界王神様の瞬間移動で俺達はあっという間に神様の神殿へと帰ってきた。宮殿の前には見慣れた面々が、仲間達が既に揃っている。仲間達は俺達が帰ってきたことに気がつくとぞろぞろとこちらに駆け寄ってきた。
「お父さん! コルドさん! 無事だったんですね!」
「悟空さ! よく帰ってきてくれただ…!」
悟空に駆け寄る悟飯とチチ、2人に続いて悟天も悟空に飛びついた。全員元気そうでなによりだ。実際はブウの攻撃によって地球ごと皆死んでしまっているわけだが、ポルンガへの願いによって皆生き返っている。
勿論、その中にはブウによる地球破壊以前に死んでしまった彼もいる。そのことを伝えようとトランクスが俺に話しかけてきた。
「コルドおじさん! 見て見て、パパが生き返ったんだ!」
「おお、それはよかったなトランクス。きっとベジータもお前とまた会えて喜んでるに違いない」
「ふんっ、余計なことを言うんじゃない」
相変わらずの仏頂面のベジータと元気にはしゃぐトランクス。この親子も無事に再会することができた。ベジータが死んでしまった時はどうなるかと思ったことだが、またこうして現世で会うことができて本当によかった。
「へへっ、うん! おじさんがナメック星ってところのドラゴンボールで生き返らしてくれたんでしょ? ありがとう!」
「なに、礼を言う必要はない。ブウを倒すにはお前達の力が必要だったのだ。元気玉を作ることに協力してくれたことを感謝するぞ」
何はともあれこれで地球も皆も全員元通りだ。自然と笑みが浮かんでくる。せっかくなのでこの笑みをベジータにもお裾分けだ。
「そういえば…、ワシは人々を生き返らせる際に極悪人を除いて、とポルンガに頼むように指示をしていてな。この願いで生き返ったということは…、ベジータよ、どうやらお前は悪人ではないと認められたらしいな。よかったではないか」
「…ふん、大きなお世話だ」
俺の一言でベジータはそっぽを向いてしまった。そんなベジータにブルマがしな垂れかかった。
「あら~よかったじゃないベジータ。あんた、昔はあんなに悪だったのにすっかり丸くなっちゃって…、いったい誰のおかげかしら~?」
「なっ…、離れろブルマ! そ、そんなに引っ付くんじゃない!」
「あ、ママずるい! 僕も混ぜて!」
「トランクス、お前まで…よせと言ってるだろう!」
わちゃわちゃと騒ぐベジータ一家。思っていたより騒がしくなってしまったがこれはこれでいいだろう。仲良きことは美しきかなだ。
ベジータ一家を微笑ましく見守っていると今度はピッコロが話しかけてきた。
「コルド、よくやってくれた。お前のおかげで地球は、いや、全宇宙は守られた」
「よせピッコロ、お前まで。…それに完全に守りきれたというわけでもあるまい」
結果良ければ全て良し、といいたいところだが、やはり一度地球を破壊されてしまったのは心残りだ。ここにいる殆どの人が一度死んでしまったことを考えると少し複雑な気分である。
「気にするな、ここにいる奴らがそんなことを気にすると思うか?」
ピッコロに促された方に視線を向けるとクリリンと悟空が会話していた。
「そういやクリリン、おめぇ今回で何回死んだんだ?」
「これで3回目だよ。でも今回は閻魔様に裁かれる前に生き返ったからな。実質ノーカンみたいなもんさ」
「ははっ! なんだよそれ!」
確かに地球が破壊された後すぐさまポルンガによって皆生き返った。…とはいえ笑っていいかどうか微妙なラインの冗談である。まぁ当人が笑い飛ばしているのに自分が思い悩んでも仕方ないか。
無理やり自分を納得させて辺りを見渡すと再会を喜ぶ親子が他にもいた。
「ビーデル! 愛しき我が娘よ、お前も無事だったんだな!」
「パパ! よかった…、死んだんじゃないかって心配してたのよ」
「パパがそう簡単に死ぬわけないじゃないか! なんたって私は世界チャンピオンだからな! それよりも…こちらは今日から一緒に住むことになったブウさんだ。仲良くするんだぞ」
「「ま、魔人ブウ!?」」
物陰からひょっこりと顔を出した魔人ブウの姿に仲間達が臨戦態勢を取る。大慌てで悟空と俺が割って入り事情を説明した。皆思うところがあるようだがひとまずは納得してくれたみたいだ。落ち着きを取り戻した場の空気に胸を撫で下ろしているとベジータが俺に話しかけてきた。
