大量の醜鬼と鬼が徒党を組んで人が多い街の近くまで進軍していた。
すぐに琥太郎が率いる数人の部隊が対処に当たったが敵の数が多く、すぐに不利な状況に陥ってしまう。
一番の実力者である琥太郎が殿を務め、他の隊士は連携して襲ってくる醜鬼と戦っているが数が多く、いくら斬り殺しても次々に新しい醜鬼が襲いかかってくる。
しかし、大群のなかで後方にいた鬼たちが指示を出して琥太郎たちを迂回して街を襲おうと動き出す。
「っ!?待てっ!!」
それに気づいたら琥太郎が動き出した鬼を食い止めようと向かおうとした瞬間、背後から鬼のうち一体が影から現れて背中を鋭い爪で切り裂く。
「ぐぅぅ!?」
しかし、琥太郎もやられてばかりではなく攻撃されたのを反動に使って技を繰り出す。
水の呼吸、弍ノ型 水車
垂直に回転する斬撃で首を刎ねることができたが受けた傷は深かった。
「ふっ…!ふっ…!(傷が思った以上に深い……!)」
背中の傷を意識を集中させて筋肉で血を無理矢理止める。
止血をしながら敵の状況を観察して、分かったことがある。
基本的に醜鬼は雑兵で奥に控えている数体の鬼が指示を出しており、その中でも一際体がデカい鬼がリーダーなのが分かった。
(先にリーダー格を殺すか?いや、まとめがいなくなった醜鬼どもがどうなるか想像ができない。無闇に攻撃するのはマズイか?)
考えている間に2体の鬼が琥太郎に近づいていた。
「お前が1番強いな」
「オマエコロセバ、オレラノカチ!」
「……やってみろよ鬼ども」
日輪刀を構え、鬼と睨み合った瞬間に連れていた隊士たちの方から悲鳴が上がる。
「うわあぁぁぁっ!!?」
「っ!?ちっ!」
そちらを向けば隊士たちの連携が崩されて、襲われていた。
咄嗟に助けに行こうと走り出すと鬼の一体が目の前に立ちはだかり、殺そうと首目掛けて日輪刀を振るう。
しかし、当たる直前に首部分が硬質化して日輪刀を跳ね除ける。
突然のことに固まってしまった琥太郎は硬質化した鬼の攻撃をくらってしまい、地面に倒れる。
咄嗟に防ごうとして腕の骨が折れてしまい、肋骨にもヒビが入っていた。
「ぐうぅぅっ!?」
「へへっ、血鬼術を手に入れた俺たちの敵じゃねぇな」
「ハヤククウ!」
「おい!醜鬼ども!その人間たちは殺すなよ!生きたまま喰うのがうめぇからな」
醜鬼たちに倒された隊士たちも怪我を負って戦うことができない。
琥太郎は決死の覚悟を持って立ち上がり、折れていない方の腕で日輪刀を構える。
「まだやんのか?」
「鬼に大人しく食われるなんて死んでもごめんだね」
「……おい、
「ウオォォォッ!!!」
硬質化できる鬼、岩磁は琥太郎の前に立って威嚇するように雄叫びを上げる。
他の鬼と周りの醜鬼もそれを観戦するように周りに立っており、まさしく見せしめにするようだ。
(死んでもこの鬼は倒す!無理ならせめて遠くにいる鎹烏に情報が渡れるように!)
