全ての幸は箱の中   作:眠り狐のK

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シルはかわいいですね


15.二度目の共闘

「話は聞かせてもらったわ。借金に追われ、その末には学校が奪われそう? 更には連邦生徒会の助けも望めない?」

 

 アルは一言間をおいて――

 

 

 

 

 

「だから何なのよ!!」

 

 

 

 

 

 ――言い放った

 

「貴方達のアビドスにかけた想いはその程度のものなの? 目的のために孤高を貫くアウトロー、私の憧れた覆面水着団はその程度のものだったの?」

 

 これは、便利屋68だからこそ言えることだった。

 無断での開業は校則違反となる。

 そんな中で便利屋として事業を行なっているため、当然手を貸してくれる人間なんていない。

 この間のように風紀委員会と衝突することもある。

 依頼が上手くいかなくて、明日食べるご飯にすら困ることもある。

 お金が足りなくて銀行から融資を受けることもあれば、ブラックリスト入りしていて受けられなかったこともある。

 そんな中でも、アウトローになるという目標のもと頑張っているのが便利屋68だ。

 アビドスとは目的も歩む道も違う、それでも確かに似ている部分もある。

 

「……そうですね、何があろうと私達はアビドスが大好きですから」

「ん、貴方達なんかに渡さない」

「渡さないぞ〜!!」

 

 だからこそ、アビドスにも響く言葉だった。

 

「便利屋68……貴様ら……!!」

「眼鏡っ娘ちゃんを傷つけるなんてさ、もうぶっ殺すしかないよね!!」

「……ほんとはラーメン食べに来ただけだけど……今はムツキに同感。シルに傷ついて欲しくはないから」

 

 ムツキとカヨコ、そしてハルカもカイザーに銃を向ける。

 カイザーと便利屋にはもう契約上の関係はない。

 それは既に、便利屋が風紀委員会に目をつけられた時点でカイザーが切っている。

 だからこそ、雇用主としてカイザーに従う必要はない。

 今の便利屋68は、唯のアビドスの友人としてここに立っている。

 

「先生、指示は任せたわよ?」

「うん、任せて」

 

 こうして、アビドスと便利屋68の二度目の共闘が始まった。

 シロコが突っ込み射撃、格闘、ドローンでの支援射撃を使い分け敵を翻弄し、アルからの狙撃――爆発によって敵を一掃する。

 ムツキの爆弾により敵を吹き飛ばし、爆煙で視界が悪くなった中をノノミのミニガンが薙ぎ払う。

 ハルカは最前線で散弾により敵を吹き飛ばしながらタンクの役割を果たし、セリカが的確な狙撃で敵を確実に減らしていく。

 シルもシロコ同様に敵に突っ込んで敵を沈めていく。

 シロコやホシノのような動きは出来ないものの、シロコやホシノとの訓練を重ねていたシルは不良と違い訓練を受けているカイザー兵相手でも通用している。

 所々危ないところはあるものの、カヨコの的確な補助によって大きな被弾もなく戦えている。

 

 たった一度のみの共闘、さらにはその前まで敵同士ですらあったアビドスと便利屋68。しかし、そのたった一度でお互いの戦い方を理解し、それらを活かせるように指揮をする先生。そんな優秀な指揮は、圧倒的な数の不利、更には不良と違いしっかり訓練を受けている為に単体の能力もそこそこあるカイザーを相手にしても問題なく戦えていた。

 

「くっ……シャーレの先生、やはり貴様は厄介な存在だな。おい、ゴリアテを出せ」

 

 その呼び声と共にガシャン、ガシャンと大きな機械音を立てながら巨大な機会が歩いてくる。

 両手部分にはそれぞれ機関銃が取り付けられており、頭の部分には大砲が取り付けられている。

 そして、両手の機関銃がアビドスと便利屋68に向く。

 

「「!?」」

 

 機関銃から放たれた弾丸をアビドスと便利屋68は散り散りになって避ける。

 障害物を盾にすることで弾丸を防ぐが、両手の機関銃から放たれる銃弾の雨を前に攻められずにいた。

 更には――

 

「あの大砲、今こっちに向けられたら不味いかもね」

「おっきくて強そう!」

 

