友達を亡くした男と、胡桃の不思議な縁の物語

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リハビリに書いてたけど結構書くのに時間が掛かっちゃった



生と死の蝶電話

 

軽策荘で一夜を明かし、布団から伸びをする。

すると、起きたタイミングでお茶を運びに来てくれた。

 

「おはようございます。お茶を持ってまいりました。」

 

たどたどしい敬語で彼女はお茶を渡してくる。

 

「今日はこれから無妄の丘に行くんでしたよね?」

 

飲み終わったお茶を彼女の持っているお盆に置く。

 

「そうだな。久しぶりにあそこの空気を吸いたくなって。」

 

「気を付けて行って来てくださいね。後、朝ご飯はどうしますか?」

 

「食べてく。」

 

そう言うと、彼女は厨房の方へ向かって行った。

暫くして出来上がった料理を彼女が持ってきた。

 

「お味はいかがですか?」

 

「おいしい。豆腐とあんかけの相性が最高だわ。」

 

そうして食べ終わった食器を厨房まで運んで行く。

その後荷物を纏めていると、彼女が部屋の中へ入って来た。

 

「何かお手伝いすることはありませんか?」

 

少し考える。だが、荷物はほぼ纏め終わって後ちょっとでもすれば出発出来るようになる。

そういえば、俺には子どもがいなかった。いや、正確には早死にした。

消失感を理由に、少し良いだろうか。

 

彼女を膝の上に乗せると、ゆっくり抱き締めた。

抱き心地は最高で、まるで枕を抱いているようだった。

体を更にくっ付けると、彼女を全身で感じ取ることが出来る。

腕、胸、腹。触っているとすごく落ち着く。

 

少し満足したとこで、横腹を触り始める。少し指を動かしてみるが、あまり反応がない。

くすぐることにした。

 

「やっ、ん、んぅ…」

 

くすぐると同時に彼女の体が悶え始める。

 

「ここ弱いの?」

 

「あ、やめ!っ…んぃ!」

 

我慢しているみたいなのでもっと強くくすぐってみる。

苦しそうに悶えながらも笑っている。声がかわいくて癒される。

そして3分程ぶっ続けでくすぐってしまった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

息が苦しかったのか涙目になっている。

そんな彼女をかわいいなと思いつつゆっくり抱き締めると、子どもがいなくなった傷も癒えてきて、ずっと抱き締めていたくなる。

 

あまり出発が遅くならないように、彼女の体を離すと、少しふらっとしてしまった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ま、まぁ…」

 

曖昧に返事をすると、彼女は何かを察したようにこっちを向いてきた。

 

「…すっきりとした気分になってきてくださいね!」

 

「うん。」

 

軽く返事をして無妄の丘へ歩き始める。

 

今日無妄の丘に行くのは、亡くなった友人の為だ。

死ぬより前、俺が死んだら無妄の丘に通ってくれないかと、何度も話していた。

曰く、纏めて供養してほしいとかなんとか。詳細はぼやかされたが、何となく何を言いたいのかは分かる。

その友達は、暴走した者達を落ち着かせて殺め、調和を図っていたと聞く。

幾ら落ち着かせたとしても、死なせないと何が起こるか分からないと言っていた。

それ故に力を欲し、力に生かされた男だった。

思い返せば思い返す程、あいつとの思い出が甦ってくる。

懐かしいよ。

 

 

 

 

「着いた…ここか。」

 

重なる岩の僅かな隙間に入ると、そこは広い空間になっていた。

苔の生える岩道を歩いていく。

辺りは木がほぼない渓流みたいな感じだった。

 

「よし、着いた。」

 

少し水を掛けて綺麗にしてから、残った水滴を拭く。

読んでほしいと言われていた文章を読んで、その紙を火に掛ける。

灰になるのを待っている間に、その辺に落ちていた葉を手に取る。その上にお菓子を置いて、渓流の水を掛けて食す。

線香を添えてお祈りをする。

灰になった紙を周りに散らす。

 

「これで良いのかな…」

 

僅かな炎の光に答えを求めたい。

正直、これだけじゃまだ、自分の感情に整理が付かない。

関わりのあった者は全ていなくなったのだから。

 

「死んでんじゃねぇよ…」

 

墓を見ずに吐き捨てるように言うと、どことなく寄り添われる感覚がする。

 

墓の方を向くと、後ろから不思議な感覚がする。

─これは、…………敵?

 

後ろを向いてはいけないような気がした。

だが、それは襲われるのを認めることになる。

そんな時、ある少女の声が聴こえた。

 

「こんな処があったなんてね~。無妄の丘に何回も来てる筈なのに、全然知らなかった。」

「そこのお兄さん、私が槍を振ったら、後ろを向いて応戦してね?」

 

少女が槍を振るうと同時、後ろを振り返ると、敵がわんさか湧いて来ていた。

 

「ちょっと手強い相手だね。」

 

少女は槍を振るいながらそんな言葉を残す。

俺も流水を思うがままに操って、敵を倒していく。

 

「おや、相当な神の目の使い手だね?」

 

辺り一帯に激流の如き水の流れをつくり出して、1面水元素の影響を受けるようにする。

そこを少女は、焼き払うような業火で一掃した。

 

「ふぅ、危なかったね~」

 

返事をしない俺を見て、何を思ったか、岩の隙間にある出入り口を塞いできた。

 

「何か悩みがあるんでしょ?何でも言って良いよ~」

 

暫くしてから俺は少しずつ吐露していくことにした。

気分が晴れないときは、少しでも吐き出すだけで、多少変わるものだから。

 

「友達が亡くなって、整理が付かなくて…」

「うん、分かるよ~」

 

友達の話や、今の状況をただ黙って聞いてくれた。

 

「ふぅぁ…」

 

言い切ると、少女は少し考えた後、ゆっくり話を始めてくれた。

 

「少なくとも、そのご友人さんは精一杯生き切ったんじゃない?」

「そんなんで整理つく訳ないだろ!」

 

清流の音さえ消えた気がした。寄り掛かれるものが何もない。そんな感覚。

 

「はぁー。…しんどいね。」

 

後ろからゆっくり覆われる感触がした。

辛い気分を落ち着かせる妖精みたいに、決して辛さが和らぐ訳ではないけど、人がいる安心感は、確かにあった。

 

水の流れの音が聞こえる。

その方をぼけーっと眺めていると、蝶々がひらひらと飛んで来た。

 

「あ、蝶々!見て見て!」

 

少女は蝶々の方へ駆けて行き、蝶となって辺りを舞った。

言葉では取れない不思議な感覚がする。

 

「どう?少し楽になった?」

 

いつの間にか蝶は少女となって舞い戻っている。

 

「少しは…」

「ふふっ、良かった。またここに来るときは、どんな様子になってるかな?」

「少し、綺麗な景色になってる気が…します。」

 

 

岩の隙間から出ると、急に現実に引き戻された感じがする。明日からまた頑張らないと。

 

「そうだ!せっかくの縁だし、名前を教えてくれない?」

 

名前を伝えると、少女は晴れた笑顔でこう言った。

 

「私は胡桃!往生堂の堂主だよ~!」

「…?往生堂って、もしや…」

「そう、その往生堂!」

「…葬儀屋に似つかわしくない明るさだな。」

「えへへ~、また何かあったら相談に乗るよ!じゃあまた!」

 

胡桃と名乗ったその少女は、(せせり)蝶の如く去っていった。

 

 

不思議な縁が生まれた、そんな日である。

 




続きはまた、岩の隙間から─

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