テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

ご無沙汰しておりました皆さま。
そろそろ忘れらていそうな気がしますが、出来上がったので投稿させて頂こうかと思います!


『stage14:このワニたちにも祝福(物理)を!』

 

 

 

「で、味は?」

 

「うーん、薄味の割にはネチャっとしていて、正直マズかったかな」

 

「聞いたの俺だけど答えるのかよ」

 

 魔王軍幹部のデュラハンを撃退(?)した次の日、俺たちはいつものようにギルドの酒場に集まっていた。

 そこで横に座るカズマから出た言葉がそれだった。

 俺も含め、カズマとアクア先輩にめぐみんダクネスのいつメンでそれぞれがいつもより豪華な昼食をつつきながらの談笑な訳だが、食べる手は誰も止めていないのに目と耳はしっかりこちらへと向いていた。

 

 昨日、俺たちはデュラハンを撃退した————ということになった。

 撃退というか勝手に帰った感じだったけど、それでもギルド的には街の危機を救ったということで評価してくれた。ルナさん(北半球がすごい人)がうまく動いてくれたというのもあるだろうけど。

 ついでに言えば、何故か集まっていた冒険者たちからも称賛を受け、そのまま流れで昨日は夜まで宴会になってしまった。いやもう騒ぎたいだけでしょ君ら。そういうの好きだけども!

 そして夜が明けるまで飲んで騒いで、日の出と共にギルドでそのまま酔いつぶれて寝て、そしてもそもそとそれぞれが頭を抱えながら起き出したのが今だ。俺? 俺は酔うことがまず無いのでずっと食べてました。

 気づけばもう昼過ぎな訳だけども、当然のごとく今日は休日となるだろう。こんな状態でクエストなんて危ないし、そもそもモンスターはまだ居ない。

 それもあって朝御飯(昼御飯)を食べながらのんびり話しているわけだが、カズマが今になって昨日のことを聞いてきたわけだ。

 

「というかそのスキル強すぎないか? チートだろチート」

 

「じゃあTSする?」

 

「しませんー」

 

「ドけち」

 

「誰がドけちだ! ちょくちょく俺の男道を終わらせようとするな!!」

 

「カズマさんが男道、プフッ」

 

「笑いやがったなこの駄女神が」

 

「あー! また私のこと駄女神って言ったー!!」

 

 気付けばまたカズマとアクア先輩が取っ組み合いになっていたので皆で落ち着かせる。

 周りからはまたかという目で見られるが、ギルド職員さん達の目が怖いので両手だけ獣にして二人を掴もうとしたら二人が慌てて席に戻った。

 いや打ち上げないから。天井の弁償代結構高いんだからね、アレやると。

 

 まあ静かになったのなら良いかと俺も席へ着くと、ダクネスとめぐみんが何やら思案顔でこちらを見ていた。

 

「どったの?」

 

「いやなに、その時折出てくるTS?というのが何かは分からないが、実際そのスキルはかなり強力だと私も思う」

 

「そうですよ。どこまでの幅で“食べる”ということが出来るのかわかりませんが、本来であれば高位のプリーストでもなければ解呪できないと思うのです」

 

 めぐみんの言葉にアクアぱいせんがすかさず手を上げるが、皆でスルーしておく。いやだってまた話がそれるし。

 

 さておき、実際このスキルは強力だろう。

 今の俺の身体はあくまで分体というのもあって、”機能”ではなく、”能力”レベルまでランクダウンしている。

 どれぐらい下がっているかというと、魂や存在そのものを食べるなんてのは流石に出来なくなっている。元々が記録(・・)を主な目的としているため、本来は取り込むための制限なんてものはないわけだ。使いこなせているかどうかはさておき。

 しかしそれも、本体と限りなく近いとはいえあくまでも分体であるために自分への攻撃(・・・・・・)等を取り込んで覚えたり、まるごと食べても栄養程度にしかならない。

 うんまあ十分強力だけど、前みたいにその記録を元に強化・進化ということができない。つまり耐性が出来ない。

 俺自身で工夫することはできるけど、あくまで記録端末みたいなものでしかないということだ。色んな力の形を知るのが今の俺の目的だし、だからこその研修だ。

 

