腕や足の骨は折れ、内臓もいくつか傷ついている。
目の前で自身の大切な場所が燃やされている。
なんで俺は...こんな目に遭わなきゃいけないんだ...
俺はいわゆる転生者というやつで正直なんで俺が死んだのかも覚えてはいない。
気づいたら何故か見知らぬ場所にいて、親も兄弟も誰も周りにいなかったのがこの世界での初めての記憶だった。
「ここはいったいどこだ?」
身体は大体十歳前後くらいのサイズで手足は少し肉つきが足りなく細かった。
自身の体の状態を確かめながら周りの様子を確かめてみることにした。
「まずは誰かいないか探すか。あっちの通りを見に行くか」
俺は慣れない体を動かして周りを探索し始めた。
あわよくば誰かに助けを求められるかもしれない
しかしどうやらこの世界は平和ではないようだった。
探索を始めて一時間ほど人影は見つかるがそこへ向かうとその人影は皆すぐに逃げていってしまったり、いざ見つけたとしても武器を持ったような人ばかりで追い回されもした。中には口から火を吹いたり、人とは思えない怪力を持つものもいた。体が小さかったことが幸いし何とか逃げ切ることができた。
「いったい何なんだ...めちゃくちゃ物騒な人しかいないし、超能力が飛び交っているしどうやら俺がいた世界とは全く別物なのだろうか...」
こんなに荒れている世界で俺は生き残れるのだろうか、とにかく安全に生活をできる場所を探さなければ今にも死んでしまうだろう。俺は生活できそうな廃墟や食べ物を探すことを目的にした。
転生してから数年俺は何とか生き延びていた。あれから俺は何とか雨風が凌げる場所を見つけることができ、食べ物は命からがらいろんな人から盗んだりゴミを漁って上を凌いでいた。吐きそうにもなったが生きるためにはしょうがなかった。
逃げることにも慣れてきて武器を持っている人や超能力...どうやら聞くところあれは異能というらしいを持っている人からも逃げることができていた。
異能という言葉に少し覚えがあった。確か「僕のヒーローアカデミア」って漫画の個性が昔そんなふうに呼ばれていたような感じだったな。
そんなことから漫画の世界ならと俺は無意識に慢心していたんだろう。心のどこかで俺ならやれるのだと。でもそう甘くはなかった。
俺はいつものように食べ物を盗んで逃げていた
「あっ!待てガキっ!!」
後ろから怒号が聞こえてきてそれと同時に爆発音のような音が聞こえた。どうやら爆破に関する異能だろう。まあ似たようなやつからも逃げてきたから俺の足なら問題ないだろう
「俺の異能からは逃げれねえよ!!」
爆炎の中から出てきた男は逃げる俺の背中めがけて何かを投げてきた。俺はそれを見て体を逸らして避けた...しかし男が投げた物体は不自然な軌道で俺の背中に命中した。
「ぐっは...!!」
なんだ、避けられなかった!?背中が焼けた!?痛い!痛い!痛い!怖い!!
