約週1ペースでここまで続けられたのも偏に皆様の感想やここすきなどのモチベーションに支えられてのことでしょう。
誤字報告も非常に助かってました。
改めてお礼申し上げます。
エネルギーを過剰放出した影響かフラついた様子のシアンの後を、ゼロと同化したワイリーが着いていく。
先程まで隠岐渡たちとの戦闘に集中していたせいで気が付かなかったが既に戦闘音が収まり、あれだけ存在感を放っていたプロトの姿が無かった。
その事実にワイリーは僅かに眉根を寄せただけで然程表情を変えなかった。
無敵だと思われた怪物がいたと思われる場所周辺にちらばるモノクロのジャンクデータ。
恐らく無限の再生能力に対するメタ――凍結をしたものだと推察できた。
『そちらも勝ったか』
『勝負に勝って試合に負けた、みたいな?』
急に現れた扉の前にはオフィシャルのエースであるブルースが腕を組んだ体勢で待機していた。
他の面子の姿は見られず、彼の全身に傷は見られたものの、余裕を含んだ笑みからしてデリートされた訳では無いのだろう。
『ライカとサーチマンは?』
『一足先に報告に向かってもらっている。光はその中へ入っていった』
『じゃ、私たちも行くから留守番よろ~』
『待て……ワイリーも連れていくのか?』
『むしろそっちが主題なんだってー』
無警戒にシアンが扉を開き、手招きする彼女へゼロとワイリーはその中へと誘われて――
「ここは……パストビジョン……?」
果たして中へ広がっていた光景はかつての科学省、その一室であった。
ネットワーク技術が社会全体に浸透する前時代、機械化が進む現在よりも遥かに設備が乏しいこの部屋で全てが始まったのだ。
床へと雑多に散らばるレポート用紙、白く塗装されたスチール製のデスク、幅を取り画面も荒いブラウン管のモニター。全てがワイリーにとって懐かしい空間であった。
「そこにおるのはワイリーか?」
「ワイリーだって!?」
だがしかし、部屋の中央にいた男を目にした瞬間、ワイリーの抱いていた感慨深い感情は丸々吹き飛んでしまう。隣にいる光熱斗など意識にすら残らなかった。
恰幅の良い体格に立派に蓄えられた白い口髭が特徴的な彼こそ、
「光正……!」
長年ずっと恨みを抱えさせる張本人であった。
「随分と孫たちに迷惑をかけたらしいのう、ワイリー」
「お前……お前ェ!!!!」
堪らずゼロから分離して大股でずかずかと足早に近付いたワイリーは正の胸倉を掴んだ。
痩躯なワイリーでは体格差もあって動かすことも叶わない。すべてがデータ化されている電脳世界において現実世界に即したものも反映されているらしかった。
ただ、呼吸を必要としない故か、それともワイリーが非力であるからか。憎き光正は顔色ひとつ変えずにワイリーを見つめたまま手を振り解こうとしない。
「おじいちゃん!」
「すまんな熱斗や。少しワイリーと話をさせておくれ」
「何をのうのうと……!! 貴様が何故ここにおる!?」
「先に言っておく。儂は光正
そう事実を告げられたとしても、その技術に驚愕はすれど憎しみは微塵も薄れない。
あぁ、確かにプロトの不始末に責任を取って身を投げ出すなどその立場が、周囲が許しはしないだろう。
が、目の前にいる存在は決して単なる管理用プログラムではない。枯れ木のような手で触れている今、光正の人格と記憶を有していると感覚的に理解できてしまったから。
それこそ脳の神経回路がデータに挿げ替えられただけの、
「しかし何故じゃワイリー? どうしてプロトを解き放った?」
「わからない……? 本当にわからんというのか正ッ!!」
「わからんよ。儂ひとりを恨むのであれば世界を巻き込む必要はあるまいに……」
「何を抜かすと思えば……あの日! 儂は儂のすべてを否定された!!」
