成長した広野健太の活躍を見守って下さい。
TVヒーローに憧れる中学生の主人公が本物のヒーローに変身して悪と戦う姿は、自分自身を投影させることができる心も体も等身大のヒーローでした。だから当時の私は『ウイングマン』を通して自分の夢を叶えていたのだと思います。
今回はその夢の続きを追いかけたいと思います。『ウイングマン』のその後を、私なりの思い入れと作品愛を精一杯盛り込んでみました。でも絶対に賛否が分かれる内容です。むしろ否の方が多いと思います。
それでも敢えて挑戦します。東映ヒーロー映画のノリで楽しんでいただければ幸いです。
【異次元からの招待】
「チェイングっ!」
大きな掛け声と同時に全速力で走り出す。
赤を基調としたボディスーツを身に纏い、赤いフルフェイスのヘルメットのバイザー越しから覗く狭い視界にステージが迫る。その手前に設置されたミニトランポリンを利用して宙に舞い上がると、空中で一回転してステージの上に降り立った。
即座に両の足を大きく開くと正面から背中が見えるほど左腕を斜め下に突き出し、かぎ状に曲げた右腕を高く掲げるポーズを決める。
「悪烈っ!ウイングマンっ!」
ステージの前の観客から歓声が巻き上がった。
デパートの屋上に設営された野外ステージで行われているご当地ヒーローショーに自らが考案したヒーロー“ウイングマン”として立っていることに、広野健太は高まる高揚を抑え切れずにいた。
オレは今、ウイングマンになったっ!
◆ ◆
思えば中学校時代にウイングマンの衣装を自作したことが始まりだった。
TVの真似事ではない本物のヒーローを夢見て突っ走っていた。毎日毎日校則に違反した生徒を懲らしめたり、授業中に居眠りをしていた生徒を懲らしめたりしていた。そんな健太の行動に賛否の声はあったもののそのパフォーマンスは周囲の注目を集め、いつしか健太は学校の名物男になっていった。
だが健太の正義の活躍を学校側は認めなかった。そして度々授業の妨げとなる健太の活躍に業を煮やした担任教師の松岡ケイ子は、健太からウイングマンの衣装を没収したのだ。
ヒーローへの夢を挫かれた健太の前に学校でも優等生で知られる楠冨青三と北島みどりが現れた。彼らも健太と同じくヒーローへの憧れを捨てきれずにいたのだが、周りの目を気にしてその話題から遠ざかっていた。しかし健太の活躍を目にし、胸の奥にしまい込んでいたヒーローへの想いが再燃したのだった。
「ヒーローアクション部を作りませんか」その申し出は健太にとって渡りに船だった。
すでに楠冨らに誘われていた渡辺広黄と森本桃子を加えた5人で『学園戦隊セイギマン』を結成し、ヒーローアクション部を興した。ただ顧問になる先生が見つからなかった。
だが意外なことに顧問は松岡先生が引き受けてくれることになった。健太の暴走を抑えるためにはガス抜きも必要と考えたからだ。ただしヒーローショーの開催には、定期試験で平均80点以上が課せられた。
そのおかげで健太の中学校生活は部活、学業ともに充実したものとなった。
そんな充実した学校生活は高校に進学してから徐々に変化していった。楠冨と北島が大学進学に向けてヒーローアクションの活動を自粛したからだ。それでも文化祭などのイベントでショーを披露することはあったが、中学生時代のような充実感には及ばなかった。
不完全燃焼のヒーロー熱は健太の中で、地中のマグマの如く蓄積されていた。その思いが健太を新たなステージに押し上げる原動力となった。
(本格的なヒーローショーをやりたいっ!)
高校卒業後は専門学校に通いながら、アルバイトに精を出して貯金をしつつアクション用のスーツ作りに勤しんだ。作るのはもちろん“ウイングマン”だった。中学生時代に作ったスーツは拙なすぎて、その出来栄えは目を覆わんばかりだったが、今回は本格的なショーで使用することを目的に完成度を追求した。
それと同時に体力づくりにも余念がなかった。中学生の頃から続けている、柔軟体操からのランニングは朝の日課だ。ヒーローアクションの為の努力を惜しんだことはない。
今朝もいつも通りのコースを走っていた。健太の隣を並走しているのは小川美紅。中学生時代に一目惚れしてからの付き合いだ。美紅の方も正義の味方としての健太のことを気に留めていたこともあって、ごく自然に付き合いが始まった。きっかけは健太が通学路に落とした鞄を美紅が家に届けてくれたことだった。
「じゃあ、美紅ちゃんまた明日」タオルで汗を拭いながら軽く右手を挙げる。
「うん、ケンちゃん」美紅も笑顔で手を振り返す。
中学生の頃は“広野くん”と呼んでいたが、高校生の頃から美紅は健太のことを“ケンちゃん”と呼ぶようになっていた。このことは2人の仲が進展していることを示していたが、初めてそう呼ばれた時に胸がチクリと痛んだことを健太は覚えている。その理由は分からなかった。ただ昔誰かにそう呼ばれていたような気がしていた。
ウイングマンスーツの完成が近づいてきた頃、健太は北島みどりから連絡を受けた。
志望する大学に合格してからは連絡が途絶えていたのだが、青春を共に駆け抜けた懐かしい友の口から出てきた言葉に一瞬声を失った。
「ヒーローアクションの会社をやりませんか」
何と北島は楠冨と一緒に会社の設立準備をしていると言うのだ。高校時代にヒーロー熱を持て余していたのは健太だけではなかった。その申し出は素直に嬉しかった。スーツの完成には目途が立っていたが、そこから先をどうしていいのか悩んでいたからだ。
そのことを話すと北島も驚いていた。まさか健太も同じようなことを考えているとは思っていなかったのだ。また実際にヒーローアクションの会社をやるとしてもどんなヒーローにするのかがまだ決まっていなかったが、ウイングマンなら願ったり叶ったりだ。互いに足りないピースを埋め合うことで嚙み合った歯車は、ここから一気に回り始めた。
『有限会社ヒーローアクションクラブ』
設立した会社の代表には健太が就いた。実際に会社の運営は楠冨と北島が行っているのだが、形だけでも健太が代表でなければ納まりが悪いと押し切られたのだ。
それからは昔ヒーローショーの手伝いをしたデパートの屋上で定期的にショーが開催できるようになった。おかげで徐々にウイングマンの認知度も上がってきた。それにつれてデパートの客足にも貢献できるようになり、そうなると企業や団体へのPRもスムーズに進むようになっていった。
ウイングマンは、ご当地ヒーローとしての地位を順調に固めていっていた。
◆ ◆
「みんなお疲れ様っ!」
今日のショーも盛況だった。体力を使い果たしてクタクタだったが、それも心地よい疲れと言えた。セットの片づけが終わるころには日も傾いていた。
