異世界セカイ   作:龍狐

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 長い間お待たせいたしました。
 楽しみにしてくれたごく少数の方9000字くらいしかないですが、続きをどうぞ。


24 俺は見つけたんだ、この島で

カイト「おい、お前たち…、一体どうした?」

 

一歌「あ、カイト…それに、メイコ…?」

 

 

 温泉施設への来訪が決定して意気消沈していたら、いつの間にかカイトと、そして初めて会うメイコがそこにいた。このセカイのメイコって、画家みたいな恰好してるんだ。でも、実際画家なんだろうな、ルカが料理人だったように。でもトラブルメーカーって聞いたけど、全然そんな感じしない…。

 

 

メイコ「始めまして。このセカイのメイコよ。レンとリンにはもう会った?」

 

一歌「あ、うん。会った、よ…」

 

 

 そういえばこのセカイのリンとレンに会うのって今のが初めてだったけど、金魚草のインパクトが強すぎて初めての挨拶すらできてなかった。

 また会ったらちゃんとしなきゃ…

 

 

メイコ「そういえば、ここで皆なにをしてたの?」

 

穂波「あ、えっと、お兄さんの記憶映像を見てて…それで今、金魚草?のことで…」

 

メイコ「金魚草のことね!可愛いわよね!あのギョロリとした目なんて特に!」

 

咲希「―――へ、へぇ~…」

 

志保「そ、そうなんですね…」

 

 

 このセカイのメイコもそっち側のタイプか…。どこをどう見ればあんな不気味に鳴く(泣く)金魚を、しかも動物なのか植物なのかもわからないものを「可愛い」と言えるんだろう…。

 もしかしてカイトも…私――私たち――がカイトにそんな表情を向けると、カイトは不服そうな顔をした後にため息を吐いた。

 

 

カイト「安心しろ。俺もアレのことは不気味だと思ってる」

 

メイコ「え~?可愛いじゃない。どこに不気味な要素があるの?」

 

カイト「全てだ」

 

 

 あ、良かった…。このセカイのミクやルカもあの金魚草に対して何の反応も示さなかったしこのセカイのバーチャルシンガーたちってみんなそうなのかと思ったけど、違ってほっとした…。

 

 

一歌「(これ以上この話題を続けても疲れるだけだ…)そ、それじゃあ記憶の続き見ない…?」

 

レオニミク「そ、そうだね…」

 

兄「あ、金魚草の方はもういいの?」

 

一歌「うん…」

 

兄「じゃあ続きいくよー」

 

 

 お兄ちゃんの一言で記憶映像に全員で目を向けると、記憶映像が再開された。

 ……あれ、お兄ちゃんが再生マーク押してるのに、何の反応もないんだけど…

 

 

兄「あれ、動かない?え、なんで?」

 

異世界ミク「記憶の精霊さんの不況の買ったわけでもないのに、なんでだろう?」

 

レオニリン「もしかして、壊れちゃったとか?」

 

兄「いや、精霊に壊れるっていう概念はない。でも、記憶の精霊が存在を保てなくなるとしたら、この宇宙の全知的生命体が滅びない限りあり得ないし」

 

 

 さらっと怖いこと言わないでほしい、本当に…!

 じゃあ結局、記憶映像がお兄ちゃんの操作を受け付けないのなんで―――

 

 

兄「あ、動いた――」

 

 

 

―――一方その頃。

 

 

 

 

 ―――? 

 え、なにこれ?なんか急に画面が変わって夜になったんだけど。映像がフェードインしていくとそこに映っていたのは――ヴィヴィさん!?と、知らない女の子…?

 

 

兄「あ、この子って…」

 

志保「え、知ってるんですか?」

 

兄「うん。違う村の宿屋兼食堂の娘さんだよ。でも俺がこの子と会ったのは少し先のはずなんだが…」

 

 

 そう言って首をひねるお兄ちゃん。本当に、なんでお兄ちゃんの知らない記憶が、しかも勝手に映し出されるんだろう…。

 

 

 ――森の奥深くに迷い込んだヴィヴィは、焚火後を見つけ、夜を明かそうとしていましたがそこでモンスターに襲われてしまいました。しかし、突如響いた笛の音に驚き、モンスターは逃げ出していきました。

 ヴィヴィがその音に驚いていると、茂みの奥から、一人の女の子が出てきました。

 

 

 なんかナレーション始まった!?

