次回はエデン条約編4章……ではなく、パヴァーヌ編2章……でもなく、数話ほど幕間を挟んでからパヴァーヌ編になります。
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誤字報告ありがとうございます。おいは恥ずかしか 生きておられんごっ。
これにて2つの大きな学園を巻き込んだ争乱は幕を下ろした。
まだ全てが円満に解決したわけではなく、ましてや救われなければならない子羊も未だに存在するが、事後処理も含め一区切りついたのは事実だろう。
束の間の平和。『平和とは戦争と戦争の間にある休息期間』と誰が言ったのか覚えてないが、どちらにせよ銃後であることに変わりなく、この平穏で退屈な時間とやらを謳歌しようじゃないか。
「──素晴らしいジョークだ。勲章ものだよ。調印式襲撃事件から2.3週間が経過し、現場の事後処理やゲヘナ学園との調整、アリウス分校生徒の保護、トリニティ内部の不安分子の牽制、ミカのワガママ等……予知夢すら見れないハードスケジュール36協定真っ青のデスマーチをキメている私でなければ大笑いしているところだ」
「ごめんて」
「……徹夜、セイア。YO♪」
「ごめんて」
とうとう自分の名前で韻を踏み始めて自分で笑い出したクレイジーフォックスを、膝枕&尾のブラッシングをしながら労う薩摩兵子。俺の旧家の再現された空間なだけに、田舎特有のゆったりとした雰囲気が、心労を蓄積させて来る現実世界とのギャップを増長させ、彼女のぶっ壊れ具合を加速させた。
無論、夢の中の出来事なので現実世界には反映されないはずなのだが、サンクトゥス派の首長は温泉の湯船に入ったおっさんが如く「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」と無意識に声を出している。
本当にCVが大塚さんになりそうだ。
こんな感じで原作知識持ちキチガイ共が言う『エデン条約編におけるトリニティ内部の争乱』には一区切りついたわけだが、残念なことにココはゲーム内の話ではなく現実世界の出来事。
戦後処理に奔走するセクシーフォックスはキャラ崩壊するレベルで忙殺されかけているわけだ。キャラ崩壊は最初からか。
「起きたくない、書類の束を見たくない」
「気持ちは分からんでもないが、このまま眠り続けたとて増えるのは仕事の量だけやぞ」
「……ところでオウカ。調印式において多大なる勲功を立てた君をティーパーティーに誘致したい。ナギサも君の加入には賛同するだろう。他組織からの煩わしい勧誘も鳴りを潜めるのであれば、君にとっても悪い話じゃないはずだ。どうかな?」
「どうかな?じゃねぇよ。ナチュラルに地獄に引きずり込むな恩を仇で返す気か」
このセクシーフォックスの惨状を見てティーパーティーに入りたいと思うほど、俺は酔狂でも権力に餓えているわけでもない。権威至上主義のトリニティでは名誉なことなのかもしれんが、1枚の金貨が貧民と富裕民にとって価値が違うのと一緒だ。
それを知ってか知らずか、わんぱく狐娘は不満そうに頬を膨らませる。俺の回答なんざ
「つかティーパーティー忙しいんやろ。こっちの病室に
「それは悪手だ。君の隣にいるからこそ、今のナギサは安定して事務処理が出来ている。無理に引き離そうものなら、今以上に大変なことになるだろう。主に私が」
「大丈夫かよ……今のティーパーティー」
「大丈夫ならこんなことになってない」(ド正論)
せやな。
「手っ取り早く解決するなら頭数増やすのが一番だが……」
