汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
立場も置かれている状況も違えど、その道筋は険しかった。
大陸の中心たるアカネイア。
当然ながら、その動静は大陸各国も注視せざるを得ない。
⋯それに抱く感情はさておき。
本来であれば、戴冠式に各国からも参列者を募るべきだろう。
⋯だが、それは難しいと言わねばならない。
難航しているが、ニーナがアカネイア国王になるのは避けられない。
何せ唯一問題のない王族なのだから。
しかし、彼女の王位継承権は最も低かった。
国王の死は病死なり誤魔化す事は出来ようが、彼女以外の王位継承権を持つ者達。
それを無視してまで、敢えて彼女を王位に据えねばならぬ事情。
戴冠式に招くとなれば、それを伝えねばならなくなろう。
さて、それを伝えて
アカネイアの国威は保たれようか?
様々な要因が悪い方へ噛み合った結果とは言え、結局のところ
騎士団の機能不全に依る所が大きい。
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国王の命に対し、騎士団の長たる将軍が自ら動けば粛清にも時間を要さなかった。
将軍の統制力や求心力がないから、命じられた者の中に王子側に情報を漏らす者が出る。
騎士達も屋外戦闘の訓練ばかりに注力していたから、室内戦において王子側に翻弄され国王を害された。
元よりマケドニア征伐やカダイン誅伐などと言う大凡マトモとも思えない
その愚行の極みとも言えるものを献策したのは先々代の将軍であり、騎士団。
これでアカネイアをこれまで通り信用しろ。と言われても困る。
国祖アンリの遺訓のあるアリティア。かの国ですら躊躇うだろう。
だが、騎士団は相次ぐ致命的な失態を重ねている。
故に退けない。
将軍は勿論、騎士達もこのままでは己の存在意義さえも揺らぐ事が分かっているから。
アカネイア騎士の多くは『騎士であること』を拠り所としており、それを失う事に耐えられない。
本来、騎士となり何を成すのか?それこそ重要である筈なのに。
王命の遂行ならず、あまつさえ国王の命を喪った。
将軍を責める事こそ上がらなかったが、当人は己の立場がこれ以上ない程に危うくなっている事を自覚していた。
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元々、男はマケドニア征伐とカダイン誅伐。
此れ等を実行させる為に選ばれた者でしかなく、それとて領地を持たぬ貴族や一部の功績を求める騎士から支持されているだけに過ぎない。
僅か一年足らずで将軍は三度も代わっている。
それの意味するところを男は理解しており、さりとて今の己が何を言ったところで物事を動かす事が叶わぬ事も理解していた。
マケドニア征伐の為の船の建造
船大工との話は纏まりはしたが、船を造る港については手配出来ず
港が無ければ、船職人とて何も出来ない。
木材の切り出しですら、船大工とて勝手が許される訳ではなく
商船であれば商人がその土地を領する貴族に話を通さねばならぬ。
そして港の利用すら交渉が満足に出来ていなかった。
故にカダイン誅伐というある種の時間稼ぎとも言えるものを用意せねばならなくなる。
にも関わらず、そのマケドニア征伐やカダイン誅伐を勅として出して貰える筈だった王はもういない。
騎士団にも被害が出ている事もあるが、それ以上に『神聖なるパレス』において事もあろうに国王の血を流させた
どころか、命さえも喪わせてしまった。
となれば将軍に対して反発が起きるのは必至。
元々一部からは良く思われていない。それは男も知っている。
しかも面倒な事に、その者達は神器を与えられており、それ即ち『その者をアカネイア王国が認める』と言うこと。
まして、片方に至ってはマケドニア征伐における切り札となり得る人物だ。
その一方、神器を預けられはしているものの騎士団の中では浮いた存在である事は否めない。
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アカネイアでは珍しい女性騎士であるミディア。神器パルティアを与えられているジョルジュ。
元傭兵でありながら、アカネイア歩兵隊の隊長をしているアストリア。
彼女、彼等は今の騎士団について否定的であり、それを隠そうともしない。
個人の考え故に自由。
等と言うには余りにも軽率であり、己の分を弁えぬ行動だ。
ミディアとジョルジュの実家はアカネイアの封土貴族であり、決して軽んじる事の出来ない存在。
ジョルジュはともかくとして、ミディアについては騎士としての実力が身についている
とはお世辞にも言えぬものであり、また女性故にある程度の目溢しもせねばならないのは事実。
アカネイアにおいて、騎士とはオードウィンの反省から『アカネイア貴族や有力者』の縁者から選ばれるのが慣例となっている。
アカネイア中興の祖カルタスの片腕とさえ言われた騎士オードウィン。
だが、その優秀さと声望の高さ故、オードウィンがアカネイアから遠く離れた地の蛮族討伐を命じられた時
多くの騎士が彼に従いアカネイアを去った。
それにより、アカネイアの戦力は激減し騎士団の再建に時間を要さねばならなくなっている。
故にアカネイアの騎士選定について、明文化されてこそいないものの慣例とでも言うものが存在していた。
実力あれど、身元の定かならぬ者を騎士とせぬ事。
まぁそれが今のアカネイアの惨状を生み出した要因ともなれば、カルタス王もヴァルハラで心穏やかに居られないだろうが。
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騎士では無いと言えど、アカネイア正規軍の歩兵隊。
その隊長として異例の抜擢を受けたアストリア。
だが、それはあくまでも
そも、傭兵と言えども『信義に厚い』傭兵も居れば
『己の信条に忠実』な傭兵も居る。
アストリアがどの様な人物であるか?
