「今週家の片づけ手伝ってくれないか?」
それは親戚の和樹さんからの電話だった。
細かい内容としては弟の家族がなくなり家を引き継いだ、しかし売るために部屋を片付けないといけなかったが仕事で忙しくできそうにないので代わりにやって欲しいとのことだ。
1階は終わっているため2階の3部屋を大きな家具以外1階に降ろしてごみの分別して次の日トラックに積みこみをしてほしい。
手伝ってくれたら10万円、友達とやってもいいけどお金は分けてくれと。
部屋を片付けるだけで10万円大学生でお金のなかった俺にとっては美味しい話だった。
「片づける部屋は物が多いですか?」
「そこまで多くないよ、3人家族だったし1階に運ぶのは大変だと思うけど、家は電気通ってるしそのままベット使って泊ってもいいよ」
「やります」
「助かるよ、今週9時頃に迎え行くね」
1人でやるか悩んだが時間のことを考えて親友とやることにした。
そうと決まればと今川透に電話をかける。
「はいもしもし?」
「やあ親友元気かい?」
「気持ち悪いな、そんな言い方したことないだろう」
「突然だけど焼き肉は好き?」
「好きだよ。」
「今度知り合いの家片付ける事になったんだけど、焼き肉奢るから、片付けるの手伝ってくれん?」
「なんで僕なんよ」
「俺は!君と片付けしたいんだよ!親友!」
「はーめんど!どのくらい部屋片付けるん?」
「2階にある3部屋を大きな家具以外1階に降ろして分別をしておしまい、片付けとトラックに積むので2日かな~?」
「2日かかるんか」
「どうだい焼肉は食べたくなったかい?」
「追加で日当1000万かな。」
「ジンバブエドルかな?」
「日本円だが。」
「高すぎるわ!やる気ないやん!」
「でいくらもらってんの?君がタダでやるわけないよね」
「5万」
「素直に言えよ」
「……10万」
「なら5万でよろしく」
値切るのには失敗したが人手が手に入っただけ良しとしよう。
土曜日和樹さんの車で送ってもらった、家の外観はきれいでそこまで古い建物ではないのだろう、ごみを置いておく場所を教えてもらい片づけを始めることにした。
「とりあえずどんな感じか一通り見てみるか」
「君見たことないのに2日とか言ってたのか」
透がなぜか怒っているがそれは無視して片づける場所を確認することにした。
2階には言われていた通り3部屋あり階段をのぼって目の前、そのすぐ横、左側を向き少し廊下を歩いたところにあった、部屋の中を確認したところ。
置いてあったもの的に寝室、物置、子供部屋のようだった。
あくまで中を見た感想だったからあっているかはわからないが、きれい好きだったのか部屋の物は整理されており容器などに入っているため片づけるのは楽そうで助かる。
しかし子供部屋だけ床にお絵描きの紙が散らばっておりその上に顔が隠れるくらいの大きさをしたクマのぬいぐるみが置いてあった。
「なんか特殊な散らかし方だな」
「子供なんてそんなもんでしょ、紙の上に重りを置くのは理にかなってるよ」
「そんな考え方もできるか、どこから始めようか?」
「物置からやろうよ、めんどくさい場所は先にやりたいし」
透の意見を聞き物置、寝室、子供部屋の順番に片づけをすることにした。
片づけは順調に進み、本当に2日くらいで終わりそうで、これで10万はコスパがいいと思うくらいだった。
物置と寝室を片付け終わり子供部屋に入ろうとした時、子供部屋が少し開いていることに気づいた。
閉めたと思ったんだけどな、そんなことを考えていた時動く人影が扉の隙間から見えた。
「透?」
「なに?」
透の声が俺の後ろから聞こえるなら今俺の目に見えた人影は誰だ?。
「子供部屋に誰かいるかも」
「君は何言ってるんだ?最初に見たとき誰もいなかったでしょ」
「でも扉の隙間から人の動く影が見えたんだよ!どこかに隠れてたのかもしれない」
「ただの気のせいだろ、いるわけないよ」