「それじゃ後はこっちでやっときますから、リーダーは先に上がって下さい」
楠冨青三が左手を大きく振る。思えば中学生の頃から今までヒーローショーを続けてこられたのは彼のおかげだった。
会社を設立してから連絡を取り合って渡辺広黄と森本桃子も参加するようになった。セイギマンのメンバーと本格的なヒーローショーができることになった時には、思わず健太の目から涙が溢れた。
さらに中学校時代に健太のことを学校新聞に取り上げていた布沢久美子も、どこから聞きつけたのか現れて、会社の広報を手伝うようになっていた。
何だか夢を見ているようだ。つくづくそう思う。
機材を積み込んだトラックに楠冨と北島が乗り込む。
「イエローとピンクが先に会社で待ってるんで、トラックを戻したら俺らも上がります」
「ああ、明日はゆっくり休んでくれ。明後日からはいつも通りで」
「分かりました」
走り去るトラックを見送ると美紅の方に振り返る。
「お待たせ。じゃ帰ろうか」
「うん」
ショーの後は美紅と2人でファミレスに寄って食事をしてから帰宅するのが決めごとのようになっていた。
「送ってくれてありがとう。でも疲れてるのに無理しなくてもいいのよ」
美紅の自宅前まで来た時だった。
「無理なんかしてないさ。それに大切な女の子を守るのも、正義の味方の務めだからね」
「もう、そんなこと言うなんてズルいよ」
美紅の頬がほんのり朱に染まる。
「へへへ・・・」
言った本人も少しくすぐったい気持ちになっていた。
「それじゃ、今日は早く休んでね。お休み・・・」
そう言うと美紅は身体を伸ばして健太の頬に口づけをした。
「・・・!!」
不意を突かれた健太が硬直する。
「フフフ、さっきのお返し。じゃあね!」
手を振りながら美紅は玄関の方へ小走りに駆けていった。その後姿を嬉しそうに見送ると、健太は踵を返した。
「ウイングマンさん」
自宅の近くの公園に差し掛かった時不意に声をかけられた。声の方を向くと中学生くらいの女の子が立っていた。頭に巻かれた大きなリボンが否が応でも目を引く。
「誰かな?」
ショーを見に来てくれた子だろうか?そう思った。だが、
「わたしりろですわ。急いであおいお姉さまの所に来て欲しいんですの!」
りろと名乗った女の子は、真剣な眼差しで手を差し伸べてくる。
りろ?あおい?どこかで聞いたような・・・。健太は懸命に記憶を掘り返す。
「とにかく時間が無いんですの!事情は追って説明しますから、どうか急いで下さい!」
りろは無理やり健太の手を取った。その刹那、健太の足から地面の感覚が消えた。
「な、なんだ!?」
健太は奇妙な色彩に彩られた空間に浮かんでいた。
「異次元空間ですわ。これからわたしと一緒に異次元都市ポドリムスに来て下さい。そこであおいお姉さまがウイングマンさんが来るのを待っていますの」
「え?え?」
りろの説明に理解が追い付かない。
「とにかく急ぎますわ。わたしの手を離さないで下さい」
そう言うとりろは移動を開始した。移動と言っても異次元空間を飛ぶようにして移動していた。さすがに急ぐと言うだけあってかなりのスピード感で、しっかり握っていなければ手が離れてしまいそうだった。
「おおおぉぉぉ~~~・・・」
こんな状態では質問をする余裕すらない。どれくらい経ったであろうか。
「見えましたわ。あれがポドリムスですわ」
りろが指さす方向には横にした8の字・・・、いやメビウスの輪の形をした都市が浮かんでいる。近づくにつれ、メビウスの輪の表面に独特の形をした建物が建っているのが見えた。
りろは迷うことなく、一直線にポドリムスの一角に向かって行った。
「ここですわ」
りろと健太はポドリムスの地上に降り立った。目の前にはドーム状の建物がある。
「さ、ウイングマンさん、急いで!」
りろに促されるまま建物の中に入った。奥の部屋に通されると、その中央付近に天蓋から薄布のようなものが垂らされていた。薄布の向こう側にはベッドに横たわる人影が透けて見えた。
「お姉さま、ウイングマンさんをお連れしましたわ」
健太は何かに引き寄せられるように天蓋に近づいていく。
「ウイングマンさん、これを・・・」
差し出されたのは奇妙な形をしたノートだった。初めて見るはずなのにどこか懐かしさを感じる。それを手にした時ノートから湧き出す様な温かな光が放たれた。
健太の脳裏に、失われていた記憶がフラッシュバックする。
空から降ってきた美少女あおい。
夢を実現するドリムノートの力でウイングマンに変身する健太。
異次元都市ポドリムスの支配を目論むリメルとの戦い。
宇宙からの侵略者ライエルとの戦い。
その戦いの果てに、あおいは・・・、あおいは・・・。
健太の目からは涙がとめどなく溢れていた。
「あおいさん、あおいさん・・・」
天蓋の中にあおいがいる!考えるより先に体が動いた。しかしそれをりろが制した。
「待って下さい。今のあおいお姉さまはディメンションパワーが衰えていて、ウイングマンさんが知っているお姉さまの姿ではないんですの。お願いですから見ないであげて下さい」
「どういう事?りろちゃん、説明してくれよ」
これが落ち着いていられようか!取り乱す健太の前に天蓋の中からスッと手が伸びてきた。
あおいの手。だがそれは健太の知っている手ではない、ポドリムス人の手であった。
「ウイングマンさん、あおいお姉さまの手を握って下さい。わたしのディメンションパワーでサポートしますわ」
言われるがままあおいの手を取る。健太の周囲を柔らかい光が包み込む。光に中で目を開くとそこにはあおいがいた。
「久しぶりね、ケン坊」
微笑むあおいは、健太の知っているあおいだった。
ここはりろのディメンションパワーを借りて作り出されたイメージの世界なのだが、今の健太には関係なかった。
「あおいさん、一体どうしたんだよ!」
再会の喜びと疑問が混濁していた。
「ゴメンね、驚いたよね。わたしが最期にワガママ言ったから・・・」
あおいが目を伏せる。
「ケン坊のおかげで、ドリムノートの力でアタシは今日まで生きてこられたの。でももうわたしは生きられない・・・」
「生きられないって?」
「そう、寿命なの・・・」
「寿命!?」
「ポドリムスと三次元では時間の流れが違うの。三次元での数年はポドリムスでは数十年の時間に相当するの」
「そんなっ・・・!」
健太の全身から力が抜けていく。
「だから最期に伝えたかったの、ありがとうって・・・」
違うっ!ありがとうを言うのはコッチだっ!そう言葉にしたいのに口からは嗚咽しか出てこない。
「それからドリムノートを返すね。長い間借りっぱなしだったから」
そうじゃない!ドリムノートなんかじゃない、オレが欲しいのは・・・!
ピシャッ!