「迂闊に数を増やせば、ミカのときのような内乱を再度引き起こされかねないよ。加えて、こんな状況でもティーパーティー内部でも派閥争いが横行しているのが現状だ。邪な考えを持つような人材をこれ以上受け入れる余裕がない」
「ま、そうなるよなぁ。下が下だと上が大変やな」
「そう褒めないでくれ。ボロしか出せるものがないぞ」
「出すな」
もはや補習授業部加入前のアイリスの学力以上に、基盤がガタガタになっているであろうティーパーティー。それをトップのナギサやセイアが何とか必死こいて支えているだけであり、おかげさまで二人のメンタルが死にかけているんよね。
対処しなければならん事象が多いわ、人員が足りないわ、部下は他人を蹴落とすことしか考えてない奴が紛れてるわ、クーデターを諦めない過激派がいるわ──これ、俺じゃなくてトップ陣に『
セイアは目のハイライトを消しながら尾のブラッシングを受けている。
弱弱しい声色で「あー……」と時折呟きながら。
「……あぁ、もうミカを限定的に復職させようか」
「内政の分野であのメンヘラが戦力になるん?」
「一応はパテル派の首長だからね。できないとは言わせないよ。ミカも私たちと同じように
「それ絶対に
ハナコが聞けば怒涛の質問攻めが開始されるような言い草に、俺は呆れながらもセイアを諌める。字面は百歩譲として、口頭で聞かれた日にはトリニティの権威が文字通り地に落ちかねん。既にガタついてんのに。
「……まぁ、エデン条約編におけるトリニティの山場は終わったようなモンってアビドスのキチガイも言ってたし、後は最終編までにスローペースで立て直せばええやん」
「ミカの問題は解決してないだろう?」
「それは個人の問題で、トリニティ全体の問題じゃないだろ。心配ならタイミング見計らって先生にカウンセリング頼めよ」
俺にはもう関係ねーよ、と肩をすくめる。
……後に俺はこの判断を後悔することになるのだが、現在進行形の俺は彼女を『放置』することに決め込む。
「つわけでトリニティの問題はよろしく。俺は俺で別ベクトルの面倒事を片付けてくるわ」
「君が前に言っていた
お次はどう立ち回ろうかなぁ、と思考を巡らしていると、ブラッシングを受けながら困惑した表情を浮かべる預言者が目に映る。
それは最初期に原作知識を疑問視していたときのような。疑念と不安を抱きながらも、任せるしかないと諦観にも似た境地にいたときのような。そんな感じの表情。
「君は……その、本当にいいのかい?」
「何が」
「その件のことは
「まず間違いなく──先生と敵対するやろな」
シャーレの先生の手腕に関しては、トリニティとゲヘナとの騒動で嫌と言うほど実感した。ましてや、ここにロリコン野郎含むミレニアムの面々も対峙することになるだろうな。
無論、彼ら彼女らと敵対せず穏便に解決する方法などいくらでもあっただろう。原作知識持ちのロリコンがいるのだから、尚のこと手を取り合うべきだったのは自明の理。俺とて、好きで先生を相手取りたいわけじゃないのは明記しておこう。
だが──
「それでも
「それも『薩摩武士』の矜持、ってやつかい?」
「んな大層な話じゃねぇが?」
次に始まるは『勇者を目指す機械仕掛けの少女』の話。
その佳境──勇者を目指していた少女は、本当は世界を滅ぼす魔王であったと知る。その力で仲間を傷つけてしまった少女は自身の破壊を望み、勇者の仲間たちは彼女の奪還を試みる。
シャーレの先生は勇者の仲間に力を貸すだろう。彼女たちと一度は矛を交えたミレニアムの切り札も、ミレニアムの中核を担う
そして──税所家の現当主にして『薩摩の情報屋』と謳われた男も。
「借りた恩を返す、そんだけのことよ」
そんな豪華メンバーを相手にするなんて、なんとも島津らしいと思わないか?
