シュレイド城で伝説と相対する導きの青き星。
その陰で、人には語られず、
英雄になる事もない男達の戦いがあった。
#3分で読めるノベル企画
お題「手当て(修理を含む)」
へ投稿した作品となっております
噴き出してくる汗は肌を伝う前に蒸発し、
息を吸い込む度、焼けるような熱気が思考力と精神力を、
容赦なく奪い去っていく。
熔けた金属がしゅうしゅうと音を立て壁面を焦がし、時折、魂までも
震わす咆哮が響き渡る。一瞬の静寂の後、大地ごと震えるような衝撃が
来たかと思えば、周囲の存在全てを消滅させる程の業火が、
壁の向こうで踊り狂っている。
「班長!これ以上ここの修理は危険です!!」
こうした作業をやってる奴らは総じて声がデカい。
そんなに大声出さなくても聞こえてる。
俺達が『星』と呼ぶあいつ等なら俺達がここで諦めても、
何とかしてくれるかもしれない。
退避したとしても責める事など決してないだろう。
それでも
※ ※ ※ ※
昔々の大先輩が作った盾こと防火壁は立派に務めを果たした。
悠久の時を超えて我らが星達をあの黒龍の息吹から守り切った。立派なものだ
しかし盾が仕事をした結果、熔けた耐火壁の一部が皮肉にももう一つ遺産。
二連式撃龍槍の駆動系の一部にへばりつき、動きを阻害している。
こいつをなんとかして剥がさねば、この撃龍槍は使えない。
例えこの指が、腕の全てが炭になろうとも俺達がコイツに仕事をさせてやらなければ
作り上げた大先輩に、この場で失われた多くの人々に、役目を果たした防火壁に、
そして命を賭して戦ってくれている星達に顔向けができない。
今にも剝がせそうなのだがあと一押し、アレが…アレさえ来てくれれば…
「班長!黒龍、空高く飛翔!強力なブレス来ます!!」
「来やがったか!!総員耐熱態勢!!お前らくたばるんじゃねぇぞ!!」
轟音と共に光が熱となり【死】そのものとも言える劫火が
地面を、壁面を、そして闘う者の全てを蒸発させていく。
壁の向こうの出来事だというのに纏った耐火の装衣も気休めにしかならない。
だが…この…この熱量があれば…!
駆動部に噛んでいた耐火壁の一部が劫火に炙られゆっくりと、
しかし確かな熱を帯び、赤く輝き始めた。この瞬間を待っていた
「待ちくたびれたぜぇ…こいつで、どうだッッ!!!!」
大きく振りかぶったハンマーを赤熱化した箇所へ全力で叩きつける。
こびりついていた壁片が甲高い音を立てて剥がれ落ち、
脳まで痺れるような手応えだけが残った
解き放たれ、噛み合った歯車が重厚な音を立て回転を始める
かつて闘い切れなかった無念を、国を守れなかった屈辱を。
その全て払拭する、一撃を放つ為に
「機関部ゥ!!状況報告!!」
「…!!蒸気機関との連動を確認!!これなら…いけます!!」
「我慢させて悪かったなぁ…ようやくボレアスだかボケナスだかをぶん殴れるぞ!
総員準備ィ!合図だせェ!!」
汗と灰と煤で全身を真っ黒に染めつつも…瞳を決意で漲らせ走り回る彼達は、
夜空とソレを彩り輝く星々の姿にとても良く似ていた
お読み頂きありがとうございました。
ご覧いただいた通りシュレイド城でのミラボレアス戦、その舞台裏を書かせて頂きました。
防火壁のギミックから撃龍槍が発射されるまでの時間。
「目標体力の残り状況」と言ってしまえばそれまでなんですが、
太古の兵器が稼働し発射に至るまでこんなドラマがあるんじゃないか?
と考えて書いてみました。
ハンターの狩猟には多くの人が関わって、そして支えているんだと思ってます。
何てことないハンティングライフをする時、
普段意識しない陰の部分にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ここまでお読み頂きありがとうございました