 え、いきなり女の人の声でナレーションが流れたんだけど。どういうこと?いや、状況分かりやすくていいんだけど、なにこれ?

 

 

ルカ「記憶の精霊さんが気を利かせてくれてるのね」

 

咲希「ルカさん!?」

 

 

 声がした方に振り向くと、いつの間にかルカが小屋の中にいて私たちの後ろにいた。

 

 

レオニリン「ルカ姉いつの間にいたの!?」

 

ルカ「さっきみんなに声を掛けてからその後に入って来たわよ?でも皆金魚草のことに夢中だったから気付かなかったのね」

 

穂波「あのときすでにいたんですね…。全然気づきませんでした…」

 

ルカ「大丈夫よ。それより続きみましょう。ちゃんと見ないと」

 

 

 ルカの言葉に少しオロオロしながら映像に意識を移すと、とてもいいタイミングで映像が再開した。記憶の精霊さん、改めてすごいな…。

 

 

茂みから出てきた少女『大丈夫っ!?ってウソッ!女の子!?』

 

ヴィヴィ『―――』

 

茂みから出てきた少女『心配しないで!さっきのは笛の音。私は、この近くにある村に住んでるんだけど、大きな音を聞いて心配になって来たんだ』

 

ヴィヴィ『ありがとうございます』

 

村娘『ううん、それよりどうしたの、こんなところで!』

 

 

 それから、ヴィヴィさんは自分がここにいる経緯を説明してくれた。

 お兄ちゃんと別れた後に訪れた村で【ターナ】と名乗る女性と男性の二人組と会い、握手を交わした途端に意識が朦朧とし、気が付いたら牛車ぎゅうしゃの中にいて二人組のうちの男性の護衛依頼を受けていたことになっていたらしい。当然ヴィヴィさんにはそんな記憶はなく――、

 そしてその後にゴブリンの群れに襲われて、なんとか撃退したらその男性に背後から襲われて崖から落ちてしまったらしい。

 

 

レオニミク「握手したら意識がなくなっていつのまにか護衛依頼を受けてたって…そんなことあり得るの?」

 

穂波「魔法でも使わない限りあり得ないんじゃ…?」

 

咲希「異世界で魔法が使えるの、お兄さんだけなんですよね?大罪竜は別にしても…」

 

兄「あーうん。俺もこのときまではそう思ってたんだけどなぁ…」

 

志保「え、それってどういう――」

 

兄「まぁ、続き見れば分かるよ」

 

 

 お兄ちゃんの意味深な言葉に戸惑いながら映像を見ると、ヴィヴィさんと女の子はもうすでに女の子の村に向かって歩き出していた。

 そこでお兄ちゃんがスキップマークをタップすると、二人は村に到着していた。女の子の家と思わしき場所に到着すると、そこはかなり大きな一軒家だった。お兄ちゃんがさっき言っていたように、宿屋兼食堂と言うだけあって本当に大きい。

 

 

村娘『ここが私の家』

 

ヴィヴィ『大きな家だね』

 

村娘『普段はお店をやってるんだ。お客さん、今はいないから。あがってあがって』

 

 

 二人が家に入ると、今度は自動的に映像がスキップされて女の子とヴィヴィさんは机を挟んで対面に座っていた。そして、ヴィヴィさんが座っている側の机にはシチューと牛乳が置かれていた。

 奥に受付カウンターみたいなのがあるし、一階の方かな…?