透はそんなことを言いながら子供部屋に入っていく、部屋の中は最初に見たときと同じ状態だった。
押し入れの中やベランダを確認し終わり誰もいないことがわかった透はあきれた顔で体を1回転させ両手を広げる。
「ほら誰もいないですよ」
「ビビりですまんね」
最後の行動にイラッとしたが言い出したのは俺なのでなんとか耐えることができた。
「光の反射でそう見えただけでしょ、人がいるわけないんだから、ほらぬいぐるみもそういってるよ」
イルワケナイヨとぬいぐるみで顔を隠しながらおちょくってくるこいつは煽りの天才なのだろう。
「さっさと終わらせようぜ怖がりさん」
そんなこともあったが無事全部屋の片づけを終わらすことができた。
「お前呼んでよかったわ、2日で終わりそうだわ」
「片づけって言っても整理されてたから運ぶくらいだったし集めるのがハンガーにかかってる服や本棚の本くらいで助かったね」
2人で1階に集めたごみを見て仕事の実感を味わっていた。
燃えるか燃えない、服や本、売れそうな物くらいしか分けてないから明日文句言われるかもしれないがうちは業者じゃないから我慢してほしい。
「飯と風呂行こう~お腹すいちゃったよ」
「そうだな、閉まる前に行かないとな」
俺たちは歩いていける場所でご飯とお風呂を済ませベットを借りて寝ることにした。
「モウネチャウノカイ?」
夜中そろそろ寝ようとしていた時、透がぬいぐるみを使って話しかけてきた。
「子供の物で何回も遊ぶのはさすがにどうかと思うぞ」
「そっくりそのまま返すぞ、帰ってきたらぬいぐるみが違う場所にあったってドッキリだろ?昼間のお返しか?」
「は?俺は燃えるごみのところ置いてから触ってねえぞ?」
「またまた~わざわざお絵描きの上に置くなんてめんどくさいことしたね」
「何言ってんだ?まじで知らんぞ」
「……ちょっとついてきて」
透が首をかしげながらごみを置いた部屋に歩いていく。
「ごみ袋が倒れてきただけじゃないか?」
「そっかそうかもね」
部屋に入って見た光景に俺は驚いた、そこにはまるで片づける前に見た子供部屋のようにお絵描きの紙が散らばっていた。
「この上にぬいぐるみが置いてあったんだよね」
俺は何もしていない、こんなことを言ってきた透もしていないのだろうならなぜ?疑問が頭を駆け回るが答えは出そうになかった。
「……さっさと片付けよう」
「そうしようかお休みクマ君」
考えるのはやめてごみ袋に紙をしまいまた倒れるとめんどくさいからとぬいぐるみは袋から出しておくことにした。
深夜、トイレに行って部屋に戻ろうとしている際、ガサ……ガサ……異音が聞こえ足を止めた。
足を止めても音は鳴っている、俺は音のなる方に向かい部屋の前で止まる、そこはごみ置き場の部屋だった、恐る恐る扉を開く。
その部屋の中では小学2年生くらいの子供がゴミ袋を開けようとしていた、他人の家で真っ暗の中ごみを漁っている時点でおかしいのだが、不思議なことにその子の体が少し光っている、体の輪郭が蛍のように光っているのだ。
子供は袋を開け中の紙を取り出して喜んでいるようだった。
「なにやってるんだ?」
声に驚いたのか小さい背筋が伸びあがる、そこからゆっくりこちらを振り返る。
「あなた誰?これは亮太のだよ」
目の前にいるなにかはごみ袋から取り出した紙を体の後ろに隠しながら問いかけてくる。
体に見える光を除けば自分の物を取り上げられないように隠す子供対親の構図である。
泥棒じゃなかったことに喜びたいが目の前にいる人とは言えない何かに会えてうれしいわけでもない、でもこの二度とないであろう状況を楽しもうとする自分がいる。
「俺は春樹、亮太君ってのはここに住んでた子供?」
「そうだよ、でも帰ってこない」
「亮太君は亡くなったよ、ここには帰ってこない」
「え?」
子供の目が大きく開かれる、目を見ながら話しているからわかるが顔やしぐさは人そのもので、今も人の子と話している気分になる。
