年の瀬が近付いて来た頃、天元は産屋敷邸を訪れて…


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輝利哉様へクリスマス

師走も半ばに差し掛かっていたある日、宇髄天元は産屋敷家の御屋敷へ数ヶ月ぶりに訪れていた。

鎹鴉である虹丸を遣って予め手紙を送っていたおかげだろう。出迎えてくれた者に案内され、すぐに産屋敷輝利哉(お館様)が待つ座敷へと通された。

「やぁ、天元。寒い中よく来てくれたね。元気そうでなによりだ」

「ご無沙汰しております。まずは年の瀬に向けてご多忙のなか、お時間をいただきましてありがとうございます、輝利哉様もご壮健のようで何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

そう天元は頭を下げると、脇に置いていた包から御歳暮の熨斗が貼られた品物を差し出す。。

「こちら巷で話題となっております菓子でございます。御口に合えば幸いです」

「わぁ、ありがたく戴くよ天元。鬼殺隊を解散し幾分か経つというのに気を遣わせて申し訳ないね」

まだ幼いながらに落ち着いた態度が身についてしまった輝利哉だ。その笑顔も大人びて見える。

「あの無惨との決戦からもう間もなく2年経過しようとしておりますが、最近はいかがお過ごしですか?」

そう尋ねると輝利哉は半分ほど開けられたままの襖から覗かせている外の景色へ目をやる。

強まる寒気の影響か雲が立ち込めていて、雪が降り出してもおかしくない空模様だ。

「あの凄惨な戦いから、“もう2年”なのか“まだ(・・)2年足らず”と言ったほうがいいのか…。分からないくらい事後処理やらが遺っている者に対して経済的・精神的な支援に追われているけれど…少しずつだが『平穏』を噛み締めているところだよ」

そう天元へと戻した顔には穏やかな微笑みが浮かんでいた。

「それはそうと君のほうはどうだい、天元。奥方たちと楽しく過ごせているかい?」

そう言われると、出されたお茶をひとくち飲み深く一息つくと、輝石をあしらった眼帯がよく似合うその顔でしみじみと微笑みながら頷いた。

「えぇ、そりゃもうど派手に温泉巡りなどに行ったりしてますよ。

そうそう、先日用事があって東京の銀座辺りを訪れたところですね、ある大型店舗の前にドーン!と植えられた大きなもみの木が小さな贈り物の箱やら杖を模した小物や球状の飾りによって見事なほどにど派手に彩られておりました。

聞けば“クリスマスツリー”なるものだそうで。ご存知かもしれませんが他所の国で行われているお祭りである『クリスマス』の象徴のひとつらしいですよ。

買い物などを済ませた夕方頃からはそのクリスマスツリーをはじめ、街中のあちらこちらでと派手に電飾がピカピカと光り始めたのですよ。25日の“クリスマス”当日まで豪華絢爛に飾り立てるとのことで、我が邸宅でもでも真似をしたくなったほどですよ」

「『クリスマス』ですか。聞いたことがあるような気がします。もともとは宗教絡みでの祭り事だけれども、この国ではあまり宗教自体は浸透せずこのお祭りのほうが広まりつつある、と。派手好きの天元なら気に入りそうですね」

身振り手振りで話す天元に輝利哉は相づちをうちながらにこやかにそう返した。

「ええ、立ち寄った店でもそれに因んだ催し物が大々的に行われておりましてね。『家族や親しい者への贈り物に』などという垂れ幕がさがっていた売り場に様々な逸品が並んでおりました。

女房たちになにか買ってやるかと眺めていたところ、このような物を見つけました。本来なら『親しい者』という謳い文句に当てはめるのはおこがましいとは思うのですが、年配者として“クリスマスプレゼント”として贈らせてください。緑の袋が輝利哉様、赤い袋がお嬢様御二人のものです」

そう言いつつ、先程の包から赤そして緑の紙で包装された贈り物を計3つ渡した。

輝利哉が緑の包装紙を開くと深緑色の暖かそうな手袋が入っていた。残りの2つも同様の形状なので同じく手袋だろう。

「本来ならばど派手な真っ赤な衣装を身に纏った大振りのサンタクロースなる男が煙突から侵入して寝ている子供の枕元に贈り物をする、という忍顔負けの大仕事をやってのけるようですがね。いくらなんでもこちらでは行う訳にはいきません。なので私めが代役を務めさせて頂きました」

そう言うとニカッと茶目っ気たっぷりに笑う天元につられ、本来の子供らしい笑顔を輝利哉も見せてくれた。

「ありがとう天元。大切に使わせてもらうよ。」

「大切な御身体ですから、ご自愛くださいませ。少々早いですが、メリークリスマス、輝利哉様。」

 

「あぁ、メリークリスマス!」


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