 

 すると、女の子の方からこの島の状況が聞くことができた。

 

 

村娘『あの光が出てから、わたしのお母さん急に体調崩しちゃって。寝たきりなの。島中がおかしくなって、村の間でも険悪なんだ…。こんな状況じゃ、お店もできないから、遠慮しないでゆっくりしていってね!』

 

ヴィヴィ『ありがとう』

 

村娘『せっかくだから楽しいお話がしたいな!』

 

 

――ヴィヴィが島の外から来たことを知ると、村娘は眼を輝かせながら話を聞いてきます。

 この島はとても閉鎖できなため、彼女は外の世界に憧れがあるようでした。あまり多くを知らないヴィヴィでしたが、彼女が熱心に聞いてくれるので楽しい気持ちになりました。

 

――ですが、村娘の表情は、ヴィヴィがある話をした途端に変わりました。

 

 

 あれ、なんかナレーションの雲行きが変わった…?

 

 

ヴィヴィ『それでね、一番不思議なところが、封印都市ルバルドラムって言う場所なんだけど。封印都市って名前の通り、街全体が結界で覆われてるんだ』

 

村娘『結界…?』

 

ヴィヴィ『うん。この世界には、【大罪竜】って言うすっごく大きくて怖い竜が7匹いるんだけど、そのうちの3匹の素材を使って結界が張られたんだって。800年くらい昔に』

 

村娘『す、すごいんだね、【大罪竜】って…それに、結界って…なんだか魔法みたいだね…』

 

ヴィヴィ『そうなんだ。でも、一年くらい前にその結界が急に壊れて、1000体のモンスターの襲撃未遂があったんだ』

 

村娘『1000体のモンスター!?それって大丈夫だったの!?』

 

ヴィヴィ『うん。未遂だったから、侵入してくる前に結界が復活して大惨事には至らなかったんだ』

 

村娘『そうなんだ…』

 

ヴィヴィ『本当に…すごかったな、ネクロさん』ボソッ

 

村娘『ヴィヴィちゃん?』

 

ヴィヴィ『あっ、なんでもないよ』

 

 

 島の外に関する話題で、封印都市のことも出てきた。ヴィヴィさんは当時のことを思い出してたようで、微笑みを浮かべているけど…それ、壊した人と直した人同一人物お兄ちゃんです。

 ヴィヴィさんの微笑みを見る限りお兄ちゃんに対する好感度は上がっているように見えるけど、マッチポンプなんだよなぁ…。それにお兄ちゃんほんにんがマッチポンプしてる自覚がないからなおさら質が悪い。

 

 

志保「お兄さん…」

 

ルカ「陽介って、本当に罪作りよねぇ…」

 

兄「え、まぁ確かに結界壊しましたけど…」

 

穂波(ルカさんそういう意味で言ったんじゃないと思うけど…)

 

カイト「諦めろ。コイツの察しの悪さは筋金入りだ」

 

 

 カイトが穂波の表情を見て辛辣な評価を…。確かにお兄ちゃんの察しの悪さは筋金入り――というかそんな言葉では収まり切れないほどに悪い。

 

 

村娘『島の外にも、そんな不思議なものがあるんだね…。ここだけじゃないって分かって、少し安心した』

 

ヴィヴィ『…そういえば、ここに来る途中森の中でオーロラが光る玉になって、急に雷を落としてきたんだけど。それも…?』

 

村娘『オーロラが…!?そんなことがあったの…?少し前までこんなこと、なかったのに…』

 

ヴィヴィ『……』

 

村娘『…やめよう!この話は。それより、もっと楽しい話を教えてほしいな!』

 

ヴィヴィ『うん。そうだね』

 

 

 

―――その後帰り道を教えてもらったヴィヴィは、翌朝には浜辺へ戻ることに決め、ここで一晩を過ごすのでした。

 

 

 そうナレーションが続いたけど、それよりも気になる情報があったよね、今?

 

 

一歌「え、今、ヴィヴィさん変なこと言ってなかった?」

 

レオニミク「オーロラが光る玉になって雷落としてきたって…」

 

兄「あぁ、それは、ほら…まぁ」

 

一歌・咲希・穂波・志保・レオニミク・レオニリン「「「「「「――――」」」」」」

 

 

 

 それを聞こうにもお兄ちゃんは映像を指差してしどろもどろな回答をするだけだった。

 「見た方が早い」って言いたいのかな、これ…?

