ハイスクールD×D 蒼の継承者の物語   作:Yunnan

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前編と後編に分けます。


幼馴染と同級生 前編

一輝side

 部長の家事情が絡んだ婚約騒動が落ち着き、そして何故か俺と交流を深めたいと言い仮家に住み始め早数日が経過した。

 黒歌は部長が俺に親しく接していると敵意剝き出しでよく噛みついているが、部長は相も変わらず涼しい顔であしらうだけ。それを見た小猫とアーシアが対抗しくっついてくる始末……はぁ。加えて俺の生活にも若干の変化が起きた。

 まず第一に部長が俺のベッドで寝ることが増えた……しかも何故か裸で、だ。何故ゆえに裸で寝る? おまけに裸のまま俺に抱き着いてくる。マジで勘弁してくれ本当に……そこへ黒歌、小猫、アーシアも負けじと裸になって寝ようとしてくる……おかげで心身ともに疲労が抜けず逆に蓄積される。

 本来、睡眠は疲労回復に必要不可欠なものだがこの所あまりよく眠れない。特に黒歌なんか俺が寝ている時に首筋をペロペロ舐めてくる。お前は猫か……あ、猫魈(ねこ)だったな。

 そして部長が同居を始めてから理解(わか)ったが、意外と部長は炊事家事を全てそつなくこなす。正直な感想、お嬢様ってのは基本的に炊事家事(そういうこと)はメイドに任せるものだと俺は思っていたのだが……まぁ一人暮らしをしていたからある程度は出来てもおかしくないか。それにしても部長の料理のレパートリーは思ってた以上に豊富だ。和洋中の料理を全てお店に出しても遜色がない程に美味いんだ。今じゃ料理の腕は今のところ部長が一番だ。

 

 『お嬢様育ちだからといって、何もできないと思われるのは嫌いなのよ。やれることはやりたいわ』

 とのことだ。料理も出来て才色兼備。部長を嫁に貰う(悪魔)はさぞ幸せになれることだろう。ただの人間である俺には無縁の話だろうけども。

 そして、何故か部長をライバル視している黒歌と小猫にアーシアは、いつも差を見せ付けられている。三人とも努力はしているが、部長が相手だと結果は芳しくない。

 また食事の際は誰が俺の両隣に座るかで毎日飽きることなくジャンケン大会が行われる。正直そんなに拘ることじゃないと思うが……女性にとってこういうことは結構大事らしいので何も口出しせずただ見守る……と言うかあまりにも真剣な空気が漂うため口出しできない。ジャンケンがそんなに大事か? 

 黒歌は普段は猫の姿になり付近を散歩。もしくは家でゴロゴロしている。ただ義母さんが言うには最近は炊事家事を手伝っているらしい。

 そして登校中も俺の疲労感は拭えない。理由は明白だ。

 

 「♪♪♪」

 俺の左腕に抱き着きご機嫌の部長。彼女の豊かな胸部が俺の腕に押しつけられ、歩くたびに柔らかな感触が伝わってくる。

 

 「……ズルいです」

 右腕にはアーシアが涙目で同じように抱き着いている。彼女の場合は控えめだが確かな温もりがあり、彼女の不安そうな表情を見ると無理矢理引き離すこともできず罪悪感が湧く。

 

 「ん……」

 背中に感じる軽い体重と体温。小猫は俺の背中におんぶ状態だ。

 

 「ねぇ! あれ見て! リアスお姉様が一輝君と小猫ちゃんとアーシアちゃんと一緒に登校してるわ!!」

 「な、何故小猫ちゃんが一輝先輩と一緒に!? それにリアスお姉様にアーシア先輩までもが!!」

 「もしかしてアレって、ハーレムって奴なの?」

 「そうじゃないかしら? ……でもあのエロ兵藤よりはマシじゃない!?」

 「そうね! 兵藤よりはマシね!!」

 「ちくしょう!! 何故一輝や木場みたいなイケメンがモテるんだ!?」

 ……はぁ。最近はこう女子からは称賛? 男子達から向けられる嫉妬・怨嗟・殺意の籠った視線を受ける事が多くなりが酷く突き刺さりストレスが溜まる。鬱陶しい限りだ。

 それにイケメンがモテるとか言っているが俺はモテたくないんだよ(・・・・・・・・・)。というか何で男子は女子からモテたいんだよ。意味が理解らない……モテるということはそれだけ面倒事も多くなるだけではないかと思う。バカの思考回路は理解に苦しむ……とにかくこうした注目は不要でしかない。俺にとってこの状況(視線の的)はストレス以外の何物でもないんだ。

 

 「……ところで部長」

 「なにかしら?」

 「いつまで抱きついているんですか?」

 「ずっとよ。だって私とあなたの仲でしょ?」

 「はい?」

 …………どういう仲ですかそれ?