世界に取ってまさしく運命の岐路とも言えるあの日、ニホンの科学省はワイリーのロボット工学ではなく、光正の手を取った。
たかが予算の都合という理由だけでワイリーのすべてを切り捨てて、だ。
身を引き裂かれる想いというのは、あれを以て他にない。あの残酷な仕打ちをワイリーは一日足りとも忘れたことは無かった。
「確かにあの時、科学省に余裕は無かった。が、時機を待つなり別の場所で――」
「戯言を!! あの時既に儂にはもう選択肢など残されておらんかったわ!! 時機を待つ? 儂の研究が二番に甘んじろ、と? 冗談じゃないッ!! 待っている間に儂の時間は奪われ、夢を見るには遅過ぎる!! あの後、ニホンから幾度拠点を移してもネットワーク社会を望む声ばかり! 儂の思い描く未来には到底繋がらんかった!!」
生前からどこまでも甘い考えを持つ男へ、ワイリーは至近距離から唾液と共に洗いざらい言葉を浴びせかける。
多くがネットワーク社会への利便性にばかり釣られてしまい、人とロボットが共存する世界に賛同してくれなかった。
あるいはその技術をネットワーク社会へと流用する声すら挙がったのだ。全く以て許せる筈が無い。
「儂は憎い!! 儂の理想を理解しなかった世界が!! 儂を選ばなかった社会が!!」
「他人に押し付けてばかりでは理解もされん。少しは歩み寄れんかったのかワイリー?」
「正、お前がそれを言うのか!! 自身の研究成果だけで己の思う方向へ世界を捻じ曲げた男が!!」
「それは違う。かつてのお前も同じ志を持っておったのならわかるじゃろう? 世界をより良い方向に後押ししたい。その想いでやってきたのだと」
「あぁ、そうだとも! そして恵まれたお前は受け入れられ、儂は拒絶された! それだけの話じゃ!!」
どれだけ光正が屁理屈を並べ立てようとも、会話は平行線のままだ。
それは選ばれた人間だからこそ言える綺麗事。
いっそのこと他の人間のように、光正の戯言に耳を貸さねば良いものを。負けず嫌いのワイリーにそれは選択できなかった。
ディベート未満の口論であったとしても、光正に譲ってやるものか。
その他多数が間違っていて、ワイリーが正しくないのだとしたら――自分は何の為に人生を歩んできたのかわからないじゃないか。
(あー、横から失礼するぜ)
そんな折に存在を忘れていた隠岐渡から横槍が入る。
光正は素直に耳を貸し、ワイリーは尖った感情の赴くまま黙らせてやろうとするも、それに先んじて意思が飛んでくる。
(確かにワイリーの言ってる事にもわからなくも無いけどよ……極論過ぎるだろマジで)
「何を言うか隠岐渡! この社会こそが奴を肯定している何よりの証拠!!」
(まぁな。でも全部が全部、そうって訳でもねぇだろ。特にプロトの反乱以降なんかはそうじゃねぇの?)
「それこそネットワーク社会の汚点! だのに
(まぁ、利益優先ってのもあったんだろうがよ。でも、それだけじゃ人はついていかない。きっとこの失敗でもっと他の人へ歩み寄る必要があった筈だ)
隠岐渡は静かにその道が困難であったことを言外に伝えてくる。
全世界へ混乱を撒き散らしたのであれば、その分だけ反発は大きいものだっただろう。中にはワイリーのように拒絶反応を示した者もいたかもしれない。
それでも今もネットワーク社会が続いているのだとしたら、そういった無理解も解決していった証左なのだと言いたいのかもしれない。
「つまらんことを……多数派が少数派を握り潰しただけじゃろうて」
(かもな。でも、全く歩み寄ろうとしなかったワイリーよかマシだろ?)
隠岐渡の指摘は図星ではある。しかし、感情が受け入れ難いのもまた事実であった。
(ワイリー、お前は潔癖過ぎたんだよ。それこそ人とロボット
「そんなことある筈が――」
(強かな人間ならどんな形であれ実現に持っていく筈だろ? なぁ、光正さんよ?)