鬼が迫ってくるきて覚悟を決めた瞬間、醜鬼の群衆を斬り捨てながら剣至が現れて岩磁の攻撃を受け止める。
「林田、無事か!?」
「む、武藤……!」
助けに現れた剣至に驚く琥太郎を他所に鬼が悪態をつく。
「新手か!岩磁!そいつも可愛がってやれ!」
「オレ!カタイ!ツヨイ!」
岩磁が全身を硬質化させて剣至を襲うが、剣至は首を簡単に切り落とす。
「ハエ?」
「は?」
続け様にもう1人の鬼の首も斬る。
「むっ、紅柱、他の仲間が!」
「そっちは灰戯さんが守ってくれている。状況を報告してくれ」
琥太郎は一安心して、状況を説明した。
「分かった。林田は灰戯さんと合流して護衛に回ってくれ」
「了解!……武藤、さっきは」
「その話は後にしよう。今はこの事態を収めないといけない」
襲いかかってくる醜鬼を倒しながら指示を出す大型の異形の鬼に近づこうとするが、市街地に行かないように進行を抑えるためにうまくいかない。
「埒が開かないな……!」
殲滅がうまく行かないなか新しい門が出現して、新たな醜鬼の軍団が現れる。
抑えるので精一杯なのに更に増えると不利になってしまう。
不利な状況に陥ってしまったと思った瞬間、門が中から爆発して醜鬼が吹き飛ぶ。
「報告にあった数より相当多いわ。麻衣亜、魔都から増援を呼んでちょうだい」
「分かりました」
九番組組長 東 風舞希と九番組副組長 東 麻衣亜が登場し、戦況を見定めていると剣至がいることに気づく。
剣至も2人のことに気づき、醜鬼を蹴散らしながら近づいていく。
「風舞希さん、応援に来てくれたんですか?」
「というより門から取り逃がしたのがいないか確認に来たの。もう魔都の方からは来ないわ。全て殲滅したから」
「ありがとうございます。この数を1人で被害なしに抑え込むのは難しいです。援護をお願いしてもいいですか?」
「もちろん、そのつもりよ」
「はい、剣至お兄様」
麻衣亜が自身の能力『
しかし、醜鬼たちは鬼の指示に従って護るように動いて、大元を叩くことができない。
(醜鬼の連携と鬼が想像以上に上手い……!このままじゃ街に被害が出てしまう)
もう1人だけでも加勢してくれればと考えている時に新しい援軍が現れた。
「ようやく着いたわね」
応援に現れたのは羽柱 翊衣 翼だった。
「翊衣さん!来てくれたんですか!?」
「近くでパトロールをしていたからね。それにしても少し数が多すぎないかしら?」
蠢く醜鬼たちを見て翼は目を細める。
「従えているのは奥の巨体の鬼ですが醜鬼の進行を止めるのに精一杯で手出しできない状態です」
「そう……なら私があの鬼を仕留めるわ。醜鬼の足止めをお願い」
「了解」
翼は剣至に指示を出すとすぐさま醜鬼の群れに走り出す。
「援護します!」
「不要よ」
麻衣亜が能力で醜鬼たちの動きを止めようとするが翼はそれを制する。
一気に襲いかかってくる醜鬼の攻撃を翼は全てヒラリ、ヒラリとまるで風で仰がれて宙を泳ぐ羽のようにかわしていく。
「凄い……まるで羽のような動きで全てかわしている」
「翊衣さんが使う羽の呼吸はあの人が作った呼吸でその特徴は最も回避力に長けていることだ。翊衣さんはあの呼吸を使ってから傷を負ったことがないらしい」
剣至の説明とおり、翼は全ての攻撃を難なくかわしながら醜鬼に両手に持つ2本の短刀で倒していく。
その途中で風舞希が醜鬼と戦っているところに出会し、翼に気づいた風舞希が戦場だというのに気軽に挨拶する。
「あら翼さん、お久しぶりね」
「風舞希さん!久しぶりだわ。娘さんたちは元気かしら?」
「ええ元気よ。皆んな、それぞれの場所で活躍しているわ。十灼はどうかしら?」
「……言いづらいけど相変わらず一匹狼だわ」
翼は苦笑いしながらそう答えると風舞希も仕方のない子だとため息を吐く。
2人は醜鬼の群れの向こう側でふんぞりかえっている鬼を見据えて、目を合わせると息を合わせて動き出す。
「あそこまで行きたいのだけど、お願いしてもいいかしら?」
「勿論、お安い御用よ」
風舞希の能力である『
風舞希は自身の膂力で翼を空高く投げ飛ばすと羽毛で出来た羽織の袖を広げてまるで鳥のように滑空して鬼に近づく。