痛みのあまり俺は転んでしまった。
「俺の異能はマーキングをつけたものを追尾する爆弾が作れるんだよ。一つ一つの威力が小せえからてめぇみたいなガキを殺さずに捕まえるのに便利なんだよ」
追ってきた男がにたにたと気味の悪い笑顔で話しながら歩いてきた
「さて、逃げてる様子からも異能はなさそうだしあんまり高値じゃなさそうだけど売っぱらうか」
痛みと恐怖で動けない俺に男が手を伸ばそうとしたその時
「やめなさい」
そのセリフと共に可愛らしいエプロンを身につけた大柄の老人が壁を突き破りながら現れた
「なっ!?」
「ふんっ!!」
老人はその剛腕を振り下ろし俺に手を伸ばしていた男を地面にめり込む勢いで叩きつけた。
俺は目の前の光景に唖然としていると手についた汚れをはらっている老人がこちらへ話しかけてきた
「そこの君生きてるか?死んでるか?」
「あ...ぁ...」
「生きてるけど死にかけって感じか。まあいいか」
その言葉を最後に俺の意識は遠のいていった。
目が覚めると見知らぬ天井が目に入った
「ここは...?」
「目が覚めたかい」
声が聞こえた方を向くと俺を連れ去った男がいた。
「俺は...売られるのか?」
「売る?そんなわけないだろ。ここは孤児院だぞ」
孤児院?その言葉に首を傾げると
「ここは異能を持って生まれて迫害された奴らや身寄りのない子供を保護してる場所なんだよ。それで私が面倒見てるわけだ。今回君をここに連れてきたのも君が殺されかけているのをたまたま見つけたからなんだ」
どうやら運良く俺は助かったみたいだ。この人には感謝しても仕切れないだろう
「君いく宛はあるかい?ないならこの孤児院に来ないか?」
願ってもない話だ。命懸けで生きている俺には魅力的な提案であり俺はその提案を快く受け入れた。
「そういえば、あなたの名前は?」
「私の名前か?私は『白咲 花』どうだ可愛らしい名前だろ?」
筋骨隆々な老人からは信じられないような名前だ
「さて、私も名乗ったし次は君だ」
「俺の名前は,,,あれ?」
俺の名前って,,,どうして、なんで?思い出せない。
「わからない...」
「親がいない感じか。じゃあ私がが名付けてよう君の名前は...」
「孤児院『花園』へようこそ。これからここが君の家だ」
これが俺と先生、新たな家族との出会いだった。
それからの生活は豊かなものだった。ご飯は温かく布団は柔らかく周りを警戒する必要がなかった。そして何よりも他の孤児院の子供達のおかげだ。
「叶種お兄ちゃん遊んでーー!!」
「だめ!!お兄ちゃんは私と遊ぶの!!」
「はいはい、喧嘩しないの」
孤児院にいた子供たちはみんな俺よりも小さく先生を除けば俺が年長者だった。俺以外の子は三人でみんな異能持ち。一番大きくて五歳ほどで一番小さな子はまだ言葉も話せないほどだった。名前は上の子から『青谷 水湊』『赤城 火野子』『黄金井 雷市』かわいい弟妹分だ。異能で暴れ回ったり、武器を持っているような人たちとは違い先生や子供たちは警戒することなく触れ合うことができたためすり減った心を癒すことができた。
子供達と一緒に鬼ごっこや隠れん坊をして遊び、その様子を先生が一番下の子供を抱えながら笑みを浮かべながら見守ってくれていた。
あぁ、このままこの生活が続けばいいのに。
しかし、そう甘くはなかった。
先生が倒れた。
「先生具合はどう?」
「おお...叶種か...今日は調子は良さそうかな」
先生は高齢であったため体調を崩してしまっていた。先生は異能持ちで身体能力が高かったが歳には勝てず今まで無理をしていたのが一気に来たようだ。
「別に私は一人でも問題はないのだけれどね」
「俺を助けてくれたあなたを一人にするわけにはいかないですよ」
先生は自分の体の様子がおかしくなってすぐに俺たちを知り合いのところに預けようとしてくれた。しかし俺たちはこれを断った。
「先生を一人にはできない!!」
「お兄ちゃんがいかないなら私も手伝う!!」
「だっ!!」
他の子達も俺と同様に先生の身を案じて残ることに賛成してくれた。それから俺たちは自分たちで孤児院のことや自分や先生の生活のことをやり始めた。
先生の伝手から仕事をもらい一番下の子の世話を他の子に任せ生活に必要なお金を稼いだり、先生のアドバイスや子供達の手伝いのおかげで俺たちは前と同じような生活をすることができた。
