問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
今回一念発起して小説にチャレンジしてみました。
不定期、亀更新、処女作、駄文と三拍子超えて四拍子そろったダメ筆者ですが、生暖かい目で見てやってください。
疑問、批判、感想等受け付けております。
返信はできない場合があるかもしれませんが、寛容な心で対処して頂ければ幸いです。
とある邂逅
真っ白な病室。
その無機質で汚れ一つない部屋のベッドに彼は横たわっていた。
彼の近くにはおよそ凡人には理解し得ないだろう治療機器が所狭しとならべられ、また彼の身体にも同様の様々な治療機器が取り付けられている。
この光景を見るだけで、この世界の技術力がいかに優れているか容易に想像できる出来るだろう。
しかし同時に、それほどの技術をもってしても彼の病を止める手立てが一向に見つからない事実は、彼の病が人智を超えた物であることを如実に物語っていた。
シミ一つない彼の白い肌には焼け焦げたような黒い稲妻状の模様がいくつもはしり、今やその症状は身体全体にまで及んでいる。
便宜上の命名さえされない彼固有のその病は、時間とともに彼の身体を侵食し身体能力の低下を引き起こしていった。
末期に至っては立つことはおろか視ることや聴くこともままならない程の障害をひきおこし、彼の主治医や科学者たちは最早彼のことを死にゆくサンプル程度にしか考えてはいなかった。
そしてそんな彼自身も薄れていく意識の中で、しかしはっきりと自らの運命を理解していた。
齢わずか10を超えたばかりの少年とは思えない程冷静に、客観的に自らの現状を把握していた。
ここが己の死地であることを。
意識が今よりももっとはっきりしていた頃は惨めな自分を嘆き、死を恐れ、なぜ自分が生まれてきたのかと泣きながら考えたこともあった。
結局その時に答えは出なかったが皮肉にも意識さえ鈍り始めた今になってようやく、彼はその答えに辿りついたのだ。
ー自分が生まれてきた事に意味などなかったのだ、と。
その結論に辿りついた時彼は満足げに微笑むと、自ら死を受け入れるように思考を放棄し混濁の中へと消えていった。
そう、そのはずだった。
彼の耳がその音を捕えるまでは。
「…………………せん。」
最初はノイズか何かだと思った。
本来聴覚がいかれている彼の耳に何か音が届くはずはない。
ならばこれはそう、混濁した意識が引き起こした幻聴だと、彼は無理やりに解釈する。
「………………ありません。」
だがそんな彼の思い込みも虚しく、いやむしろそれに反比例するかの様にその音は意味のある言葉を紡ぎ始める。
鼓膜を越えて、神経を越えて。
まるで心の中に直接語りかける様に、その言葉は今にも沈んでいこうとする彼の意識を必死に繋ぎ止めていたのだ。
ー止めてくれ、俺はもう疲れたんだ。
彼を死なすまいと紡がれる言葉に、残された気力で彼は精一杯の抵抗を試みる。
思い出すのは何時だって同じ表情だ。
数多の高名な医者が彼に治療を施し、そして挫折していった。
数多の名の知れた科学者が彼の身体中を調べ回り、そしてその結論は毎回決まって同じだった。
そして手の施しようがないと諦めた彼らは、いつだって同じ言葉を口にするのだ。
『かわいそうに』と。
ウンザリだった。
人を憐れむような同情の視線が。
ウンザリだった。
毎回毎回訳の分からない治療という名の拷問を強いられ、そしてその結果が悉く裏切られていくのが。
ウンザリだった。
何よりありもしない希望に縋る事でしか、今を生きてけない自分自身の弱さが。
もう何もかも、投げ出してしまいたかった。
ーだからもう、俺に意味はいらない。
そんな彼の独白は、誰に聞こえる事も無く消えていった。
もう音は聞こえない。
やはりあの声は最期に自分の弱さが見せた幻影だったのだ。
そして何故か漠然とした物寂しさを感じながらも、今度こそ彼が意識を手放そうとした正にその時ー
「甘えるんじゃありません!」
今までの雑音が嘘だったのかと思える程クリアな声が彼の耳元で響き渡り、今度こそ完全に彼の意識は覚醒したのだった。
*
「ようやく…、ようやく見つけ出す事ができました。」
混濁から目覚めた彼は、先の言葉を発した本人を確認するためにベッドの右側を見やる。
彼が視線を運んだそこには、一見して人外であるとわかる女性がいつの間にか佇んでいた。
腰まで伸びた銀の髪に、背中に生える2対4枚の純白の羽。
整った顔立ちに、翡翠色の瞳。
誰もが心奪われるであろうその美貌を眺めながらも、しかし彼の思考は彼女の美しさでも、またなぜ視力をほぼ失った彼が彼女を視る事ができるかという事でもない、全く別の物にむけられていた。
そう、つまり
そんな彼の思考を読んだかの様に彼女はうっすらと微笑むと、しかし残念そうな表情のまま口を開いた。
「申し訳ありませんが、私の事を事細かに説明している時間はもう残されていないのです。最低限の仕事しかできない事をお許しください。」
そう一方的に語りかけると、彼女の手にはいつの間に取り出したのか黒いルービックキューブ程度の立方体の箱のような物が握られていた。
そして彼女が身動き一つ取れずベッドに横たわる彼に近づき、その箱を胸の中央付近に置いた途端、箱は目も眩む程のまばゆいの光をあげて彼の身体に吸い込まれていった。
彼女の言うところの最低限の仕事とやらが終わったからだろうか。
ホッと溜息をついた彼女はにこやかな表情を浮かべて彼に告げた。
「これで貴方の今置かれている状況は改善されるはずです。二、三日もすれば目に見える身体の症状も無くなっていくでしょう。」
たったそれだけ言い残すと満足したように彼女は背を向けて部屋を去ろうとする。
しかし数歩歩いたところで、彼女はそれが不可能であることを悟った。
なぜなら…
「まさか、ほんの数秒で適応するとは流石に思いませんでした…。流石にあの方のご子息でいらっしゃってもこれは予想外でございます。」
そこには彼女の翼をしっかりと掴んで離さない彼の姿があったから。
想定外の事態にも彼女は顔をほころばせながら振り返り、しかし確固とした面持ちで最期のメッセージを告げた。
「今私が何者かを貴方にお伝えしている時間はありませんが、しかし心配する事もございません。今後貴方の人生には必ず大きな転機が訪れます。その時、勇気と知恵、そして知的好奇心の導くままに貴方が正しいと思う道を進めば、きっと我々と相見えるでしょう。それまでは、しばしのお別れでございます。」
どこか寂し気な表情で言いたい事を言い残すと、彼女は彼の手をやさしく解き、そして病室を出ていったのだった。
この邂逅が、後に英雄と呼ばれる彼 大宮祖国が箱庭に赴くためのプロローグであることは、今の彼には知る由もないことだった。
はい、こんな駄文を読んでいただいてありがとうございました。
舌の肥えている方には稚拙な文章に映ったかもしれせん。
短い分ですが、読了ありがとうございました。