アニメ主人公とは思えないデッキを使う奴のお話 作:匿名希望
とある特定のカードゲーム
そんなよくあるカードゲームの販促アニメ世界。
道端でカードバトルを挑まれれば誰であろうと受け、悪の組織と正義の味方はカードゲームで雌雄を決する。
現代日本の価値観から言えば狂っているとしか言いようがない。そんな世界に俺は――
――転生していた。
◇
「おい、近江! 今日こそお前をぶちのめしてやるッ!!」
「そうですよ!」「やっちゃって下さい!」
俺の今世での名前は『
ツンツンの黒髪が特徴的な、如何にもカードゲームアニメの主人公的な容貌だ。
俺に対してカードバトルを挑んできたこいつは……まあ、名前はいいだろう。*1
二人の取り巻きを連れて、ふくよかな体形で……まあ、典型的なガキ大将だな。
「はぁ、またか? いい加減学習したらどうだ?」
「うるせぇ! あんなのはマグレだ。俺が一番強いんだよ!!」
「それ、5年間ずっと言ってるけど一回も勝てた試しが無いよね」
「この5年間で、登校日は1000日程。バトルは最低1日1回。3日に1回は2回行われていた。
休日にも二日に一回はバトルをしていたため……合計で約1700回。君は全てにおいて大敗を喫しているね」
今、話しかけてきたのは俺の幼馴染二人。
青髪を短く切り揃え、メガネをかけたいかにもデータキャラという風貌の少年が『
俺と同じ転生者で……前世でも友人だった者達だ。
「ごちゃごちゃうるせぇ! とっとと始めるぞ!」
「それなら、そっちの二人は私たちとどう?」
「何か小細工をされても困りますしね……まあ、小細工された所で七海が負けるとは思えませんが」
ここで、この世界で行われているカードゲームについて話しておこう。
デッキは40枚。最初の手札は5枚。ゲーム開始時にデッキの上から7枚をライフにする。
ターン開始時にデッキから2枚ドローし、1枚をチャージ。ただし先行の1ターン目はドローが1枚だけ。
召喚した
「俺のターン。
個人的な感想としては『バトスピとデュエマの合いの子に少しのバディファイト要素を付け足したもの』というものだが……それらと明確に異なる点が一つ。
バトスピと異なりデッキ枚数は40枚固定。ゲーム開始時のデッキ消耗はデュエマよりも2枚多い12枚。そして、各ターン初めのドローが普通のカードゲームの2倍の2枚。
バトスピやデュエマよりも、圧倒的にデッキ消耗が重いのだ。それすなわち――
「俺のターン。3コスト、『海龍ウェイブ』を召喚。攻撃時にキーワード能力【波浪】の効果で自身のコストと同じ枚数……3枚、相手のデッキを除外する」
「くっ、だが俺のライフが減少したことで――」
「――いい加減覚えろ。【波浪】持ちは相手のライフを減らさない」
――デッキ破壊が、非常に強いのだ。敗北条件は『ライフが0になる』か『デッキが0になる』。
一般的なデッキが動き出すのは3~4ターン目。ゲーム開始時に12枚、各ターン初めに2枚づつデッキが削れて行くので……動き出すころにはデッキの約半分が無くなっているのだ。
こちらが破棄すればいい枚数は
「俺のターン。『海龍ウェイブ』の能力発動。自身を破壊して次に召喚する『ウェイブ』のコストを4軽減。
7コスト4軽減で3コスト。世界を喰らう海原の
おまけに、『海龍ウェイブ』のイカレた早出し性能によって4ターン目に降臨するキーカード。
キーワード能力
今回は俺が先行で、4ターン目に出したので相手のデッキ消耗は18枚+
「タイダルウェイブの【波浪】で7枚除外!」
「防御しろ、『ジャイアント・コング』! パワーはこっちの方が上だ!!」
「タイダルウェイブは戦闘では破壊されない! そして、ターンに1回攻撃後に
相手のデッキは“ジャイアント”。フィールドカード『ジャイアント・フォレスト』の効果で手札の高コスト『ジャイアント』名称持ちを踏み倒すデッキ。
……故に、タイダルウェイブの最後の効果がよく刺さる。
「再度攻撃だ、タイダルウェイブ! 【波浪】で7枚除外し……除外したカードのコスト合計が40以上なので、ターンに1度回復!」