「賢い選択ではあると思うよ、隠岐渡くん」
どちらかを選ぶのではない、第三の選択肢。それはどっちつかずの子供染みた意見だ。
歩み寄るなどと体の良い事を言っておいて、それは妥協に過ぎない。大抵は中途半端に終わり、形にすら残らないことだってある筈だ。
「ただ大人には色々な柵がある。そもそも選ぶことすらできないこともままあるものだ」
(そりゃあな。でも世界を壊すなんざ大馬鹿な選択を取った爺はどうなんだよ?)
光正が零す苦悩を隠岐渡は鼻で笑い、そして言う。
(世界中敵に回して勝つ方がよっぽど難しいと俺は思うぜ? まぁ、実際負けたしよ)
「ぬぅ……」
ワイリーに反論は、できない。
プロト本体が消滅し、ワイリーとゼロが敗北を認めた以上、これ以上言葉を重ねたところで負け犬の遠吠えに過ぎない。
(それこそ技術力で負けてねぇってならよ、ワイリーの方が社内政治を上手くやってりゃ未来も違ったんじゃねぇの? 馬鹿正直に自分の理想語ってねぇで上等な餌で釣った後に軌道修正するとかさ)
そして隠岐渡は悪ガキみたいに笑うのだ。
ワイリーよりも何周りも歳下の癖して、青臭い考えをしていたとバカにして。
(国によって文化とか色々違ってんだ。ロボの方が良いって国もあった筈だろ。まぁ、利益度外視のアホなら話は別だけども)
「そんな訳あるか小僧が……」
世界も知らない言いたい放題の若造にワイリーは青筋を立てるものの、騒ぎ立てることはしなかった。
怒りを胸の内に秘め、決意する。物を知らないガキには力でわからせるのではなく、実際にロボット工学の素晴らしさを見せつけてやることを。
(そうだよ。それで良いんだワイリー。世界とか社会とかじゃなくてさ、もっと手近な人たちから理解を得ていって、その輪を広げていけば良かったと思うぜ)
「儂もそう思うよワイリー」
隠岐渡の、光正の甘ったれた結論にワイリーは反吐が出る想いだ。
それだけ優しい世界であるならばワイリーの凝り固まった憎しみは、これほど根深いことになってはおるまい。
ただ、ここまでワイリーの直情的な方法を馬鹿にされて――安直に、ガキみたいに、感情に振り回されるアホなのだと言われて、流石の頑固者も少し考え方を改めた。
(だからまずは俺を納得させてみろよワイリー!)
「せいぜいほざいていろ小僧め」
世界よりも前に隠岐渡を、そして光正に認めさせるのだと。
今現在を否定し、過去にしがみ付く亡霊は少しだけ前を見つめた。
(だから……儂を恨め、バレル)
間接的な原因とはいえ命を奪ったことに変わりない友人に向けてワイリーは心の中でそう呟いた。
あの時こそ認められなかったが、もしワイリーが少しでも早く緊急停止機能を備え付けていれば。
あるいは研究ばかりでなく多方面に目を配ってさえいれば、結果は変わっていたと受け止めることができたのだから。
光正とワイリーの会話に多少の一区切りがついたところで地響きが起こる。
原作通りであるならば、プロトが消滅したことでこの電脳空間はおろかワイリーの根城ごと爆発してしまう運命が待ち構えているのだろう。
「プロトが崩壊し始めた。熱斗、彩斗、お友達の隠岐くん……そしてワイリー。外へ向かうんだ」
「おじいちゃんは一緒に帰るんじゃないの?」
「熱斗、儂は過去の人間だ。プロトが消えようとしている今、儂の役目も終える時がきた。これからの時代はお前たちが作り上げていくんだ」
「でもおじいちゃん!」
「いいんだ。行くんだ儂の可愛い孫たちよ」
光正博士は原作通りの台詞を言って満足そうな笑みを浮かべて光兄弟の頭を撫でる。
熱斗は駄々をこねるも、物分かりの良い彩斗兄さんはその想いを汲み取って素直に立ち去るのだが、
『ゼロ、やっておしまい!』
『了解した』
「あいたっ」
悪いがそうは問屋が卸さない。
満足に動けないシアンに代わってゼロに光正へ脳天チョップをお見舞いさせる。つーか、タイムラグ無しに動き出した辺り、ノリが良いのやら。
それともご主人様たるワイリーも同じ気持ちだったのやら。
(納得いかない人が多数な為、正くんの意見は却下となります)
「何をふざけたことを……」
(それはこっちの台詞じゃボケ! 俺たちに尻拭いさせといて勝手に消えようとしてんじゃねぇ!)