それは分かったものではない。
例えジョルジュやミディアがその実力と人格を保証したとしても、足らない。
二人は未だ『貴族の子息、子女』の域を出ておらず、また騎士として刮目するに足る功績を示していないのだから。
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ジョルジュとアストリアは知らなかった。
二人の持つ神器。
それにも明確な意思が宿っており、己の使い手として彼等は認められていない事に。
未だ宝物庫の中にあるグラディウスは特にそれが顕著であり、触れる事どころか近寄る事すら許さない。
実力が多少無いのは仕方なしとしよう。
だが、覚悟のない者に振るわれるなどあり得ぬ。
アドラの時代においては、少なくとも『悪逆に手を染める』覚悟はあった。
であればこそ、その権能を多少なりとも発揮したものだ。
勿論、心中複雑であった事は言うまでもないが。
彼等とて、時代の変化は感じていた。
であればこそ、己の身を武器とし『ヒトの世』を守る事に迷いはない。
が、使い手が惑うのであれば話は変わる。
大いなる力にはそれに相応しき代償を
神器
神の力を宿した武器。
その意味を後に世界は知る事となる。
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順調に見えたマケドニアの改革。
その中心的存在であり、マケドニア王ミシェイルから重用されていた大臣ゲレタ。
しかし、此処に来てその関係に罅が入ろうとしていた。
マケドニア貴族の娘たるレナ。
彼女はミシェイルが先王を排した直後、ミシェイル自らが持ち込んだ話を断っている。
本来であれば、国王からの話を断るにせよそれなりのやり方があった。
しかし、それを彼女は知らず
結果としてミシェイルの正統性にすら発展しかねない事をしてしまう。
これに対し、大臣ゲレタはマケドニア社会に居場所を失うであろう彼女を国王の妹マリアの侍女として迎える事で事態の解決を図った。
無論、ミネルバやマリアに付けられていた侍女は先王つまり、『マケドニア国王の命』により編成されたもの。
例え国王の信任厚い大臣であろうと、手をつける話ではなかった。
大臣はミネルバ、マリア両名の侍女長と話し合い
結果レナはマリアの侍女として扱われる事となる。
しかし、これによりレナは大臣ゲレタの寵愛を受けているのでは?
との疑念を一部から抱かれる事となり、ゲレタはレナとの接触を可能な限り避ける事でその疑念を払拭しようとする。
この頃から、ゲレタは大臣でありながらマケドニア城を離れ大臣としての責を果たす。
ドルーアとの同盟。
竜人族と協力し、マケドニア国土の改造。
竜騎士の大陸への派遣の中止。
マケドニアを揺るがす様な事態が立て続けに起きた事により、ゲレタとレナの関係についての話は興味を失われてゆく。
他国人でありながら、マケドニアの発展の為に尽力するゲレタ。
それに対するマケドニアの民の好意は非常に高く、マケドニアの未来は明るいものとなる。
それは多くの者が確信するに足るものだった。
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ドルーアの姫君たるチキ。(形式上こうなっている)
彼女とゲレタの婚姻について、マケドニアの者は祝福一色となる。
何せドルーアとの繋がりが更に深いものとなり、隣人たる竜人族達も歓喜しているのだ。
祝わない理由はない。
慶事は続く
マケドニアの王妹であるマリア。
彼女とゲレタの婚約が決まったと言うのだ。
他国人であるゲレタもこれでマケドニア王家の一員となる。
マケドニア、ドルーア両国の発展は疑いようの無いものと殆どの者は思ったに違いない。
マリアの侍女団が解散されたにも関わらず、レナがマリアの侍女としてゲレタの元に行く事になったとて
さして問題になる事は無かった。
⋯この時は
ところが、レナの兄マチス。
彼は妹に対する扱いに不満があったらしく、大臣たるゲレタに直訴。
ゲレタはマチスの言を受け入れ、レナを実家に戻す事とした。
なお、ゲレタの自宅に事前の通告なく踏み入る。
これはマケドニア竜騎士団の長ルーメルや白騎士団の長ミネルバですら、避けるべき行為。
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自宅に戻ったマチスとレナ。
二人の話を聞いた当主は謹慎を言い渡し、兎にも角にも国王ミシェイルへ事の次第を報告。沙汰を待つべきとした。
だが、嫡子マチスは己の非を認めようとせず
それどころか、マケドニアから去るべきと主張。
最早、仕方なし
当主はマチスの首を刎ね、それを清めた上でミシェイルの元に参じ
己の首を以て、最期の温情を願ったのである。
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哀願を受けたミシェイルはその対応に苦慮する事となる。
あくまで今回の事態はマチスが起こした事であり、マチスに厳罰を与える事で事態を収めようとしていたのだから。
貴族家にとって、嫡男を失うと言うのは『家の断絶』にも等しい厳罰であり
