問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
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さて、今回の話は地味ですw
それでも構わないという心優しい方はどうぞお付き合いください。
翌朝、祖国はカーテンの隙間から射す日の光で目を覚ました。
祖国はけだるげな身体をゆっくりと起こすと、未だ眠い目をこすりながら、カーテンをあけ放つ。
空を見ると太陽はすでに高々と昇っており、窓の外では子供たちが集まって、何かの作業をしていた。
「だりぃ」
そう呟く祖国の身体には、昨夜の様な病気の症状はすでになく、病的なまでに白い彼の肌があるだけだった。
祖国は昨日ハンガーにかけておいた上着に袖を通すと、ぼさぼさの髪を掻きながら廊下に出る。
”食堂は…確か1階って言ってたっけ…”
と、あくびをしながら階段を降りる祖国。
昨日は疲労のあまり気にもとめ無かったが、この本拠はかなり広い。
今こそ主力を失い没落したコミュニティだが、昔の栄華を想像させるには今祖国のいる本拠や、昨日歩いてきた広大な耕作地は十分すぎた。
”盛者必衰か…。儚いもんだな。”
などと考えるが起きてすぐに暗い話題もどうかと自問し、結局祖国は白夜叉が用意しているであろう茶菓子に思いをはせる事にした。
そんな不毛な事を考えているうちに、祖国は食堂らしき場所に到着する。
ーが、
「誰もいねえじゃん…。」
なぜかそこには人っ子一人いなかった。
”まぁ、起きてくる時間を指定しなかった俺が悪いわなぁ”
と直接の原因が自らにある事を眠い頭で理解した祖国は、しぶしぶと言った様子で隣の台所へと入っていく。
そしてそこで適当な茶葉とティーセット一式を見つけ、いかにも手慣れた感じで紅茶をいれダイニングルームへ戻って来ると、祖国は
”この後どうするかな…”
と椅子にもたれ、今回も上手にいれる事が出来た紅茶を飲みながら今後の予定を立ていたのだが、
「そ、祖国様ですか?」
という後ろからの甲高い声に思考を中断した。
「ああ、そうだけど。どちらさんだ?」
「はい、私はここで主に給仕をさせてもらっている”リリ”といいます。」
”ああ、この子が黒ウサギが言ってた…”
と人知れず合点している祖国にリリは続ける。
「先ほど祖国様の部屋にお伺いしたのですが返事がなく、朝食を用意しようとここに来たら祖国様がいらっしゃたもので。」
「そうか、入れ違いになったみたいだな。」
「そのようですね。今すぐ朝食の準備をさせて頂きますので…」
「いや、朝食はいい。あと、もう紅茶も貰ってるけど問題ないか?」
「はい。他の子に頼まれたのですか?」
「いや、自分でだけど?」
という祖国の言葉を聞くと、今まで元気だったリリの顔が一変して蒼白になる。
「も、申し訳ありません!祖国様自らにお茶をいれさせるなどとんだ失礼を!どうか御慈悲を!」
「慈悲ってお前、俺を何だと思ってんだよ…」
「で、でも他の方が「祖国を怒らせると木星が落ちてくるぜ」と、子供たちに言って回っていましたし、黒ウサギのお姉ちゃんも否定していなかったので…」
”あいつら何時かシバく”
と心の中で祖国は誓うと、リリに向かってできるだけ威圧感の無いように笑いかけた。
「大丈夫だって。俺は基本的にギフトに頼り過ぎないようにしてるし、何よりそんな事でいちいち怒ったりしない。俺の事は出来るだけ特別扱いしないでくれ。」
「で、でもそれでは祖国様の面目が!」
「まあ、心の持ちようの話さ。あんまり気負うなよって事だ。」
「…分かりました。」
「それより黒ウサギたちはどうしたんだ?」
「黒ウサギのお姉ちゃんと他の方々は”フォレス・ガロ”とのギフトゲームの為に既に外出されました。」
「そういや、今日だっけか。」
「祖国様も観戦しに行かれますか?もしそうなら、道案内を用意させますが?」
「いや、俺はこの後白夜叉との用事があるからパスだ。」
「そうですか。何時ごろにお帰りになられますか?」
「んー、未定だな。遅くなりそうならまた連絡するわ。」
「かしこまりました。あ、食器は私が片付けておきますので。」
「そ、じゃよろしく。」
と祖国は空になったティーカップをリリに預けると、白夜叉の店に向かうべく、ゆっくりと本拠を後にしたのだった。
そして今、祖国はサウザンドアイズ支店の前に来ていた。
今日も不愛想な店員がせっせと箒で店の前をはいているのを見て、
”ご苦労なことで”
と思いながらその前を素通りし店の暖簾をくぐろうとしたその時、
「お待ちください、お客様。」
と、店員が箒を持ったまま祖国の前に立ちふさがった。
「お客様の御用件をお聞きしても?」
「茶菓子を食べに来た。」
「甘味処ならば反対の通りですが。」
「はぁ、ほんとお堅いよね。昨晩の件だよ。」