「おい、コルド。それよりどうやってあのブウを倒した? 元気玉で倒せる相手ではなかっただろう」
家族との団欒を差し置いて気にすることでもないだろうに、ベジータはどうやって俺達がブウを倒したのかが気になるみたいだ。すると悟空が会話に入ってきた。
「驚くぜベジータ、コルドがあっという間に倒しちまいやがったんだ。いや~あの時のコルド、とんでもねぇ強さだったな~」
「な、なんだと!? いったいどんな手を…、まさかまだ変身を隠し持ってるなんて言わないだろうな! 答えろ、コルド!」
「お、落ち着けベジータ。それに言い方が悪いぞ孫悟空!」
重要な部分を省いた悟空の説明のせいでベジータに詰め寄られる。明らかに誤解を招く言い方だ。おそらくわざと変な言い方をして面白がっているのだろう。
だが界王神界で何があったかを説明する前に、俺にはまだやることが残っている。詰め寄るベジータを落ち着かせて場を仕切り直す。
「皆、積もる話もあるだろうがまだやることがあるのだ。まずドラゴンボールを集める必要がある。皆も協力してくれ」
「ドラゴンボールを?」
俺の発言に首を傾げる一同。気になるのは分かるが話は後だ。ともかく俺と仲間達はドラゴンボールを集めるために神殿を後にした。
カプセルコーポレーションの中庭、俺の眼前には7つのドラゴンボールが並べられている。ドラゴンボール集めは皆の協力もあってすぐに終わった。
『さぁ願いを言え、どんな願いも三つ叶えてやろう』
既に神龍は呼び出され、いつでも願いを叶える準備はできている。
「助かったぞお前達、ワシの我が儘に付き合ってくれて感謝するぞ」
「それは構わんが…。しかしコルド、ポルンガによってこの地球も人々も全て元通りに修復された。いったいお前は何を願おうとしているのだ」
俺が何を願うつもりなのか、それを知らないピッコロが俺に問いかけてくる。皆としてはこれ以上願うことはないかもしれないが、事情を知る俺と、そしてタピオンは別だ。
始めて見る神龍に驚愕しているタピオンに俺は話しかける。
「タピオンよ、あの時話していた約束、今こそ果たすとしよう」
「ま、まさか…コルド、君は…!」
「神龍よ! この男、タピオンの弟であるミノシアを蘇らしてくれ!」
『容易いことだ』
神龍の目が光り、願いはすぐに叶えられた。俺達の前に一人の少年が姿を現した。少年はタピオンと瓜二つの容姿をしている。おそらく、この少年が彼の弟であるミノシアで間違いはないだろう。
「あ、あれ? ここは…」
「ミ、ミノシア…、本当に、本当にお前なのか…?」
「あれ、お兄ちゃん?」
「ミノシア!」
蘇ったミノシアを抱き寄せるタピオン。当のミノシア本人は状況がよく分かっていない様子だが、タピオンにされるがままにされていた。今は2人きりにしておくべきだろう。
「なるほどな、ドラゴンボールを集めたのはこれが理由だったか」
「ああ、流石に千年前に戻してやることはできんがこれくらいの奇跡はあって然るべきだろう」
これでようやく全てが解決した。地球を襲う脅威は全て取り除かれ、勇者兄弟の再会は果たされた。つまり文句無しのハッピーエンドだ。俺は兄弟の再会に水を差さないように、この場を後にした。
余談だが、残っていた願いでちゃっかりとこの場についてきていた界王神様の合体を解いておいた。本人が望んでいたということもあり、ポタラ合体はすんなりと解除された。何はともあれこれで本当に全て元通りである。
翌日、俺達は改めてカプセルコーポレーションに集まっていた。その理由はタピオン兄弟の見送りである。
「本当に行くのか? お前達さえよければこの星に残ってもよいのだぞ?」
「ありがとう、だが私は平和になった故郷を、この時代のコナッツ星を是非この目で見てみたいんだ」
タピオン達兄弟はコナッツ星に帰ることを選んだ。名残惜しい気持ちはあるが、本人達がそれを望むのであれば止めるのはよくないだろう。
ちなみにコナッツ星の現状については界王様を通じて確認済みだ。直接南の界王に聞いてきてくれたらしく、間違いなく星も、そこに住む人々も千年前から文化は続いているらしい。場所も分かったのでブルマの用意した宇宙船でならそう時間はかからずに向かうことができるそうだ。
「そうか、なら止めはせん。お前達の守ったコナッツ星、しかとその目で確認してくるがいい」