♦︎♦︎♦︎
『さて、初めましてと言うべきか、久しぶりと返すべきか。確かに会うこと自体が久方ぶりだが、俺は君のことを知らないし、君は俺のことを知らない。そうだろう?』
『……え、知ってんの? あぁ、彼女から少しは聞いてたのか』
『そんで俺のことが知りたい、と。なんともまぁ好奇心旺盛なお姫様なこった』
『ここで互いに名乗りあって交友を深めることも、悪くはないとは思っている。が、今回は遠慮させてもらおう。別に君に対して不満があるわけではなく、この時間──俺と君が一対一で会話ができる状況は非常に貴重だからな』
『ウチのロリコン野郎は優秀でね。この部屋も
『……何故そこまでするのかって?』
『そんなん「そっちの方が面白そうだから」に決まってんじゃん。俺らイカレの行動理念なんざ、基本的に面白さの有無に帰結する』
『つか、こんな話がしたくて君は俺を呼んだわけじゃねぇだろ。何度も言ってるが俺は「腹芸」が苦手でね。単刀直入に言ってくれた方が正直助かる』
『……なるほど、ふーん』
『確かに気持ちは分からんでもない。ここで俺たちが君
『それよりも、さぱっと過去との因縁にケリをつけた方が楽かもしれんなぁ。うん、おっけー。君の要望は理解した。どうせ例のババアは始末せにゃならんと思ってたところや』
『さて、ここで「交渉」のお時間だ』
『君たちは「過去を清算したい」わけで、俺たちもその願いを全面的にバックアップしよう。故に、君には俺の「お願い」を聞いて欲しい』
『──いやいやいや、待って待って待って。年頃の女の子が容易に「身体で払う」なんて言っちゃいけません。勘違いしないで欲しい。君に魅力がないって話じゃなく……うん、公序良俗の面を考えて欲しいってこと』
『話を戻そう』
『俺の「お願い」は君たちにとってもマイナスにならん。むしろプラスになると考えてる』
『たとえババアをなんとかしたとして、君たちの罪状が帰るわけじゃない。同情の余地はあれど、君たちのやったことはテロに他ならない。世間が許しちゃくれんやろ』
『ババアから解放されても、逃亡の毎日なんて楽しくなかろうて。やっぱお天道様の下でのびのびとセカンドライフを味わってみたくはないか?』
『……やったことへの責任、か』
『こりゃ本当に「生まれる環境を間違えた」としか言いようがねぇ。鳶が鷹を産む……いや、違うか。ババアの下でも、綺麗な花は咲くんやなぁって。先生は大人としての責任を語るが、子供だからって責任を負わなくていい理由にはならん。その点、君は本当に弁えてるわ』
『そんな覚悟を持つ君には本当に申し訳ないが』
『
『君たちが本来背負うはずの罪科を俺が肩代わりすることを条件に、君たちが希求する舞台を用意する。どうだろう、かなりの好条件だと思うんだが……』
『……ん? そっちにデメリット皆無で逆に怪しい?』
『って言われてもなぁ。むしろ
『……ほう? せめて理由が知りたいと?』
『それは……ちと難しい相談だ。君たちは俺に罪をなすりつける、君たちは自身の望みを叶える。理由が気になるのも無理はないが、こればっかりは安易には答えられん』
『せっかくお天道様の下を歩けるようになるんだぜ? 俺らの奇行にわざわざ付き合う道義も義理もない』
『それに、だ。知れば後戻りできなくなるぞ』
『君たちは『共犯者』になる』
『どっかの特撮モノの言葉を借りるのであれば、君は──悪魔と相乗りする勇気、あるかな?』
『即答すな。頷くな。うん、じゃねーんだよ』
『もうちょい考えようか? え、ノータイムで返されるとか想定外なんすけど。くっそ、あの百合豚野郎。彼女がこんな面白美少女だって聞いてねぇぞオイ』
『えー……マジで? マジで聞いちゃう?』
『つか俺も聞きてぇわ。せっかく平穏で安定するであろう未来が目前に提示されてんのに、どうして君は自ら茨の道を進もうとする? 君たちはアレの圧政を抜け出したかったんじゃないのか? なぜ悪魔の手を取ろうと愚考する?』
『……なんだか面白そうだから、か』
『……ははっ、
『なんだよ、なんだよ。あんのキチガイ共ずりぃぞ。こんなイカレた姫君の存在、どうして俺に黙ってた? こんな面白れぇ逸材、知ってれば真っ先にババアからブン奪りに行ったのによー』
『今まで死ぬほど退屈だったろう? クソつまんねぇ人生に飽き飽きしてきただろう? ──おっけー、歓迎しよう。このクソくだらねぇ世界で、面白おかしく生きようとする意志、十分に伝わった』
『ようこそ、こちら側へ』
『……あぁ、目的の話だったな』
『あー……難しい話は後日説明するとして』
『とりあえず──キヴォトス全土を巻き込んで、胸糞で醜悪な社会実験でもしようかと』
【簡単な自己紹介】