7月1日
新横浜ではジョンの、藤原邸では夏目貴志の誕生日祝いが催されていた。
そんななか新横浜に現れたポンチによって交わることが無いはずのヒトたちが出逢う…

Pixivにも投稿してます。

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君も貴方もハッピーバースデー

7月1日 すっかり『夜』の時刻になったころ 新横浜にて

「ジョーーーン!誕生日おめでとう!!」

「ヌヌヌヌー!!」

本日、誕生日であるジョンは皆に祝われていた。

ドラルク、ロナルド、事務所の面々はもちろんのこと。吸対、ギルドメンバー、知人友人にまで祝福され贈り物もたくさん受け取って上機嫌だった。

ヌンヌ(ヌンは) ヌンヌヌオイヌイヌヌヌ(みんなにお祝いされて) ヌヌシー(嬉しー) ニュン♪」

「ジョンは皆に愛されてるから当然ではあるけど。やっぱり嬉しいものだよねぇ」

事務所兼自宅にてドラルク特製のご馳走を食べたり、プレゼントを受け取っていたのだが、訪れた“ジョン教”幹部の男性から誘いを受けた。

「もし宜しければ広場にてジョンくんファンクラブの集会といいますか勝手にではありますが御祝いの会を開いております。きっと会員たちもご本人に直接御祝いを伝えられると嬉しいでしょう。是非お越しくださいませんか?」

「うーん、どうする?ジョン」

「ヌー……ヌン、イッヌヌヌ!」

【お祝いしてくれるのを無碍に断れないヌ!】ということで事務所メンバーと共に誘われるがまま訪れた先でジョンはかつて無いほどの手厚い歓迎を受けることとなった。

キラリと金色の王冠を頭に戴き最早玉座といえる豪奢な椅子に座らされた姿は神格化されている彼にピッタリのもてなしだった。

「やぁやぁ、今日誕生日のかたはどなたかな〜?」

そこに現れたのは若い見た目の男性吸血鬼で、バースデーケーキを象ったハットと【HAPPY BIRTHDAY】の文字が付いているパーティー用サングラス、タキシードは一見普通に見えるが、レインボーカラーの蝶ネクタイがラメ入りなため照明で光っていてかなり目立っている。

そして極めつけは『お誕生日祝い隊』と書かれているパーティーたすきを掛け、腰にはクラッカーが幾つもぶら下げられておりいつでも発射可能だ。

そんな奇天烈な、しかしこの街では少し派手だな程度の装いだった。

「「また変なやつ出たー!」」

「ムッ、『変なやつ』とは失礼な!」

ムスッとした顔で振り返ると高らかに名乗りをあげた。

「我が名は吸血鬼誕生日を祝い隊おじさん!!」

「「吸血鬼誕生日を祝い隊おじさん?!」」

オウム返しの声にひとつ大きく頷くと片手を大きく掲げてポージングを決めた。

「私はその日誕生日の人物を探し出せる能力で、バースデーパーティーをやると聞けば会場へ赴き、その予定が無さそうな人にはそっと寄り添いつつ、私なりに盛大にお祝いするのさ!」

「呼ばれていないのに勝手に参加して祝うのかね…。なんとも押し付けがましいような」

呆れたようにぼやくドラルクを無視し、彼は主役であるジョンに向き直る。

「やぁやぁ、本日の主役はキミだね!コロコロもふもふが超キュートなマジロくん!受け取ってくれたまえ!」

徐ろに腰に付けていたクラッカーを構えてひとつ大きく息を吸って…。

「『ハッピ〜〜バースデー!トゥ!ユー!!!』」

その掛け声で勢いよくパン!!☆と軽快な音を響かせてクラッカーを発射させた。そこから放出されたエフェクトがジョンの周りをキラキラと舞い散り、ジョンはドラルクのびっくり死にも関わらず思いがけず見惚れてしまっていた。

「このクラッカーには本人にとって一番良い瞬間が見れる催眠作用が入ってるのさ。まぁ中身が舞い終わるまでの僅かな間たがね」

言い終わるかどうかで効果が切れたようでジョンはパチパチと目を瞬いていたが「ヌ〜♡」と幸せそうな表情を浮かべたため効果はバッチリだったようだ。

「ご満足していただけたようですね。それは何よりです!!」

「ジョンが幸せそうだからまぁ良しとするか…」

ロナルドが殴り飛ばすことをやめて拳をおさめた。それを見て許されたと思ったのかなんととんでもないことを宣言した。

「それとですね、実は昨日新たな能力の発現を感じまして。使うエネルギーが大きそうなので上手くいくかは不明なのですが……幸せそうな顔を見ていたらなんとか出来そうな気がしてきました!思いきって使っちゃます!!いっきますよ〜!」