 

 

 

~翌朝~

 

 

 

―――翌日、村を出たヴィヴィは村娘に案内してもらい、途中までついてきてくれました。

 

 

村娘『この道を行くのが早くて分かりやすいけど本当に大丈夫かな…?ごめんね。本当は一緒に行ってあげたいけどお母さんを置いていけないから…』

 

ヴィヴィ『ううん、いろいろありがとう!』

 

村娘『昨日…ヴィヴィちゃんを騙した人、…多分港の人たちだよ』

 

ヴィヴィ『港の人…?』

 

村娘『うん。怖い人たちが住んでいてね。ときどき村に来て、少しずつ食べ物とかを持って行っちゃうの。怖いから逆らえないっていうのもあるんだけど、港の人たちは、この騒ぎの原因を解決するって言ってて、村のみんなはそれに期待している気持ちあるみたい。』

 

ヴィヴィ『騒ぎの原因って…“魔女”って呼ばれている人たちのこと?』

 

 

 魔女…またその言葉が出てきた。

 最初の村でもその魔女って人たちが恐れられてるみたいだったけど、魔女って聞くと“魔法使い”のイメージがあるけど、でも異世界エクスバハマルにはお兄ちゃん以外【大罪竜】以外で魔法の要素は――、

 

 

 あ、でもさっきお兄ちゃんがなんか意味深なことを言ってたし、オーロラの件もあるし…なんだか分からなくなってきた…。

 

 

村娘『そう…本当のことは何も分からないんだけどね。わたしは、あいつらがヴィヴィちゃんにしたこと、許せないしね!とにかく、気を付けてね!』

 

ヴィヴィ『絶対また会いに来るから、改めてお礼をさせてね』

 

村娘『ふふ、楽しみにしてる』

 

 

 そこでヴィヴィさんは女の子と別れて前に進んだ。

 そしてしばらく前に進むと―――、

 

 

ヴィヴィ『わぁ…!モフモフだぁ…』

 

 

 そこには、ヴィヴィさんの身長より1.5倍ほどの大きなモンスターがいた。

 手や足はもちろん、顔や頭の上にある垂れ耳、マフラーを巻いたかのような首、尻尾まで、あらゆるところが白色の体毛で包まれたモンスターだった。それに垂れ目でとても可愛い……――けど、異世界のモンスターなだよなぁ…

 

 

咲希「わー!可愛いー!モフモフだー!」

 

レオニリン「それにおっきー!あたし、あのお腹で寝て見たーい!」

 

ルカ「このモンスターってト○ロみたいよね」

 

志保「…まぁ、確かにそうですね……って、一歌?」

 

 

 こんな可愛い見た目してても中身は硬翼獣みたいな害獣なのかと思うとやるせない。見た目詐欺が酷すぎて、本当に異世界って…

 

 

志保「一歌?」

 

一歌「えっ、あっ、な、なに!?」

 

志保「何度も呼んでも返事がないから気になったんだけど…どうしたの?」

 

一歌「あっ、えっと、な、なんでもない!?」

 

志保「いや、それ絶対なにかある反応でしょ」

 

 

 ご、誤魔化しきれなかった…!

 すると、ミクが私の方に近づいてきて、手を握ってくれた。

 

 

異世界ミク「大丈夫だよ、一歌ちゃん。あのモフモフさんはね、異世界でも極一部の例外と言ってもいい程無害なモンスターだから」

 

一歌「そ、そっか…!ミクが言うならそうだよね!!良かった…!!本当によかった…!あんなきたないモノを咲希たちに見せられなかったから、本当に…!!」

 

咲希「い、いっちゃん…?」

 

穂波「本当に何を見たの、一歌ちゃん…?」

 

異世界ミク「あ、でも――」

 

一歌「―――?」

 

 

 ミクの続きの言葉になにか不穏な気配を感じていると、ミクが映像に視線を移した。私もそれにつられて見てみた。

 ヴィヴィさんがモフモフモンスターを通り過ぎると、突如上空から謎の光の玉が出てきた。

 