封印するしか手が無かったとはいえ、元はと言えば安全設計のなっていないプロトのせいで苦しめられてきたのだ。
加えてココロサーバーとココロネットワークが『5』で悪用される時点で尻拭いはまだまだ続くしよォ!
(過去の人間? 違うだろ? 光正さんは今ここで、こうして生きている)
「何を言って」
(否定はさせねぇよ。何せ可愛いお孫さんが
光彩斗は心臓病で命を落とし、そしてそれを受け継ぐ形で電脳世界に再び産まれたのだ。
『おじいちゃん、ネットナビが「生きている」のだとすれば、貴方もきっと「生きている」のだとボクも思います』
「彩斗……」
「……二度も勝ち逃げは許さん」
「ワイリー……」
多数決が幼少期から叩き込まれているニホン社会に生きるのであれば、大人しく従ってもらおうか、光正。
それこそ俺なんて本当に一度死んだ身だ。死んだぐらいで解放なんざしてやらねぇ!
今度のスケールは地球全体がやべぇというのだから死人だろうがコピーだろうが関係ない。縋りつけるモノなら何でも縋りついてやらァ!
光兄弟に背を押されて扉の外へと連れ出される光正の後を追って外に飛び出してみれば、
「遅い! 一体何をしていた!?」
炎山が珍しく慌てた声を上げたように、プロトサーバーはえらいことになっていた。
空間やら足場やらがボロボロと崩れ落ちる中、プロトの末端部分が暴れ回っていやがる。
本体が消滅した今、プロトバグも長い命ではないのだろうが生存本能故かブルースを捕食しにかかっていた。
「その御仁は……いや、今は脱出が先決だ! 急ぐぞ!」
炎山の号令に従ってアクセスポイントへ走り出す俺たち。
が、エネルギーの過剰放出によってヘロヘロとなったシアンは戦うこともできず、フルシンクロしたロックマンに運搬されることに。
『足引っ張ってゴメンねーロッくん』
『気にしないで! でも……数が多い!』
四方八方から攻め立てられる状況下で防衛戦力はロックマン、ブルース、ゼロの3名な上、消耗しているときた。
物量差を前にして遅々と進まず、脱出経路も細まっていく為、焦りが募る中、
『オレが囮になろう』
「ゼロ……?」
今まで自己主張をしてこなかったゼロがこの場面で自己犠牲精神を発揮した。
困惑するワイリーを他所に彼を俺たちもといロックマンへ押し付けると、
『ワイリー様を――親父を頼む。我が唯一の宿敵』
(ゼロ……!)