 あの大砲、並の戦車と比べても威力はありそうだ。

 そして、今シルとカヨコが隠れている場所は大きな瓦礫。機関銃程度であれば盾として充分に役割を果たすだろうが、大砲の大きな弾丸を防げるほどとは思えない。

 出来るだけ早く頑丈な建物に移動したいが、今敵の前に姿を現せば機関銃の餌食になってしまうだろう。

 キヴォトスの生徒は頑丈なために機関銃で撃たれたとしても蜂の巣になることはない。しかし、それでも大ダメージは免れないだろう。

 ただ、このままじっとしていればいずれ大砲により瓦礫ごと吹き飛ばされる可能性は高いので、なんとか移動したい。

 

「……こんな時にホシノ先輩がいたら……」

 

 アヤネは小さくつぶやいた。

 今の状況、あのゴリアテの攻撃を受けられる人間がいないのだ。

 機関銃はともかく、大砲はまずい。

 セリカが拉致された際も、改造してるとはいえ戦車からの砲撃一発でセリカは気絶させられてしまっていた。

 恐らく、あの大砲も同様のことになってしまうと考えたほうがいい。

 唯一、この中で一番の打たれ強さを持つハルカであれば耐えられるかもしれない。

 しかし、ハルカのタンクとしての役割の特徴はその打たれ強さにある。

 最前線で敵の標的を集め、その攻撃を耐えながら攻め込む。しかし、それでは大砲を相手にするには少しリスクが大きい。機関銃相手でも、百を超える弾丸の雨を全て受け入れ切るのは恐らく厳しい。

 そのリスクを込みで生徒を盾にするような判断は先生としても避けたかった。

 だから、ここでの最善は――

 

「シロコ、お願い」

「ん、任せて」

 

 先生の合図と共にシロコが飛び出す。

 この中で一番の俊敏性を持つシロコであれば、機関銃からのダメージは最小限に抑えられる。砲撃についても最低限直撃さえ避けられれば問題ない。

 建物から飛び出してきたシロコにゴリアテからの機関銃が襲いかかるが、それらの弾丸はコンマ数秒前にはシロコがいた地面に吸い込まれていくだけだった。

 

「ちっ、まずはそこのやつらだ! 瓦礫ごと吹き飛ばしてしまえ!」

 

 カイザー理事の指示のもと、ゴリアテの大砲がシル達に向けられた。

 

「っ……シル!!」

 

 ホシノという最大の盾がいない今、この状況を打破できるのはシロコのドローンからのミサイル射撃かムツキの爆弾くらいだろう。

 しかし、今から攻撃に転じるのであれば、大砲が発射されるまでには間に合わない。

 だが――

 

「ふっ……甘いわ」

 

 アルからの狙撃が着弾、爆発しゴリアテの機体を揺らす。それにより、数秒の隙が出来上がる。

 そこに飛び出してきたのはシルだった。

 シルの首から下げた黒い箱が紫色の光を放ち、その光はシルの右手に収束されていく。

 これはホシノから使用を禁じられているもの。

 でも、友達を守るためならばシルに迷いはない。

 

「ホシノちゃん直伝……やられる前にやる!」

 

 シルは右手に現れた銃をゴリアテに向けて引き金を引く。

 銃口からは大きな銃声と共に紫色の光を放ちながら弾丸が放たれる。

 その反動はとてつもなく、シルの身体をいとも簡単に吹き飛ばす。それに気がついたカヨコがシルを抱き留めようとするもカヨコも巻き込みながら大きく吹き飛ばされていく。

 その代償として放たれた銃弾はゴリアテに吸い込まれるように着弾し、その大きな機体を細かく粉砕した。

 

「なっ!?」

「「「!?」」」

 

 目の前で起こった事象に驚いたのはカイザー理事だけではない。カイザーPMCの兵士達も、便利屋68も、アビドス対策委員会も、先生ですらも驚かされた。

 それも当然、その銃の見た目はただの拳銃、良くてマグナムと言ったところ。そんな小さな銃から放たれた銃弾がゴリアテの大きな機体をまるでロケットランチャーの弾が命中したかのように大きく、容易く崩していったのだ。

 

「えへへ、ありがとうカヨコちゃん!」

「お礼を言うのはこっち。また、助けられちゃったね。怪我はない?」

「うん! 大丈夫!」

 

 カヨコは自分とシルの服の汚れを払いながらシルに感謝の言葉を述べる。

 もしあの時シルが動かなければあのまま瓦礫ごと砲撃により二人とも吹き飛ばされていただろう。

 アルの狙撃の隙によってムツキかシロコの攻撃が間に合って助かる可能性もあるが、間に合わなかった可能性だってある。

 今ここにある事実はシルの判断で砲撃を阻止できたということだけだ。

 反動についてもカヨコが受け止めたおかげで二人とも服が汚れた程度で済んでいる。

 