 だけどその辺りを説明するわけにはいかないので、どうしたものか。

 

「しかも取り込めたスキルはそのまま覚えるんだろ? スキルを増やし放題じゃん」

 

 唇を尖らせながらそう言うカズマを見て、思わず苦笑いする。

 でも場合によってはかなり痛いんだよなぁ。

 ギルガメッシュのバビロンを覚える時もどれぐらい痛かったことか。

 俺が不死身じゃなかったら覚えるどころじゃ―――ああそうか、それをそのまま言えば良いのか。

 

「カズマ、例えばカズマがこのスキルを持っていたとするだろう?」

 

「ふむふむ」

 

「それでカズマはめぐみんの爆裂魔法を覚えたくなったとする」

 

「まあめぐみんを見ているとかなり悩むが、例えだしな」

 

 その言葉にめぐみんが杖を手に取り立ち上がる。

 

「今爆裂魔法を使えない子扱いしませんでした?」

 

「「気のせい気のせい」」

 

「まあ、良いでしょう」

 

 釈然としないといった表情だが、めぐみんが再び着席する。

 それを見て俺とカズマはホッとしつつも話を続ける。

 

「で、だ。カズマが爆裂魔法を覚えるためには、本来なら膨大なSPが必要だから、"喰らう”スキルで覚えようとするわけだ。じゃあどうする必要がある?」

 

「そりゃ爆裂魔法を喰らわないとだよな。ってことは、げ」

 

「ああなるほど」

 

 俺の問いから自分で答えに至ったカズマは顔を顰め、めぐみんは納得いったと頷く。

 

 そもそもこの世界では、スキルを得るためにはモンスターを倒してスキルポイント(SP)を獲得する必要がある。

 それもただモンスターを倒すのではなく、自分よりも格上でなければ得られる物などたかが知れている。

 まあ、とどめを刺しさえすればいいので、俗に言うパワーレベリングが出来たりなんていう裏技があったりもするようだが、それはさておこう。

 ともかく、格上との戦いにより得たSPによって人々はスキルを獲得する権利を得る。

 ただし気を付けないと行けないのが、冒険者登録などをして、自身の方向性をある程度決めておかなければならない。

 それが職業だ。

 カズマであれば冒険者、アクア先輩がアークプリースト、めぐみんがアークウィザード、ダクネスがクルセイダー、ついでに言えば俺がアルターエゴ。

 必ずしも冒険者登録をしなければいけない訳ではないが、職業を決めるというのはこの世界ではとてつもなく重要なことである。

 その理由というのが、この職業というのがこの世界に於ける“祝福”の形だからだ。

 いくつかの世界を回って分かったことだが、祝福の形にも色々ある。

 直接的に授けるもの、物に宿っているもの、条件を満たすことで授かるもの、今回でいうところの職業というのが最後の条件を満たすことで得られる祝福ということになる。

 じゃあ結局、職業を決めることの何が祝福足り得るのかというと、この世界の職業は元の世界でいうところの仕事内容的なものではなく、魂の在り方でもあるのだ。

 魂の在り方、つまりはその人の方向性だ。

 方向性を決めることで祝福そのものをその人に適した形で付与するわけだな。

 そしてそうすることで祝福(加護)の純度が増す。馴染んでいけば、上級職へとなっていくわけだ。

 

 話がずれたが、何事にもうまい話は無いということだ。

 

 この世界にあてはめて考えれば、俺の“喰らう”というスキルは一見スキルポイントを使わずに技を獲得できる使い勝手の良いものに見える。

 ところがどっこい、多分に漏れずデメリットが存在する。

 それはいつもの如く、実際に“喰らう”必要があるという事。

 スティールのような非殺傷なものならともかく、爆裂魔法を覚えるために爆裂魔法を受けてしまえば消し炭になるのは当然だ。

 その他の有用なスキルも、強力なほどSPという問題を無しに出来るにしても命を対価にするのでは本末転倒も良いところだろう。

 ちょんと当てれば良いじゃんと思うかもしれない。けど残念ながらそんな事も無く、ちゃんと覚えるためには文字通り身体で覚える(・・・・・・)しかない訳だ。

 