 

ヴィヴィ『昨日も見た光…!』

 

 

 そのまま謎の光がモフモフに吸い込まれていくと、あのモンスターの様子がおかしくなって――

 

 

モフモフ『ニャァアア!』

 

ヴィヴィ『わっ!』

 

 

 先ほどまで大人しかったはずのモンスターが、いきなりヴィヴィさんに襲い掛かって来た。

 

 

異世界ミク「暴走状態の時はその限りじゃないけどね」

 

一歌「ミグゥヴ…!!」

 

 

 やっぱりそのまま無害で終わらなかった…!!

 本当に異世界って…異世界って…!!――あれ、

 

 

一歌「……暴走状態?」

 

兄「そうだよー。今あのモンスターに吸い込まれたのは、オーロラの一部なんだ。それで暴走状態になったみたいで…」

 

一歌「そっか…それなら、良かった…」

 

志保「いや良くないでしょ」

 

レオニミク「一歌の感性がだんだんおかしくなってきてる…」

 

兄「…そういえば、この景色やモンスターにすっごく見覚えがあるんだ。俺の記憶通りだとこの後――」

 

 

モフモフ『ニャァアアア…』

 

ヴィヴィ『うぅ…さっきまでおとなしかったのに…あの光のせい?』

 

 

 映像を見ると、刀や銃を駆使してモンスターを撃退すると、さっき吸い込まれた光が蒸気のように漏れ出してあのモンスターは逃げて行った。

 

 

穂波「倒すと元に戻るんですね…」

 

咲希「あの子、すっごい頑丈なんですね。刀とか銃弾とかで攻撃されてるのに、全然ビクともしてないし…」

 

兄「あぁ、ヴィヴィの刀と銃は――あ、ここだここだ」

 

 

 お兄ちゃんがなにか言いかけると、映像では―――

 

 

ヴィヴィ『なんだろう、アレ…』

 

 

 そこには、3匹ほどのモフモフに集団リンチされてるなにかがいた。短い手足で殴る蹴るをしてその巨体で押しつぶしたりしていた。

 

 

ヴィヴィ『助けないと…!』

 

 

 それを見てヴィヴィさんはすぐに銃弾を撃ち込んで注意を自分に向けて目に見えないほど速い剣技でモフモフたちを撃退すると、急いでモフモフたちに攻撃されているナニカを視界に映すと――私たちも、ヴィヴィさんも動きを止めた。

 

 

ヴィヴィ『ネ、ネクロさん…!?』

 

一歌「お兄ちゃん…!?」

 

 

 モフモフに集団リンチされてるナニカの正体は―――お兄ちゃんだった。うつ伏せになって背筋をピンと伸ばして倒れているお兄ちゃんは集団リンチの影響で衣服が少しボロくなっていた。

 

 

一歌・咲希・穂波・志保・レオニミク・レオニリン「「「「「「――――」」」」」」

 

兄「そうだそうだ。この時にヴィヴィを見つけたんだよな。いやーほんと、無事見つかってよかったよ」

 

 

 この時点で心配されるべき人が何を言ってるんだろう。

 ていうか、救助するつもりが逆に救助されてるじゃんこれ!!締まらないよ、ほんと、お兄ちゃん…。

 

 

ヴィヴィ『ネクロさん、大丈夫ですか!?しっかりして―――』

 

兄(16歳)『…』

 

ヴィヴィ『……寝てる?』

 

 

 まさかの事実に一瞬ズッコケかけた。

 嘘でしょ、あんなにリンチされてる状態で寝れる普通?……と思ったけど、普段からのことだから別に驚くことでもなかったな…いやでもやっぱり起きようよ普通。

 

 

ヴィヴィ『ネクロさん!ネクロさん!起きて!』

 

兄(16歳)『あ、う……頼む、いか、ないで、くれ…!』

 

ヴィヴィ『…うなされてる?』

 

兄(16歳)『俺は、まだ……ん?』

 

 

