……約一年と一ヶ月ぶりです、遅れまして本当に申し訳ない
この世界に生まれてから数年ほど経った頃━━まだ姉さんが
「何を読んでいる?」
当時、姉さんが拠点として使っていたビルで拾ったコミックを読んでいると、異能を集めに外出していた姉さんが部屋へ入ってきた。
「コミックだよ。たまたま落ちていたものを拾ったんだ」
「字が読めるのか?」
「……少し勉強したんだ。長い文章はまだ読めないけど」
「……そうか」
どこか不機嫌そうに目を細め、さも当然のように俺の隣へ腰を下ろす。
「……姉さんも読みたいの?」
「お前が、僕の知らないものを知ろうとしているのが気に入らないだけだ」
頬と頬が触れるほどに密着し、早く読めと言わんばかりに、じろりとした目で俺を見てくる。
「……そんなにくっつく必要はないんじゃないかな」
「うるさい。早く読め」
コメディ、SF、ホラー、ミステリーなど、数年にわたって、姉さんは俺と一緒に様々なコミックを読んできた。
だが、どのジャンルのコミックを読んでも、姉さんのその能面のような無表情が崩れることはなかった。
……ただ一つ、『ヒーローもの』を除いて。
「……この話は、随分楽しそうに読むんだな」
「……そう見えてた?」
俺が楽しそうにコミックを読んでいるのが気に食わないのか、その顔には明らかな不快感が滲み出ていた。
「この主人公、気に食わないな」
「そう? 俺は好きだけど」
「……なぜ、そう思う?」
しまった、と心の中で呟く。
普段の俺は、姉さんの機嫌を損ねないように自分の意見をあまり口にしない。だが、隣で一緒に漫画を読んでいるという状況のせいか、それを失念してしまっていた。
(……まずい。どうする……相手は
どう言い訳するか、どう機嫌を損ねないか。そんなことを悶々と考えていると、ふと前世で見た『ヒロアカ』を思い出す。
(……だからといって、
「……
「……僕には、理解できそうにないな」
「きっとできるよ…………だって」
「姉さんの力は、世界で一番優しい力なんだから」
▽
「……ッ!!!」
目を覚ますと、いつも見ていた真っ黒なコンクリートの天井とは違い、白い天井が目に映った。
「ここは……?」
「私たちの拠点だ」
奥から、橙色のショートカットを揺らしながら、
「君、あそこを出てすぐに気を失ったんだよ。栄養失調でね」
「……そう、だったんですか」
俺のベッドの横に座る、青い長髪をポニーテールにまとめた女性──先ほど
栄養失調……まあ、そりゃそうだよな。最近あんまり飯食ってなかったし、無理もない。
「改めて自己紹介を。私は
「私はブルース・リー、自警団の副リーダーだ」
……うーん、何度聞いても現実が受け入れきれない。
「大丈夫です、ちゃんと覚えてます……その、単刀直入に聞くんですけど、お二人に兄弟とかはいますか?」
「?……いや、いないが」
……名前が明らかに違うから、もしかしたらと思ったんだけどな。
「そうですか……いや、何でもないです」
「?」
まあ、あのAFOがTSしてるんだ。他にもTSしてるキャラがいてもおかしくないか……下手したら、もっと女性になってるキャラがいるかも……あー、頭痛くなってきた。
「……そういう君は、あの場所に何年ほど閉じ込められていたんだ?」
「え?……えーと……多分、五年は」
「…………そうか」
閉じ込められたのは、姉さんが
まあ、余裕でそれくらいは経っているだろう。
「……駆動、陽動隊からの連絡だ」
「どうだったと?」
(陽動隊?)
