年05月13日(水) 16:20 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>