 なにかうなされているようだったお兄ちゃんが目を覚ましてヴィヴィさんと目が合うと―――途端にその目がガバッっと開いて起き上がった。

 

 

兄(16歳)『ヴィヴィ!無事だったのか!!』

 

ヴィヴィ『う、うん…。それより、ネクロさんも大丈夫?』

 

兄(16歳)『あぁ。……それより俺は何で…あ、そうだ。昨日、ヴィヴィのことを探すのに体力を使い過ぎて、そのまま寝てしまったんだ…』

 

ヴィヴィ『ご、ごめんなさい。ネクロさんにも迷惑かけて…』

 

兄(16歳)『いや、とりあえずヴィヴィの安全が確認できただけでも良かった。ロロやココたちも心配していたからな。早いとこ、顔を見せてやるといい』

 

ヴィヴィ『ロロちゃんとココお姉ちゃんが…、うん』

 

兄(16歳)『あいてて……なんで俺ボロボロなんだ…?』

 

ヴィヴィ『ネクロさん、さっきまでモフモフのモンスターたちに襲われてたんだよ?』

 

兄(16歳)『え!?モフモフ!?どこどこ!?』

 

 

 そして、モフモフと聞いた瞬間さっきまでの痛々しさが嘘だったかのように目を輝かせて周辺に目を配って――痛みで体が崩れ落ちていた。

 

 

兄(16歳)『オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛…!!』

 

ヴィヴィ『ネクロさん、あんまり無理しないで…』

 

兄(16歳)『す、すまない…。モフモフと聞いてつい…。なるほど、だからあんな夢を…』

 

ヴィヴィ『夢?……そういえばネクロさんさっき魘されてたけど…(なにか、あったのかな…?)』

 

兄(16歳)『そういえばココには話したが、お前には話してなかったな。俺は故郷へ帰るための手がかりを探すためにこの島に来た。そしてそれは正解だったかもしれない。それに、モフモフに襲われてたって言ってたな。“故郷”と“モフモフ”…それで夢に出てきたんだ』

 

ヴィヴィ『故郷…もしかして、動物の家族が――』

 

兄(16歳)『かつて俺が父さんと母さんにねだってやらせてもらったり買ってもらったりしたカー○ィたち(のぬいぐるみ)と寝た日々を…!!』

 

ヴィヴィ『…?』

 

 

 ―――――。は?

 え、ぬいぐるみ?お兄ちゃんの部屋にはカービィ関連のぬいぐるみいやというほどあるけど、え、今それ出てくるの?

 

 

兄(16歳)『うぅ…カー○ィ、バンダナワド○ディ、リ○ク、カ○ン、ク○、チュ○ュ、ナ○、ピ○チ、グ○イ…。どれも俺と一緒に寝た大事な宝物…あのモフモフと、もう3年!3年も出会えてないんだ!だから、それで…』

 

ヴィヴィ『そ、そっか。とっても大事だったんだね…』

 

兄(16歳)『あぁ…ここ3年は野宿か一人で宿泊まりだったから、ここに来る前の寝る環境に近づいて、昔のことを思い出してしまったようだ…』

 

 

 いや、野宿と宿泊まりだったって言ってるけど、一階だけエルミリアさんとクレイリアさんと一緒に寝た(健全)よね?それカウントされてないの?してよ。

 

 

一歌「お兄ちゃんさ、一回だけとは言えエルミリアさんとクレイリアさんと一緒に寝たでしょ?」

 

兄「いや、あれは違うだろ。アイツには獣の内臓の代わりにされて俺がぬいぐるみポジションだったし、クレイリアには討伐されかけたんだぞ」

 

一歌「あ、うん。そうだね…」

 

志保「自業自得とはいえカウントに入ってないの鈍感すぎでしょ…」

 

 

 これもうなにを言ってもダメだ…。

 諦めて映像に目を移す。

 

 

ヴィヴィ『ネクロさん、大丈夫そう…?動ける?』

 

兄(16歳)『あー、回復の呪符も在庫切らしてるし、今日中に買わないと…。魔法はなんとか使えるが、せいぜい動ける程度にだな…。悪いが、モンスターの対処はお願いできるか…?』