 結局部長の意図が理解らず仕舞いのまま、俺は周囲から視線を浴び続けながら学園までの道のりを歩き続ける羽目になった。

 

 

 

 

 

 「それじゃ一輝。放課後ね」 

 部長がウインクしながら自分の教室へ向かっていく。

 

 「一輝先輩。またお家で」

 小猫も小さく手を振って同じく自分のクラスへ。

 

 「……うっす。小猫もまたな」

 下駄箱で別れ、俺とアーシアも自分たちの教室へ向かう。 

 はぁ。朝から精神をすごく疲弊したな。何とかに学校に到着し席に座った直後。

 

 「「か――ず――き――ッ!!」」

 煩いバカ(松田と元浜)共がやってきやがった。ただでさえ朝から疲れてんのに面倒だ。

 

 「貴様! アーシアちゃんだけで飽き足らず、小猫ちゃんに加えリアスお姉様と一緒に登校して来るとはどういう事だ!?」

 「納得のいく説明を要求する!!」

 「……はぁ~~」

 思わず口から盛大な溜息が零れる。……ホンッッッッッッッットに面倒くさい。声を聴くだけでゲンナリしてくる。

 

 「おいおいおい一輝! これはもはや事件だろ! なぜリアス・グレモリー先輩がお前と一緒に登校してるんだ!?」

 松田が俺の机をバンバン叩きながら詰め寄る。うるさいなシバキ倒すぞクソハゲ野郎。

 

 「それにリアスお姉様だけじゃない! 小猫ちゃんをおんぶして学校に登校するとはどういう神経をしているんだ!?  まさか貴様ロリコンなのか!?」

 元浜が拳を震わせながら続ける。その眼は血走っていて眼球抉りたいくらい凄くキモい。

 後この距離感で大声出されると鼓膜に響くし訂正するなら俺がおんぶしてるんじゃなくて小猫自ら俺の背に飛びついてくるんだがな。降ろそうにもガッチリ抱き着かれて離れる様子もなかったからそのまま背負って歩いてただけだし。最後に俺はロリコンじゃねぇからなぶち殺すぞクソ眼鏡。

 

 「いや待てよ……もしやお前! 禁断の恋愛フラグを立てたのか!? 『不良軍団に襲われてるお姉さまを助けたら惚れられた』とかいうテンプレ的なやつか!?」

 「あるいは『雨の中捨て犬を拾ったら実はお姉さまのペットでそのままお持ち帰りされて一泊』パターンかもしれん!」

 「そこから始まる夏休みの甘くて切ない三角関係か!? しかも天使のアーシアちゃんと学園のマスコットキャラである小猫ちゃんまで加わってハーレム展開ってか!!」

 「誰がお姉さまキャラ好きの腐男子だコラァ!」

 「お前だよ馬鹿野郎!!」

 バカ二人に続いてクラス内の男子生徒たちは次々と気持ち悪い妄想を爆発させ、俺を完全に置き去りにしたまま盛り上がっていく。

 

 「……チッ。黙れよお前ら」

 俺が静かに微弱な威圧(殺氣)を放つと、教室全体が一瞬で静まり返る。

 

 「お前らよくもまぁ俺と部長が一緒に登校してるのを目撃しただけで妄想劇を繰り広げられるよな。感心する」

 松田と元浜は震え上がりながらも必死に反論しようと試みる。

 

 「だ、だって現実問題としてお前リアス先輩とアーシアちゃんに小猫ちゃんと一緒に登校してただろ!?」

 「それが一体何だ? そもそもリアス先輩とアーシアに小猫と一緒に登校したことぐらいでお前らがここまでヒステリックになる理由が理解らん」

 「ひ、ヒステリックって……!」

 「おい元浜。お前さっき『一雨の中捨て犬を拾ったら実はお姉さまのペットでそのままお持ち帰りされて一泊』とか言ってたよな? 本気でそんなキモいこと考えてんなら一度脳外科医に診てもらえ」

 「なっ……!? ひどい!!」

 周囲から同情の視線が集まるも気にせず続けた。

 

