中学の話です。
息をするように共学設定です。
9月。
落ち葉が散り敷くなんちゃらかんちゃら、皆様いかがお過ごしでしょうか。
秋冷の候だっけな、お堅い手紙に書くやつ。
秋は冷たいって書くのに。
「...暑くね?」
「何をいきなり。分かり切ったことを言わないでもらっても?」
「そんな言わなくなっていいじゃないか...」
月ノ森学園の端っこ、裏庭の木の下。
友人より進んだ関係性の祥子と昼飯を共にしている。
んで今の会話、1を言ったら10で返されて涙目。
「9月だったらちょっとは涼しくなるはずでしょ、なにこれ、31℃だよ」
「見せないでくださいまし、ただでさえ暑いのにもっと暑くなりますわ」
「...俺なんかした?」
「いいえ別に」
いいえ別にの態度じゃないから聞いたんですけどね俺は!!
女の子が不機嫌の時にどうしたって聞くのはダメだって言うけど!!
それは聞きたくなっちゃう感じの態度でしょう!?
「...うるさいですわね」
「え、ごめん」
カスメンタル俺氏、こういうところがいけない。
だって怒らせたら謝れっておばあちゃんが言ってたもん。
「...はぁ。何を気を遣ってるのですか?私と貴方の仲でしょう?」
「...祥子さんが不機嫌そうだったから理由を聞こうと思っただけなんだけど」
「別に怒ってはないですわ。貴方が普段以上におどおどしているものだから」
「それが理由ならすっきりしたよ」
こう言い合えるのも、進んだ関係性、所謂カレカノってやつだからですね。
え、死語?うっさい。
「...さっきから誰と話してるんですの?」
「しれっと心読まないでもらってもいいでしょうか、俺のこと好きだから全部わかるとかそういう」
「気持ち悪いですわね」
「...ごめんって...ギャグじゃん」
「ならもっと分かりやすいボケを求めますわ」
とまぁ、悪くはない関係性を形成している。
でも、ここ最近、なんだか笑顔が増えた気がする。
「...祥子」
「はい?」
「...なんか楽しいことでも、あった?」
「...分かるんですのね」
「そりゃまぁ...彼氏だし」
ガラにもなくカッコつけた俺の渾身のボケはスルーされたが、祥子は遠くを見つめて顔を赤くした。
「...男?」
「違いますわ」
「今の顔は男に向ける顔だったよ?」
「違うって言ってるでしょう?殴りますわよ」
と脅されたものの、飛んできたパンチは猫パンチほどだった、可愛いね。
「...この間の月ノ森音楽祭、あったでしょう?」
「あぁ...バンドが出てて驚いたね」
「それですわ。わたくし、バンドを始めましたの」
「...え?言ってよ。ギターぐらいならやったのに」
「...ギターは貴方よりうまい人物に心当たりがあるので。貴方も知ってますでしょう?」
なんでお前を誘わねばならないみたいな顔されました、悲しいよ。
だけどそんなところも、良いだろう。
「...んで、来年の音楽祭にでも出るの?」
「いえ、メンバーのうち2人は外部生ですので、それは難しいかと。でも、何かしらのイベントには出てみようとは思ってますわ」
「そっか。うん、応援する」
「...貴方なら、そう言ってくれると思ってましたわ」
「信頼が厚くて大変よろしいことで...ん、もうすぐ昼休み終わるな」
視界の端に捉えた時計が、予鈴5分前であることを示す。
「あら、もうそんな時間。貴方と過ごしてるとあっという間ですわね」
「慣れたら大したことなさそうだけどね。若いうちは流れは速いって言うし」
諸々を片付けなからつぶやくと、祥子がこっちを見ながらもしかして?みたいな顔をする。
「...それはプロポーズですか?」
「ジジババになっても一緒にいようって?俺はそう思ってたんだけど」
「...考えておきますわ」
「えぇ...今のは、はいよろこんでじゃないの?」
「できることならできるとこまで、じゃないんですのよ。こういうのはいつか終わりが来ます」
「分かりやすく残酷」
今のは実質フラれたということでよろしいか?
泣きたいよ。
「...まぁ、私に何があったとしても、その手を――」
ちょうど予鈴と重なって、何を言ってるかが途端に聞き取りづらくなる。
でも、口の形状から察するに...。
「...分かった。地獄の果てまでお供しよう。お姫様」
「...今の、聞こえてなかったのでは?」
「心の耳を傾けた」
「それを言うなら目では...まぁ、それは良いですわ。ではまた、放課後に」
「あぁ、後で」
俺と祥子は別の教室に向かう。
――その手を離さないでいてくれるなら。
「離さないどころか、接着剤でくっ付けたいけどね」
何言ってんだ俺、バカなこと考えてる暇があったら勉強しろ馬鹿、みたいなセルフツッコミをしてる間にも、その手は離れかかってたことを、遅まきながら知ったんだけどね。
幸せな世界線が見たいので早くAveMujicaのアニメをください