健太の頬に痛みが走る。あおいに平手打ちをされたのだ。
「もう!いつまでもメソメソしないの!男の子でしょ!」
健太の目には少し困った顔のあおいが映っていた。
「わたしの人生はとっても充実してたわ。だから、笑顔で見送ってよ」
「あおいさん・・・」
ぎこちなく笑ってみせる。それを見てあおいは微笑んだ。
そしてひとつ頷いてから語りかけた。
「美紅ちゃんたちは元気にしてる?」
「うん」
「そっか」
「今 仲額中のみんなとヒーローショーをやってるんだ」
「スゴイじゃん!」
「もうドリムノートがなくても、オレはウイングマンになれるんだぜ」
あおいはハッとなった。
もう健太はあおいの知る健太ではなくなっていた。夢見がちな少年ではなく、自力で夢を叶える大人の男になっていた。
「もう、必要ないんだね・・・」
嬉しくもあり、寂しくもあった。
健太の目の前のあおいのビジョンが揺らぐ。
気が付くと天蓋の前であおいの手を握っていた。その手からは、温もりが失われていた。
「ウイングマンさん、ありがとうございます」
りろの声は聞こえるが、姿が見えない。
「あおいお姉さまは幸せそうに眠りにつきましたわ。これからわたしの最後のディメンションパワーでウイングマンさんを三次元に送り届けますわ」
「最後のって、りろちゃん?」
返事の代わりに健太の身体が光の粒子に包まれる。
(ディメンションパワーを使い果たしたら、わたしもお姉さまと一緒に眠りますわ。一人ぼっちにはさせられないから。ううん、わたしが一緒にいたいんですの・・・)
視界が揺らめく。宙に浮き上がるような、深く落ち込んでいくような不思議な感覚の後・・・。
健太は近所の公園の前に立っていた。
りろと会う前と同じ。いや健太の手にはドリムノートがあった。
胸に大きな穴が開いたような感覚を味わっていた。あまりにも大きな喪失感・・・。思い出すとまた涙がこぼれそうになる。
健太は空を見上げた。涙がこぼれないように。
もうメソメソしない。そんなことあおいさんも望んでいない。
【宇宙からの脅威】
翌日 健太は美紅と桃子そして久美子を呼び出した。
「どうしたの?ケンちゃん?」
神妙な顔を崩さない健太に美紅が問いかける。桃子も久美子も訝しげだ。
ようやく重い口を開く。
「どうしてもみんなには知っておいてもらいたくて・・・」
そう言うと1冊のノートを差し出す。ドリムノートだ。
「何?」
3人が首を傾げる。
「ノートの上に手を重ねて」
意味が分からないまま3人は言われた通りに手を重ねた。するとノートから光が溢れ出した。
「あ、ああぁ・・・」
「あ、あおいさん・・・」
今、3人の中にあおいとの記憶が蘇る。そして目からは涙が溢れ出ていた。
ドリムノートから発せられた光が収束すると、重い沈黙が圧し掛かる。
その沈黙を押しのけて、健太はポドリムスでの出来事を話した。
「あおいさんは、自分の人生を全うすることができたんだ。幸せな人生だったと思う」
「リーダーは、それでいいんですか?」
それを聞いた桃子はかえって心配そうだった。
「実はさ、オレ泣きじゃくっちゃってさ・・・。でも、そしたらあおいさんに叱られたんだ、男がメソメソするなって」
「もう、最後まであおいさんに面倒かけるなんて」
久美子が苦笑する。それに周りもつられたので、すごし場が和んだ。
「だからあおいさんのことは大切に胸にしまって、これからは生きていこうと思う」
健太の言葉に全員が頷いた。
それからあおいとの思い出話に花を咲かせているうちに、いつしか日が暮れてきていた。
その場は一旦お開きにして、桃子と久美子は連れ立ってこれからカラオケに行くと言う。とにかく大きな声を出したいのだそうだ。
健太と美紅は、2人と別れて一緒に帰ることにした。
「ドリムノートの中は、前みたいにウイングマンのことが書かれてるんだね」
ドリムノートをめくりながら美紅が呟く。
「そうなんだ。全部消して『あおいさんが生き返る』って書いた筈なのに・・・」
「ドリムノートを返す、ってこういう意味だったんじゃないのかしら?」
「そうかもしれないね」
「またウイングマンに変身するの?」
「さあね、そもそも何十年もあおいさんの命を支え続けたんだ、ドリムノートのパワーだって残っているかどうか」
その時健太の視界をかすめて何か動くものを捉えた。
「・・・!、何だ!?」
動く影を追って首を巡らせる。
「どうしたの?ケンちゃん」
険しい表情の健太と不安げな美紅。その時2人の頭上から“それ”は降ってきた。
「危ないっ!」
美紅を庇うようにその場から逃れる。
「!!」
振り返ると、コウモリとゴリラを掛け合わせたような怪物がさっきまで健太たちがいた場所に立っていた。
「何だ?コイツは?」
だが怪物からの返事はない。代わりに
「ギ、ギ・・・。オンナ・・・」
唸るような声はそのように聞こえた。
コイツの狙いは美紅ちゃんか!健太は直感した。
「美紅ちゃん逃げてっ!」
怪物とは反対方向に美紅を押し出すと、怪物の前に立ち塞がった。
「逃げるんだぁっ!」
振り返らずに叫ぶと怪物に向かって走り出す。その勢いのままに拳を放つ。体高2メートルはあろうかという怪物の腹部にそれはめり込んだ。
「・・・痛っ!」
顔を歪めたのは健太の方だった。なんて固い手応え。それに引き換え怪物の方には何の痛痒も感じられない。
「ジャマ・・・ダ」
怪物の手が健太の胸倉を掴んだかと思った次の瞬間、健太の身体は宙に舞った。放り投げられたのだ。10メートル近く飛ばされたろうか、このままアスファルトに叩きつけられたら怪我では済まない。考えるよりも先に健太は叫んでいた。
「チェイングっ!」
ドリムノートがそのキーワードに反応した。健太の身体が七色の光に包まれる。光が地上に降り立つと、その中から戦士が現れた。
「悪烈っ!ウイングマンっ!」
黒を基調としたボディに、額や胸の装飾は赤いウイングマンの姿がそこにはあった。
(いきなり“赤”か・・・)
三次元におけるウイングマンの変身時間は約10分。ウイングマンのボディの装飾は最初の4分は“青”、次の3分は“黄”、残り3分を“赤” と変色するようになっていた。それが変身と同時に“赤”になっているということは・・・、
(変身できるのは3分か・・・)
速攻で決めるしかない。
「バリアレイバー!」
腰にある銀色の装飾を外すと、それは長剣“クロムレイバー”に変化する。それにビーム刃を展開したのが“バリアレイバー”だ。そのまま怪物に切りかかる。
ガシィィィッ!
バリアレイバーのビーム刃は、怪物の腕に受け止められていた。
「なっ!?バリアレイバーの切れ味が・・・」
ウイングマンとしての戦いの経験上、バリアレイバーなら十分に怪物の腕を切り落とせていたはずだ。
「くっ!やはりドリムノートのパワーが・・・」
バリアレイバーを振り払うと、怪物が腕を振り回して襲い掛かってくる。空気が唸りを上げるほどの力だ。まともに喰らったら変身したウイングマンと言えども無事では済まないだろう。必死で躱すが反撃の糸口が見えない。
「このままじゃ、時間切れだ」
どうすれば・・・。その時健太の脳裏に何かが閃いた。怪物の繰り出すパンチの軌道に神経を集中する。ギリギリでパンチをかわしてその腕を掴むと、そのパワーを利用して一本背負いの要領で怪物を宙に放り投げる。今だっ!
「ファイナルビームっ!」
ウイングマンが両腕を左右に大きく広げると、赤い装飾部分から強力なビームが放たれたっ!ビームの輝きが怪物を焼き尽くす・・・、その前にビームが消え失せた。
ウイングマンの変身が解けたのだ。
「くそっ!時間切れか・・・」
不十分とは言えファイナルビームの照射を受けた怪物の身体は焼けただれていた。だが倒し切れてはいない。
(ダメか・・・)
その時白い影が健太の前に飛び込んできた。
「とおぉぉっ!」
それは白いボディスーツを着た人型だった。その腕からパンチが放たれ、怪物を吹き飛ばした。
「クリスタルロッド!」
すかさず腰から光の剣を抜き放つと、何とそれを自分の胸に突き立てた。
自殺!?
違う、光の剣のエネルギーを全身に集めて・・・、
「Vα(ブイアルファ)!」
白い人型の身体が光の粒子エネルギーに変換されて無数の光弾となり、怪物の身体を散弾銃のようにズタズタに撃ち抜いていく。そして光の粒子エネルギーは再び収束して元の人型へと戻っていく。
怪物は細切れになって崩れ落ちた。
白い人型がゆっくりと健太の方に向き直る。その姿はTVのニュースなどで見覚えがあった。地球外惑星人の脅威から人類を護るために誕生した・・・、
『超機動員ヴァンダー』
◆ ◆
惑星人の出現情報を得た藤枝弥紫と森村みなほは現場に急行した。これまでに2人の女性が体液を吸い尽くされ死亡しているという。すでに処刑指令も出ていた。
「この辺りの筈なんだが・・・」辺りを見渡す。
その時女の悲鳴が夜空に響いた。誰かが惑星人に襲われている!
「みなほ!」
「オッケー!」
2人には、これだけで通じ合える。
みなほが変身銃アーマメントガンを構えると弥紫の胸のペンダントを撃った。それと同時にペンダントからパワーウェアが展開され弥紫の身体を包み込む。そしてみなほは愛情エネルギーに転換されパワーウェアに取り込まれる。
「武装変っ!」
弥紫とみなほ、2人の愛のエネルギーを源とする超機動員、それが“ヴァンダー”だ!
武装変が完了したヴァンダーは、背中のノズルを噴射して悲鳴の上がった方に飛び上がった。
その時弥紫とみなほが見たのは、空中に投げ飛ばされた青年の姿だった。危ない、助けなければ!だがその青年が何かを叫んだ瞬間七色の光が夜空を彩った。光が降り立つと、その中から黒い着ぐるみが現れた。
さっきの青年なのは間違いないのだが、一体どうやって姿を変えたんだ?