 「酷いのはどっちだよバカ野郎。たかが一緒に登校してるところを目撃しただけで妄想繰り広げて……本当に幼稚すぎるんだよお前ら」

 教室の空気が凍りつく。

 

 「松田『リアス先輩を不良から助けた』とか抜かしてたが、そんな事実は存在しないからな。仮にあったとしてもそれはオカルト研究部として当たり前のことだし、それを恋愛フラグなんて勝手に決めつけんな」

 「うぐっ」

 「元浜……『お姉さまのペット』とか気持ち悪い発言は止めろ。マジで頭にウジ虫でも沸いてんのか? カビ生えた昭和の少女マンガみたいな妄想する前にいっぺん死んで小学校からやり直してこい」

 「かっ……一輝くんがここまで辛辣に他人を罵るの初めて見たかも……」

 どこかで誰かの呟く声が訊こえる。

 

 「お前らみたいな連中が迷惑なんだよ。勝手に他人の関係を決めつけて騒いで嫉妬して……醜悪極まりない。そういうのが本当に見苦しいんだよ」

 俺が本気で不快感を露わにしていると理解ったのか、クラス中が完全に沈黙した。

 

 「今後二度と下らない妄想で騒ぐな。いいな?」

 「「「「「「「「「「………………はい」」」」」」」」」」

 クラスの男子が情けない声で返事する。

 ……チッ。本当に下らねぇ。こういう類の妄想癖ある奴ってどうしてこうも厄介なんだろうな。そんな暇があるならバイトして金稼ぐなり親孝行するなり勉学に励むなりしたらどうなんだよ。本当に(バカ)の思考回路って理解不能すぎて頭痛くなってきたわ。

 

 「おはよう……ってなんだこの空気?」

 「ん? 一誠か。おはよう」

 教室の扉を開けて入ってきたのは一誠だ。

 

 「あ、一輝……お前何したんだよ?」

 「いや別に。単純に害虫駆除をしていただけだ」

 「害虫駆除?」

 首を傾げる一誠に対して肩を竦めた。

 

 「元浜と松本が俺と部長やアーシアに小猫と一緒に登校してるのを問い詰めてきたと思ったらクラス中のバカ(非モテ)どもが気色悪い妄想を膨らませてウザかったから注意しただけだ」

 「注意しただけってこんな空気になるっ」

 「注意……しただけだ。余計な詮索は命に関わると思えよ?」

 「はい……了解しました……」

 冷や汗垂らしながら何度も頷く一誠を見て俺は口に手を当て大きく欠伸した。

 

 「ふわ~~……眠い」

 「寝不足か?」

 「まあな。つーわけで俺は寝る」

 俺は机に突っ伏し寝入る。思いのほかここ数日の疲労からか瞼を閉じてすぐ意識は堕ちていった。

 

 

 

 

 

一誠side

 

 「……連絡事項はこれくらいだな」

 朝のHR。何時もより少し遅めに起きた俺は、眠気と戦いながら連絡事項を聞き流している。

 今日は休日の第二土曜日。休みがあった教科の補講を行うために学校に来ている。正直言って休みたいのが本音だけど、半日授業なので面倒だが学校に来ている。ちなみにうちの担任教師はまだ若い男性教師で、少し適当な感じの人だ。

 学校が終わった後は俺の家でオカ研の会議を行う。今日は旧校舎を業者に頼んで掃除させると言っているがこれは嘘。部長が言うには、使役している使い魔に旧校舎の全体を掃除させるらしい。オカ研で使い魔がいないのは俺だけだし…………絶対に可愛い女の子の使い魔をゲットしてみせる!!

 ちなみにだけど一輝にも使い魔はいるらしい。だけど一輝いわく『……皆、離れた場所で頑張ってるよ』と濁された。離れた場所ってどこなんだって訊いたけど頑なに教えてくれなかった。それに皆って言ってたから使い魔は一人じゃなくて複数体いるって事か? 疑問が尽きないぜ。

 

 「最後にだがこのクラスに転校生が入ってくる」

 ?? 転校生? この時期に?

 

 「先生! 相手は女の子ですか!?」

 「女子四人に男子二人の計六人だ」

 松本の質問に先生は簡潔に答えると、クラスの男女ともに色めき立つ。

 

 「四人も女子が来るのかよ!」

 「しかも美少女かもしれないぞ!」

 「楽しみ~!」

 「どんな男子か気になる~!」

 ざわめく教室の中で俺も内心ドキドキしていた。四人の女子の転校生だなんて! これはまさに奇跡だ!

