問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~   作:しましまテキスト

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こんにちは、しましまテキストです。

アップが遅れてしまい申し訳ありません。
今週は何かと用事ができてしまいました。

知らないうちにお気に入りが120件突破いたしました!
ありがとうございます!

さてようやく前話でゲーム開始が出来ました。
今回も祖国くんには暗躍していってもらいましょう。

それでは今話もお付き合いください。


手洗おう…

「不可視のギフトか~。いくらで売れるかな?」

 

そんな場違い甚だしい感想を抱きながらも、祖国は見えない敵を迎撃せんと気配を絶つ。

十六夜たちと別れた祖国が今潜んでいるのは見晴らしのよい大廊下の天井付近。

柱上部に施された無駄に凝った装飾で下からの死角が生じ、人1人が隠れるには十分なスペースが形成されていたのだ。

 

「見晴らしが良いって事はこっちからも敵を見つけ安いって事なんだぜ、ペルセウス諸君?」

 

そんな独り言を呟きながら祖国は自らの恩恵を使い元いた世界からストックしていた、今回においては反則級のアイテムを取り出した。

 

”俺がいた世界では光学迷彩なんてとっくに実用化されてんだよ。それならそれに対処するための道具もあって然るべきだろ?”

 

そして祖国が空間から取り出したのは何の変哲もないサングラス。

だがただのサングラスと侮ることなかれ。

これこそ祖国のいた日本国で開発された対ステルス用サングラス。

この開発により幾人もの覗き犯が逮捕され、男の夢もといアガルタが永久封印されたのだがそれは今回おいておこう。

 

祖国はこのゲーム開始前からある程度、不可視のギフトの性質とそれに対する攻略法の目星をつけていた。

 

”気配や足音等を絶つ方法は分からねえが、視認できない原理ならなんとなく分かる。おおかた、電磁メタマテリアルみたいに光の負の屈折を起こすことで光を迂回させてるんだろう。が、それには欠点がある…”

 

そう、この方法では互いにステルスしている相手を認識できない。

つまり、不可視の恩恵を持っているペルセウス兵同士でも仲間をお互いに視認できないのだ。

そしてこれは有事の際には味方の足を引っ張りかねない大きなデメリットだ。

仲間で互いに視認できず連携がとれなければ、最悪敵を取り逃がしかねない。

 

”俺だったらそれをどう解決するか?もちろん不可視の兵士の配置位置を工夫する。不可視の恩恵を持つ兵士には、”単独”で王宮の”各ブロックごとの”守りを命じるだろう。こうやって不可視の兵士同士を隔離すればいい。つまり一つの区画には必ず一人不可視の恩恵を持つ兵士がおり、そいつにさえ気をつければ知らないうちに資格を剥奪される事はまず無いって事だ。”

 

そして祖国はおもむろにサングラスをかける。

すると、

 

”おっ、ビンゴだ。”

 

そこには廊下の向こう側から武装した衛兵が歩いて来る姿があった。

 

祖国のサングラスは不自然な光の屈折を感知し、それを逆算する事により対象の姿を捕捉する機能をもっている。

もちろんこのサングラスでは光の色彩等は再現できず、得られるのは対象の位置情報と輪郭だけであるが、それだけでも今回は十分であった。

十分であるのだが…

 

”あの兜作った奴マジで空気よめよ…。”

 

と祖国は心底うんざりとした表情を浮かべる。

そして慎重に気配を絶ちながら手元の空間と兵士の局部(別名男の尊厳に関わる部分)の空間を恩恵でつなげると、なんと右手を力の限りそこへ叩きつけた。

哀れかな、祖国がハデスの兜を剥ぎ取りに近寄ると、不可視の兵士はあまりに理不尽な攻撃に口を開けたまま意識を失っていた。

 

そして兵士からまんまとハデスの兜のレプリカを強奪した祖国は、

 

「悪いな。恨むんなら、ご丁寧に首の後ろまで守ってるこの兜を恨んでくれ。」

 

と届くはずの無い言葉を衛兵に投げかけたのだった。

 

念の為に言っておくが、もちろん祖国はホモでもなければゲイでもない。

誰が喜んでムサイ兵士の局部を触りたがるだろうか。

少なくとも祖国にはその様な趣味は無い。

祖国も最初は首への手刀で、それこそマンガやラノベの中みたいにカッコ良く相手の意識を刈り取るつもりであった。

だがサングラス越しによくよく見てみると、ハデスの兜の親切設計であろうか、首の後ろまで丁寧にガードしてあるではないか。

もちろん兜内部に空間をつなげる事も出来るが、精密な座標設定は通常よりも多く体力を使う。

こんな所で無駄な消費は出来ないと考えた祖国は泣く泣く、そう泣く泣く(大事な事なので二度言いました。)兵士への局部攻撃を決行したのだった。

 

