虎杖を活躍させる為だけに世界を地獄に変える転生者共 作:愉悦部員
最近体調を崩してこんなにかかっちゃったのだ…………。
みんなも体調には気をつけて
「――――玉犬!!」
恵が影絵で犬を現す手の組み方、掌印を組んで術式に呪力を流す。
十種影法術――――呪術界御三家である禪院家に代々伝わる相伝の術式。
その術式効果は影を媒体にした式神を操るというもの。
特殊な力を持った十種の式神を状況に応じて使い分けていくという、非常に強力な術式だ。その反面、二体の玉犬を除いた九種類の式神は調伏の儀と呼ばれる儀式を行い倒さなければその式神を使用出来ないという欠点もある。
しかしそれを含めても攻守応用に優れた強力な術式であるという評価は揺るがない。
「ワンっ!!」
恵の影から現れた二体の玉犬、白と黒は周囲に浮かんでいる爆弾と融合したかのような姿をした虫の式神を爪で攻撃していく。
見た目程硬くはない式神はいとも容易く玉犬の爪で引き裂かれ、しかしすぐに爆発を引き起こす。
花火にも似た爆発は色鮮やかな見た目に反し、相応の威力を伴っている。しかし攻撃範囲はそこまで大きくなく、攻撃を加えた二体の玉犬は爆風の後押しもあって攻撃を受ける事なく離脱し、次々と爆弾式神を破壊していく。
「ギィイ!!」
どんどん数が減らされていく爆弾式神はその光景を不愉快そうに見て、恵に攻撃を仕掛けようと突貫する。
式神は本体を倒せば消失する。そして式神使いは戦闘を式神に任せる関係上接近戦が不得手。
そう判断した爆弾式神は導火線を燃やし自爆して恵の命を奪おうとする。
当然、恵も黙って受け入れる事は無く、背中に背負っていた三叉の呪具を掴み振るった。
――――特級呪具『影叉』。
槍型のこの呪具に内包された術式は影に干渉し実体化させるというもの。
恵が有する十種影法術との相性は非常に良く、初めて使ったにも関わらず長年使い続けた得物のような感じがした。
「らぁ!」
影叉を自身の影に突き刺し、形状を変化させた上で実体化させる。
影が変化したしなる鞭のような数本の刃は恵を仕留めようとする爆弾式神を破壊していった。
一頻り式神を破壊したところで恵は手を止め息を吐く。
「…………何だ、この感覚」
自身の身に起きた変化に恵は困惑する。
調子が悪い、というわけではない。むしろその逆でかつてない程に調子が良かった。
呪力操作や出力が向上し、術式もより効率的に扱えている。
変な表現になるが自分より上手い人のやり方をそのままなぞっているような、変な感覚だ。
事前に蜘糸釈迦羅天に参加するプレイヤーの経験値は共有されると聞いてはいたが、ここまで凄まじいものとは思わなかった。
実際に自分がやったわけではないのに、結界術の感覚等が流れて来る。
ただ参加しているだけで強くなる、そう言っても過言では無い。
「恵! ボーっとすんじゃねぇ!!」
戸惑っている恵を特級呪具『だんぴら』を振るいながら真希は叱責する。
だんぴらに搭載されている術式は呪力を喰らい、正の呪力に変えて持ち主に還元するというもの。
全身呪力で出来た呪霊を斬る事で自身は回復するという、
「すみません真希さん」
「まあ、気持ちは分かるけどな…………」
そう言って真希は自身の身体に視線を向ける。
経験値の共有は呪力や術式だけではない。身体の動かし方や戦闘技術も流れ込んでくる。
真希としてもこのよくわからない感覚はもどかしさすら感じる。
こんな術師にとって都合の良いシステムはありえない。実力ある術師が組んだ術師でも不可能だ。となれば何かしらの縛り、参加者に対する何かしらのデメリットがある筈だ。
否――――無ければおかしいのだ。そうでなければこのゲームの、経験値共有は一体何の為に…………。
「にしても、虎杖の奴つえーな」
蜘糸釈迦羅天というゲームの異質さに嫌な考えが脳裏を過る中、真希は課題の呪霊である飛遊星と激闘を繰り広げる悠仁に視線を向ける。
その戦闘は最早自分達が介在出来るような環境ではなかった。
互いにぶつかり爆発し合いながら刀型の特級呪具を持つ悠仁は空中を蹴って駆けながら宙を舞う飛遊星を追い詰めていた。