 

 「先生! 転校生は何時来ますか!?」

 「まぁ待て。もうすぐ来るはずだ……」

 コンコン。

 教室の扉がノックされた。その瞬間、教室中の視線が一斉に扉へ向く。特に松本と元浜は椅子を蹴るように立ち上がり、「来た!」「マジで四人も!」と囁き合っている。俺も例外ではなく、鼓動が速くなるのを感じた。四人の女子の転校生……いや、まだ確認していないから期待しすぎるのは良くないが、可能性は限りなく高い!

 

 「入っていいぞ~」

 担任の声と同時に扉が静かに開かれる。最初に入ってきたのは……うおおぉ! で、デカい! 身長百九十はあるんじゃないかっていう巨漢の男だ。外国人……じゃないな。見た目は日本人っぽいけど異常にデカい。ガタいも良すぎて鋭い眼つきにどことなく近寄りがたい雰囲気がある。制服も微妙に丈が合っていないのか、少し窮屈そうだ。

 

 「おいおい。デカ過ぎんだろう」

 松本が小声で漏らすのもわかる。確かにあまりに大きすぎる。

 二人目も同じ男子だ。髪を眼元まで伸ばして口元は笑みを浮かべている。ってかこの男子も背丈あるな。一輝と同じくらいか? 見た感じ優しそうに見えるけど……なんだかこの男子の笑みを見てるとどこか寒気がする。得体の知れないオーラを持ってるっていうか……なんだろう。少なくとも普通の転校生じゃない気がする(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 「なーんか普通の男子より雰囲気ありすぎるわね……」

 そんな噂をする女子グループもあるほどだ。

 そしてついに来た! 待ちに待った女子四人組!

 一人目の女子は……おお! 茶髪に丸眼鏡をかけた可愛い女子! 視線を左右に動かして制服の裾をギュっと握り締めている。緊張してるのかな? どこかオドオドしているところも庇護欲をそそる。良い! これはポイント高い!

 二人目は快活そうな表情を浮かべた女子だ! 爽やかな笑顔が印象的だ! 白髪のショートボブの髪型がスポーティな雰囲気を演出している。

 三人目は……清楚系美人!? さらさらとした長い銀髪ロングストレートを腰まで伸ばし制服を優雅に着こなした女子だ。柔和な笑顔を浮かべており、まさに品のあるお嬢様といった佇まいだ。教室に入った途端、一部の男子はすでに卒倒寸前になっている。

 

 「♪♪」

 彼女はニコっと微笑み小さく手を振ってくれる! なんて礼儀正しいんだ!

 最後の四人目は……うおっ!? 朱乃さんと同様に漆黒の長髪をポニーテールにして背中に流し、背筋をピンと伸ばして凛とした佇まい。朱乃さんとはまた違う静謐な美しさを持っている。その気品漂う雰囲気に教室全体が一瞬静まり返った。

 

 「……ふぅ」

 小さく息を吐く仕草さえもどこか神秘的だ。これは……やばいぞ! 美少女揃いどころか全員がレベル高過ぎる! 俺だけでなく周りの男子たちも興奮している。特に元浜は鼻息荒く「これはまさに美女四天王だろ!」とか言い出す始末。お前それ言っちゃうのかよ。

 

 「zzzzzzzz」

 そんなクラスメイトが浮き立つ中、一輝だけ一人熟睡している。……いやここまでの熱狂具合で起きないって相当寝不足なんだろうか? しかしこれほどの美少女揃いに気づかないなんて鈍感にも程があるだろ。

 

 「揃ったな。それじゃ入ってきた順番に自己紹介を」

 担任の鶴の一声にまず最初に入ってきた巨漢男子が一歩前に出た。

 

 「初めまして。黒鉄竜崎だ」

 「俺は一ノ瀬速水だ~。宜しくな」

 「は、初めまして。湊結奈です」

 「私は(タオ)白桃花(バイ・タオファ)! 桃でいいよ!」

 「皆さん初めまして。私は西園寺紗雪です。宜しくお願い致します」

 「私は陸奥(・・)静流です。何卒宜しくお願いいたします」

 「野郎二人は飛ばして、茶髪に白髪に銀髪に黒髪美少女――ッ!!」

 「湊さんがバスト99! ウェスト58! ヒップ79! 桃さんがB89! W69! H83! 紗雪さんがB82! W66! H70! 静流さんがB90! W70! H63!」

 自己紹介を終えると、松田が歓喜し元浜がBWHを測りやがった。おい元浜、転校生に対していきなりそれはまずいだろ。教室中の女子が引いてるぞ。まぁ確かに彼女達のスタイル……特におっぱいはかなり大きいんだけどさ!

