いせかるメンバーにナツキ・スバルの人生上映会を観せる 作:リーグロード
ガーフィールとリューズの行動理由の明確な答えが出ぬまま、監禁されたスバルを見守っていると、スバルがようやく目を覚ましたのか、もぞもぞと拘束を解こうともがき始める。
『目ェ覚めたかァ?』
スバルが目を覚ましたことに気づいたガーフィールが、そう声をかけた。
一応、会話はしてくれるのだろう。口を塞いでいた猿ぐつわを外し、忠告をしてからスバルの口を自由にする。
『誰かー!!』
『無駄だッってんだよぉ。ここァ聖域の誰も知らねェ場所だ。死にたがり野郎には助けは必要ねぇだろうが。アァン?』
まさか、忠告を無視して速攻で助けを求めるとは思っていなかったのか、意表を突かれたガーフィールは一瞬焦ったものの、すぐさまスバルの頭を床に叩きつけて黙らせる。
「ふむ、勢い任せに殺しはしませんでしたか」
「いきなり物騒なこと言ってんじゃねえよ。つーか、あのガーフィールが人を殺すわけないだろ。……たぶん」
「そこははっきり言い切ってほしいところなんですが……」
忠告を無視したスバルを乱暴に黙らせたガーフィールの行動に、デミウルゴスは安堵とも落胆とも判断しづらい複雑な感想を漏らす。
その言葉を耳にしたカズマが、ありえないと少し尻すぼみ気味に否定すると、めぐみんからジト目とともに呆れられた。
「だが、このまま拘束された状態を何日も続けられてしまえば、下手すれば死に戻り地点の変更が起きるやもしれん」
「そうなったら、何も知らずに屋敷にいるレムさんたちが、あのエルザって人に殺されたまま、手遅れに……」
スバルが殺されなかったことに安堵するどころか、眉間に皺を寄せた表情で、ターニャは懸念していた死に戻りの復活地点が変わってしま可能性を口にした。
それを聞いたヴィーシャも顔色を少し青くし、今度こそ取り返しのつかない最悪の事態を思い浮かべてしまう。
他の者たちも同じ考えに行き着いたのだろう。重苦しい空気が、部屋を包み込み始めた。
『何言ってるのか分かんねえよ』
『てめぇらは、揃いもそろって頭がおかしいって有名だかッなァ!』
『待て、本気で話が──』
『とぼけんなッ!そんだッけ体中から瘴気ばら撒きやがって!魔女教徒がァ!』
とぼけていると勘違いしたガーフィールが、スバルをさらに乱暴に掴み上げる。
だが、驚いたはその行動ではなく、ガーフィールの口から出た言葉だった。
『墓所を出たッ時から、臭いが濃くなってやがった。瘴気の濃い奴は稀にいやがる。だから何もしねぇってんなら見逃すつもりだったが、お姫様の代わりに試練を受けるだァ?冗談じゃねェ!?』
『俺から、魔女の……残り香……』
『ハッ、面白ェ呼びかたじゃァねェか。しっくりくるぜ、魔女の残り香!』
「まさか、ガーフィールの奴もレムと同じでスバルから瘴気を嗅ぎ取る力があったなんて!?」
「まんま見たことのある構図だな。それにしても、魔女の残り香により人間関係の悪化か。死に戻りのデメリットの一つだな」
スバルとガーフィールの会話が、屋敷でのループ中にレムと敵対した時の状況と重なった。
そんな状況にカズマは驚きの声を上げ、尚文は冷静にスバルの死に戻り能力のデメリットを推測した。
今も魔女の墓場と呼ばれる墓所に、エミリアの代わりとして入ろうと提案したスバルを、ガーフィールが魔女教の一員だと決めつけて尋問していた。
その様子を、魔女教大罪司教・怠惰のペテルギウスと戦ったスバルを見たカズマを筆頭にした者たちは、「違う!」と口にしながら、スクリーンに映るガーフィールに否定の声を浴びせた。
しかし、その声が届くことはなく、無情にもスバルへの尋問は続いていった。
『それなら、どうして俺を閉じ込めておく?なんで始末しない……?』
『ハッ!てめェがうまく周りの奴らに取り入ってッやがッからだろォがァ。うかつに手ェ出して『テスラ砦の陥落』みてェに暴発されッのァごめんだ』
「なるほど、スバルを生かしておくのは万が一の人質というわけか。にしても、異世界のことわざなのか、意味が分からん言葉を間に挟まれると混乱するな」
「ですね。まあ、ガーフィールさんはあれがカッコイイって思ってるようなので、あんまり強く否定してあげない方がいいと思いますよ、少佐」
中二病とは真逆の性格をしているターニャの言葉に、ヴィーシャが苦笑しながらフォローを入れる。