「ああ。…本当のことを言うと、少し不安だ。千年の時の流れで故郷がどのような変化を遂げているのか、もしかしたら俺の知る景色が何一つ残ってないのではと考えると、恐怖すらも感じる」
顔を伏せるタピオン、しかしすぐに顔を上げる。その表情にははっきりとした決意が見て取れた。
「だが弟と、ミノシアと一緒なら例え何が待っていようが、2人ならきっと乗り越えることができる。そう思えるんだ。コルド、ミノシアを蘇らしてくれたこと、本当にありがとう」
「それは違う、一つ勘違いしているぞ、タピオンよ」
「え?」
疑問の表情を浮かべるタピオンに俺は言葉を続ける。
「このワシを忘れてもらっては困るな。お前達は2人じゃない、困ったことがあればいつでも地球に来るがいい。このコルド大王があっという間に解決してやるさ」
偉そうなことを言ったが実際に俺に解決できることといえば主に荒事だ。悪さをしている奴を懲らしめるくらいのことしかできないが、もしそれ以外の相談をされたら俺も仲間達に相談することにする。持ちつ持たれつでやっていきたいものだ。
「コルド…、ありがとう! 千年間に及ぶ封印がこの時代に解かれたことは本当に幸運だった。君というかけがえのない友を得ることができたのだから。…そうだ、君にこれを」
タピオンが差し出してきたのは勇者の笛だ。
「ま、待て待て、これはお前達にとって大切なモノだろう。受け取ることはできん」
「幻魔人は倒された。もう俺達には必要のないものだ。コルド、君に持っておいて欲しい」
「しかしだな…」
「この笛には邪悪な存在を退ける力があると言われている。きっといつか君を守ってくれるはずだ」
「むぅ…」
勇者の笛、確かに幻魔人が倒された以上、彼らに必要のないものかもしれないがそう易々と受け取るのは気が引ける。だがタピオンの様子を見るに彼も引き下がる気はなさそうだ。
「…分かった、勇者の笛、確かに受け取った。感謝するぞ、タピオン」
「そう畏まらないでくれ、お守り程度に思ってくれたらいいさ」
流石にそう軽く扱える気にはならない。これは彼にとって思い出の品でもあるはずだ。渡されたからには丁重に扱わなければならない。
「そろそろ出発しようと思う。コルド、そして皆さん、本当にお世話になりました。宇宙船まで用意してもらって…、この御恩は一生忘れません」
「気にしないで、どうせ余るほどあるんだから。それよりもまた遊びに来てね、トランクスも君の事、気に入ったみたいだから」
「はい!」
深々と頭を下げて宇宙船に乗り込むタピオンとミノシア。これでしばらくはお別れだ。宇宙船の起動音にかき消されないように大声で別れを告げる。
「タピオン! 用がなくともいつでも地球に来い! 歓迎するぞ!」
「ああ! コルド、君に会えて本当によかった! また会おう!」
タピオン兄弟を乗せた宇宙船は空へと消えていき、瞬く間に見えなくなった。友との別れに寂しい気持ちはあるが、今生の別れというわけではない。きっとまた会うことができるだろう。
「あーあ、勇者のお兄ちゃん、行っちゃった。もっと話したかったなー」
「ね、早くまた会いたいなー」
特に悟天とトランクスはタピオン達のことを気にいっていた。やはり子供達にとって勇者という響きは惹かれるものがあるのだろう。
「悟天、トランクス、何もあいつらが地球に来るのを待つ必要はあるまい。こっちからコナッツ星に遊びに行けばいいではないか」
「そうだ、その手があった! ねぇママ、僕にも宇宙船用意してよ!」
ブルマに宇宙船を強請るトランクス。その時は是非俺もご一緒さしてもらうとしよう。…それにしても宇宙船を母親に強請る子供とは、冷静に見ればとんでもない親子である。
世界一の富豪親子のやり取りを戦慄してみていると悟天が俺に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、おじさん! さっきの笛、僕にもよく見せて!」
悟天は俺が受け取った勇者の笛に興味津々らしい。しかしこれがただの笛ならばともかく、友から託された笛となればそう易々と見せるわけにはいかない。
「クックック、これはワシがタピオンから託された勇者の証、そう簡単に見せるわけにはいかんな」
「えー、ケチ―! じゃあ吹いてみてよ!」