「ゼロォオオオオ!!!!」
ゼロは唇を歪めて確かに笑う。
それは元から備わっていたのか、それとも俺たちと通じ合った影響で発露されたのかはわからない。
でも、そんなことはどうだっていい。
ワイリーの悲痛な叫びすら届かないゼロに、俺は――
『最後に会えたのがお前で良かった』
ゼロがオーバーロードすることで、その全身からオーラとなってエネルギーが垂れ流される。
途端、それに捕食者が殺到するのは自明の理であり、
『行け』
ゼロの一振りによって活路が開かれるのと同時に炎山が先頭を切り、
「行こう」
光正が立場を変えて戸惑うロックマンの背を押して、俺とワイリーはアメーバの群れに埋もれ行くゼロの姿をただ見つめるだけしかできないのであった。
「あっつう……!?」
パルスアウトし、現実世界へ回帰した俺を待ち構えていたのは熱暴走した機械の数々であった。
思わず座席から飛びのき、周囲を見渡すのだが……どれもこれも火の手が上がってやがる。
「Hurry up! ここも長くは保たん!」
「のわっ!?」
PETとバトルチップを何とか回収したのも束の間、筋骨隆々なシャーロ兵へファイヤーマンズキャリーで運搬される俺たち。
呆然自失とするワイリーもまたセルゲイ大佐の手によって運ばれ、下手すりゃ俺たちの全力疾走よりも早い速度で移動している模様。
封鎖されていた扉も本体が消滅した影響で、プロトバグが混乱した隙を突いて解放に成功したらしく、脱出は実にスムーズなもので。
誰一人欠けることもなく、再びシャーロ艦まで戻ってこられたのはまさしく彼らの練度が高いからだろう。
そして俺はいつの間にか眠気に負けて…………目覚めた時には全てが終わった後だった。
貴船総監へ直接報告に向かった際、聞かされた事の顛末についてだが。
まずテトラコード防衛は大量の敵が押し寄せたことで失敗に終わり、その被害も全体の3割強に及んだらしい。
ただ戦力の中心にいた元WWW幹部やネットセイバーは軽微で、すぐさまプロトバグ流出を防ぐべく増援として駆け付けたのが功を奏し、各国への被害は最小限に収まったとのこと。
多勢に無勢ともあって消耗戦を強いられた熱斗の友人たちやら大会出場者、アジーナの勇者とクリームランドの騎士たちもまぁまぁ危うかったのだとか。
ただ彼らの奮戦が無ければ、被害規模は比べるべくも無いというのだから頭が上がらない。
次に世界情勢について。
こちらとしてはワイリーからの支援が打ち切られた以上、怪しい動きをしていた国家はすぐさま条約を結びにいったらしい。
詳しい話は特に言及しなかったが、それで割を食ったとしても俺はそこまで関与していられない。以上。
コサックさんの容態については命に別状はない模様。
身元保証人についても比較的早い段階で娘さんであるカリンカさんが名乗り出たらしい。
その際、俺は顔を合わせなかったので詳しくは知らないのだけど、目覚めない父親に対してニホンの人間に声を荒げることもなく、粛々と引き取ったのだとか。
家族ほったらかして何してんねん――ってツッコミは野暮なのだろうか?
ただ引き取った、ということで家族のしての情が残っているのだと信じたい。
作戦を共にしたシャーロ軍について。
別れの言葉ひとつもかけることができなかった彼らは人的被害こそ軽微であったが、彼らのネットナビは結構な数が失われた為、その補填としてニホンの科学省が協力することになったらしい。
流石にアジーナからスタイルチェンジの許可が下りなかったらしいけれども、それでも戦力増強が望めるとあってセルゲイ大佐の顔色は良かったのだとか。
ライカについては職務の忙しさもあって、なかなか返信が返ってこないらしいけれど、休暇が取れたらニホンに遊びに来てくれるそうだ。
ただ軍人だから長期間って訳にはいかないだろうから、結構な弾丸スケジュールになりそう。氷川くん経由で温泉とか紹介するのも悪くないかもしれない。
今回の元凶であるワイリーについては……まだ処遇が決まっていないらしい。
普通に裁判へかけられたとすれば死刑か無期懲役の判決が下されそうなものだけれども、そこまでたどり着くのに時間が大層かかるらしかった。
ドリームウイルスの件含めてやらかした事がやらかした事だし、その準備だけでも大変なところにワイリーのパトロンから横入りが入ってさぁ大変。