「良い手だと思ったのになぁ」

 

 そう言って溜息を吐くカズマの肩をポンポンと慰めるために叩く。

 

「カズマがアンデッド族にでもなれば話は別だけど、そんなことをしたら——————」

 

「アンデッド死すべし慈悲は無い!!」

 

「——————ってなっちゃうしね」

 

 俺の言葉を遮るようにアクア先輩が鋭い目で言う。

 水を司り、転生にも関わる立場にあるアクア先輩は、自然の摂理に反するアンデッドという存在を許しては置けないから仕方ない。

 俺的にはアンデッドだろうが幽霊だろうが、“そこ”に居る以上は一つの種族にしか見えない。

 とはいえ世界の中で魂を循環させる大切さというのも理解してはいる。

 それこそ水と一緒で、流れが滞ってしまった魂は淀みやすい。

 淀んだ魂がどうなるかはお察しだろう。まあ例外はいつでもある訳だけど。

 

「とりあえず言えることは、人間を辞める気はないのでそのスキルは良いや。自分からサンドバッグになる趣味もないし、どこぞのドM騎士でもなければやってられないっての」

 

「ふぎゅんっ」

 

「あれ、どったのダクネス。辛いものでも入ってた?」

 

 突如顔を赤らめながら口元を抑えるダクネスが心配になり声を掛ける。

 しかし彼女は口元を抑えたまま首を横に振るばかりだ。

 俺は首を傾げながらも話に戻る。

 

「他に教えられそうなスキルがあればいいんだけどな」

 

 そう思うが中々に手頃なものがない。

 失敗すると身体中から剣が生えたり、内蔵ぐちゃぐちゃになったり、激突したり、うんせめてカズマの身体がもう少し頑丈ならな。

 うん、そういう問題じゃないよねやっぱり。

 

 

「良いよ良いよ。あったとしてもコウジュの場合必要ポイントがバカ高いか、デメリットが大きすぎるだろうし」

 

「ぐぬ」

 

 否定出来ないから何とも釈然としない。

 そんな俺からカズマは目線をずらし、ジトっとした目をアクア先輩に向ける。

 

「せめてアクアが回復魔法を教えてくれたら助かるんだけど・・・・・・」

 

 しかしカズマが言うや、アクア先輩が吠える。

 

「嫌よ! 絶対に嫌!! 私という存在意義を奪う気でしょ!? いーやー!!!!」

 

「これだもんなぁ」

 

 まさしく取り付く島もないといった体で、腕を組みそっぽを向くアクア先輩。

 その様子を見て思い出すのは少し前の自分のことだ。

 

「・・・・・・はは、まあ俺も回復系は全然教えてもらえてないからなぁ」

 

 実は前に俺も教えて貰えないかお願いしたことがあるのだ。

 しかしその時もアクア先輩の答えはNOだった。

 勿論、おれ自身の保有スキルに回復魔法系統が無い訳ではない。

 レスタ(PSPo2魔法)や、魔法に拘らなければ回復薬もある。

 ただ、俺が使っているものとアクア先輩の回復魔法はどうやら過程が違う気がするのだ。

 何というか、足し算と引き算?

 明確な違いはよく分からないが、感覚的に違うものだと本能が囁くのだ。

 だからその辺りをスッキリさせるためにも教えてほしいのだが、あのアクア先輩が究極の大吟醸だろうと至高の衛宮飯だろうとついぞ首を縦には振ってくれなかった。

 まあすぐにでも教えて欲しいというわけでもないし何だかんだと今に至るわけだが、自らのアイデンティティティを失うとかどうとかで教えてもらえなかった。

 

「え、コウジュでも駄目なのか」

 

「そうなんよねぇ」

 

 驚くように言うカズマに苦笑で返す。 

 そんな俺へとアクア先輩が拗ねるように言う。

 

「当り前よ。ただでさえ勤務に対する姿勢が良いからって評価が上がって「もうあの子で良いんじゃない?」とか言われてたのにこれ以上私の場所を渡してなるものですか」

 