「よーし、いいだろう。勇者の旋律、とくと耳に刻み込むがいい!」
期待の込められた皆の視線が俺に集まる。調子に乗っておいてなんだが、俺に笛の演奏経験なんて一切ないもので、当然ながら奏でられたのはメロディーでもなんでもない間抜けな音だった。
「「あははははははははは!」」
とても勇者の旋律と呼べない俺の演奏に皆が笑う。
「はははっ、なんだよコルド。おめぇ全然上手くねぇじゃねぇか!」
「わ、笑うのはコルドさんに失礼ですよ。勇者の旋律…ぷぷっ」
「くっ、笑うんじゃない! この笛はワシには小さすぎるのだ!」
演奏経験もそうだがサイズが俺に合っていない。常人と比べて二回りほど大きい俺の体からすれば同じ笛でもオカリナというよりもホイッスル感覚だ。これは演奏をマスターできるようになるまで時間がかかりそうだ。なんとか次にタピオン達と会うまでにはマスターしておきたいものだ。
「くぅ、馬鹿にしおって…。悟飯! 前みたいに修行をつけてやる、ついて来い!」
それはそれとして笑われっぱなしも悔しいので悟飯を相手に憂さ晴らし…ではなく組手を申し込む。決して八つ当たりではない。だが、この時の俺は重要なことを忘れていた。
「お、いいですね! 僕も老界王神様のおかげでかなりパワーアップしました。今ならコルドさんにだって負けませんよ!」
「(やっべ、悟飯の潜在能力が解放されてることを忘れてた…!)」
そういえば悟飯はとっくに老界王神様の儀式によって強化されている。今の悟飯は所謂アルティメット悟飯だ。これでは憂さ晴らしどころか俺がボコボコにされてしまう。
目論見が外れ、内心冷や汗をかいていると悟空が待ったをかけた。
「あ、待てよ! 強くなった悟飯とはオラもずっと戦いたかったんだ! 抜け駆けはずりぃぞ!」
「ええ!? ま、まぁ僕は構いませんが…」
なんとか悟飯の矛先が悟空に向けられたのでほっとしていると今度はベジータが割り込んできた。
「ならコルドの相手は俺がしようか。あのブウを倒した貴様の秘密、この手で暴いてやるぞ!」
「待て待て、別に暴かなくとも説明してやるって…話を聞かんか!?」
俺の話を聞こうともせずに襲い掛かってくるベジータ。突然巻き起こる戦いにあてられたのか、悟天とトランクスまでもが参戦しようとしている。
「悟天、俺達も負けてられねぇぞ!」
「うん! フュージョンだね、トランクス君!」
「お、おい! お前達、何を考えて、よせ!?」
ピッコロの制止を無視して合体する悟天とトランクス。2人はゴテンクスに合体するや否やこちらに飛び込んできた。
「ゴテンクス参上! 俺も混ぜてー!」
「こ、こら! お前らまで参加したらもう収拾が…」
「逃がさんぞ、コルド!」
俺を追いかけてくるベジータとゴテンクス。しんみりとした別れの空気はどこへやら、もう滅茶苦茶である。
「へへっ、強くなったな悟飯! やっぱおめぇの潜在能力は大したもんだ!」
「まだまだこれからですよ、お父さん!」
「オラだって負けねぇぞ!」
珍しく悟飯も乗り気のため、この騒ぎを止められる人間が誰もいない。入り乱れて戦う俺達、それを見る面々は呆れ顔だ。
「ちょっと! あんたらウチの庭を滅茶苦茶にするつもり!?」
「無駄だ、こうなったこいつらはもう誰にも止められん。大人しく受け入れるんだな」
「はぁ…、本当に仕方ないわね、こいつらは…」
この流れの原因を作った俺が言うのもなんだが、そんなこと言わずになんとか止めて欲しい。そんな俺の願いも露知らず、戦士達は更にヒートアップしていく。そんな皆の姿に俺もとうとう諦めがついた。
「くっ、…いいだろう。このコルド大王の力、見せつけてくれるわ! 貴様ら、まとめてかかってくるがいい!」
確かにしんみりした空気は俺達に似合わない。こうやって頭を空っぽにして戦ってる方がお似合いだ。俺は腹を括って目の前の戦いに飛び込んでいった。
そんなハチャメチャな光景を前に、俺は確かに日常が帰ってきたことを実感したのであった。
これにてブウ編は完結となります。ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
これ以降の話もいずれ書きたいなと考えておりますが今のところ目途が立っておらずしばらく時間がかかりそうです。また更新再開の際はお付き合いいただければ幸いです。