赤血操術――――加茂家相伝の術式の一つを自分の手足のように扱い、刀身に纏わせた血液を振るう度に巨大な血の斬撃を放つ。
穿血を遥かに上回る攻撃は飛遊星の胴体を上下に断つ。
「ぐっ、手花火スズキ!!」
「穿血四蓮!」
飛遊星は下半身を再生させながら両手から美しい炎のレーザーを、悠仁はそれを迎撃する為に空中に待機させておいた硬質化した四つの血の塊から穿血を放つ。
本来穿血は両手で加圧圧縮しなければ撃つ事は出来ない。しかし悠仁はその過程を硬質化した血液に代用させる事で遠隔での穿血を使用可能になった。
「ぐぬっ…………ぉ!!」
二つの炎のレーザーが二本の穿血によって相殺、残った二本の穿血が飛遊星の両腕を貫いた。
下半身を失い両腕の機能も停止した飛遊星に追撃を仕掛けようと悠仁は両足に血の塊を生成し爆発、その勢いを利用し刃を振るおうとする。
「舐めるな…………! オレの身体は爆弾そのもの、例え分かたれてもな!!」
先程両断された下半身を遠隔で操作し、悠仁にぶつけて爆発させようとする。
当然、こんな苦し紛れの攻撃は当たらない。それは飛遊星も分かっていることだ。
虎杖悠仁の情報、製作者の一人の直弟子。
頭のネジが無い人とは思えない何かの手によって呪術の知識を叩き込まれた強者。そんな相手にこんな真似をしても意味はない。狙いは少しでも時間を稼ぎ、自身の身体を回復させること。
それのみに専念しようとした飛遊星の顔面に硬質化した血液を纏った拳が突き刺さった。
黒い火花が散る中、飛遊星は悠仁が自身の腕を千切り、それを遠隔で操作して殴った事を理解する。
「っ、人間なら人間らしく戦えよ…………!」
頑丈な体躯に亀裂が入り飛遊星は地面に叩き付けられた。
同時に悠仁も爆発に巻き込まれて地面に落下する。
呪術師と呪霊、双方ともに傷付いた身体を修復して睨み合う。
そして、互いに掌印を結んだ。
「「――――領域展開!!」」
呪術戦の極致である奥義、領域展開。
それをあっさりと行使する存在に戦いを眺めていた二人は思わず身構える。
周囲に結界が構築され、飛遊星のものと思わしき生得領域が構築される。夏を連想させる夜の川辺、花火を眺めるには最高の景色としか言いようの無い光景が参加者である三人を巻き込む。
劣勢に陥った飛遊星は状況を打破する為に三人を殺そうと領域を展開。
一方の悠仁も対抗するように領域を展開する。
飛遊星の領域を塗り替える事は不可能。この呪霊はかなり強く、既に黒閃を決めている。
黒閃は悠仁も決めているが一回のみ。潜在能力は解放されているが相手の領域を塗り潰す程ではない。
故に悠仁は飛遊星に好き勝手動かれないように領域でタイマンに持ち込んだ。
「ちっさ!?」
飛遊星の領域の中で真希は悠仁が作ったBB弾サイズの領域を見て思わず叫んだ。
+++
「――――上手いね」
特等席*1で観戦していた下劣畜生*2はモニターに映る悠二と飛遊星の戦闘に思わず呟いた。
他の転生者、九人の腐れ外道は諸事情もあってこの場には居ないが唯一同席していた黒頭巾の転生者は下劣畜生の言葉に頷いた。
「悠仁殿の領域、また小さくなってるでござるな。あれなら強度もかなり上がってるでござろう」
「それもあるけどやっぱり小さい結界で伏黒君と真希っぱいを領域から外したのがね。言っちゃ悪いけど今の二人は悠仁にとって足手纏いだからね」
いくら呪術高専に所属する呪術師とはいえ、特級の中でも上に位置する飛遊星の前では足手纏いでしかない。
飛遊星の実力は術師基準でも特級相当だ。一級術師が数人居ても敵わないだろう。
「飛遊星って劣化漏瑚だからね。今の悠仁でも領域を発動して潜在能力を解放した奴相手から二人を庇いながら戦うのは困難。本当に良い手をうった」
「後もう一ゲーム…………経験値の共有によるレベルアップがあるなら恵殿なら黒閃を一回でも決めれば領域が使えるようになり、マッチョおっぱいは魂の観測が出来るようになるでござろうな。流石に相手が悪かったでござる」
二人の活躍はまた次回楽しむことにしよう。
繰り広げられる激闘を眺めながらクソどもは談笑する。