「交通事故で亡くなったんだよ、俺たちはここの片づけをお願いされたんだ」
「そっか……もういないんだ」
「君は何なんだい?」
「私か……私は彼へのプレゼントのクマのぬいぐるみで、5歳からの友達でもあるが、亮太の魂の一部だよ」
「魂をもらうとかそんなことできるのか?」
「怖がらなくていいよ、君からもらうことはできないから、亮太が私のことを大切にしてくれたからできたことなんだ、初めて私をもらった時からずっとね」
「大切にしたらどの家庭でも生まれるものなのか?俺のところにはいなかったけどな」
「亮太には友達がいなかった、1人で遊んでて1人で楽しんでて1人で悲しんで、友達が欲しいって泣いてた、だから私は彼の友達になるため生まれたんだよ」
「へぇ不思議な話だね、でこれからどうするつもり?」
「これから……」
この子はこれからどうするのか、彼がいなくなっても存在している、存在しているが必要とされていない、悲しきものになってしまっている。
「まあそれはいいとしてせっかく集めたごみを散らかすのはやめてほしいな」
「ごみじゃない!」
「いいやごみだ、そんな大きな声で否定してもそんな泣きそうな顔をされても答えは変わらない、物の価値感は生きてる人が決めるものだ、どんな思い出のある物でも必要としてくれる人がいなければ全部ごみなんだよ」
「…………」
唇を嚙み両手を強く握ってうつむいてしまった、こうなるくらいならよくある悪霊とやらになってほしかった、ここまで人を真似られると放っておくことができなくなる。
「成仏してもらいたいが必要なことはある?」
「……亮太に会わせてほしい」
「できてもお墓くらいだけどいいか?」
「それでいい、せめてこの目で見たいんだ」
子供は言い終えるとぬいぐるみに吸い込まれるように消えていった。
光はなくなり真っ暗な部屋に俺は立っている、目の前にある散らばった紙たちが夢ではないと教えてくれる。
「誰に言っても信じてもらえないんだろうな」
あんなに話していたのに透は起きてこないから聞こえてすらいなかったのだろう。
明日お墓の場所聞かないとな、そんなことを考えながら紙を片付けた後寝室に戻ったが透は気持ちよさそうに寝ていた、起こしたい気持ちを抑えながら俺は寝た。
次の日起きた透に昨日の夜うるさくなかったかと聞いてみたがなにも聞こえていなかったそうだ。
ごみをトラックに乗せてる時ぬいぐるみをもらっていいか聞いてみたら好きにしていいよと言ってもらえ無事回収することができた。
その際透に「クマちゃん好きになっちゃったのかな?」とからかわれた、約束事をしてなかったら誰が持ち帰るかこんなもの。
すべての作業が終わり和樹さんからお金の入った封筒をもらった時、お参りはしておきたいという理由でお墓の場所を教えてもらい、透とお金を分け合った。
次も呼んでねと言われたがそう何度もなくなる親戚のほうが恐ろしいことにこいつは気づいているのだろうか。
片づけを終えたその日に俺はぬいぐるみとお墓に向かった、さすがに手に持つのは無理だったのでリュックの中にしまって持っていく。
お墓は誰かが管理しているのかできたばっかりなのかきれいな状態だった。
お墓に水をかけぬいぐるみを横に置き、線香に火をつける。
部屋は掃除させてもらいました、あなたの友達をつれてきましたと伝えるように念じる、こんなこと親が知ったら悲しみそうだけどまあいっか。
報告が終わった後にぬいぐるみを見るが変わったところはない、そもそも変わることはあるのか霊感なんてものは持ってないからわかるわけもないと考えていると。
「ありがとう」
魂の一部というくらいだ、あの世があるかは知らないが同じところに行けるだろう。
戻ってこられても困るしもう必要のないものになったぬいぐるみは燃やすことにした。
あの夜起きたことは本当にあったことなのか誰にも確かめようがない。