だがそんな疑問を差し挟む間もなく惑星人との戦闘が開始された。
『何あの子、惑星人と渡り合ってるの?』
ヴァンダーのヘルメット内側のモニターに映し出されたみなほが驚きの声を上げた。
普通の人間が惑星人と渡り合うことは無理だ。だが黒い着ぐるみの青年は惑星人を投げ飛ばすと、体からビームを放った。そのビームは惑星人を焼き尽くす前に消え失せ、青年も元の姿に戻っていた。
焼けただれた惑星人が青年の方に向かっている。
「マズイ!助けなきゃ!」
弥紫は惑星人の前に躍り出るとボディに一発パンチを見舞った。ダメージを受けていた惑星人はそれだけでよろめいた。
「クリスタルロッド!」
腰から光剣“クリスタルロッド”を取り出すと、胸のペンダントに突き刺す。そうすることでクリスタルロッドのエネルギーを転換した必殺技“Vα(ブイアルファ)”を放つことができるのだ。
惑星人を倒したヴァンダーが広野健太に向き直る。
◆ ◆
「こっちです。お巡りさん!」
美紅が警察官を連れて戻ってきた。だが先ほどの怪物の姿はなく、健太と見知らぬ男女が立っていた。
「これは、一体・・・」
訝しがる警察官に弥紫が近づき敬礼をする。
「ご苦労様です。ボクたちは超機動課の超機動員です。先ほど処刑指令の出た惑星人を倒したところです」
「ご苦労様です」警察官も敬礼を返す。
「惑星人事件ですので後のことはコチラで処理します。この方は事件の関係者なのでこの後聴取を行います」弥紫が健太の方に視線を送る。
「分かりました。では後はお任せして私は勤務に戻ります」
警察官はそう言うと来た道を帰っていった。
「と言うわけでキミの話を詳しく聞きたいんだけど、いいかな?」
弥紫が改めて健太に向き直った。
「いいですよ。超機動員と話せる機会なんて滅多にないからね」
健太に異存があろう筈がなかった。リアルな変身ヒーローと接する機会が持てるとは思ってもみなかったからだ。
超機動課に着くまでに軽い自己紹介を済ませた。美紅はあのまま一人で返すのは危険だったので本人の意向も考慮して同行した。
一方弥紫からの報告を受けた超機動課の面々は、興味津々で健太たちを待ち構えていた。
特に担当技術士の沢田敏男は『変身する青年』に対する好奇心を抑えきれずにいた。彼は愛情をパワーの源にする“ヴァンダー”とは別の新型パワーウェアの開発に行き詰っていたことで、開発のヒントを得られそうな予感に打ち震えていた。
到着した健太を迎えると、状況や経緯の説明もそこそこに健太を質問攻めにした。
健太は、異次元からもたらされたドリムノートによってウイングマンに変身しポドリムスを救ったことをかいつまんで話した。そしてドリムノートの力が弱ってきていることも。
「このノートに書かれたことが現実になるなんて・・・」
話しながらもドリムノートを捲る手を休めない沢田はまだ半信半疑と言った様子だ。無理もない。
「正確には夢を描くんです。ドリムノートはその夢を現実にする力を持っているんです。だから夢を持たずに書いた内容は、書いてもすぐに消えてしまうんです」
「夢・・・、夢か・・・」沢田の瞳が爛々としてきた。
パラパラとドリムノートの内容に目を通していた沢田が突然立ち上がった。
「これだっっ!!」
大きな声に周りが驚きの目を向ける。
「愛情エネルギーの次は、夢見る力“ドリーミー・パワー”だ!」
この勢いにはさすがの健太も引き気味だった。
「広野君、このノートをしばらく預けてくれないか。その代わりにウイングマンを蘇らせることを約束しよう!」
あまりの展開の早さに健太も周りも付いていくことができなかった。
「どうしてそうなるんですか?」弥紫が思わず声を上げる。
「ドリーミー・パワーを源にできれば、新たなパワーウェアが完成するんだ!」
沢田は胸を張った。
「それってつまり、広野君を新しい超機動員にスカウトするってことですか?」
みなほが目を丸くする。
「オレが、超機動員・・・?」
健太はポカンとしてしまった。
【再誕】
健太は、まるでキツネに摘ままれたようだったのだが、今の地球は超機動員の活動で惑星人の犯罪行為を何とか抑止している状態であり、その力の均衡は微妙なバランスの上に成り立っていた。惑星人に対する抑止力強化のためにも超機動員の増強は急務だった。それ故に健太のような人材を放ってはおけなかったのだ。
そのような事情もあって超機動課で降って湧いたような話は瞬く間にまとまり、新型パワーウェア“ウイングマン”の開発は着手された。もともと開発中だったモノを転用したので、さほどの時間を要することもなくそれは完成する見通しだったが、それまでの間に健太にはやっておくことがあった。
有限会社ヒーローアクションクラブのことだ。
さすがにドリムノートの事を話すわけにはいかなかったが、健太は惑星人と遭遇した時の対応を見て超機動員にスカウトされた事をメンバーに告げた。
「スゴイじゃないですか!リーダー!」
楠冨は歓声を上げた。
「そうですよ。今度は本物のヒーローになるなんて!やっぱりリーダーはボクたちの予想の斜め上を行く人なんですね!」
北島も同調する。
会社を捨てるのか、と反発されることも予想していたが、それは杞憂だった。
「会社のことは任せて下さい。ボクもグリーンもいつでもリーダーの代わりが務まるよう体は動かしていますから」
「ウイングマンはしっかりと受け継ぎます」
楠冨と北島だけではない、メンバー全員が力強く健太の背中を押してくれた。もう迷いも憂いもない。
「ありがとう、みんな!オレは本物の正義の味方になるよ!」
それから健太は超機動員になるための基礎訓練に明け暮れた。
そして1か月ほどが経った頃。
「お待たせしたね、広野君。とうとう完成したよ」
沢田が健太に小箱のような物を手渡した。
「わあ、ドリムカセットですか?」
「ドリムノートにあったドリムカセットを参考に作ったんだ。その中にパワーウェア“ウイングマン”と圧縮収納されたドリムノートが入っている」
「ドリムノートが!?」
「そうだ。ドリムノートはドリーミー・パワーの集積装置としての機能を持たせてある。言わば“ウイングマン”の力の源だ」
「そこは今までと変わらないんですね」
「基本的にヴァンダーで採用された愛情システムと同様のシステムだから、キミのドリーミー・パワーが高まることでさらなる性能を引き出すことができるんだ。さあ、説明はこのくらいにしてさっそく試してくれ」
健太は超機動員用の訓練所に案内された。
ドリムカセットをベルトのバックル部に装着すると、健太はスイッチを入れた。
「チェイング!」
掛け声と同時に健太の身体が光に包まれる。光が収まると、そこには黒いボディのウイングマンが現れた。
『若干形状の異なった部分もあるが、キミの描いたウイングマンを再現できていると思うよ』
ヘルメット内の通信機から沢田の声が届く。
「いやぁ、十分ですよ!」健太の声は弾んでいた。
『最初に言っておくが、この“ウイングマン”には武装と言うものが搭載されていない。ドリムノートに書かれた武器をパワーウェアで再現するのは技術的に難しい部分が多いんだ。だからドリーミー・パワーをパワーウェアで増幅することによって武器を使用できるようにしてある』
「つまりドリーミー・パワーがあればウイングマンの武器がこれまで通り使えるってことですか?」
『簡単に言えばそうだ。ま、論より証拠、今から小型ドローンがキミを攻撃するからそれを避けてみてくれ』
「分かりました」
4機の小型ドローンがバラバラの軌道でウイングマンに接近してくる。そして様子を窺うように周囲を旋回すると攻撃ビームが放たれた。これは命中してもダメージはないが、その衝撃だけは伝わるように設定してある模擬攻撃だ。
「とおぅ」ウィングマンが飛び上がって回避する。
これだけで健太はパワーウェアの効果を実感できた。パワーウェアのパワーアシスト効果で思った以上のジャンプ力が得られたからだ。
(スゴイ・・・)
ウィングマンは、その性能を確かめるようにドローンの攻撃をフットワークだけでかわし続けた。健太の中に刻み込まれた戦いの経験値がこれほどのモノとは、開発者の沢田にとって想像以上だった。
「クロムレイバー!」
腰の装飾が長剣“クロムレイバー”変化する。その切っ先がドローンを正確に射抜いていた。
『それまでだ』
沢田の通信と同時にドローンが攻撃を止める。
健太もドリムカセットのスイッチで変身を解いた。
「素晴らしいよ広野君!これならヴァンダーにも引けを取らない超機動員になれる!」
興奮が収まらない沢田がまくし立てた。その時、
『惑星人出現です!今 超機動員ジャイロンが出動していますが、変です!あ、ジャイロン活動停止!』
報告の声が次第に悲鳴に近いものとなった。
「どういう事だ!?まさかやられたのか?」
『違います。パワーウェアの機能が停止させられています!もうすぐ超機動員ヴァンダーが現場に到着します』
そこまでのやり取りを聞いて健太が動き出す。
「オレも行きます!」
沢田が止める間もなく健太は飛び出していた。
弥紫は自分の目を疑った。
惑星人出現の報を受けて現場に到着してみると、無傷のジャイロンが倒れていた。一体何が起こっているんだ!?