合計3回の攻撃で21枚のデッキ破壊。当然相手はデッキアウト。これで俺の勝ちとなった。
……因みに、他の二人はと言うと、
「『妖狐タマモ』を召喚。効果で手札の『九尾の妖狐 玉藻之前』を破棄してそのコスト分、9枚の墓地肥やしを行う。
で、墓地に送られた中に『狐』がいるので更に9枚墓地を肥やす」
狐織の場には
タマモの召喚時効果で大量に墓地を肥やして……必要パーツが落ちたな。必勝パターンの成立だ。
「タマモで攻撃。攻撃時に【変化】の効果発動。コストのカードを1枚手札に戻して、手札から1枚チャージ」
【変化】。『殺生石』があるならば、攻撃したカード本来の【変化】に加えて墓地にあるカード1枚の【変化】の効果を使用できるのが特徴の、攻撃時能力。
……カードゲームを触っている人間なら、コレが悪さをするのは想像に難くないだろう。
今回は、墓地のカードの召喚時効果をコピーする『二尾の
……殴るだけで無限
「タマモの攻撃でライフを減らす……代わりに、『殺生石』の効果。『殺生石』の下にデッキからカードを置くね。
下のカードは1枚目だから1ドロー」
減少したライフは手札かコスト、好きな方に送れる。安易な攻撃は相手にアドバンテージを渡すことになりかねないが……このデッキは一味違う。
相手のライフ減少を『殺生石』のカウント増加に“置換”する。
置換効果は連鎖しないルールと『殺生石』自体の耐性によって、これを妨害できるカードは存在しない。
「そして攻撃終了時。タマモの【変化】の効果で自身を破壊して墓地の『狐』『キツネ』を召喚する。墓地の『狐』『キツネ』を合計8枚デッキの下に戻して、9コスト8軽減1コスト!
顕れろ、『九尾の妖狐 玉藻之前』!」
攻撃終了時、自壊する事で墓地の狐を召喚する能力――因みに、このカードゲームは“コストを支払わずに”の記述が無い場合コストを支払う必要のある、バトスピ方式だ。
タマモで玉藻之前を墓地に送り大量墓地肥やし。一尾・二尾のコンビネーションでコストを起こし、肥やした墓地を利用して玉藻之前のコストを軽減。
これだけでも強いムーブだが――
「玉藻之前の攻撃時、【変化】発動!」
――玉藻之前も【変化】を持っているのだ。【変化】自体はただの耐性効果だが――“ただの”というには少々強力すぎるが――【変化】を持っている事自体が問題だ。
玉藻之前の効果は4つ。
固有キーワード能力の【大変化】――墓地にある間【変化】持ちに付与される能力で、戦闘破壊耐性とターン1で防御された時に起き上がる能力だ――。
前述の【変化】。
墓地の狐の枚数に応じて範囲が広がる攻撃時除去。
そして……攻撃後に発動する
これがどういう状況を引き起こすかと言うと……
「1回目の攻撃では二尾の【変化】でコストを起こす。で『殺生石』の下のカードが2枚目になったので1ドロー、3枚目になったのでコストチャージが発生。
2回目の攻撃でも二尾の【変化】でコストを起こして、4枚目のコストチャージと5枚目の状態を入れ替える能力が発生」
何故か使用可能コストが4点まで回復しつつ、回復状態の玉藻之前が盤面にいる状況が出来上がった。
……半分くらい、カウントを貯めるごとに発生するアドバンテージがバカげてる『殺生石』が悪い気はするが。もう半分は【変化】のアホテキスト。
「3回目の攻撃で6枚目の状態入れ替えと7枚目の
4回目の攻撃。【変化】はタマモ指定するから、この攻撃終了時に自壊して墓地からもう一枚の玉藻之前を召喚出来るよ。8枚目のボトムバウンスは不発だけど……」
ここまで来て、更に打点を供給できるぶっ壊れ。
2枚目の玉藻之前の攻撃が2回。【変化】を二尾→タマモの順に適応してタマモ蘇生。ココで再度の墓地肥やしを挟んで弾の再補充。
タマモ攻撃時に二尾の【変化】。タマモ自壊で玉藻之前召喚して二尾の【変化】→タマモの【変化】と適応して……
まあ、いろいろ言ってきたが簡単に言えば【変化】が悪さして延々と打点を供給できるのだ。
「……『殺生石』の下のカードが9枚になった時の効果。