 

 「zzzzzz」

 「ん? おーい一輝、寝るなー。HRの最中だぞー」

 「zzzzzz」

 「……単位落としても知らないぞ~?」

 「zzzzzz」

 先生に声をかけられても微動だにしない。凄い集中力だなアイツ。

 

 「……♪ ねぇ速水。アレ貸して」

 「ほいほいっと」

 桃さんが眼元まで髪を伸ばした男子、速水に声をかける。速水はバックの中に手を入れ取り出したのはボールペンだ。教室中の視線が桃さんに集まる中、彼女は笑ってボールペンを受け取る。

 桃さんは速水から手渡されたボールペンを手元でクルクルと器用に回しながら、再び一輝の方を見る。その笑顔は悪戯っぽく光り、何かを企んでいることは明らかだった。

 

 「かーずき。起きないならコレ投げちゃうよー♬」

 「zzzzzz」

 一輝は全く反応を示さず熟睡を続行中。教室中が固唾を飲んで見守る中、桃さんは満面の笑みで勢いよくボールペンを構えた。

 

 「起きないか――……それならえいっ!」

 ビュッ!!

 桃さんが投げたボールペンは風を切り裂きながら一直線に一輝へと迫る! 刺さるぞ! 思わず身を乗り出した次の瞬間。

 ビシィッ!!

 

 「「「「「「「「「「おお──」」」」」」」」」」

 針のような殺気を帯びたボールペンは刺さる直前で一輝の左手が素早く動き、人差し指と中指でボールペンを挟み込んだのだ。まるで某世紀末の主人公みたいに弾丸を捕らえるような正確なタイミングに教室中が息を飲む。

 

 「ん?」

 一拍遅れて一輝がゆっくりと顔を上げた。まだ半分夢の中にいるような寝ぼけ眼でボケーっと転校生達を眺める。

 

 「おお! 反射神経は衰えていないようね一輝」

 桃さんが嬉しそうに声をかける。だけど一輝は返答しないでただ桃さん達をジーっと凝視したまま動かない。しばらくして。

 

 「……………………! ……え? た、桃?」

 一輝の眼がぱっちりと開かれ、信じられないものを眼にしたかのように呆然とする。おお……普段から冷静沈着で感情の起伏があまり見えない一輝だけど、今は明らかな混乱と驚きが顔に現れている。

 

 「……俺達もいるんだがな一輝」

 竜崎が肩をすくめ苦笑いを浮かべる。その低い声にはどこか懐かしさも混じっている。

 

 「こっちも見てくれよなぁ?」

 速水は口元に薄い笑みを浮かべながらクツクツと笑う。胡散臭さ全開だが本人は至って楽しんでいる様子だ。

 

 「ひ、久しぶり……一輝君……」

 結奈さんは俯き加減に頬を赤らめながら小さな声で言う。茶髪から覗く耳まで紅くなっているあたり照れ屋なのだろう。

 

 「私達の事をもう忘れてしまいましたか?」

 紗雪さんは上品な仕草でバックから扇子を取り出しながら優雅に微笑む。その雰囲気はまさにまさにお嬢様だ。

 

 「うふふ。久しぶりの一輝の寝ぼけ眼を見れましたね」

 静流さんは冷静かつ涼しげな笑みを浮かべていたが瞳の奥には好奇心の火が灯っているようだった。桜色の唇が弧を描く度になぜか妖艶さすら感じる。

 

 「何だ一輝。転校生達と顔見知りか?」

 担任が不思議そうに尋ねる。

 

 「え、ええまあ……駒王学園(こっち)に転校してくる前の学園で一緒にいました」

 

 「そうか。それなら一輝、この学園での校則やら施設の案内してやれ」

 「え? 俺がですか?」

 「顔見知りなら話も通りやすいだろ?  それじゃ転校生達は空いてる席に座ってくれ。じゃあそういうことで朝のホームルーム終わり〜。頼んだぞ一輝~」

 担任はそれだけ伝え手をひらひらと振り教室を出ていく。いやそれで良いんですか? 不満そうに眉根を寄せると一輝は小さく呟いた。

 

 「いや理不尽だろ」

 

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