 え、そうなの? 驚愕の真実なんじゃけど。

 いやまあそりゃ最初はあんまり受け入れてもらえてないなーみたいな感覚はあったけど、その後がそんなことになっていたなんて。

 アンジュちゃんから嫌われる立ち位置だとは聞いていたから覚悟はしていたのだが、その評価が自身の行動によって覆され始めているというのは嬉しいの一言。

 

なんて一人喜んでいたのだが、カズマが凄い渋い顔をしてアクア先輩を見ているのに気付いた。

 

 そして一言。

 

「ちっさ」

 

「何よヒキニート!」

 

 カズマの放った言葉(ストレート)に一瞬で沸騰したアクア先輩が飛び掛かる。

 お湯の女神かな?

 すかさず俺とめぐみんたちは自分の分のご飯を手に持ち、離れたテーブルにつき直す。

 

「良いんですかコウジュ。カズマたちを放って置いて」

 

「暫く放って置いたら静かになるでしょ。それよりお昼ごはん」

 

「そうだな。二人には悪いが折角の温かいご飯が冷めてしまうしな」

 

 ブーメランを投げ合うような罵倒をBGMに、黙々と3人で食事を再開する。

 

「しかし残念ですね。コウジュが全部とはいかなくてもアークプリーストのスキルを手にしていたのならクエスト成功率が上がりそうだったのですが」

 

 人参のグラッセの様なものをマグマグと食べていためぐみんが、ふと思い出したようにそう言った。

 めぐみんが言いたいのは安全マージンのことだろう。

 

 討伐クエストを行う際、それが有るか無いかで成功確率は大きく変わってしまう。

 単純に生存率にも関わってくるが、何よりも、行動を起こす際に多少の無茶が効くかどうか(・・・・・・・・・)となってくる。

 当然ながらクエストはその一回だけではなく、生きて帰って、今後の為の糧とするために行うものだ。

 だから一歩踏み出せるかどうかでクエスト効率は大きく変わる。

 

 そしてそこに大きく関わってくるのがプリーストというクラス。

 回復魔法だけでなく、浄化魔法、強化魔法(バフ)など、戦闘能力はどうしても低くなるがパーティ全体の底上げが可能となるクラスだ。

 勿論回復だけなら俺も出来るが、アクア先輩のクラスはただのプリーストではなくアークプリ―スト。

 パーティメンバーの生存に関してこれほど心強いものは無いだろう。

 あと女神だし。

 

 俺も回復魔法やアイテムを持っているのはめぐみんも知っているから、彼女が言っているのは回復以外での援護だろう。

 例えば“運”を上げる魔法なんかもあるから、アクア先輩と俺でカズマの運を上げてスティールとかすれば面白いことが出来そうだ。

 他にもアークプリストが取得できるスキルは痒い所に手が届くスキルも多い。

 “花鳥風月”とかいう水をあちこちから出せるスキルだけはよく分からないが・・・・・・。

 

 めぐみんは普段厨二チックなことをよく言っているが、地頭はかなり良いみたいだしその辺りの事も踏まえて言ってくれているのだろう。

 まあ、実を言うと全く教えてくれていない訳でもない。

 一つだけ、たった一つだけだがアクア先輩から既に教えてもらっているスキルがある。

 それはアクア先輩にもメリットがあったからなのだが、有用ではあっても実戦では使い辛く、今まで披露することの無かったスキルだ。

 いやもうほんと使いどころが限られているというか、そのスキル自体はありがたいのだが、カズマに教えるというのもし辛い。

 

 暫くうーんと唸りながら考え、そう言えば丁度良いクエストが出ていたのを思い出した。 

 

「よし、一狩り行きますか」

 

「「一狩り?」」

 

 めぐみんとダクネスが息もぴったりに首を傾げる。

 それに俺はニヤリと笑みを浮かべながら頷く。

 

「一つだけアクア先輩に教えてもらったスキルがあるんだよ。実戦じゃ中々使い辛いんだけど、丁度使えそうなクエストがあったのを思い出してね」

 

「実戦では使いにくいのに、狩りですか?」

 

「ま、そこは見てからのお楽しみということで! よし、ごちそうさま!!」

 