「は?!」

「ちょ、ちょっと待ちたまえ。まずは能力について教えてくれ…!」

彼を止める声にはまったく耳を貸さずぐぐぐっと両の拳を握りしめ身体全体で力を込めていく。

「『バースデー、トゥー、ユー!!!』」

そう豪快に叫ぶと同時にガバっと両手を天高く掲げ、込めていた力を一気に解放すると白い光が辺りを包み込んだ。

「「うわーーーっっ!!!」」

あまりの眩さに面々は目をつぶったり手をかざすなどしていたが、その光が収まった時、そこに現れたのは…一人の少年と猫だった。

「「誰ー??」」

 

同日午後6時半ごろ藤原邸にて

「貴志くん、お誕生日おめでとう!」

「塔子さん、ありがとうございます。」

夕食のためにリビングへ向かうとニコニコ顔の塔子さんにそう迎えられた。とても美味しそうな料理のいい匂いが鼻孔をくすぐり、腹の虫が小さく「クゥ〜」と鳴った。

「あらあら、お腹すいちゃったわよね男の子だものね。今日は特別な日だからいつもよりもご馳走用意してあるわよ。早く食べましょ!」

「は、はい…」

食い意地が張ってるようで少々気恥ずかしい気分で席に着くと、向かいで読んでいた新聞を畳みながら滋さんからも声をかけられた。

「貴志、誕生日おめでとう。塔子は朝から『貴志にとって年に1度のとても大切な日だから』って張り切っていたぞ」

「ありがとうございます。…そうですか。とても、とても嬉しいです」

俺のことを、俺の誕生日を『大切な日』と言ってくれることに心の奥から温かい気持ちになっていく。

(この人たちと家族になることができて本当に良かった…。)

「さぁ、ちょっと奮発していいお肉買ってきたから食べてね。ニャン吉くんにもちょっとだけどうぞ」

「にゃふん!」

「良かったな、先生」

テーブルの下で自分の皿に分けてもらったニャンコ先生は実に嬉しそうにそれに飛びつきウニャウニャと猫っぽく食べていた為、つい笑いながら手を伸ばして頭を撫でてしまった。

その後ふんだんにテーブルに並べられたご馳走を堪能。

滋さんが買ってきたというイチゴたっぷりのデコレーションケーキに載せられていた『たかしくんハッピーバースデー』プレートにまた照れつつ美味しくいただき、ニャンコ先生共々自室へ引き上げてきた。