「ぐっ……くぅっ……!!」

「理事! 怪我が……!」

 

 ふと聞こえた声に目を向けると、カイザー理事が腕を押さえていた。

 どうやら、破壊されたゴリアテの破片が当たったようだ。

 

「くそ、撤退だ! 覚えておけよ貴様ら!」

 

 三流悪役のような台詞を吐き捨てながらカイザーは撤退していった。

 

「シル、よく頑張った。流石私の後輩」

「シロコ先輩のじゃなくて私達の、でしょ! ……でも、凄かったよ、シルちゃん!」

「はい、凄かったです! まさか、あのゴリアテを一撃で破壊してしまうなんて」

「えへへ〜♪」

 

 アビドス対策委員会がシルのもとに集まり称賛の言葉をかける。

 褒められたシルも照れながら満面の笑顔を見せた。

 今この時、アビドスに光が戻ってきたのだ。

 

「シル」

「あ、せんせー!」

「よく頑張ったね。でも、あれは危ないからあまり使わないでほしいかな」

「えへへ、ホシノちゃんにも言われてるからわかってる!」

 

 先生からのお願いはかつてのホシノと同じものであった。

 それも当然、いくらゴリアテを一撃で破壊できる程の絶大な威力があるといっても、その反動は大きい。

 人二人が容易く吹き飛ぶレベルなのだ。

 ホシノの前で初めて使った時は壁に叩きつけられシル自身が怪我を負ってしまった。

 だからこそホシノはこの銃を使うことを禁じていた。

 その危険性を先生も理解しているのだ。

 

「……ホシノ先輩」

 

 その一言でまたアビドスに曇りが見えてきた。

 そう、カイザーを追い返すことには成功したものの、事態が好転したわけではない。

 ホシノが帰ってきたわけでもないし、借金問題が解決したわけでもない。

 事態が悪化しなかっただけでも良いとも言えるが、問題はこの先どう行動するべきかだ。

 

「……任せて、僕に少し考えがある」

 

 

 

 

 


 

 その日の夕方。

 

 

 アビドスは便利屋68と別れ、準備を進めている。

 何の準備かと言われれば当然、『ホシノを助けに行く』準備だ。

 現状借金問題について何とかできる希望があるとするならばそれはホシノだ。

 今までホシノがいたからこそカイザーが直接手を出せなかったのならば、ホシノを連れ戻せばカイザーもまた手を出せなくなるだろう。

 一度退学したホシノが再度正式な生徒会としての権限を持てるかどうかという問題については先生が正式に対策委員会の顧問となることで解決した。

 要は、申請を受理しその是非を判断する枠としてそこに先生が入り込むことにより、そもそもホシノの退学に対しての認証が通ってないという状況を作り出す。それによって『ホシノの退学届は顧問の先生が承認してないのだからまだ有効ではない』という事実を作り出し、カイザーの行動の正当性をなくすのだ。

 そして、ホシノ自身も生徒会としての権限をまだ持っているので引き続き対策委員会としての活動も出来るようになる。

 それどころか、先生が顧問に入ればアビドスにシャーレという後ろ盾が出来上がるので寧ろ出来ることは増えるだろう。

 ここまでの土台が揃えばあとはホシノを連れ戻すだけ。

 残念ながらこの中にホシノの行方を知るものはいないが、唯一先生だけは心当たりがあるとのことで、現在ホシノの所在について調べている。

 残されたアビドス対策委員会はいつでもホシノを助けに行けるように準備を進めているというわけだ。

 

「ホシノちゃん……見つかるよね……?」

「大丈夫ですよ、ホシノ先輩の居場所は必ず先生が見つけてくれます。だからみんなで迎えに行って『おかえり』って言って『ただいま』って言わせるんです」

「え、なにそれ青春ぽい!! 恥ずかしいから私はやらな…………〜〜〜!! わかった! やる! やるってば! ね、一緒に迎えに行こ、シルちゃん!」

 

 恥ずかしさからノノミの提案を丁重に断ろうとしたセリカだったが、上目遣いで見つめてくるシルには勝てなかった。

 

「ふふ、そうですね。みんなでホシノ先輩を迎えに行きましょう」

 

