昼休み、購買前のベンチ。
「でさ、Bクラスで今度勉強会やるんだけど、東堂も来るだろ?高田ちゃんも来るし」
パンにかぶりつきながら虎杖が言うと、隣の東堂は空を仰ぎ、ゆっくりと目を閉じた。
「……行かん」
「え?」
「マイエンジェル……高田ちゃんは、きっと自分の意志でBクラスを導こうとしている。俺のがしゃしゃり出ては、マイエンジェルの計画に水を差すことになりかねん!」
「また始まったよ……」
「俺の役目はただ一つ! 彼女が困ったときに、その背中を押せる存在であること……ッ!」
言いながら、東堂は血の涙を流していた。
「お前、前から思ってたけど頭のいいバカだよな…」
虎杖のツッコミが虚しく響いた。
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その日の放課後、Bクラスの教室は活気に満ちていた。
机を島状に並べ、勉強会が始まろうとしていた。
「じゃあ、私は数学担当するね! 嶋田くん、解説頼んでいい?」
「お、おう!任せろっ!」
「英語は任せてください!私、得意なんです!」
「おー、ありがてぇ!」
教室の中では、それぞれ得意科目の生徒が講師役となって勉強を教えていた。
その中心にいるのはもちろん、高田ちゃん。
「みんな、ありがとう! こうやって協力できるのって、すごく嬉しい」
高田ちゃんの言葉に、生徒たちは自然と笑顔になる。
その様子を見つめながら、一之瀬帆波が隣でぽつりと呟いた。
「高田ちゃんって、本当にすごいね……」
「えっ?何が?」
「みんなをこんなに自然に動かせるなんて、そうそうできることじゃないよ。
私なんて、まだまだ未熟だなって思う」
「帆波ちゃんはいつも頑張ってるじゃん。私なんてただ声かけただけだよ」
「その“声かけ”ができるのがすごいんだってば……ほんと、尊敬してる」
一之瀬のまなざしは、まるで憧れと後悔が混ざった視線だった。
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数時間後、集中力も限界に近づいた頃。
「じゃあ、今日はそろそろお開きにしよっか」
「えー、もうちょっとやりてぇ!……いや、でも確かに頭痛くなってきたかも」
「じゃあ最後に……みんなに渡すものがあります!」
高田ちゃんがぱん、と手を叩くと、みんなの視線が集まる。
「これ、テストを乗り越えるための“秘策”です!」
そう言って配られたのは、過去数年分の過去問だった。
「これ、見たことない……どこから手に入れたの?」
「生徒会室に残ってた過去データを見て、そこから出題傾向を分析したの。似た問題をまとめてコピーしてみたんだ」
「マジかよ……やっぱ女神だわ」「これがあれば戦える気がする……!」
「普通に先生超えてるって……」
「これがアイドルの実力……!」
生徒たちはどよめき、賞賛と感謝の嵐が吹き荒れる。
一之瀬はその様子を見ながら、心の中でそっと思った。
(やっぱり、高田ちゃんがいる限り、Bクラスはもっと強くなれる……)
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そして、2日後――
「おいおいおい……ちょっと待て……この問題……!」
「マジで!? 高田ちゃんがくれたやつ、ほぼそのまんまじゃん!!」
「えっこれ……答え合わせじゃん!? 事前配布答え合わせじゃん!!」
試験中、Bクラスの中には驚きと感動を隠せない者もいた。
心の中で歓喜の声をあげながら、鉛筆を走らせる。
(ありがとう高田ちゃん……)
この瞬間、Bクラスは確信した。
――自分たちは、まだまだ上に行ける。
そしてそれは全て、
“アイドル”という枠を超えてクラスを導く、
一人の少女から始まっていたのだった。
が、この後にくるハイセンス変態ゴリラのせいでそんな思いもぶっ壊れることになるのだが、そんなの知るよしもない一之瀬帆波は期待に胸を膨らませるのだった
可愛そうに…帆波ちゃん。東堂がBクラスに入ってきたらBSSされるなんて…