「よーし、ケーキも食ったことだし行くか!」

「え?行くってどこに?」

お腹も心も満たされた余韻に浸りつつ昼間買っていた本を開いていると、同じくゴロンと座布団に横たわっていた先生がモゾモゾと動き出した。

「ん?言ってなかったか?今日オマエの誕生日だと話したら、中級どもが祝いがてら飲もうと誘ってきたのだ!」

「聞いてないぞ〜先生。ハァ、相変わらず酒好きなんだから。気をつけてな、あんまり遅くなるんじゃないぞ…って今からじゃ朝帰りかな」

酒好きここに極まれり、かとため息をつきつつ本へ視線を戻した途端、ドスッと音を立てて首から肩にかけて衝撃が走った。

「なーにを言ってるのだこのどアホ!!お前が行かんでどうする!」

「え?!オレも行くのか?」

驚いて振り向いた俺にニャンコ先生は手でビシビシと猫パンチを喰らわしながらグイグイと迫ってくる。

「お前は先程私が伝えたことを聞いてなかったのか?おまえの(・・・・)誕生日祝いを名目としての酒盛りだ。一応主役が行かないでどうするんだバカタレ!!」

「そんな事言ったって俺はまだ酒は呑めないよ…それに先生、あんなに食べてたんだから満腹なんじゃないのか?」

先程生クリーム多めのケーキまで堪能していた為にぽっこりと出ているお腹をジト目で見つめてやるが、本人はどこいく風で行く気満々である。

「なーにこのくらい。ちょっと運動すれば全く問題はない!それにせっかくのケーキだのご馳走だのを見逃すと思うか?何のために遅くに待ち合わせしたと思っとるんだ!」

そんなことを鼻息荒く主張しつつ軽く身体をほぐしガラリと窓を開け放つ。

「ちょっと待ってくれ先生、まだ風呂も入ってないからオレは今いなくなるのはマズイよ。呼びに来られたらバレるだろう」

「ハァ、面倒な…10分待っててやるから早く入ってこい。『疲れたから早く入って寝る』とでも言えばいいだろーほら急げ夏目」

後ろ足で耳の後ろをかきながら面倒くさそうにしている先生に「せめて20分くらい待っててくれ」と言い残し、急いでシャワーしに向かった。

結局30分後、就寝の支度まで調えた状態の部屋をそっと抜け出して待ち合わせ場所の森へ向かって空を翔ぶ1人と一匹の姿があった。

「遅くなってしまった。まったく面倒なことだな」

「仕方ないだろ、塔子さんたちに余計な心配をかけないためだ。それにその分お腹も空かすには時間も必要だろう?良かったじゃないか。あ、あんまり飲みすぎるなよ?」

なんて聞き入れてもらえるか怪しい忠告をしながら夜間の涼しい空気を感じていたところだった。

その時だった。突然ぞわりと妙な感覚が背筋を駆け巡った。

「なんだ、この妙な気配は。今まで感じたことがない」

「先生もか?実はオレもだ。妖怪の気配に似てるけど、どこか違うような…?」

何が起こるか分からず安全確保のため、地面に降りて猫の姿に戻って辺りを見渡して警戒しながら歩いていた。

【……スデー、トゥー、ユー!】

微かに声が聞こえたかと思うと足元から眩い光が出現し、思わず2人は息を呑み軽いパニックに陥った。そして瞬く間に2人を光が包み込み、それに飲まれるようにその場から2人の姿は消失した。

 

新横浜の街なかで突如広がっていた眩い光がバシュウッと徐々に終結していくと、そこに現れたのは一人の少年夏目貴志と一匹の猫ニャンコ先生だった。

突然の事態に数秒間シーンと静まり返り、そしてすぐにパニックに陥ってしまった。

「え?え?あの子誰?突然現れたけど…え、まさかコイツが召喚しちゃったの??うっそー?!」スナァヌー

「はーー?召喚とかどかのラノベだよ!いやでもこの辺の子じゃなさそうだし…。」

「は?ここはどこだ?周りが明るすぎて目がチカチカする!変な気配もビンビン感じる。なんとかしろ夏目ー!!」

「うわっ、先生落ち着けって。なんとかしろなんてムリだよ!え、てか何処ここ?ビルが沢山だし人も…人?変わった服装とかの人がたくさん…あれ、あの人急にす、砂に??」

大混乱の状態を引き起こした張本人はというと、自分でも言っていたようにかなりエネルギーを使ったらしく疲労感が半端なかったようだ。

しかし自分の仕事がまだ終わってない!と気合いを入れて夏目に話しかける。

「我が名は吸血鬼誕生日を祝い隊おじさん!!誕生日の人を探し出す能力を使ってお祝いするのを生き甲斐にしてるのだ!本日お誕生日なのはキミかな?お名前は?」

「え、あ、ハイ。オレですけど…名前は、夏目です……って、え、吸血鬼??ええ?」

「アホかお前は!得体のしれない相手に答えるなといつも言っておろうが!」

戸惑いながらも素直に答えてしまった夏目にニャンコ先生がバシバシとツッコミを入れるのを横目に、祝い隊おじさんはニコニコ頷くとクラッカーを構える。

「そうか、夏目少年!『ハッピ〜〜バースデー!トゥ!ユー!!!』」

パァン☆と軽快な音を轟かせキラキラとエフェクトが付いたかのような紙吹雪が夏目の周りにも舞い散る。

共にいたニャンコ先生にも多少かかったように見えたが、猫らしく紙吹雪にじゃれつく様子から効果はあまり見られなかったようだ。

一瞬とも呼べる幻想が過ぎ去ると、夏目は破顔しながらも涙が零れそうになり慌てて袖で拭い、心配して顔を覗き込んだニャンコ先生に「大丈夫」と頭を撫でた。

「ハーッハッハッ。キミにとって一番良い瞬間が見れる催眠作用が入りのクラッカーはお気に召したかな?いやーめでたいめでオブぇっっ」

「なーにが「お気に召したかな?」だ!バカチンが!訳分からんうちに幻術など見せおって。一体ここは何処なんだ、吸血鬼とか言っていたがどういう事なんだ、あぁ?説明しろー!」