ブルースが手に持つ通信端末に視線を落とすと、駆動はそれを一瞥し、二人して俺から少し離れて話し始める。
「負傷者は数名だが、何とか逃げ切ったそうだ。第四基地で合流したいとのこと」
「奴は今、どこにいる?」
「不明。ただし、最終確認地点は横浜の神野だ。奴のアジトまでは距離がある」
「与一がいなくなったことに気付くまで、ある程度の余裕はあるわけか」
「合流を急ぐべきだと思うが……彼の体では、長距離移動は望ましくないな」
なるほど。
そういえば、姉さんが出ていく前に、こんなことを言っていた。
『僕たちを否定しようとする羽虫がいるらしくてね。悪いけれど与一、少し待っていてくれるかい?』
“羽虫”とは、つまり彼女たちのことだったのだろう。
「奴はまだ、私たちの拠点を突き止められていない……だが、ここに留まりすぎれば、いずれ居場所も割れる」
「……だから彼を無理に連れて行くと? 私としては了承しかねるな、彼の身体は
……それは、まあそうだな。実際今も少し苦しいし
「彼は奴に対する
「……しかし」
確かに、原作よりも個性を複数与えられたとはいえ、俺の身体が常人より脆弱であることに変わりはない。
このまま逃げても、彼女たちの足を引っ張るだけだろう。
「何より、まだ因子の検査が終わっていない。少なくとも明後日までは、ここに留まる必要がある」
「……その頃には、とっくに奴が与一の捜索を始めているだろう」
「検査できる環境があるのは、この拠点を除けば静岡だけだぞ。ここから静岡まで七日はかかる、流石に遠すぎだ」
だが、今の俺には
「その話、ちょっと待ってもらってもいいですか?」
俺は、数年にわたって溜めに溜めた『力』を5%ほどで解放する。
「!バイタルが安定していく……!」
「それは……異能か!?」
『OFA』は、“力をストックする個性”と、与一が元々持っていた“個性を与える個性”が混じり合って生まれた能力だ。
力を蓄え、次の世代へ託すごとに力がストックされて行き、やがてはオールマイトのような超パワーへと至る。
今の俺じゃあ、ほんの小さな力しかストックすることは出来ない……だが
体力だって立派な
そう思いついてから、姉さんの目を盗み、毎日のように力を溜め込む訓練を続けてきた。出来る限り運動を控え、
「まさか、それは……」
「……俺が姉さんから与えられた異能の一つです。おそらく一週間程度なら、飲まず食わずでも移動できます」
「……なるほど、体力を溜め込んでいるのか」
さすが研究者と言うべきか。
俺が細かく説明するまでもなく、ブルースは即座に理解したようだった。
「……なら、長距離移動でも問題はないな」
「となると……静岡か」
ブルースは片手に持った通信端末を素早く操作すると、俺の方へと向き合った。
「いいのか?恐らくだが、とても快適とは言えない旅路になるぞ」
ここが何処かは分からないが、まあ数日間は移動しっぱなしの生活になるだろうしな……けど
「いいんです、体力は持ちますから……それに、見てみたいんです。俺が見たことのない、この世界を」
何せこの時代はヒロアカじゃあんまり描写されてなかったからな、ファンとしてはめちゃくちゃ気になる。ヒーローが生まれる前の世界とかすごい見てみたいし
「……なら、私たちがとやかく言うことでもないな」
というか、そもそもここってどこなんだろうか
「あの、ここって何処なんですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったか」
「徳島県だ」
……徳島
「因みに、移動手段って」
「徒歩だな、車を使うと途中の補給で足がついてしまう」
「AFOのアジトから逃げる時は使ったが……アレはヤツが今いないから出来たことだしな」
…………なるほどね
「ええと、徳島から静岡って……徒歩でどのくらいかかりますかね」
「甘めに見積もって七日ってとこか」
「…………」
…………やっぱ、留まるべきだったかもしれない
……はい、遅筆の阿呆です。
待ってくれていた方、本当に申し訳ない。
お恥ずかしながら次話がまだ書けていないので次話も未定です。学校も忙しくなって来たんでいつになるか……
とはいえ、なんとか続けていけるよう頑張りますので待って頂けると幸いです……
多分一年は待たせません!!何卒!何卒お願いします!