鬼は醜鬼たちに指示を出し、空にいる翼を捕まえようと醜鬼は群体となって捕まえようとする。
しかし、それに気づいた翼は体を捻って回転すると捕まえようとする醜鬼に突っ込む。
それと同時に翼は羽が風を切るような音を鳴らす呼吸をする。
羽の呼吸 参ノ型 刃翼の廻り
まるでドリルのように鋭い斬撃となった翼は醜鬼の群れを突き破る。
間近に迫る翼に鬼はたまらず攻撃を仕掛けるが翼はそれを分かっていたかのように技を繰り出す。
羽の呼吸 壱ノ型
鬼の腕に沿うように攻撃をかわしてその勢いのまま、首を切り落とす。
翼は鬼の背後にふわりと降り立ち、振り返ると醜鬼と鬼はリーダーを無くして狼狽える様子を見せ始める。
「今が好機ね」
「一気に畳み掛けましょう」
それを見逃さなかった風舞希と剣至たちは後に合流した鬼殺隊とともに残党を一掃し始める。
リーダーを倒した翼も参加しようと顔を向けた瞬間、首を切断されたはずの鬼の首元から新たな顔を生えて立ち上がる。
「ガアアアァァァッ!!」
復活した鬼が背後から翼を襲うが、それを分かっていたかのようにふわりとかわしながら首と胴体を切り裂いて、今度こそ絶命させる。
「これが噂にあった復活する鬼なのね」
倒した鬼を見て翼はそう呟き、醜鬼を殲滅し終えた剣至と風舞希が合流する。
「鬼と八雷神が本格的に協力し始めたわね」
「大きな戦いの予感がするわ」
3人は嫌な予感を拭うことが出来ずに消滅する鬼たちを見ていた。
○
「……と、まぁ後処理して今回の騒動は終わり。後のことは報告書にあった通りだよ」
「……人的被害は無し。被害は多少森が荒れた程度。上々の結果ね、よくやったわ」
そう言いながら恋は立ち上がって剣至を撫でようとしてくるの天花がすかさず、剣至を自分のほうに引き寄せて食い止める。
「何しようとしているんですか?」
「飼い主なんだから褒めてあげようと思って」
「………」
「………」
2人の間にまた火花が散ってしまう。
それを見て剣至は覚悟を決める。
「な、なぁ、んんっ!……なぁ2人ともこんな関係になったのは恋人がいるのに初恋の人の誘いを断れなかった俺の責任だ。クズって罵られても仕方ないって思ってるよ。だからキッチリと!この関係を精算したいんだ」
自分から蒔いた種だが2人の間で挟まれるのに毎回辛い目にあってしまうのでそれを精算しようと話し出す。
「ケンくん、それについてなんだけどね」
「私と天花で話し合って決めたの、貴方を私たちの共有財産にしようって」
「…………は?」
天花と恋の言葉に剣至は頭の中で宇宙が広がる。
「ケンくん、あんまり自分を顧みないからこうやって誰かのために自分を大切にしてくれると考えたの」
「言わば、私たちは貴方の『鎖』ね」
「………」
鬼殺隊や魔防隊なんてものは常に生死の瀬戸際にいるような仕事だ。
それに輪をかけて剣至はその体質と境遇故に自分の命を軽んじている節がある。
前々からそれを危惧していた天花は不満を覚えるが剣至のために恋との関係を認めた。
「天花はそれで良いのか?」
「うん、ケンくんのためだから」
その表情は決心したもので自分のためにここまでやる天花に何も言えなくなる。
「貴方に拒否権はないわよ」
「……どうせ何言っても変わらないのは知ってる。2人とももう決めてるんだろ?」
天花が立ち上がって剣至に近づいて、その体温を確かめるように抱きしめる。
「もう今日は時間も遅いから訓練は明日から参加することにしましょう」
「そうね。それに……改めてこのような関係になったんだから
恋のその挑発的な視線に天花はため息を吐きながらも恋に向き直る。
「ええ、そうですね。私も
2人の意図することが分からない剣至は2人を交互に見るが、2人は剣至を逃がさないと言わんばかりにそれぞれしっかりと手を握りどこかに連れていく。
「じゃあ先ずは汗を流しましょう。先ずはお互いに曝け出さないと」
「はい」
漸くナニをするか分かった剣至だが2人が掴んで手はぴくりとも動かず、そのままあらかじめ恋が人を避けさせていた十番組の温泉へと連れて行かれた。