意気揚々と話しかけてきた吸血鬼の顎に頭突きをクリーンヒットさせてノックアウトしたそのままの勢いで、胴体の上で飛び跳ねんばかりにワーワーと激昂しているニャンコ先生に暫し一同唖然としていたが、ひと足早く我に返った夏目が慌ててそれを止めにかかる。

「せ、先生、落ち着けって。その、人?気絶してるから何も答えられないぞ。とにかくやめろ」

「ウルサイ!愉しみのジャマをされて落ち着いていられるか!おいキサマ、さっさと起きんか!」

さらに激昂して『誕生日祝い隊おじさん』の胸倉を掴みガクガクさせ始めたため、説得を諦めた夏目より鉄拳制裁を頭に受けようやくニャンコ先生も落ち着いたのだった。

するとここでようやくロナルドが声をかけてきた。

「えぇと、ナツメくん?はじめまして、オレ吸血鬼退治人のロナルドと言います。えーーと、なんて言ったらいいのか…。何がなんだか分からないと思うんだけど…」

「えっ、あぁはい、はじめまして夏目貴志です。こちらはニャンコ先生です。…えぇととりあえずここは何処ですか。俺たちがいた場所じゃないことは確かなようですが…。正直ビルの灯りなどが眩しいくらいで」

軽く周りをキョロキョロと見渡していると、ドラルクも近づいてきた。

「ここは神奈川県の新横浜だよ、夏目くん。そして私は高貴なる偉大な高等吸血鬼ドラルク。ところでそちらの猫さん、我々吸血鬼とはまた違う妙な気配がするのだが何者かね?」

「あれアナタはさっき砂になってたヒト…?神奈川県??関東の?先程から吸血鬼って単語が聞こえてるのですが…え、ここでは普通に存在してるんですか…?」

むくりと起き上がり殴られた箇所を擦りながら呆れたように夏目をチラリと見た後、ニャンコ先生はのっそりと地面へ降り立った。

「なーにを寝ぼけたことを…。普段あやかし共と戯れといて何を言う。はぁー、あやかしの代わりにこの世界では吸血鬼とやらが存在しているということだろう?ま、妙な気配はお互い様ということか。さてドラルクとやら。私が何者かと聞いたな?このプリティな猫の姿は仮の姿、真の姿を見せてやろう!」

ドラルクを見上げニヤリと笑ったかと思うとボフンッと音を立てて、ニャンコ先生は本来の白く巨大で優美な姿に変身した。

「「「おぉー…!」」」「カッコいい!」「なんと優雅な…!」スナァ…

本来の姿を目撃した新横浜の面々は思わず感嘆の声を上げ、ドラルクも想像以上の姿に思わず砂になったものの即座に復活した。

「わ、私だってそのくらい…ていやっ!!」

悔しくなったのかドラルクも対抗すべく変身したのだが…蜘蛛に顔が付いた不気味な生き物が現れ、夏目たちが見たか見ないかくらいで素早くロナルドに踏み潰されてしまった。

「対抗してもお前の雑魚過ぎる変身スキルじゃ無駄なんだよクソ砂!どう見ても格?としてはアチラさんが上じゃボケ!」

その場にいたヒナイチやら半田もその点は同意し、ドラルクは砂のままピスピス泣いてしまった。

「それよりも私はいい加減もとの場所に戻りたいのだが?コイツに呼ばれたのならコイツに戻させれば良いのか?」

先生が前脚でドスッと踏みつけ圧をかけると未だ地面で気絶している吸血鬼が「ぐえっ」と呻いた。

「それはどうだろう…『かなりのエネルギーを使う能力』で君らを召喚してしまった訳だからな。暫くはエネルギーとやらが不足なうえに、元の世界に戻せるかどうかも不明だな」