自身はゲームに勝利する!」
……そして引き起こされるエクストラウィン。
明らかにカードパワーがおかしい。いや、俺のウェイブも大概だが、こっちのタマモは明らかに狂ってやがる。
何とも言えない気分になりながら龍の方に目を向けてみると……
「『火竜レッド』を召喚。レッドで攻撃するぞ。その時に一つ目の効果が発動し、デッキを上から5枚見て……1枚をデッキの上に置き、残りをデッキの下に。
そしてキーワード能力【紅炎】の効果で自身のデッキの一番上のカードを表向きにし、それが『龍』『竜』『ドラゴン』ならばコストを支払わずに召喚できる。
呼び出されるのは当然、さっき仕込んだ『火炎竜スカーレッド』だ!」
龍の黄金コンボが決まっていた。連ドラ能力【紅炎】を持っているのはまだいい。何故デッキトップ操作能力を持っているのだ。
色指定すらないのは本当に狂っている。今後登場するドラゴンカードの全てが強化パーツになる拡張性の高さは、本当に狂っていやがる。
「スカーレッドの攻撃時、能力が発動する。【紅炎】。相手エンティティに指定アタックできる能力。
そして、ストライクを比べる際自身の場の『龍』『竜』『ドラゴン』1枚につき1点、ストライクを増加させる能力」
明らかに3ターン目に出てきていい能力では無かった。
「僕のデッキは『
1ターン目にチャージした1枚。2ターン目に使用した1枚、そしてさっきデッキボトムに送った中に1枚。
『龍炎起動』確定のボトムを除いた20枚中、外れは1枚のみ。実に95%の確率で後続のドラゴンを呼べる訳だ」
如何にも頭脳キャラという風貌をしているが……その頭脳を活かして行うのはガチャ行為。
デッキ内にどれだけ当たりが残っているかを計算し、確率論的にデッキを捲っていくのだ。
「デッキトップは……『偽炎竜ワイバーン』。大当たりだッ!
召喚時効果でお互いの盤面のカード1枚を選び、状態を入れ替える。対象は勿論スカーレッドだ!」
あぁ。大当たりを引き当てやがった。スカーレッドを起こして、追加のガチャが出来る。
コレは……多分このターンで終わりだな。
「【紅炎】【紅炎】【紅炎】ッ!!連続攻撃でとどめだ!!」
あいつのデッキは36枚のドラゴンの内、実に24枚が【紅炎】持ちで構成されている。
【紅炎】の連鎖で最速3ターン目に過剰打点が並ぶ。トンチキなデッキタイプなのだ。
これは、カードゲームアニメの世界で、明らかにおかしなデッキを使う者達のお話。
・『
本作の主人公。カードゲームアニメの主人公。デッキ破壊をこよなく愛するカードゲームプレイヤー。前世で主にやっていたカードゲームは『バトルスピリッツ』。【波契約】や【海賊キャスゴ】といったデッキを愛用していた。
使用デッキのコンセプトは【波浪】。デッキ破壊を主な勝ち筋としている。因みにデッキ破壊メタを張られた時の勝ち筋として
・『
本作のメインヒロイン。カードゲームアニメのヒロイン。特殊勝利をこよなく愛するカードゲームプレイヤー。前世では色々なカードゲームを手広くプレイしていた。バトスピの【仮面ライダーギーツ】がお気に入り。
使用デッキのコンセプトは【変化】。一尾から九尾までのカードとタマモの10種4枚づつでデッキを構成している。【変化】連鎖はただのアホ。多分リアルで発売されたら一瞬で規制が入る。
・『
本作のメインキャラクター。カードゲームアニメの頭脳キャラ。連ドラをこよなく愛するカードゲームプレイヤー。前世ではデュエマを主にプレイしていた。連ドラグナーがお気に入り。
使用デッキのコンセプトは【紅炎】。連ドラの連鎖で過剰打点を用意する。
・ウェイブ、タマモ、レッド
マスコット的な奴。1弾で登場した高コストバージョンをサポートするカードとして2弾で登場する感じのカード……なのだが、カードパワーが明らかにおかしい。
ウェイブは何故か唐突に4コスト軽減するし、タマモはループのキーカードになる。レッドに至っては一人ヘブフォヒビキバトガイハムカツゲンムエンペラーアヘガオダブルピースである。