なんにせよ、手足を縛られて逃げ出すことはできず、外からの助けを期待するのも難しい。今のスバルには、この状況を打破するアイデアが浮かばなかった。
なら、残された手段は自決による死に戻りの発動だったが、獰猛な獣のような目でスバルの動きを一瞬たりとも見逃さないガーフィールが、それを許さなかった。
スバルが舌を噛んで自殺を図ろうとした瞬間、素早く猿ぐつわを噛ませ、自決を阻止した。
『てめェがなに考えてッか知れたもんじゃァねェがな。俺様がてめェの一番気にくわねェのが、その態度だよ。その目が、ロズワールの野郎にそっくりでやがる』
そう吐き捨ててスバルに蹴りを入れて去っていくガーフィールに、不快な目を向ける者は多い。
「ガーフィールの野郎。今はもうスバルの仲間なんだろうけども、あんなことしてやがったのか!?」
「まあ、死に戻りしていたのであれば、本人にその記憶はないでしょうね。あるとすれば、学園でガーフィールと楽しげに接していたスバルぐらいなものでしょう」
「その覚えているであろうスバルの目に、ガーフィールを恨むような負の光が宿ってないのが驚きだがな」
今は学園で楽しくスバルの弟分のような立場で明るく振る舞っているガーフィールが、まさか過去にこんなことをしていたなんて知り、カズマは憤慨する。
そんなカズマとは対照的に、冷静な口調ながら目を紅くしためぐみんは、学園に転校してきた今のガーフィールにはこの時の記憶がないだろうと推測を口にすると、それを聞いた尚文は呆れた声で、逆に記憶があるであろうスバルのガーフィールに対する態度に軽い驚きを示す。
「それにしても、今の監禁されているスバルも気の毒だけど、姿を消したスバルを心配して探しているかもしれないエミリアたちも大丈夫かしら……」
「ああ、そうだな。……ラムは平気そうだが、エミリアが心配だ」
「いや、エミリアたちも心配かもしれないが、最後にスバルがガーフィールと森へ向かったのを見たオットーの方が危険ではないか。主に、口封じ的な意味で」
映像には映っていないエミリアたちを案じるアクアと、それに同意するダクネス。そんな2人の言葉に、ターニャが物騒な発言をする。
しかし、それは全くの見当違いではなく、聖域を守るという覚悟のある今のガーフィールなら、多少強引な手段に出る可能性も十分にあるのだ。
「だが、あのオットーだからな。自分の命が危ないって分かれば、いざって時はあいつだけなら聖域なんて抜け出ることは可能だろうし、とっとと逃げてるんじゃないか」
「そう……でしょうか……?」
尚文の脳裏には、白鯨に襲われた際に、オットーが竜車からスバルを突き落とした光景がリフレインしていた。
人に抱いた負のイメージはそう簡単には拭い落とせない。それをあっさりできるスバルの方が異常で、尚文の反応こそ普通だ。
いや、その尚文の隣に座るラフタリアもまた、人への悪い印象を引きずってはいないようだった。
「しかし、尚文の言う通り、オットーが逃げ出したとしたら、スバル救出の見込みは限りなく低くなってくるな」
「ええ、その通りかと。あの男は声がデカいくらいで、スバルの仲間の中では特に印象もない人間でしたし、私も尚文と同じで、逃げ出していると思われます」
尚文の辛辣な言葉に、アインズは頭の中でスバルが助かる確率を計算した。その隣で、アルベドはオットーがこの状況では逃げ出すだろうと淡々と断言する。
ナザリックの面々も同意見らしく、スバル救出におけるオットーの活躍にはあまり期待していない様子だ。拘束されながらも必死にもがき、どうにか状況を打開しようと策を巡らせるスバルを、彼らはまるで品定めするように見つめ続けていた。
時々世話役らしき人物がスバルの様子を見に来て、無理やり生かすために食事を与える。
それを終えると、一言も話すことなく去っていき、再び1人きりになったスバルは何度も前のループでの出来事を思い出していた。
いや、前のループの事だけじゃない。これまでのスバルの辿ってきた道で取りこぼしてきたもの。殺されていってしまった人達を思い出し、スバルは更に足搔く。
『むぅー!んんぅぅぅ!!!』
床に頭を叩きつけて自殺を図るが、人はそう簡単には死なない。
やがて諦めたのか疲れたのか、床に頭をぶつける自傷行為はしなくなり、スバルは無気力なまま横たわる。
その姿はあまりにも痛ましく、見るに堪えなかった。