その生活から数年後先生は亡くなった。老衰だそうだ。
「うう...」
「ぐす……」
「うわぁぁぁぁん!!」
いつか来ることはわかっていた。でもそれを受け入れることは難しかった。俺自身覚悟していたつもりだったが涙が止まらなかった。
「お兄ちゃん...これからどうするの...」
火野子が泣きながら俺に聞いてきた。もう頼れるあの人はもういないだから
「俺が先生の代わりになる」
亡き先生と同じように俺のような立場の子供達に手を差し伸べた先生に俺はなりたいと思っていた。先生のように異能はないがそれでも助けたかった。
「でも、俺一人じゃ難しいんだ。だから俺を助けてはくれないか」
俺は他の三人に問いかけた。
「「「僕(私)も先生みたいになりたい!!」」」
みんなの返答は力強かった。
それから俺たちは異能で孤立してしまった子供達を保護、そして守るためにそれぞれの異能を鍛え始めた。俺には異能がないから先生みたくなれるよう体を鍛えて、子供達を襲う異能持ちを相手に戦い実力を身につけていった。
数年後俺たち四人は多くの異能を持った子供達を保護することができるようになっていた。俺も二十歳は超えて身体は大きく逞しいものになっていた。異能持ちの三人は自分の力を使いこなしそれぞれの異能に似た子たちの世話をしていた。
異能持ちの子だけではなく搾取ばかりされている異能を持たない人たちのために食事を提供したり、異能持ちの集団から守ったりもしていた。異能持ちを保護していたことに反対する人たちもいたが俺たちはそれを無視して自分たちができる限りの範囲で子供達を保護していった。
「兄さん!炊き出しの準備できたから行くよ!」
「待ちなさい水湊!まだ私と雷市が準備できてないから!」
「姉ちゃんたち待ってよ〜!!」
「はぁ...子供達の前では先生と呼びなさい」
最近は異能持ちも俺たちの孤児院の周りに近づくことがなくなったおかげで平和になっていた。理不尽に搾取されている人も減り今までのような張り詰めたような雰囲気はだいぶなくなっていた。
孤児院の子供達には異能の扱い方やそれを決して悪用をしてはいけないように異能についての教育を行なっていた。そのおかげかみんな優しい子に育っていた。
「皆さん!たくさんありますので一列に並んでください!」
俺たちは今日も多くの人のために炊き出しを行なっていた。最初は警戒してあまり人が来なかったけど今では多くの人が利用してくれている。
「ん?」
「どうしたの先生?」
「いや、何でもないよ」
誰かがこちらを見て何か小声で話している気がしたが気のせいだろう
俺はそのまま気にせずにその日を終えた。
「せーの」
「「「「「先生いつもありがとう!!!!!!!」」」」」
「え?」
俺はいきなりのことで驚いてしまっていた。部屋には色々な装飾やいつもよりもちょっと豪華な料理があった。
「今日は父の日だからいつもお世話してくれてる先生に感謝を伝えようってみんなで決めたんだー!!」
「水湊にいちゃんたちと一緒に準備したんだよ!!」
俺は水湊たちの方に視線を向けると三人は照れくさそうにしていた。
「せんs...兄さんは異能もないのに一番体を張って頑張っててさ俺たちがまだ小さい時もたくさんお世話になったし」
「お兄ちゃんにはとても感謝してるんだよ」
「今までこんな感じでお祝い事みたいなことも忙しくてできなかったし」
あぁ、なんていい弟たちや子供たちを持ったもんだ。俺は本当に幸せ者だ。この世界に来た最初はもう明日にでも死ぬかもしれないと不安な日々だったけど本当にここまで生きていてよかった。
「お前ら...本当にありg」
幸せな日々は一瞬で崩れた。
ひどい頭痛がする。
「あ..れ...?一体何が...」
「お兄ちゃん!!よかった目が覚めた!!」
「何が..起きた....!」
俺が周りを見ると周りは瓦礫だらけだった。
「わからない!!でも..水湊が...!!」
火野子の横を見ると俺よりもひどい怪我をした水湊がそこにいた。
「お兄ちゃんを庇って...それで...」
どうやら俺は水湊に庇われそれで...クソっ!!!!俺は腑抜けていた!!平和なこの生活に慣れてしまていた!!俺のせいで!!