 俺は未だ首を傾げているめぐみんにそう言い残し、席を立つ。

 目的は勿論、まだ言い合いをしている二人を鎮圧するためだ。

 

 俺が立った時点で、周りで酒を飲んでいた人たちは色々と察して静かに席を離れた。

 気づいていないのは当人たちだけだ。

 俺は両腕を獣化させ大きくさせながら、なおも近づく。

 

 そして大きくなった腕に比例して広がった影が二人に掛かった時、漸く気付いてもらえた。

 

 

 

「「う、打ち上げですか・・・・・・?」」

 

 

「んーん―――

 

 

 

 

 

 気分はミスターアンチェイン。

 ゆっくりと、優雅に、二人の頭上へと手を掲げる。

 

 

 

 

 

 ―――しーた☆」

 

 

 

 

 

 いや勿論ダメージが無いようにはしましたよ。意識は何処か逝ったけど。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ぜやぁっ!!」

 

 

 

 

 コウジュが、巨大ワニに向かってヒートエンドをかましている件について・・・・・・。

 

 

 

 

「おらぁっ!! ピュリフィケーション!!!」

 

 

 

 しかしその横では・・・・・・。

 

 

 

「ぴゅりふぃけーしょーん」

 

 

 と気の抜けた声で湖の浅瀬の中で三角座りしながら手を浸しているアクアが居る。

 

 いやいやいや何だこの状況と思うのも何度目になるやら。

 そんな二人を俺とあとの二人は離れたところから見ている。

 

 いややっぱ何だこの状況!?

 

 何故こうなったかはよく分かっている。

 俺とアクアがギルドで田植えをされた後、意識が回復したらコウジュがとあるクエストの受諾を提案してきた。

 何でも、コウジュが唯一アクアから教えてもらうことが出来たスキルというのがこのクエストに丁度良いと言うのだ。

 クエスト内容としては、水質が変わり沼のようになってしまった湖を浄化してほしいというもの。湖が汚染されたせいでブルータルアリゲーターというモンスターが住みついてしまっており、町の水源でもある湖の使用が困難となっているのだとか。

 ついでに言えば水質の浄化が出来ればモンスターは勝手に生息地を移すため討伐の必要はなく、それでいて報酬は30万エリスと高額であった。

 そして、コウジュがアクアに教えてもらたスキルというのが浄化魔法。特に水質浄化などに用いられる魔法らしい。

 

 なるほどと、確かにその時は納得した。

 

 ブルータルアリゲーターというのは事前に調べたところによると初級冒険者が戦えるような相手ではなく、依頼が湖の浄化な以上はめぐみんの爆裂魔法でまるごと吹き飛ばすわけにはいかない。

 しかしアクアとコウジュの二人がかりで浄化してしまえばそのモンスターも勝手にどこかに行くというのだから確かにお誂え向きだと思った。

 ついでに言えば、あんなだがアクアは腐っても水の女神で、身体の一部が水に浸かっているだけでもその水質は勝手に浄化されていくという。

 これは勝ち確ですわ(ゲス顔

 流石に数十分や一時間程度で広い湖全てを浄化は出来ないので、アクアに鋼鉄の檻の中で作業をして貰うという案も出したが、コウジュが前衛をするし必要ないとのことだった。

 そうして繰り出したこのクエスト、アクア自身久しぶりに女神らしい仕事と来て異様な張りきりを見せていた。

 コウジュの方も、やけに嬉しそうな笑みを浮かべながらの道中であった。

 

 斯くして始まったこのクエスト。

 メインどころの二人が湖に手を浸け、浄化し始めて1時間といったところか。一気に状況が変わった。

 

 のそりのそりと、湖面に顔を出す奴らがいた。

 ブルータルアリゲーターだ。

 10匹は軽く数えただけでも居るそいつらが、ゆっくりと様子を見ながら二人に近づいてきた。

 少し離れた場所で待機していた俺たちは、現れたそいらを注意深く警戒する。

 しかし事前にコウジュから二人で十分、むしろ近づくと危ないからと聞いていた為、行きはしなかった。

 

 そのあたりから、今の状況が始まった。

 