「ハハハハハッ、他愛もない。超機動員などと言っても所詮我らギラング惑星人の技術供与があっての代物!その機能を停止させることなど造作もないことだ!」
超機動員ジャイロンを見下ろすように立っている男はギラング惑星人だった。その手には光る石が握られていた。
「ヴァンダー・・・、気を、付けて・・・。あの石が、光ってから・・・」
必死で警告を発するジャイロンをギラング惑星人が蹴り上げる。
「無駄だ!このギラング星に伝わる秘石の力があれば、パワーウェアなどガラクタ同然。そらっ、キサマも動けないようにしてやるっ!」
ギラング惑星人が秘石をヴァンダーにかざした。だが、
「そんなモノに負けるか!行くぞ、みなほ!」
『分かったわ!』
ヴァンダーがギラング惑星人に突進した。
「何!?パワーウェアのエネルギー源は我らの技術で発生されている筈だ」
「残念だったな。ヴァンダーのエネルギー源は“愛”だ!ギラング星のエネルギーは止められてもオレたちの愛の力は止められまい!」
クリスタルロッドで切りかかる。
「くっ!ならば殺してやる!動けなくされた方が良かったと後悔させてやる!」
ギラング惑星人は開いた右手を突き出した。その手の平に何かのマークが刻まれていた。
「な、パワーソル?」
“パワーソル”。それはギラング惑星人の中でも選ばれた者のみが身につけられる超エネルギー体のことだ。それは持ち主の持つ力を数千倍に高めることができる。かつて地球侵略を目論んだギラング惑星人ゾルド将軍は、このパワーソルを2つも持っていた。
ギラング惑星人は手から光の筋を発生させるとそれを剣のように握りしめた。そのままヴァンダーを迎え撃つ。光の剣はクリスタルロッドを切り落とした。
「なんとっ!クリスタルロッドが!」
「見たかっ!地球人ごときがギラング惑星人に敵うものか!」
「さて、それはどうかな?パワーソルを2つも持っていたゾルド将軍は、その地球人にやられたんだぜ!」
「何?ゾルド将軍は行方不明の筈・・・。でたらめを言うなっ!」
「これでも信じないか!」
ヴァンダーの身体からパワーソルの輝きが放たれる。ゾルド将軍の力に屈する寸前まで追い込まれた時、ヴァンダーの特攻攻撃によって辛うじて倒すことができた。それと引き換えに弥紫とみなほは命を散らすはずだったが、愛の力によって奇跡的に生還した。その時ゾルド将軍の2つのパワーソルは弥紫とみなほに受け継がれたのだ。
切り落とされたクリスタルロッドに新たに光の剣が形成される。それはギラング星人のそれを受け止めた。
「何故キサマがパワーソルを!?」
「ゾルド将軍を倒して手に入れたのさ!」
「バ、バカな!」
その時ギラング惑星人の腕に何かが巻き付いた。
「クロムロープ!」
ウイングマンは、クロムレイバーの柄の部分をロープ状に変化させて相手を絡めとることができるのだ。
「何!?コイツも動きを止められないのか?」
ドリーミー・パワーがエネルギー源のウィングマンも、ヴァンダー同様ギラング惑星人の秘石の影響を受けない。
「もう観念しろ」
「くそっ!こんな筈では・・・」
ギラング惑星人がパワーソルの衝撃波を球状に放った。ヴァンダーとウイングマンがそれを受けて吹き飛ばされるが、ヴァンダーはみなほがパワーソルバリアを展開したので衝撃波の影響から逃れることに成功した。
「覚えておけ、オレの名はファマル。ヴァンダー!ギラング惑星人として、ゾルド将軍の仇を必ず討つ!」
そう言い残すとファマルは飛び去って行った。
「何かとんでもない奴に恨まれてるんだな」
現れたウイングマンは、全身にボディアーマーを装着した姿だった。
「そ、その姿は・・・?」
「ソーラーガーダーさ。コイツでさっきの攻撃をしのいだんだ。攻防一体のウイングマンの強化武装だよ」
「ホントに凄いんだなドリムノートって」
「いやヴァンダーのパワーソルだって凄いよ」
「でもあのファマルってギラング惑星人もパワーソルを持ってるし、油断はできないよ」
『そんな事ないわ、ウイングマンっていう心強い味方が付いているんだから!』
「確かにな。これからヨロシク」
「コッチこそ!」
【宿敵、再び・・・】
そしてとある日曜日の繁華街、ちょうどお昼時で人通りもピークに差し掛かろうという頃・・・、ファマルのヴィジョンが空に現れた。
「オレはギラング惑星人ファマル。地球に潜伏している惑星人たちよ、これから我ら惑星人に対抗する超機動員を活動不能にする!これでもう邪魔立てするものはいない。この地球を我ら惑星人の手にする時だっ!」
そう言うとファマルは秘石を取り出すと、パワーソルのエネルギーをこめた。パワーソルのパワーを受けた秘石が強烈な輝きを放った。
それと同時に各地の超機動員のパワーウェアが一斉にその機能を停止した。
超機動員が動けなくなったことで、惑星人たちが行動を開始した。惑星人たちは我が物顔で地上を徘徊し、暴虐の限りを尽くした。
このまま地球は惑星人たちの手に落ちてしまうのか?その時、惑星人たちの前に3つの影が立ち塞がった。
広野健太、藤枝弥紫、森村みなほである。3人の目には燃える闘志の炎が燃えさかっていた。
「これ以上お前たちの好き勝手にはさせないぞっ!」
弥紫が惑星人たちに向かって叫んだ。健太とみなほがそれに力強く頷く。
健太がドリムカセットのスイッチを入れる。
「チェイング!」
みなほがアーマメントガンで弥紫のペンダントを撃つ。
「武装変!」
健太と弥紫の身体が光に包まれ、そして黒い影と白い影が惑星人たちの前に降り立った。
「悪烈!ウイングマン!」
「超機動員ヴァンダー!」
その姿に惑星人たちはたじろいだ。
「何故だ、超機動員は動けないはずだぞ!」
ウイングマンとヴァンダーは惑星人たちに躍りかかった。
「バリアレイバー」
「クリスタルロッド」
手近の惑星人を切り倒すと、そのままの勢いで次々と惑星人を打ち倒していった。
惑星人たちは散り散りになった。我先に逃げ出す惑星人たち。だがその前にファマルが立ち塞がった。
「おい、キサマ!超機動員は動けないんじゃなかったのかっ!」
「ククク、お前たちはヴァンダーをおびき出す為のエサだ」
ファマルが右手を突き出すとパワーソルのエネルギー衝撃波で惑星人を消し飛ばした。
「何!?同じ惑星人を!?」弥紫が驚きの声を上げた。
「来たか、ヴァンダー」
ファマルはヴァンダーに向き直った。
「今日こそゾルド将軍の仇を討つ!行くぞっ!」
手首のブレスレットが光り、ファマルの身体を戦闘強化服が包み込むとパワーソルで光の剣を作り出す。
「死ねっ!ヴァンダー!」
振り下ろされた光の剣をクリスタルロッドが受け止める。
「お前が何と言おうとも、ギラング惑星人が地球を狙う限り、オレたちは戦い続ける!」
ヴァンダーとファマルが距離を取った。そこに、