このまま、後はスバルがどうやって自殺してしまうのか、そんな嫌な考えで観ていると、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。
『……ひどい状態とは思っていましたが、これは思った以上に厳しそうですね』
「あれ、この声って!」
姿は映らずとも、聞こえてきたこの声の主を知るカズマは、もしかしてと期待に目を輝かせる。
他の者、特に尚文なんかは「マジか!?」といった顔でスクリーンを凝視する。
『おっと、声は上げないでください。かなり危ない橋を渡ってきてるので、ここで見張りに捕まるのは御免です。お互い諦めは悪い性質でしょう?』
目隠しと猿ぐつわを外されたスバルが目にしたのは、薄汚れてボロボロになったオットーの姿だった。
『なにはともあれ、生きててくれてホッとしましたよ、ナツキさん』
「……まさか、オットーの奴が助けにくるなんて」
「なんだよ、尚文。あいつは逃げ出すなんて言っておいて、予想は大外れじゃねえか」
「こら、ダメよカズマさん。いくら人を信じる心を失った尚文さんだって、これからきっと改善されていくわよ、きっと!」
「おい、黙ってろそこの2人。特に、アクア!」
「へぇ?なんで私!?ちゃんとフォローしたのに、フォローしたのにぃ!!」
尚文の呟きにカズマが茶化すと、アクアがさらに余計な一言を添える。
その一言はカズマの軽口よりも尚文に響いたのか、殺気を帯びた視線を向ける尚文に、アクアは涙目になってしまった。
『今何日経ってる?』
『あれから3日です。外は夜。試練の時間です』
『3日!それに試練もまだ続けてんのか!?』
驚くスバルにオットーがこの3日間に何があったのかを説明する。
要約すれば、試練への挑戦を見送ったエミリアが、ロズワールとの会談で聖域の解放を条件に、スバルの捜索隊を派遣すると誓約で誓ったようだ。
『……さっきからちょいちょい気になってるんだが』
『はい?』
『いや、お前も聞いてきたみたいな説明なんだ?』
『あーそれ聞きますか。少し言いづらいことなんですが……。実はですね……、ナツキさんと同じく僕もガーフィールに目をつけられて、あっちこっち逃げ回ってる真っ最中なんですよ』
『──は?』
「なるほど、逃げてる最中に偶然スバルの監禁されている隠れ家を見つけたって訳か」
「いえ、それはどうでしょう?その程度で見つかるような場所を監禁場所にするとは思えません。確か、彼は加護を有していた筈です。恐れらくは、それで先程の情報や、スバルの監禁された場所を探り当てたのでは?」
尚文の推測を否定するように、デミウルゴスがメガネをクイッとさせ、もっとも現実的な推測を口にする。
『僕は、おふたりが最後に会ったのを見てたじゃないですか』
この時、無関係なオットーを巻き込まないよう、あの日距離を置いたスバルは、申し訳なさと後ろめたさから顔をオットーから背けた。
『当然疑います。そしたら、彼は言ってきました。ナツキさんと彼が会ってきたことを秘密にしていれば危害は加えないとね。見返りだと、魔石の類も見せてきて』
『なのにそれを断ったのか?それでガーフィールに追っかけられてるのか?』
『はい。だから、情報は全部逃げながら集めたもので……。聞いた話なんですよ。まあ、威勢のいい選択のわりに、グダグダなのはご愛嬌ですが』
『茶化すな!お前馬鹿だろ?なんでそんな真似したんだ!?』
そのスバルの叫びは尚文のような人間不信……あるいは、合理主義者の者たちにとっては至極当然のものだった。
「なにか目的がある?ガーフィールの口約束が信用できなかった?」
「あるいは、スバルとの約束であるロズワール先生との橋渡しの方が有益だと判断したからか?」
「もしくは、スバルの人脈を知ってるがゆえに、ここで恩を売った方が後々に有利だと考えたのか?」
尚文、ターニャ、アインズがそれぞれの予想を口にする。
それを聞いた者たちも、きっとそのどれかが正解なんだろうと思っていた。
『助けに来てくれたのは、本気でありがたいよ。正直、お前の顔を見るまでは死んだ方がマシぐらいまで追い込まれてたからな。でも、お前が俺に手を貸す理由が見つからない』
真剣な表情で、一切の茶化しを許さないスバルの言葉に、オットーは一瞬だけ言葉に詰まり、 そして、言った。