「昨晩の件とは?」
「白夜叉との決闘に勝った報酬だ。ったく、本当に融通が利かない奴だな。」
「これが私の素ですから。」
「疲れねーの?」
「仕事ですので。」
と言いながらも、祖国のからかっているかの様な態度に眉をひそめる店員。しかし、次の瞬間
「そんなしかめっ面するなよ?せっかくの美人が勿体ない。」
という祖国のいきなりの口説き文句(本人曰く社交辞令)に、女店員は顔を赤くし口をパクパクさせていた。
そしてそんな恥ずかしい言葉を吐いた本人である祖国は、さも当然といった様子で店員を見つめてる。
店員はいきなりの事に混乱して中々言葉を発せずにいた。
このままではらちが明かないと祖国が強引に入口を突破しようとしたその時、
「おお祖国よ。やっと来たのか。」
と奥から白夜叉が現れた。
「ああ、茶菓子を食いに来たぜ。」
「そうか、そうか。ならばこちらへ来い。」
といって、祖国を店内に招きいれる白夜叉。
「おんしが何時に来るか言わぬから、ずいぶんと待ちくたびれてしまったぞ。」
「悪かったよ。昨日は誰かさんのせいで疲れてたんだ。」
「ふむ、確かに黒ウサギのボディがエロすぎて、ついつい理性を失い、襲い掛かりたくなる気持ちを抑えるのに苦労するのはよくわかるぞ。」
「一ミリもかすってねえよ。つーか、お前昨日モロ黒ウサギに抱き付いてただろが。」
などと言う下らない会話をしているうちに、二人は昨日の白夜叉の和室に到着する。
何度見ても良いセンスだと祖国が部屋の内装を再評価していると、店員が二人にお茶と茶菓子を持ってきた。
律儀にも祖国の要求通り、紅茶とそれと相性のいいクッキーをつまみに出してくれていた。
祖国が嬉しさのあまり店員に笑顔で感謝を述べたのだが、なぜか店員は顔を赤くするとソッポを向いてしまった。
”こりゃまた酷く嫌われたもんだ。”
と内心祖国が苦笑していると、真面目な様子で白夜叉が切り出した。
「して祖国よ。念のために今回の褒美をもう一度確認しておこうかの。」
「ああ、俺の要求は人探し。探して欲しい人物は、俺に黒箱を譲渡した奴だ。」
「容姿は分かるかの?」
「昔のままなら、そいつは銀髪で翡翠色の瞳。背中には二対四枚の羽があった。」
「他に手がかりは何かないかの?」
「そういや、世界にいられる時間がもうないとか言ってたな。」
「ふむ…。ちと手がかりが少ないが…。まあよいだろう。サウザンドアイズの情報網を駆使して、それらしい人物がいればその都度おんしに報告しよう。」
「助かる。」
「なに、勝者に敗者が従うのは当然のことだ。それはそうとして祖国よ、黒ウサギのコミュニティはどうだ?」
「良いコミュニティなんじゃないか。あんな状況にいても全員が諦めず、前を向いて今を生きている。そしてそれを支えてきた黒ウサギも。尊敬に値するぜ。」
「では本格的にコミュニティに加入する気になったのか?」
「悪い考えではないと思う。だが今の俺はどこかに属するより、フリーの方が何かと都合がいい。客分という立場はうってつけだ。」
「確かにの。自分の時間を確保しつつ、いざとなれば黒ウサギたちに力を貸してやれる立場ではあるの。」
「そういう訳だ。ま、本格的にヤバそうなら加入もやぶさかでは無いな。」
「そうか…。くれぐれも黒ウサギをよろしく頼むぞ。」
「分かってるよ。」
「それともう一つ、おんしに頼みたい事があるのだ。」
「あん?」
「近々、サウザンドアイズの傘下である”ペルセウス”というコミュニティが大規模なゲームを行うのだが、おんしにはそのゲームに参加してもらいたい。」
「何でだよ?。」
「そのゲームの商品は、かつての黒ウサギのコミュニティの主力なのだ。」
「おいおい、ギフトゲームってのは、人もチップにできるのかよ。」
「ああ。そやつがいればコミュニティの復興も大いに前進するだろう。ゆえに、そのゲームは絶対に負ける訳にはいかんのだ。」
「俺が楽しめるレベルのゲームなのか?」
「いや、おんしが満足できるレベルではあるまい。だがおそらく、黒ウサギの所からも数名参加者が出るだろう。おんしには、そやつらが勝てる様に裏方としてサポートしてほしいのだ。」
「俺が直接手を下せば早いだろ?」
「それはダメだ。恐らくおんしがギフトゲームでほんの少しでも実力を出せば、ここら一帯ではゲーム参加を拒否されてしまうだろう。おんしの実力はそもそも最下層にあって良い物ではないからの。」
という白夜叉の忠告を聞き、祖国は頭の中でリスク&リターンを計算し終えると、
「…分かった。カステラ3本で手を打とう。」
と、最早おなじみに成りつつある茶菓子要求宣言を言い放つのだった。
読了ありがとうございます。
やはり今回は地味でした。
次回からペルセウス編に入ります。
哀れなルイオス君には生贄になってもらいますw
感想、疑問、批判まってます。
それでは今回はこれにて。