 水の浄化をしているアクアをそのままに、コウジュがゆらりと立ち上がって人程度軽く丸呑みにしそうなほどの巨大なワニたちへと歩き出した。

 アクアは、何かを知っているのか特に焦りもせずコウジュを見送る。「いってらっしゃーい」などと気の抜ける声援まで送ってだ。

 そうこうする内にワニたちはコウジュに肉薄しており、その大きな口がコウジュを飲みこもうと開かれ――――

 

 

「ピュリフィケーション」

 

 

 

 ―――ワニに食われたように見えたが、ドズンっと鈍い音がしたと同時にそんな声が聞こえて来た。

 

 よく見れば、口を開け、横から挟むようにコウジュへとその大口を持っていっていたワニの腹にコウジュの腕が刺さっていた。

 びくびくと、そのワニが痙攣するように震える。

 そしてそのまま、差し込んでいる腕を上へと振り上げ、ワニを空へと飛ばした。

 コウジュはそのワニを見上げながら、空になった手も含めての両手にいつかのごとく二振りの刃を呼び出した。

 ハンドガードが付いたナイフ、それを身の丈ほどの大きさにしたような二振りを逆手に持ち振るった。

 

 

「ツミキリ・ヒョウリ、タイムアルター! トリプルアクセル!!」

 

 

 

 次の瞬間、コウジュは飛んで空中のワニの下へ追いつき、腕が視認できなくなるほどの速さで刃を煌めかせた。

 バラバラになるワニ。 

 コウジュが追いついて、刹那の間にワニはサイコロ状にまで切り刻まれていた。

 

 

「龍魔法、炎熱操作」

 

 

 コウジュがガパリと口を開ける。

 すると、コウジュの口元から炎が飛び出て、切り刻まれたワニは火に包まれた。

 

 

「マジックソルト」

 

 

 オーバーキルだ。

 既に死に絶えているというのに何をしようというのか、火から出て来たワニだったものへと刃の代わりに何かを握ったらしき腕を振るった。

 

 やっとのことで重力を思い出したワニだったものは、下降を始める。

 

 コウジュは、その下へともう片方の腕を差し込み、今度は何やら大きな平たいものを呼び出した。

 

 

「完成だ」

 

 

 その手にあったのは、まごう事なきサイコロステーキであった。

 

 

「ジョーズニデキマシタ!」

 

 

 そう言うや否や、その手に在った巨大な皿を消して、次のワニへと向かった。

 その姿を、何とも言えない気持ちで見る待機組(俺達)。 

 

 

 

 うんまあ途中からやけに美味しそうな香りがしてたからね。そうだろうと思ったよ!

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、俺たちはクエストを終わらせて町へと帰ってきたところだ。

 いやぁ、満腹だし満足ですわ。

 

 え、なに? スキルを見せに行ったんじゃないのかって?

 いやいや見せたじゃん浄化魔法(ピュリフィケーション)

 間違いなく使ったよ。

 まあ、本来のアクア先輩が使ってるものとは違うという認識はあるよ? 

 でもこれ、アクア先輩の所為なんだよ。一応俺自身も望んでやったという部分はあるけどさ。

 というのも、そもそも浄化魔法(ピュリフィケーション)というのは水質浄化の魔法と思われがちだけど、水分系なら何でもいけるのだ。

 厳密に言えば、有害なものを取り除くというスキル。

 というか、アクア先輩が使った場合は力が強すぎて完全な純水、H2Oになってしまうくらいだ。その時点でスキルの本質を逸脱しているだろう。

 それは勿論アクア先輩が水を司る女神だというのもあるからだが、じゃあ俺の場合はどうなるかという話だ。

 そこで思い出すのは、俺が投影魔術を習得した時に何故か食べ物に引っ張られたという話。つまりは“食べる”という事象に結びついてしまった。

 その辺りの話をアクア先輩に話すと、彼女は凄く悪い笑みを浮かべてこう言った。

 「ねえコウジュ、生物の大半は身体の組成が水分なの。それを一発で浄化できれば、泥臭かったり雑菌が怖いものも食べられるんじゃない?」と。

 その時俺は思ったね、この人天才なんじゃないかと。

 