「スプリクトフラッシュ!」
ウイングマンの左手から放たれた光線がファマルに命中した。
「ぐあっ!」
ファマルの手から秘石がこぼれ落ちる。すかさずクロムレイバーで秘石を砕き割った。
「しまった!」
「どうだい、これで各地の超機動員も復活さっ!」
「形勢逆転だな、ファマル」
ウイングマンとヴァンダーの連携でファマルは一気に追いつめられた。しかしその後ろで大爆発が起こる。
「うわっ!」
不意を突かれてウイングマンとヴァンダーは爆風で吹き飛ばされた。
振り向いたウイングマンとヴァンダーの前に、黒い装甲で全身を覆われた人型の戦闘ロボットが現れた。その姿に健太は戦慄を覚えた。
「ガ、ガルダン!?」
それはかつてウイングマンを窮地に追い込んだ最強の敵の姿だった。
◆ ◆
先日のヴァンダーとの戦いの後・・・、
「何という事だ・・・。ゾルド将軍が倒されただと?しかも地球人ごときに!?」
ファマルはまだ現実を受け入れられずにいた。
「それにしてもあのヴァンダーとか言う奴、パワーソルを持っているとは厄介だな」
険しい顔で思案を巡らせるが、それも長くは続かなかった。
「アレを使うしかないのか・・・、メガロン星の凶兵器“ガルダン”タイプ、最後の1体を・・・」
機械文明の発達したメガロン星で作られた最終兵器“ガルダン”は強力な人型戦闘ロボットだ。しかしメガロン星で勃発した最終戦争において、ガルダンの軍勢は敵対する2つの陣営だけでなくメガロン星そのものを破壊し尽くしてしまったのだ。
辛うじて脱出できたメガロン惑星人の宇宙船もダメージを負い、搭乗していたメガロン惑星人の生命維持を果たせなくなった。ファマルは宇宙を漂流していたその宇宙船の中からガルダンを発見していたのだった。だが星を破壊するほどの力を、果たして制御できるのだろうか?それが今までガルダンを起動させずにいた理由だった。
◆ ◆
「ガルダンを知っているとは驚いたな。だがガルダンが起動した以上、キサマらもおしまいだ!」
ガルダンが両手を突き出すと、そこから放たれた怪光線がウイングマンとヴァンダーに炸裂した。
「ぐあっ!」
そのまま地面に叩きつけられる。
「何てパワーだ・・・」
「気を付けるんだヴァンダー、奴はガルダン。強力な戦闘ロボットだ」
「知っているのか?」
「ああ、そして戦い方もな・・・」
「よし、じゃガルダンは任せた。オレはファマルをやる」
「分かった!」
ウイングマンはガルダンと、ヴァンダーはファマルと対峙した。
「とおぁっ!」
クリスタルロッドを閃かせてファマルに切りかかる。ファマルも互角の剣技でそれに応じる。だが次第にファマルがヴァンダーを押し込んでいった。
「コイツ、この前よりも手ごわくなっている?」
『弥紫!コッチでも全力でアイツの動きを読むから遅れないで!』
「みなほ、頼りにするぜ!」
みなほは相手の攻撃を予測することができる。しかもパワーソルの力でその力は飛躍的に増大される。それにヴァンダーの愛情システムが作用されると、それは単なる未来予測ではなく、未来予知のレベルに達する。
同様に弥紫は反射神経が増大される。みなほの未来予測に追従するには通常の反射速度では追いつけない。弥紫の常人を超えた反射速度があって初めてヴァンダーの性能は限界以上を発揮できるのだ。
みなほの力を得て、ヴァンダーはファマルの攻撃を回避しつつ反撃に転じていった。
「くっ、地球人の分際で!くらえっ!」
ファマルがパワーソルの形をした光をヴァンダーに向かて放った。光はヴァンダーに命中するとその動きを封じてしまった。
「な、何!?動けない・・!」
「これで終わりだ!ヴァンダーッ!」
光の剣を振りかざし、ファマルが体ごと光の剣を切り下した。
「ウイングマン、ソーラーガーダー、シルエット!」
全身に防御アーマーを纏わせる。さらにこのソーラーガーダーは太陽光を吸収することで最大の力を発揮できるのだ。
まず両腕に装着されたガーダー“ソーラーフラッシャー”に、太陽エネルギーを転換したソーラーシールドが展開される。これは周囲のガーダーよりも防御力が格段に高い上、高熱を発することができる。
「この俺を知っているとは、何者だ?」
「昔お前に似たヤツと戦ったことがあってね」
「なるほど、旧型との戦闘経験か・・・。それが活かせるといいがな」
ガルダンが右腕を突き出すと、ビームが撃ち出された。それをソーラーシールドで受け止める。
「ほう、なかなかの防御力だな。これならどうだ」
次にビームソードを手にすると、ガルダンが切りかかってきた。
「ヒートレイバー!」
クロムレイバーをソーラーフラッシャーにセットし、ソーラーシールドのエネルギーをビーム刃に変換することで、最強の剣“ヒートレイバー”となるのだ。
ガルダンとウイングマンの剣が唸りを上げ、空気を切り裂き、ぶつかり合う!
(ガルダンの身体を切ってはダメだ。失われた箇所は再生されて、切られた部分は新たな武器になってどんどん不利になる)
ならば狙いはココだ!
ヒートレイバーの切っ先がガルダンの剣の根元を切り裂いた。ガルダンのビームソードが柄の部分を残して消え失せた。
「フン、旧型との戦闘経験があると言うのは本当らしいな。俺の身体ではなく武器だけを狙うとはな。だが俺にそんな心配は無用だ」
ガルダンの身体の装甲が淡い光に包まれるとミサイルポッドやビーム砲、ロケットランチャーなどの武器に変わった。本体は人型のエネルギー体となっていたが頭部だけは何も変化はない。
「何!?」健太は驚きを隠せない。
「ハハハハ・・・、俺はわざわざ体を切らせるようなことをしなくても、武器に変化させることができるのだ。くらえっ!」
ウイングマンめがけてミサイルやビームが雨あられと降り注ぐ。爆発と衝撃の奔流にもみくちゃにされたウイングマンが空中に放り上げられ、地面に叩きつけられた。ガーダーのおかげでダメージは最小限に抑えられていたが、少し目が回ったようだ。頭がグラグラして少しフラついた。
「よく生きていたな。だがこれでトドメだっ!」
ガルダンがビーム砲の照準を合わせた。
「くそっ!負けるかぁっ!」
弥紫の闘志をみなほが後押しする。愛のエネルギーがヴァンダーの身体を駆け巡り、ヴァンダーの身体からもパワーソルの輝きが現れた。
「でやぁっ!」
ファマルのパワーソルの拘束をヴァンダーが打ち破った。光の剣を飛びかわしてファマルの後方に着地する。
「何だと!?」動揺したファマルは状況を見失っていた。
「Vパルザー!」
ヴァンダー専用のビームガンでファマルを狙い撃つ。ファマルが立ち直る前に二撃三撃と追い打ちをかける。
「Vブーメラン!」
さらに背中に装備されたブーメランを投げつける。Vブーメランがファマルの顔面にヒットした。
「がっ!」
思わずファマルが両手で顔を覆う。今だ!