『あのですね、ナツキさん。……友人を助けようとするのは、そんなにおかしなことですかね?』
その瞬間、まるで時間が止まったような静けさが訪れた。
オットーが口にした、打算のかけらもないあまりに率直な言葉に、スバルも、それを耳にした者たちも、思わず目を見開いていた。
その静寂を破ったのは、意外にもアインズであった。
「ふっ、ふはははは!!……ちっ、感情抑制が働いたか」
アインズの笑いは途中でアンデッド特有の感情抑制により止まり、思わず舌打ちをする。
そんな一連の奇妙とも言えるアインズの行動に、守護者たちは驚きの視線を向けていた。いや、守護者たちだけでなく、他の者たちも、突然笑い声を上げたアインズに同じような視線を送っていた。
「いや、すまない。少々、昔を思い出してしまってな。『誰かが困っていたら助けるのは当たり前!』かつての私の仲間の言葉でな。それが友人であれば、なるほど。助けるのに十分な理由だと思ってな」
「それだけで助ける理由になるとか……。はぁ、ちくしょう!ああ、そうだな!!」
カズマならまだしも、アインズにそう言われた尚文は、自分があの過酷で残酷な異世界に毒されてしまっている事に気づき、苛立たしげに頭を掻いて肯定した。
声には出さなかったが、ターニャも納得しがたい表情を浮かべつつ、義理や人情といったものを幼女の外見を利用して活かす機会もあるため、強く否定はしなかった。
『なんでそんな驚き顔で固まってるんですか、この人?』
『いや、突然俺の知らない人が出てきて。ユージンさんってのは、えっと……』
『頭から尻まで結論が間違ってますよ。ユージンじゃなくて友人!友達!』
『トモダチ……。誰と誰が?』
『僕と!ナツキさんが!』
まるで地球の言葉を覚えた宇宙人みたいなスバルの反応に、オットーは照れながらも必死に言い募る。
やがて、スバルもオットーが本気で友人だと口にしているのを実感すると、顔を俯かせて肩を震わせた。
『──ふっ、ぷふっ、わははは!』
『はい?』
『と、友達?友達かぁ!ああ、そっかそっか、オットーお前、俺と友達になりたかったのかよ!』
まるで堰を切ったように笑い声を上げ、暗かった雰囲気が全部丸ごとひっくり返る。
「カズマ、カズマ……」
「ん、なんだよ、めぐみん?」
「私、ゆんゆんがこの部屋に転移してこなくて本当に良かったと思いますよ。あのボッチがこれを見たら、ショックで死んじゃいそうですからね」
「お……お前、無表情でよくそんな酷いことを……いや、酷いことか?案外マジでそうなるかもしれないな……」
普段のゆんゆんのボッチ気質を見ていれば、めぐみんの言ったこともあながち間違っていない気がした。
確かに、今こうしてスクリーンの中で笑いながらオットーの肩を叩くスバルと、それに対して恥ずかしさを誤魔化すように声を荒げるオットーの姿は、ゆんゆんが憧れるものというか、嫉妬とか羨ましさとかで号泣はしそうである。
「………………友人、ね」
「えっと、その、尚文様にもご友人とか、そのぉ……」
「私のお友達はね、メルちゃん!」
異世界で敵ばかり増えている尚文にとって、友人の存在など皆無である。
そもそも、人間不信の尚文がそんな存在を作る気すらないのだから当然だ。なんとかフォローしようとしたラフタリアも、掛ける言葉が見つからず、微妙な表情で口ごもる。
そんな空気をまったく気にせず、フィーロが満面の笑みで友達の名前を言い放った。
勿論、このやり取りは周りに見られており、尚文がゆんゆんと同じボッチであると印象付けられたのは言うまでもないだろう。
『ナツキさん?』
『……悪かった。お前は俺の友達だよ、オットー。助けに来てくれてありがとう』
「スバル殿の周りに集まるのは悪意だけではございません。ヴィルヘルム殿のように、心優しき方が貴方の周りにも集まってくれる筈です」
温かな眼差しで、友人の存在に救われるスバルを見つめるセバス。
今、目の前に映る男の友情に、セバスはヴィルヘルムの姿を思い出し、いつものように用務員室で恋バナに花を咲かせた日々を少し懐かしく思い返していた。
そろそろアニメのリゼロも佳境に入ってきたし、ここからのスバル君の嘆きと絶望&逆転劇に期待大!!!
スバルの第二の試練後にIFストーリーを入れる
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