間桐の親戚さん   作:鍋の中の白い奴シラタキ

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パリに豆腐買いに行ってました


滲む

 置き手紙を残している、とは言えそれは手紙とも言えぬメモ書き。

その身を案ずるなと言うのがそもそも土台無理な話なのである。

 

「シロウ、何か気に掛かる事でも」

「いや、なんだただ姉貴がこうも家空けるなんてなかったからさ。魔術が使えるけど大丈夫かなって」

「大丈夫でしょう。貴方の言う姉がアナ・クレメットであるなら。・・・ランスロット卿のマスターであった魔術師なのですから」

 

セイバーはそう言い士郎を慰めるが、周囲への警戒は決して怠っていない。

士郎と話し合い、聖杯戦争の影響で一般人への被害を出さない為のパトロールを行っているからだ。

 既にパトロールを初めて三日は経つが、この間に英霊と遭遇することはなかった。

だが、今夜は何かおかしい。

人が街に居なさすぎる。営みが行われていた名残はあるというのに、自分達が索敵を行う範囲では不良さえいない。

 

「静かだ。それも過ぎるくらいに」

 

士郎も薄々は異変を感じていたのだろうか、思わず心情を吐露してしまう。

そしてそれが引き金だったのだろう。

士郎へと不気味に光る魔力弾が空から放たれ、それをセイバーが斬り捨てた。

 

「マスター下がって!」

「サーヴァントって事か」

「消去法的に考えてキャスターでしょう」

 

現界してから今まで出会った英霊、そして今回の要素を繋げセイバーは対する英霊のクラスを半ば断定する。

もはや身を隠すつもりはないのだろう、先ほどと同じ攻撃が仕掛けられると共に何処に隠れていたのだろうか人が現われる。

しかし現われた誰もが、既に生きている者の目をしていなかった。

 

「この人達みんな、もうッ!」

「切抜けます。シロウ雑な持ち方になりますが辛抱を」

「え?うぉわぁぁぁああ!?」

 

セイバーはそう言い士郎を片手で抱えると跳躍し、ゾンビを足場に更にもう一歩。

僅かな滞空を経てセイバーは路肩に止まっていたバイクの近くに着地すると跨がる。

 

「乗れるのか?」

「召喚の際に知識は!何より、経験があります!」

「だったら任せた!」

 

エンジンは車体に魔力を通す事で掛けバイクが発進する、セイバーはゾロゾロと現われるゾンビを躱しまがら魔力弾が放たれてくる方向へと走っていく。

 その様をビルの屋上から見ていたキャスターは、忌まわしそうに唇を噛んだ。

 

 

 

 

 

 

 間桐桜にとってその日は、衝撃の連続であった。

朝に目が覚め、自身がマスターとして召喚したライダーとのパスがしっかりしたものになっていること。

衛宮邸にて士郎の養父の知り合いであるとして、セイバーを紹介されたこと。

そして、家に戻ろうとしていた自身に対して。

 

「なあ桜、最近夜が物騒だろ。だからさ、しばらくは此処に泊まらないか?あぁ、いや桜が良かったらって話でさ。慎二には俺から説明しておくからさ」

 

桜の事を聞き好きにしろよ、あんな鈍くさいやつと吐き捨てた慎二を思い出し苦笑いを浮かべる士郎。

返答を待ち少し視線を泳がす士郎に桜は言った。

 

「良いんですか?私、先輩の負担になっちゃいますよ?」

「そんなことない、むしろ家が賑やかになって良いくらいだ」

「それじゃあ、お言葉に甘えちゃいます」

 

隠していることなど山ほどある、だが自身に向けられるこの善意が心地よかった。

 彼にとっては必要な事なのだ。

養父の夢を、正義の味方を目指す衛宮士郎には聖杯戦争で何も知らない人々が犠牲になるなど許せない。

だから夜の街を警邏する。

勿論、セイバーを連れて。

 

(ずるい・・・)

 

英霊なのだから、マスターに従い守るのは当然。

だが、”女”が彼の隣に居るのは嫌だった。

嫉妬を押しつぶし桜は、新都に向かう士郎達に気づかぬ振りをして布団を頭まで被った。

 