「Vα(ブイアルファ)!」
必殺技が炸裂する。決まった!が・・・、
「パワーソルバリア!」
ファマルはパワーソルの力でバリアを張って防いだ。光弾と化したヴァンダーがバリアに弾かれる。
「まだまだぁ!」弥紫とみなほが同時に叫ぶ。
愛情エネルギーでパワーを増したVαの光弾が輝きを増し、パワーソルバリアを押し込むとバリアに歪みが生じてきた。歪んだ箇所から亀裂が広がり、ついにパワーソルバリアを打ち破った。
「バカな!」
Vαがファマルに炸裂した。
パワーソルバリアがVαの威力を減散してくれたおかげでまともにくらわなかったが、確かめるまでもなくファマルは再起不能となった。
ガルダンの猛攻からウイングマンを護ったソーラーガーダーはボロボロだった。次の一撃で粉砕されてしまうだろう。
ガルダンのビーム砲からビームが放たれるが、まだフラついていてかわせない。左腕のソーラーシールドで防ぐが、その一撃でソーラーフラッシャーが砕けてしまった。
「無駄なあがきをするな。苦しみが長引くだけだぞ」
まだ少しフラついているが、ウイングマンは立ち上がった。
「最後の最後まで、勝利を諦めないのがヒーローさ」
「ならばすぐに終わらせてやる」
再びビームがウイングマンを襲った。反射的に右腕のソーラーフラッシャーで防ぐ。しまった、右腕までやられたらヒートレイバーが使えなくなる。
だがビームを防いだソーラ―フラッシャーが砕けることはなかった。
「どういう事だ?」
ソーラーフラッシャーに展開されているソーラーシールドが七色の光を放っていた。その光は強さを増していき全身に広がると、なんとソーラーガーダーのダメージがみるみる修復されていった。さらに砕けたはずの左腕のソーラーフラッシャーも復活している。
「何だとっ!?」
さすがのガルダンもたじろいだようだった。
ふと目をやると、ドリムカセットからも七色の光が溢れている。
「まさか、ドリーミー・パワーが・・・!?」
健太の身体にも力が漲るのを感じた。いける!
「ヒートレイバー!」
ヒートレイバーも七色の光を放っていた。その光に健太は、理屈ではない確信を得ていた。
ガルダンが残ったミサイルと共にビームを撃ってきたが、それらをソーラーガーダーはすべてはね返した。
「たぁつ!」
ヒートレイバーがガルダンの右腕を切り落とした。
「ハハハハ、自分の首を絞めたな」
だが、ガルダンの右腕は切り落とされたままピクリとも動かず、失われた右腕が再生されることもなかった。
「どういう事だ!?」
戦闘ロボットであるガルダンに動揺が走ったように感じた。
「やはりそうか、ドリーミー・パワーを宿したヒートレイバーは、ガルダンのエネルギー連結まで断ち切ったんだ!」
「そんなバカな!あり得ない!」
予測不能の事態にガルダンの電子頭脳が対応できていない。チャンスだ!
「デスボール!」
ソーラーガーダーの胸の装甲が開き、デスボールが発射された。デスボールは、ガルダンに命中するとその体を包み込んで動きを封じる。
「何だこのエネルギーは・・・。吸収できない・・・」
デスボールのエネルギーを吸収することで脱出を試みたガルダンだったが、ドリーミー・パワーを吸収することはできなかったようだ。
「くらえっ!ヒートショックッ!」
ヒートレイバーに切り裂かれたガルダンが爆発を起こすが、その爆風は一切デスボールの外に出ない為、周囲に被害が及ぶことはないのだ。
ウイングマンとヴァンダーの活躍で、惑星人の脅威は去った・・・、かに見えた。
【夢の戦士】
ガルダンの頭部が地面に転がった。
「敗レル、バズ、ナイ・・・」
ガルダンの電子頭脳が納められた頭部は最重要パーツである。それ故に他の部分よりも強靭な構造になっていた。
ヒートショック後の爆発で、完全に破壊されることなく残ったのもその為だ。
「ウイ、ングマ、ン・・・、倒、ス・・・」
その時ガルダンのカメラアイが、瀕死のファマルの姿を捉えた。
「ボディ・・・、新、シイ、カラダ・・・」
ガルダンの目から光が発せられファマルの頭を包み込むと、ファマルの身体にガルダンの頭が付いていた。するとファマルの手のパワーソルに光が宿った。
するとファマルの身体が何かに引っ張られるように立ち上がった。
「何だと!?」
ガルダンの頭とファマルの身体が一緒になった異様な姿に驚きを禁じ得ない。だが本当の驚きはここからだった。
ファマルの右手が高く掲げられると、そこから眩い光が周囲を白い闇へと誘う。白い闇が晴れた時、そこにはファマルの戦闘強化服の意匠を残した装甲に包まれたガルダンの姿があった。
「これがパワーソルの力か・・・」
ファマルの身体ごとパワーソルを取り込んだ、新生ガルダンが誕生した!
「まさか合体して復活するとは!」
ウイングマンがヴァンダーの前に進み出る。
「ならばもう一度倒してやる!デスボール!」
ソーラーガーダーの胸を開いてデスボールを放つ。しかしガルダンの右の拳が光を発すると、デスボールをパンチで弾き飛ばした。
「なんと!デスボールが弾かれた!?」
デスボールはガルダンの代わりに瓦礫の一つを包み込んでいた。
「今度はコッチだ。Vα(ブイアルファ)!」
Vαが放たれるが、パワーソルバリアで防がれてしまう。しかも今度はバリアを破ることができなかった。パワーソルの力で増大されたガルダンのパワーは、これまでとは比較にならない。
「その程度か」
ガルダンが両手を広げて前に突き出す。その指先から放射状のビームが放たれ、ウイングマンとヴァンダーに炸裂した。
「ぐわぁっ!」
ビームは命中後もウイングマンとヴァンダーの体にまとわりつきダメージを与え続けた。
その様子を冷徹に見下ろしていたガルダンが標的を定めた。
「ヴァンダー。ゾルド将軍の仇。殺す・・・」
ガルダンが右腕を突き出して、腕に装備されたビーム砲を構えた。
「死ね!パワーソル砲!」パワーソル砲がヴァンダーに放たれた。
「危ないっ!」
ウイングマンがヴァンダーを護ってパワーソル砲を受ける。だがそれによってソーラーガーダーが一撃で粉砕された。
「ソーラーガーダーが!」
かつてソーラーガーダーが一撃で砕かれることはなかった。ガルダンの放つパワーソル砲とはそれほどの威力なのか!まともにくらってはいけない。
「邪魔をするな、ウイングマン。お前は最後にじっくり料理してやる。だがどうしてもと言うなら今すぐに消し飛ばしてやる」
そう言うとガルダンは背中のノズルを噴かして宙に浮き上がっていった。そして右腕にパワーソルのエネルギーを充填する。
「これですべて吹き飛べぇぇぇぇっ!」
パワーソル砲が叩き込まれた。
死を司る光がウイングマンとヴァンダーの眼前に迫ってくる。
「みなほ!フルパワーだ!」
『分かってるっ!』
ヴァンダーがパワーソルバリアを展開した。だがガルダンの放つパワーソル砲の威力はそれを打ち破った。
「うわあぁぁっ!」
地上に巨大な爆発の光が膨れ上がった。それが収まった時、ウイングマンとヴァンダーは地面に倒れ伏していた。パワーソルバリアが無ければガルダンの予告通り消し飛んでいたことだろう。
(・・・坊、ケン坊。起きて!ケン坊!)
懐かしい声がする。
(あおいさん?)
(立って!立つのよ、ケン坊!)
(ダメだ・・・。もう力が入らない・・・)
(情けないこと言わないの!ケン坊はヒーローなのよ!ヒーローは最後には必ず勝つの!)
(あおいさん)
(ウイングマンは夢の戦士なの。ケン坊が夢を持ち続ける限り負けるなんてことは無いのよ)
(そうだね・・・、あおいさん。ウイングマンは無敵だ!)