「えぇ~!こ、困ります。流石に今夜中には戻らないと家族が心配します!…それにその、妖怪の友人たちが祝ってくれるみたいなので出来れば会いたいです」

「そうだ!今宵はコイツの誕生日をダシにして飲み明かす腹積もりだったのだ。早くあちらへ戻せ!」

ドラルクの言葉により困り果てた2人が思わず抗議の声を上げていると頭上から大きな影が舞い降りてきた。

「ハロー、なにかお困り?」

御真祖様(お祖父様)!?」

ふわりと地面に降り立ったのは竜の一族当主、通称“御真祖様”だった。

「今日はジョンの誕生日だからお祝いがてら顔を見に来た。ハッピーバースデー、ジョン。これプレゼント♪」

「ヌー!ヌヌヌヌー(ありがとー)!!」

すぐそばにいたジョンにラッピングされた箱を手渡すと、御真祖様は改めて優雅な姿の先生と夏目に向き直りジッと見つめてきた。

「ハロー、異世界からの客人たち。キミかっこいいね」

「ほぅ…お主、ここの誰よりも気配が濃いし、実際強いとみた。ぜひ闘って遊んでみたい所だが…」

「ちょ、ちょっと先生!中級たちと約束したんだろ?!早く帰りたいとさっき言ってたじゃないか!」

強敵と見える相手に出会ってうずうずしてきた先生を夏目が抑えつつ、ドラルクたちも流石にヤバいと感じたのか御真祖様に簡潔に事情を説明しながら伸びている元凶を縛り上げVRCへ移送すべく連絡をとった。

「なるほど、分かった。先約があるなら仕方ないね。なら僕が送ってあげるよ」

「え?!できんの?そんなコト?異世界へだぞ?!」

「御祖父様だからな、不可能ではないのだろう…たぶん」

提案に驚く一同だが、とんでもスキルの持ち主であるジイさんなら可能なのかもしれないとドラルクは納得がいった。

異世界組の2人は『本当に帰れるのか』と不安げに顔を見合わせていたが、他に方法はないかもしれないと頼むことにしたようだった。

ヌヌヌヌヌヌ(ドラルク様)…ゴニョゴニョ。」

そんな彼らを見ていたジョンに耳打ちをされたドラルクはひとつ頷くと大急ぎで事務所へ戻っていった。

それから約10分後、再び大急ぎで戻ってきたドラルクと共にあるものを持ってジョンは夏目の元へと向かった。

ヌヌヌヌン(夏目くん)ヌヌ ヌーヌ(これ どーぞ)!」

「え?何?えーと、これくれるの?」

手渡したそれは透明なラッピング袋で、中身はドラドラちゃんお手製のクッキー数種類。先ほどまで事務所にて置いてあった物だった。

「今日はキミの誕生日なんだろ?同じく今日が誕生日のジョンがプレゼントを渡したいそうだから、急いで取ってきたんだ。あのポンチ吸血鬼のせいで巻き込んでしまったからそのお詫びも兼ねてな」

「ドラルクのクッキーは特に美味しいからな。味は私も保証するぞ!」

「あー…料理の腕だけはいいからなコイツ。体力も能力も大したことない雑魚だけど。ともかく2人とも巻き込んじまって悪かったな」

ヌッヌー ヌーヌヌー(ハッピー バースデー)、 ヌン!!」

そうしてジョンから手渡されたクッキーの袋をそっと抱き締め、肩から提げていたバッグに仕舞った。

「おい夏目、そろそろ行くぞ!酒の肴としてネタにしてやるのだ!!」

その声に振り返ると先程の優美な姿は消えていて大柄な“吸血鬼”に抱えられた“ニャンコ先生”が手を振って呼んでいた。

「そうだ、お返しと呼べるかは分からないけど俺からも…あった。良かったらこれを。誕生日おめでとう、ジョンくん」

夏目がごそごそと鞄から取り出したガチャポンのカプセルを差し出すとジョンは嬉しそうに受け取った。中身は何かアニメキャラのグッズのようだ。

「ガチャガチャで出てきた物で申し訳ないけれど渡せるものがコレしかなくて。クッキー大切に食べるよ。ありがとう」

「ヌンヌ ヌヌシーヌヌ ヌイヌヌヌ ヌヌヌ!」

「ジョンも嬉しいから大切にする、だってさ。大切なのは物の値段じゃなくてその気持ちのほうだよ少年。元気でね。」

 

その後ペコリと頭を下げた夏目とニャンコ先生を抱えてとこかへ御真祖様は飛び去り、「無事送り返した」とRINEが入り一同安堵した。

元凶である吸血鬼誕生日を祝い隊おじさんは絞られ、VRCに回収後「何故勝手に返した、異世界のヤツからデータ取ってみたかったのに」とサイコパス所長が発言してひんしゅくを買ったり、彼らの話で持ちきりだったりと、暫くこの事件の影響が残ってしまったのであった。

 

御真祖様が彼らの世界へ遊びに行ってしまった話はまた別のお話…

 


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