 そうして手に入れたのが俺の浄化魔法(ピュリフィケーション)だ。

 でも実際これの便利なこと便利なこと。

 沼地に住むワニ肉ですら、直接体液に触れることが出来さえすれば一瞬で食用のお肉どころではない、生食も出来るくらいに新鮮なお肉と化す。

 それでいえばアクア先輩が生み出す完全純水も、現代で言えばかなり有用な物なんだけどね。

 

 そんなわけで、沼地に生息するワニを一匹残らず食料として確保した。

 ワニには悪いけどね、この世は弱肉強食なんだよ。

 エンゲル係数のための犠牲となったのだ。

 

 そういえば、他のスキルも使ってみたがやっぱり料理する時に最適だね。

 切嗣の『固有時制御』は、あの場では完全に習得できなかったけど理屈は分かるから時間制御の概念を持つツミキリ・ヒョウリで補助して使った。

 といっても、俺の場合『固有時制御』というスキルそのものとあんまり相性が宜しくなくて、感覚で戦闘を行う俺にとって体感時間を遅くするというのは余計な思考が混ざってしまうために結果的に遅くなってしまう。

 けど、短い時間の間に精密な動きが必要という場面では凄く便利だ。

 例えば一瞬で解体するとか。

 御陰でワニのモツ抜き・血抜きも綺麗に一瞬で出来ました。

 

 龍魔法は炎龍からゲットしたスキルだけど、アンジュちゃんが炎熱操作として使ったからか満遍なく熱を通すみたいなこともできるようになった。

 近距離限定だけどさ。

 戦闘でいえば火を吐くより自分が到達する方が早いから、これも実質料理スキルにしか使えていない。

 あ、あくまで魔法として口から出ているように見えるけど、身体の中から出ている訳ではないから汚くは無い! これ重要!!

 

 あ、勿論だけどマジックソルトはただの調味料ね? 

 

 そんなこんなで、俺のスキル披露会&お食事会をしてきたわけだが、アクア先輩以外のカズマ、めぐみん、ダクネスは何故か疲れた顔で後ろをついてきていた。

 やっと町に到着したとはいえ、沼もとい湖からはそれほど距離が無かったのにどうしたというのか。

 待機組はワニを俺が処理しきれ無さそうな時にアクア先輩のカバーに入ってもらうために文字通り待機してもらっていたわけだが、結局俺一人で全部確保できた。

 だからそんなに疲れていないと思うのだが、はて?

 

 俺が不思議そうに見ているのに気付いたのか、カズマが遠い目をしながらぽろっと口に出した。

 

「理不尽だ」

 

「なんでさ?」

 

「なんでさって、すごいスキルいっぱい使ってたのに全部結局はワニ肉に繋がってたんですが!? 御陰で美味しいごはんを頂きましたけども! 美味しいが故に尚更釈然としない!!」

 

 そんなこと言われても、FGOで言う所のバスター三枚タイプのサーヴァントだったわけだし、クラスは変わっても本質は変わらんので許してつかぁさい。

 

「それで、あのスキルとかは俺が覚えた場合どんなデメリットがあるんだ? スキルポイントはどうせ高いんだろうけどさ」

 

 今までの流れから、有用ではあるがカズマが使うにはデメリットが多すぎるというのを予想していたらしい。

 でも実際そうなのだ。

 教えてあげたいのは山々だけど、今回のスキルもカズマが欲しいところの有用性とは遠いものだ。

 

 カズマに並んで歩きながら、指を立てて説明する。

 

「ピュリフィケーションはカズマの場合、普通の浄水魔法ってことになるだろうけど、それこそアクア先輩と一応俺も居るからスキルポイントの無駄になっちゃうだろうね。二つ目の固有時制御は簡単に言うと自分を加速させるスキルだ」

 

「何それめっちゃカッコいいじゃん」

 

「その代わり、スキルの使用終了と同時に、制御した時間と現実時間との齟齬からの揺り戻しが発生して、主に内臓が掻き回されるようなダメージを受けちゃう」

 

 俺の言葉に、胡乱な顔をするカズマ。

 