(そうよ。ウイングマンは、わたしのヒーローなんだから)
「う、うう・・・」
「大丈夫か・・・、ウイングマン・・・」
「ああ、何とかな・・・」
ウイングマンとヴァンダーは身体を起こした。その姿をガルダンが見つけた。
「しぶとい奴らだ。今度こそ!」
ガルダンが再びパワーソル砲の発射大勢に入った。
「ウイングマン、あのビームは使えるのか?」
「ああ、だがガルダンに通用するかどうか」
「大丈夫、オレたちの愛のパワーとキミの夢のパワーを合わせるんだ」
「そうか!」
ガルダンのパワーソル砲にエネルギーが充填された。その時ヴァンダーがガルダンに向かってジャンプした。
「今だ!」
パワーソル砲の前に飛び込んだヴァンダーが、充填されたパワーソルのエネルギーをその体に取り込んだ。
「何をする!」
ガルダンはヴァンダーを蹴り飛ばした。だが蹴られた勢いのままウイングマンの隣に着地したヴァンダーは、その背後に回ると肩に手を置いた。
「ゾルド将軍はこうやって倒したのさ!」
ヴァンダーからウイングマンにパワーソルのエネルギーが伝達される。
「頼むぞ!ウイングマン!」
「おおっ!ファイナルビィィィームっ!」
ウイングマンが両腕を大きく開き、ビームを放った!ビームの帯がガルダンめがけて伸びていく。
「パワーソル砲ッ!」
ガルダンからもパワーソル砲が放たれ、ファイナルビームと激突する。激しいビームエネルギーがぶつかり合い、せめぎ合い空中で一進一退を繰り返す。
「愛の力を!」
「夢の力を!」
「思い知れーーーーっ!」
その時ヴァンダーとウイングマンからパワーソルとは異なるエネルギーが迸った。そのエネルギーの迸りを受けて、ウイングマンのボディが黒から赤へと変わっていった。
次第にファイナルビームがパワーソル砲のビームを押し上げていく。
「そんな、バカなーっ!」
完全にパワーソル砲を押し返したファイナルビームにガルダンが飲み込まれる。その体はビームの中で溶け崩れ、最後まで残った頭部も遂に塵のように消えて無くなっていった。
「・・・やったのか?」
ガルダンの姿が消え失せた空を見上げながら、健太はつぶやいた。
『ガルダンのエネルギー反応はゼロ。もういなくなっちゃったよ』
それに応えるようにみなほの声が届いた。ようやく全員から安堵の息が漏れた。
「お、終わったぁ・・・」
そしてウイングマンがヴァンダーに手を差し出す。
「ありがとう、キミたちのおかげだ。オレの力だけじゃ倒せなかった」
ヴァンダーも手を握り返した。
「それは逆だよ。ありがとうはコッチのセリフだ」
「ああ、これからも力を合わせて戦おう」
ウイングマンとヴァンダーが共にある限り地球の平和は保たれる、そう思わせる力強い握手だった。
【物語のはじまり】
「ケンちゃん!」
振り返ると美紅が立っていた。
「美紅ちゃん・・・」
変身を解いて美紅に歩み寄る。
「勝ったのね」
「うん。ホントは少しあおいさんに助けられたけどね・・・」
「やっぱりケンちゃんのパートナーはあおいさんなのね。妬けちゃうな」
「だけどオレが大切に想ってるのは美紅ちゃんだよ」
「ケ、ケンちゃん・・・・」
美紅が俯く。
「これじゃ、ウイングマンじゃなくてヴァンダーになれそうだな」
そんな2人を武装変を解除した弥紫が茶化した。その後ろでみなほが笑顔でウンウンと同意している。4人の輪に笑いがおこった。
しかし美紅だけは少し真剣な顔だった。
「そうよね・・・。ヴァンダーになったら、わたしもケンちゃんと一緒に戦えるのよね」
「ち、ちょっと美紅ちゃん何真に受けてるんだよ」
本気ではないのだろうが、やはり少し焦ってしまう。
「ねぇねぇ、ところでさっき言ってたあおいさんって誰のこと?」
「そうだね。何だか2人にとって大切な人のようだけど・・・」
弥紫とみなほの言い分はもっともだ。だがあおいのことを話しても良いものだろうか?
「ケンちゃん、2人には話してもいいんじゃない。正義の味方同士なんでしょう」
健太は少し考えた。
「そうだね。あおいさんはオレを正義の味方に、ウイングマンにしてくれた人なんだ」
そこで気持ちを落ち着かせるようにゆっくりと息を吐いた。
「少し長い話になるよ・・・」
そして健太は語り出した。
あおいと共に紡いだ異次元ストーリーを・・・。
了
何年も前から『ウイングマン』の続編の構想を練っていました。それを形にできたのが奇しくもドラマ『ウイングマン』の放送と同じタイミングだったのは、何かの巡り合わせだったのでしょうか?
とにかく続編を作るにあたって “あおいさんの死”は絶対条件でありました。個人的にも大変心苦しかったのですが、これだけは避けられませんでした。だとすればそれはどういう形が良いのだろうか、と思案に暮れましたが、それは“時間”が解決してくれることに気づいた時から『ウイングマンREVERSE』は始動しました。
次に新たな敵をどうするのか、と考えた時に“惑星人”に思い当たりました。
個人的に『ウイングマン』の後作『超機動員ヴァンダー』には、新しいヒーローとしての大きな可能性を感じていただけに、不完全燃焼で打ち切られたことは残念でならなかったのです。そこにもう一度スポットを当てる意味でも“惑星人”を新たな敵とすることには意義がありました。と同時にウイングマンをパワーウェアで新生させられるので一石二鳥とも言えました。
このようにして『ウイングマンREVERSE』は作られました。
しかし主役以外のキャラクターの出番がほとんどない!と思われたことでしょう。それは話をサクサク進行させるためにあえてそうしてあります。特に超機動課のお姉さん方には触れてもいませんが、ちゃんとバックアップで活躍しています。
申し訳ありませんが、あのキャラの活躍がないぞ!といったご不満はそれぞれ脳内補完して下さい。
ウイングマンに関してはドリムノートがパワーダウンしているため、そのパワーが作用するのはウィングマン本体のみという制限をしています。ですからウイナアのようなサポートメカは出せません。その代わり沢田さんが現代の科学でウイナアⅡ(ウイナルドⅡに変形可)を造っています。
またウイングマンは、パワーウェアになったので変身時間の縛りが無くなりました。つまりデルタエンドは使用できなくなりました。
ヴァンダーに関してはゾルド将軍のパワーソルを受け継ぐのが自然な流れと考えましたが、パワーソルの便利が良すぎるので、その使い方には注意が必要でした。
あとウイングマンもヴァンダーもなるべく武器をたくさん使用させたかったのですが、話の流れで出し切れませんでしたね。他の惑星人と戦うエピソードが2つ3つ挟めれば良かったのでしょうが、その辺も脳内補完して下さい。
何でもかんでも読み手に依存しっぱなしですが、それぞれのイメージがあると思いますので、そこを尊重したと思って下さい。(←言い訳)
ガルダンに関してはラスボスをどうするかで決めていきました。ただ原作のままと言うわけにはいかないので、パワーソルでパワーアップさせてみようと考え、その為にファマルが登場することになりました。
それからガルダンに関する独自の設定も加えました。メガロン星を滅ぼした最終兵器と言うのは“火の七日間”で世界を滅ぼした巨神兵みたいなものと考えて下さい。その生き残りをライエルが手に入れた経緯は不明ですが、ガルダンをコントロールする為に“服従回路(イエッサー)”を組み込みました(爆)。その時施した改造のあとが原作にあった頭部の隙間です。なので今作のガルダンには原作にあった弱点がありません。
パワーソルは持ち主が死ぬと消滅しますが、その前に写し取ってしまうことが可能です。ファマルはパワーソルの持ち主が老て死ぬ前にそれを奪い取りました。
こんな感じですが、全部独自設定なのでサラッと流してください。
でもやっぱりあおいさんを死なせてしまったことは、大きな批判の的になるでしょう。このような続編を作ったことが良かったのか悪かったのか、自分でもよく分かりません。
でも、それでもやってみたかったのです。ウイングマンの未来を描いてみたかったのです。
願わくは寛大なる心で見逃してもらえれば幸いです。