 

ヴィヴィ『うん、任せて』

 

 

 と、言うわけで不格好ながらヴィヴィさんと合流したお兄ちゃんだけど――カッコ悪いとしか言いようがない…。

 本当になんなんだろう、毎度おなじみのお兄ちゃんクオリティ…。そして、お兄ちゃんは収納魔法を展開すると、そこから長い棒を取り出した。その長い棒の先端には、布が何重にも巻き付けてあった。

 

 

ヴィヴィ『なにもないところに穴が…!それに、その棒はなに…?』

 

兄(16歳)『亜空間魔法だな…。この中にいろんなものを収納できるんだ。で、これは槍だ。普段は先端が危ないからこんな風に巻き付けてある』

 

ヴィヴィ『すごい…。本当になんでもできるんだね。……あれ、その槍、どこかで見たことあるような…?』

 

兄(16歳)『そうか?既製品を買ったからそこら辺で売ってるようなものだぞ?』

 

ヴィヴィ『……そっか。そうだよね』

 

 

 あ、思い出した。あの槍、二回目にヴィヴィさんに会ったときに槍で空を飛ぼうとしてた時に使ってた槍だ…!ヴィヴィさん、記憶を消されてもあの謎行動のインパクトが強すぎてうっすらと記憶に残ってるのかな…?

 

 

兄(16歳)『それに、なんでもってわけじゃないが…。とりあえず、どこに向かうつもりだったんだ?』

 

ヴィヴィ『とりあえず道を教えてもらったから、一番最初の海辺に戻ろうと思ってるんだ』

 

兄(16歳)『なるほど…分かった。足手まといにしかならないが、とりあえず行こう』

 

ヴィヴィ『そうだね』

 

 

 そうして、筋肉痛のお兄ちゃんのペースに合わせて移動しているためヴィヴィさんの移動速度も遅いけど、確実に襲い掛かってくるモフモフを対処しながら進んでいくと――

 

 

咲希「あ、また光の玉!」

 

穂波「でもさっきのとは色が若干違うけど…」

 

 

 また空中から光の玉が飛んできた。まだなにかのモンスターに憑りつくつもりなのかな――と思った次の瞬間、光の玉が氷のつぶてを放ってきた。

 

 

一歌「え、あれって攻撃もしてくるの!?」

 

 

ヴィヴィ『はっ!えいっ!』

 

 

 光の玉が放った氷の礫をヴィヴィさんが避けると、接近しながら銃で光の玉を打って、最後に刀で斬ると光の玉は霧散していった。

 

 

ヴィヴィ『ふぅ…また出てきた…』

 

兄(16歳)『ヴィヴィも知っていたのか』

 

ヴィヴィ『うん。洞窟の中のオーロラがあの光の玉になって…雷で私のことを攻撃してきたんだ。私もってことは、ネクロさんも見たの?』

 

兄(16歳)『俺は炎とか風とかだったな。で、今のは氷…。やはり間違いないか…。ていうか、あれって物理攻撃も効くんだな。俺は魔法の剣で斬ったり撃ち落としたりしてたんだが…節約し損ねたな…』

 

 

 と、普通にスルーして話していたけど、私たちにとっては情報の渋滞過ぎて言葉を失う他なかった。今の光の玉からの氷って、間違いなく…

 

 

レオニリン「え、あれって魔法だよね!?」

 

咲希「うん!絶対そうだよ!さっきヴィヴィさんが言ってたように雷とか氷とかって!」

 

レオニリン「だよね!?なんでなんで!?ねぇ、陽にぃなんで!?」

 

兄「……もう、見てて分かったと思うだろうが。あれは間違いなく魔法の力。そして俺は…見つけたんだ、この島で。帰還の手がかりを

 

 

 お兄ちゃんの口から放たれた衝撃の事実。

 その時、お兄ちゃんの異世界冒険が大きく動き出す音が聞こえたのは、きっと、私の勘違いではない。

 

 

 

 

 




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