「しっかしこうして見ると結界や領域は小さい方が良いね。強度もあるし壊されにくいから」
「そうでござるな。領域の必中効果を打ち消す簡易領域も態々広げる理由も無いし、日下部殿みたいに攻撃に転用するなら話は別でござるが」
「まあ閉じない領域だとある程度大きさを確保しないとダメだけどね。あれは仕組み上、簡易領域の中なら必中効果を打ち消せるけど外は襲って来るから。やっぱ呪力の無い物も対象にとれるのはえげつない」
「とはいえ、閉じない領域を使えるのは我等を除けば百体程度しかいないでござるからな。飛遊星は出来ないし、もし出来たらの仮定を語ったところで無意味でしかなかろう」
「そんな事より悠仁、二度目の黒閃を決めて宿儺の指を取り返したみたい」
「ってもう三度目…………いや、違うでござるな。四連続で決めやがったでござる」
「やっぱ悠仁って黒い火花に愛されてるね。私の考察にはなるけど、黒閃って命がかかった戦闘になればなる程出やすくなるんだと思う。練習の時じゃあ狙って出そうとしても出せないし、五条悟の言ってた環境や温度や湿度も関係あると思うけど、一番重要なのは精神状態だと思うよ」
「拙者らが黒閃を決めた時は良くも悪くもハイだった時や必死だった時、集中してた時でござるからな。それよりも悠仁殿が更に強くなったでござる」
「あんだけ頑丈な飛遊星がべっこべっこに凹まされてるや。多分今の調子で戦えば漏瑚とも良い勝負が出来そう」
誰がどう見てもこのままいけば飛遊星は敗北する。
だが、それではつまらない。何より目的である悠二の身体に宿儺が受肉しない。
「で、飛遊星にどんなバフを与えたの?」
「ああ、これを渡したでござる」
そう言って黒頭巾は懐から丹薬のようなものを取り出す。
丹薬。そう、丹薬としか言いようの無いどす黒い色をした薬だった。
一目見ただけで毒としか思えないようなその丸薬は、ただそこにあるだけで悍ましさすら感じる程の瘴気を放っている。
「えっ、マジで?」
取り出された丹薬を見て下劣畜生は驚愕に染まった。
「いや、それはまずいって。本当に正気?」
「その腹をしてる奴に正気を問われたくないでござるな」
ハハハと据わった目で笑う黒頭巾に下劣畜生は額から汗を流しながら詰め寄る。
「待て待て待て…………ちょい待て! それ指二本分程度なら受肉した宿儺でも死にかねないやつじゃねーか!」
「大丈夫大丈夫。指二本分とはいえ呪いの王なんだから。きっと勝てるでござろう。技術は変わりないし今の悠仁殿の身体に受肉するんだしいけるって!」
「いくらなんでも早過ぎる! 下手したら悠仁死ぬじゃねーか!!」
「大丈夫! 悠仁と宿儺ならいけるって!」
下劣畜生の言葉を能天気にかわし、映像に目を向ける。
飛遊星は渡された丹薬を飲み、その姿が受胎へと変化する。
姿が変わった事に悠仁はすぐさま穿血を使って仕留めようとするが時遅く、飛遊星は変態を遂げた。
その姿は先程よりもスリムで、より強大な呪力を帯びている。
与えたダメージや消費した呪力は完全に回復し、映像越しに伝わる程の進化を果たしていた。
「この丹薬こそ呪霊を強制的に呪胎に変え、より強力な呪霊へと進化させる羽化登呪!!」
本来ならもっと参加者が増えてから投入する筈だった呪霊の強化アイテム。
それの早期使用に踏み切った黒頭巾、クソカスは濁りに濁り切った目で二つの領域が崩壊した事で劣勢を強いられる事となった戦いを見つめる。
「さぁ、魅せるでござる呪いの王。まだ指が残ってるという慢心は意味無いものになるんでござるからなぁ…………魂の分割で逃げられると思うなよぉ…………!!」
その言葉には悠仁、そして宿儺に対する歪んだ情熱が多分に含まれていた。
「あ、やべっ…………大声出したら破水した」
「ねえ今大事なところなんだから混乱させるような事するのやめてくれない?」
補足
黒頭巾は虎杖宿儺こそ至高派
そして羽化登呪は自然呪霊にも使わせようとしている
スタンスとしてはゲームが停滞したら無理難題を押し付けてくるタイプ
攻略しないと不味いし攻略出来ても更に難易度が上がる模様