「それダクネスでもないと無理だろ」

 

「待て、私もそういうのは望む所ではない」

 

 カズマの言葉にすかさずダクネスが否定するが、固有時制御は世界の修正力が由来のダメージだからさすがのダクネスでもダメージを打ち消すのは不可能だろう。それこそダメージ覚悟でその後に超回復するか、存在的な強さを持たないと無理だろう。

 

「そうそう、クラス的にもそうだけど、ダクネスくらい鍛えてても、そう言うのとは少し違うダメージだしね」

 

「・・・・・・」

 

 何だよ、カズマのそのそうじゃないって言わんばかりの顔は。

 

「さておき次の火を吹くスキルだけど、アレは龍魔法って言って――――――」

 

「何それ詳しく!」

 

 いやうん気持ちはわかるけど今から説明するから。

 カッコいいもんね、龍魔法っていう字面がさ。

 でも残念なお知らせ。

 

「龍の因子を持ってないと駄目なんだ。だから取得するって言っても龍を食べるとか、移植するとかでもないと無理かな。勿論俺は食べたから使える訳だけど――――――」

 

「ハッ」

 

 今にも唾を吐きそうなくらいに荒んだ眼をするカズマ。

 でもだってさ、幾らどんなスキルでも取れる冒険者職って言っても、例えば人類の構造上使用できないスキルなんかも取得できない。

 これもその類いなのだ。

 

 あ、でも―――、

 

「最後の龍魔法だけなら、TSすればでk「しません!!」・・・・・・そうかい」

 

 隙あらば営業をと思ったが、すかさずカズマに否定されてしまう。

 結構お得なんだけどなぁ。

 

 ああでも、そういえば一人だけTS欲張りセットを選んだ人が居たんだよな。

 そっちは強化率が下がる分、年齢はもとのままっていうセットだったのだが、TSするだけで色々強化される上に、オプションで剣術の補正も入るというものだ。

 サーヴァント達を相手に培った技術や教えてもらったこととかが入っているから、相性が合えば結構有用なものの筈なのだ。

 それを選んだ、少年が居ることをふと思い出した。

 彼・・・・・・いや今は彼女、なのか。

 元気にしてるかねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、アクア様にコウジュ様?」

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

ポチポチ打っていたら思っていた所まではいけなかったのですが、次への前ふり出来たので満足です。
さて、最後に声を掛けてきたのは誰なんでしょうね?

それにしても、何やかやと理由はありましたが随分と遅くなってしまいました。お待ちくださっていた方には本当に申し訳ないです。
感想等でも次マダーと言ってくださる方も居たのですが、えらく時間が掛かっちゃいましたね。
また次はいつになるかは分かりませんが、書け次第またしれっと出させて頂きます。

さて、皆さま各地でコロナが流行っていたり、熱中症との危険と隣り合わせになって来たりしていますが、いかがお過ごしでしょうか? 体調等崩されておりませんか?
私は職業上コロナ関連でやらないといけないことが増えたりはしていますが、今の所は体調を崩すこと無く過ごせてはいます。
しかしまだまだ油断が出居ないご時世ですので、どうか皆さまもご自愛くださいませ。

ではでは皆さま、また次回!!



P.S.1
FGOでは現状を色んな意味で破壊するキャストリアさんが来ましたね!
待望のキャスター枠アルトリアということで、発狂なさった方もいらっしゃるのでは?
更に、この投稿の十数時間後には夏イベも開催ということで、忙しくなりそうですね!
去年は全然イベントが出来なかったので、今年こそは頑張りたいところです!!


P.S.2
来週の28日は何の日かご存知ですか?
そう、FFCC(ファイナルファンタジークリスタルクロニクル)の発売日なんです!!
私はこれを、何年も待ち望んでいました。
投稿して早々に申し訳ありませんが恐らく暫くはそっちをやっている気がします。
FFCCはゲームキューブで出たものを今回リメイクという形で出してくれるわけですが、当時と違い今回はオンラインでパーティプレイも出来るということで期待が高まります!
読者さんにしていた!とか、やろうと思っている!という方はいらっしゃいますか? 是非お聞かせ願いたいところです。
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