 その時、ガラガラッと教室の扉が開き、先生が入って来た。

 

「……その顔は何か掴んできた顔だね?」

「うん、ホシノの居場所が分かったよ」

「じゃ、いこうか――」

 

 

『『『ホシノ先輩を迎えに!!』』』

 

 

 

 


 

 場所はアビドス砂漠。

 少し前に訪れたカイザーPMCからさらに少し離れた場所にホシノは監禁されているらしい。

 そんな情報を先生はどこから入手したのかは不思議であるが知る必要はない。

 アビドスにとってはホシノを助けに行ければそれでいいのだ。

 

 道中、カイザーからの妨害もあった。

 カイザーPMCからそこまで離れてない場所に目的地があるからというのもあるだろうが、明らかに以前カイザーPMCに入った時と比べて兵士が多かった。

 以前のこともあり警戒しているのか、はたまた別の理由があるのか。

 どちらにせよアビドスのやることは変わらない。

 しかし、そんな妨害の続いていく中でもアビドスは順調にホシノ奪還まで近づいていた。

 理由は、ゲヘナの風紀委員会、ファウスト(阿慈谷ヒフミ)、便利屋68と多くの人達が道を切り開いてくれたからだ。

 恐らく、先生が手を回してくれていたのだろう。

 

「はぁ……はぁ、許さんぞ貴様ら!!」

 

 アビドスの前に再び立ちはだかるカイザー理事。

 

 

 

 

 

―――あぁ、また邪魔をするのか―――

 

 

 

 

 

「なぜ、お前達は諦めん……!! 借金も膨れ上がり、土地も奪ってやった!! 生徒会長も小鳥遊ホシノもいなくなった! それでいて何故まだ諦めん!」

「……そんなの、アビドスは私達の学校だからに決まってるじゃない!!!」

「そうです! アビドスは私達の学校、私達の居場所なんです!!」

 

 そうだ、ここは自分達の居場所だ。

 確かに、大変なことは多い。

 アビドスを去っていった子達のように自分達もアビドスを離れれば確かに借金からは解放されるかもしれない。

 それでも、ここは自分達の居場所なのだ。

 ここで育ち、ここで仲間と出会い、ここで思い出を作り上げた。

 ここが自分達の青春の場所なのだ。

 そんな場所を捨てる筈がない。

 もう、アビドス対策委員会は諦めない。

 そんなアビドスの姿を見たカイザー理事は苛立っている様子だ。

 

「くそ、毎日毎日楽しそうに楽しそうに!! お陰でこっちの計画はパーだ!!」

 

 ガシャン、ガシャンと聞き覚えのあるようで僅かに違うような機械音が近づいてくる。

 

「あれは……ゴリアテ!?」

『……ですが、昨日のとは少し違うようです』

「そうだ!! これは特殊な改造を施してあるゴリアテだ! 昨日は油断したが、あれとは訳が違うぞ!!」

 

 

 

 

 

 

―――また、みんなを傷つけようというのか―――

 

 

 

 

 

 シルも、目の前の敵に怒っていた。

 大切なみんなを苦しめていた相手に、大好きなホシノを奪った相手に、自分達の居場所を奪おうとしている相手に。

 大好きな人を傷つけるやつは許さない。

 昨日のゴリアテとは違う?

 関係ない、またふっ飛ばせばいい。

 だから―――

 

 

 

 

 

 

「――だから、ホシノちゃんを返せ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、一筋の紫色の光と共に地中から巨大な何かが飛び出してきた。

 巨大なソレが飛び出してきた衝撃波は凄まじく、カイザーもアビドスも関係なく吹き飛ばしていった。

 

 

 

 

 

「っ……たた……いったいなにが……」

「……あれは……」

 

 目を覚ますと、目の前にはゴリアテなんかとは比べ物にならない程に巨大な蛇のような機械が佇んでいた。




巨大な蛇の機械……一体何者なんでしょう……?
僕の予想だとマキちゃんとかとカップリング作られてると思うんですよ




さて、おふざけは置いておいて
次回、ゴリアテなんかより遥かに強大な敵と戦うことになります。
果たして、ホシノのいないアビドスで勝てるのでしょうか?
読者先生、貴方の選択をしてください。
それによってアビドスの運命は決まることでしょう。

A「アビドスを信じる」
16話↓
https://syosetu.org/novel/360851/19.html

B「大人のカードを使う」
16話↓
https://syosetu.org/novel/360851/20.html
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