それを国王の命により行われたならば、他の者も文句は言えぬ。⋯言わせるつもりもない。
ところが、それを『家の問題』として既に行われている。
となるとミシェイルはこれ以外に何かしらの沙汰を下さねばならない。
何よりも
本件は陛下の存念にお任せする次第
と既に
勿論、当事者であり
あと、これに対して厳正なる罰を求める声も決して小さくないのがミシェイルを悩ませていた。
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未だ食糧事情が解決したとは言えないものの、先王の御代に比べれば格段の差がある。その認識はマケドニアの民や騎士。兵も共通するところ
「食糧すら自前で用意出来ない。
そんな喉元を押さえられた状況で
まだミシェイルが王子であった頃、ゲレタは冷ややかに言い切った。
「他国と結び付く事は否定しませぬ。
されど、対等な関係を望めるだけの地力は必要かと。」
その言葉にミシェイルも同意したからこそ、当時父である王にマケドニアの食糧生産を止めない様説得したのだ。
帰らぬ者の代わりに食糧を得る。
そんな事は最早起こり得ない。
食糧の貯蔵庫。
少し前までは空であったそこに、今は保存の効く食糧が納められており
また、氷竜族の協力を得た事で水産物などの保存の可能性も出てきている。
マケドニアの民は自宅の近くに苗を植え、その成長を楽しめるまでの余裕さえ生まれているのだ。
その変化を先頭に立って起こしたのが、ゲレタ。
マケドニアの民にとって、大恩ある人物とさえ言える。
その人物の気遣いを不意にし、下手をすればマケドニアに対する感情を悪化させかねない事をしたマチス。
そして、マチスの意思改革をしなかった当主。
子を喪った母親や兄を喪った妹がどの様な感情を抱くのか。
それはマケドニアの者であるからこそ、良く理解している。
理屈では納得出来るかも知れない。
だが、感情の整理をつけるのは難しいのだ。
故にミシェイルやミネルバ。ルーメルやリュッケ、マリオネスの元に声が届いている。
かの家の者は全て死罪にすべきと
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マチスの上司にあたるリュッケやマリオネス。
二人は許されるならば、かの家の族滅をすべし。
そう主張している。
マチスやレナの祖父も存命であり、彼は孫や孫娘を大切にしている。
下手をすれば、ゲレタやミシェイル。
今のマケドニアに対して不満を持ちかねない。
それに、仮に助命したところで話は既にマケドニアの朝野を駆け抜けている。
家を残したところで、それに仕える者や手を差し伸べる者がいるだろうか?
「⋯死なせてやるのも慈悲、か。」
まず間違いなく慈悲をかけたとしても、かの家は立ち行かなくなろう。
仕える者が去り、マケドニア社会で白眼視される。
当然、再婚相手やレナの相手など見つかるまい。
生かしたとなれば、王国として何らかの手を入れねばならないだろうが
それは多くの者が反対しよう。
何せ一度温情をかけられておきながら、それを不満に思い
ゲレタに直訴出来る立場にないにも関わらず、それを行なった。
考えるのも億劫になる程面倒な事になるだろう。
その上、その辺りの調整の出来るゲレタは動かせない。
はっきり言おう。
そこまでの労力をかけて生かす理由がミシェイルには思い至らない。
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命を賭けた嘆願。
それはあくまで嘆願者に『嘆願するだけの功績』などがあった場合の話。
特に今回の場合、当主は自家にかけられた温情の大きさと格段の配慮。
それを周知するべきだった。
それでも納得出来ぬ者が居たのならば、そもそも娘への厚遇を謝辞すべきだった筈。
ところが、そうはしなかった。
娘はマケドニアに留まり、王族の侍女という望んでも手に入らない立場に収まった。
それに対して、当主は改革に対する全面協力を示したが
大臣は件の家の動きを見ても、何も思わなかったし称賛する事もない。
御恩と奉公。
封建社会における考え方のひとつであるが、当主は受けた恩に対して満足な働きを示した。
とは言えない。
⋯少なくとも、周囲はそう見ていないのだ。
ミシェイルはこの件について、頭を悩ませ続ける事となる。
エリスルート完結記念の外伝
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いる
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いらない
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そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
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そんなことよりチキを出せ
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その他