「!!それよりも子供たちは!!雷市は!?」
「他の子達はさっき避難し始めたから大丈夫」
どうやら俺が気絶していたのは数十秒だったみたいだ。とりあえず今はここから脱出して水湊の治療をしなければ。
俺たちは水湊を運んで外にでた。外には鬼の形相でこちらを睨む武器を持った人々がいた。
「悪魔が出てきたぞ!!」
「この化け物どもが!!」
人々が子供たちに罵声を浴びせ
「今までよくもやってくれたな」
「お前らもここで終わりだ」
武器を向けてこちらを恨めしそうに見てきた。
「待ってくれ!!今孤児院は崩れそうなんだ!!子供達の避難と水湊の治療を早くしないと」
「その原因が俺たちなんだよ」
「は?」
その言葉に俺の頭が真っ白になる。なんで...
「何でか教えてやるよ悪魔!!とある人が教えてくれたよ!!お前らが異能持ちを教育して異能を持たない奴らを支配しようとしていのをな!!」
「え?」
「それだけじゃない!!炊き出しに毒も混ぜ悪戯に人の苦しむ姿を楽しんでいるらしいじゃないか!!」
「は...?」
そんなはずはない!!俺はみんなのために!!
「待て!!それは何かの間違いだ!!俺たちは」
「死ねぇ!!」
武器を持った人のうち一人が襲いかかってきた。俺はそれをいなして気絶させた。それを皮切りに周りにいた人々が武器や異能で襲いかかってきた。
「火野子!!雷市!!お前らは全員連れて避難場所に逃げろ!!」
「お兄ちゃんでも!!」
「僕も戦うよ!!」
「水湊と子供を守りながら逃げるには敵が多すぎる!!俺は大丈夫だからさっさといけ!!」
俺のその言葉に二人は苦しい表情でみんなを連れて逃げていった。それを見送って俺は周りの奴らの方を見た
「俺たちは絶対に人を貶めようなんてことはしていない!!」
「うるさい!!悪魔の言葉に惑わされるな!!かかれ!!」
誰も聞く耳を持たなかった。誰も止まってくれない。
俺は数の暴力には敵わなかった。
腕や足の骨は折れ、内臓もいくつか傷ついている。片目も見えず呼吸も辛い。
「はあ...はあ...手こずらせやがって!!」
「こいつまだ生きているのか!?」
「こいつは化け物を匿う悪魔だ!!」
「孤児院に火を放て!!」
「逃げた先を吐かないなら殺してしまえ!!」
ああ...
何で...この世界は...こんなにも残酷なんだ...
何で...俺はこんな目に遭わなきゃいけないんだ...
何で...?
決まっているじゃないか
あの子たちは俺なんかを慕ってくれて
異能を人のため世のためというくらい優しいんだ
「異能持ち」だからというのが理由なだけで殺されていいはずがない!!
いつか生きていればきっとあの子らが理解される時が来る...!!
俺の役割は
たとえこの体が限界を越えようとも
たとえそれで俺が死のうとも
「ウオォぉぉぉおぉぉ!!!!」
「あいつまだ抵抗するぞ!?殺せぇ!!」
水湊...火野子...雷市...孤児院のみんな...
またね...
そこには誰も立っていなかった。あるのは戦いの跡。大量の血の跡や倒れている人、焼けた建物ののみだった。
「ふむ...異能を育てていると聞いて襲わせてみたがほとんど逃げられてしまったのか。せっかく良い異能が手に入ると思ったんだがな...おや?」
「ふふふふ...こいつは面白いものを見つけた....!!」
そういうとスーツを着た男は一つの遺体を持って姿を消した。