加えてそのゴタゴタに乗じてワイリーが脱走したものだから……マジでご愁傷様というべきか。
ただ、ワイリーが原作通り再起を図る事は無い、とは思う。多分。
ゼロを喪ったことでワイリーにも心情の変化が露骨に感じられたしな。もし違った時は……また頑張ろう。
その同日、科学省で名誉顧問として就任する筈だった光正も行方を晦ましたのも大きな事件となっていたが……関連性は不明とされているらしい。
最後に俺たちについて。
シアンからの告白を受けたものの――特に俺たちの関係性に変化は無かった。正確には、シアンがその答えを求めなかった、というべきか。
『元は人間って言っても今はネットナビだしね。結ばれたとしてどうすんの~って感じ?』
とケラケラ笑って言っていた。
俺としても今まで異性として意識していなかったのでシアンの配慮に今はありがたく乗っかったものの――いずれは結論を出そうとは思っている。
付き合うって形にならないしろ、好きかそうじゃないかを伝えるくらいの誠実さは持ち合わせておきたかったから。
より一層冷え込み、冬休みも目前に迫る頃。俺は宛先不明のメールを受け取り、その文面に釣られてのこのこと足を運んでみれば。
「……何やってんスか?」
「見てわからんか隠岐渡?」
『見ての通り、真剣勝負よ! ぬぅんッ!!』
雑居ビルが立ち並ぶデンサンシティ郊外にて。
絶賛指名手配中のDr.ワイリーと、行方不明となった光正が人型ロボットを操作してバトっていた。
しっかしまぁ、ワイリーも親の敵のように光正を恨んでいた割に随分と自然体の様子。
表情からもすっかりと毒気を抜かれており、めっきり老け込んで見えてしまう。
それだけゼロを喪ったショックがデカいのかは、推し量れない。
「いやアンタら、自分の立場はわかってないんで?」
「知れた事。生い先短い人生を獄中生活で浪費しては堪らんから抜け出しただけじゃわい」
『同じく。政治の駒として利用され続けるのは本意では無いのでね』
「えぇ…………」
ワイリーはコンソールを弄り、光正は自身を送り込み直接コントロールしながらそう答えた。
「元より我らは科学者であり研究者」
『飼い殺しになるよりもフリーで動けた方がまだ社会貢献もできるだろう』
「……もし俺がここで通報したらどうするんで?」
「拠点はまだ他にも構えとる。そこに移すだけじゃな」
『まぁ、コサック君を抱えるような子がそんな選択を取りよう無いからね。無駄な仮定だと言えるよ』
「……せめて熱斗くらいには会ってもらえませんかね?」
ともあれ俺がまた隠し事をひとつ抱えることとなった、12月。
果たして俺のいる『ロックマンエグゼ』の世界はどこに向かうのか、わからん不安を誤魔化すように俺はほっと吐いた白い息を視線で追うのだった。
『3』までのシナリオも無事完結という訳で自己満足の後語りをば。
今回もプロット通りに事が運ばず、アネッタさんとプラントマンが割を食ってしまったのは両者のファンに申し訳ないところ。
環境破壊を阻止すべく動く彼女が、騙されていたとはいえ人命を救う病院を襲う理由がどうしても思い浮かばんかった。
かといって介入無しに原作ブレイクをするのも何か違うかなぁ、といった感じでしたねぇ……。
一部読者様からメインヒロイン()と言われたワイリーの改心ですが、
拙作においては光正と再会することで頑な感情を解して、『ロボット工学の科学者』であることを強く意識させたイメージです。
すべては光正への対抗心で拗れに拗れた解釈。
それを少しばかり初心に帰らせたらこんな感じかなぁ、と。
ゼロの退場については『X』や『ゼロ』シリーズをプレイしていると様式美といいますか……。
ただもうちょい掘り下げが必要な気もしないでもありませんでしたが、尺取ってると話の進みが悪くなってしまうのも悩みどころでした。
『6』の『やさしさ』のようにワイリーにとっての最後の一押し。自覚したからこその改心に繋がってほしいかと。
クロスフュージョン関連の技術開発、そしてワイリーが光正と再会+ゼロを喪ったことでアニメと近い心情になったフラグによって
よりアニメ要素が多くなった次章に突入――の予定です。
ただ『AXCESS』と『Streem』の再履修、『4』と『5』のプレイが全く追い付いていない為、誠に勝手ながら暫し休載を頂きます。
気長にお待ちいただけると幸いです。