 

 

 

 

 

 既に死んでいるもう助からないと己を納得させ、ゾンビを轢き殺しながらセイバーはバイクのスピードをあげる。

キャスターが居ると思わしきビルへと後数百メートルで達するだろうというときに、ビルの根元が砕け散りセイバーらへと倒れてくる。

 

「セイバー!」

「問題は有りません!!風王鉄槌!!」

 

放たれた風の塊がビルに穴を開けると、セイバーは魔力を地面に叩きつけバイクごと跳躍すると、ビルに突入し駆け上がり反対側へと出ると天辺へと向けバイクを走らせる。

 

「そこかキャスター!!」

「アイツが」

 

既に発動待機状態にしておいたのだろう魔術を発動させたキャスターが、自らの頭上に業火を浮かび上がらせる。

 

「シロウ、運転を任せます!!」

「俺免許無いぞ!?」

 

士郎の文句など聞かずセイバーは、魔力放出を行いキャスターへと一気に肉薄すると聖剣で真っ二つにする。

 

(手応えが無い?)

「そういちろうさま・・・」

 

小声で名を溢したキャスターへと視線を向けたセイバーは、斬り裂かれた彼女の身からは血ではなく蟲が溢れ肉体は魔力ではなく泥になり溶けていく。

悪寒が背を駆け巡った。

 

「妄想心音・・・。お前のマケ!」

 

始めから居たのだろう、屋上のフェンスに立ち魔神の右腕にてセイバーの左胸に触ったアサシンが居た。

 

「アサシンッ!」

 

魔神の右腕に浮かぶ心臓を見て、宝具が完全に発動し終わるのを防ごうとセイバーは一歩踏み出す。

彼女のその行動を見越していたのだろう、アサシンはこちらへと向かってくる士郎へダガーを投擲する。

 

「ッ!士郎!!」

 

一度死ねば終わりの士郎と終わりではない己を天秤に掛けセイバーは前者を選び、士郎を守る。

だが、その行為は彼女の敗北となった。

アサシンが心臓を握りつぶすと同時に、セイバーの心臓即ち霊核も破壊された。

 

「おぉぉおおお!!!」

 

しかし気力を振り絞ったセイバーが、血反吐に塗れながらも聖剣を投げアサシンを相討ちに持ち込もうとする。

が、彼女の背後に現われた影がそれを許さなかった。

 

「逃げろセイバー!!」

 

令呪を使いセイバーを逃がそうとする士郎だが、命令を発する前に影に絡みつかれたセイバーには届かなかった。

 

「貴方こそ逃げろ・・・シロウ・・・」

 

セイバーはそう言うとアサシンに左胸を貫かれ潰れた心臓を抉り取られると、影の中に沈んでいった。

 ビルが完全に倒れた揺れで転倒した士郎が、バイクから投げ出される。

そこにセイバーの心臓を呑んだアサシンがダガーを手に歩んでくる。

 

「哀れだな」

 

ただ一言そう言ったアサシンが、折れたハンドルを強化し構える士郎へとダガーを投擲する。

士郎はそれを迎え撃とうとした、しかしその行いは必要なかった。

アサシンへと士郎の背後から投擲された杭剣がダガーを弾き、アサシンの脇腹を抉る。

 

「ぐぅ!」

 

自身の前に現われた助けに、朦朧とする視界で士郎は呟く。

 

「姉貴・・・?」

「私に姉はいれど弟は居ません」

 

ライダーは士郎を守るようにアサシンへと構える。

 

「分が悪いか・・・」

 

それを見てこれ以上の交戦はまずいと判断しアサシンは撤退していった。

 これ以上の戦いは起こらないと判断したライダーは士郎をチラと見ると霊体化し去って行った。

 

「俺は、負けたのか・・・」

 

令呪の消えた手の甲を見て士郎が呟くと、戦いの後を隠すように雪が降り始めた。




言峰「彼らは神秘を秘匿する気は無いのかね。全くガス会社が可哀想だ」
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