そして祖国は決心する。

 

”帰ったら手洗おう…”

 

 

 

 

 

 

そして今、祖国は飛鳥が陽動戦を行っている大広間へと来ていた。

飛鳥の戦況、戦い方、戦いに臨む姿勢などを第三者からの目線で観察すべく、祖国は大広間の二階からこっそりと観戦していたのだ。

もちろん、先ほど手に入れたハデスの兜を着けているため、誰かに目撃される心配はない。

 

そして肝心の祖国の評価はというと、

 

”うーん、戦略は悪くないが…。バリエーションと危機察知能力がおろそかだな。”

 

ギリギリ及第点といった所だった。

祖国の見た限り飛鳥の戦い方は、やはりというか初心者その物であった。

彼女の戦略は水樹による遠距離飽和攻撃。

彼女自身の戦闘力はほぼ皆無であるため、敵を近づかせずに倒すという方針は間違ってはいない。

しかしペルセウスも水上歩行のギフトをもつ兵士を中心に、徐々に水樹の攻撃パターンに慣れつつある。

さらに現在の戦況は飛鳥を中心にかなりの数のペルセウス兵が彼女を取り囲んでいる。

矢などの遠距離武器は水樹が水壁で自動防御しているが、それがいつまで持つかも定かではない。

ぶっちゃけ言ってしまえば、飛鳥は結構ピンチだったりする。

 

”水樹一辺倒ってのはいただけないな。そんなんじゃすぐに見切られるぞ…。”

 

と祖国が戦略のバリエーション不足を懸念している最中、ついに飛鳥の後方のペルセウス兵数人が水樹の攻撃パターンを見切り飛鳥に接近する。

しかし周りの戦闘音や水の音が大きすぎて、飛鳥はペルセウス兵が接近している事に気づかない。

その様子を見た祖国は、

 

”チッ、やっぱ気づかねえか…。視覚だけに頼るんじゃなく、もっと殺意や敵意に敏感にならなきゃいけねえぜ、お嬢様。”

 

と内心で毒づくと、ギフトで一瞬の内に飛鳥と兵士の間に割って入った。

不可視の恩恵で視認されない祖国は無防備に突っ込んでくる兵士たちを一瞥し、

 

”ま、仮にもペルセウスの兵士ならこれぐらいは耐えて見せろよ。”

 

と心の中で念仏を唱え終えると、右手の指をパチンと弾いた。

すると次の瞬間、

 

「「「なっ!?」」」

 

接近していたペルセウスの兵士たちが一斉に何かに弾き飛ばされた。

いや、接近していた兵士だけではない。

飛鳥の周りを取り囲んでいた兵士全員が何か見えない物に圧迫されているかの様に、地面に、壁に、天井に、ありとあらゆるところに叩きつけられる。

しかもその謎の力は途切れる事なく、それどころか逆に力を増し、兵士たちは例外なくメキメキを音を立てながら壁面や地面にめりこんで行く。

唯一謎の力の影響を受けていない飛鳥も、眼前で起こっている事に理解が追い付かず、ただただ茫然とするだけだった。

 

そんな光景を作り出した犯人はというと、視認されない事をいいことに飛鳥のめったに見られない表情をじっくりと堪能していた。

 

”無音カメラで写真撮っとこっと。”

 

そんな緊張感の欠片もない感想を抱きながらも、飛鳥の表情を電子端末にしっかりと焼き付けた祖国は、

 

「いつまで呆けてんだ、お嬢様?」

 

とようやく飛鳥を現実に引き戻しにかかった。

 

「えっ!?その声は、まさか…」

 

「おう、俺だ。不可視のギフトを拝借してるから、今のお前には見えないかもな。」

 

「そ、そう。ところで、この現象もあなたが起こしてるのよね?」

 

「そうだが?」

 

「いい加減止めてあげたらどうかしら?気絶している相手をいたぶるのは良い趣味とは言えなくてよ?」

 

「おっと忘れてた。」

 

と言って祖国が再び指をパチンと弾くと瞬く間に謎の圧力は霧散し、ようやく解放されたペルセウス兵は力なく地に伏していく。

何人か優秀な兵士は辛うじて意識を保っているが、それでも到底戦闘を続行できる様子ではなかった。

飛鳥はそんな状況を見て、先程まで自分が手間取っていた相手をものの数秒で壊滅させた祖国に半ば感心、半ば呆然としながらも疑問を問う。

 

「今のは何をしたの?」

 

「別に大した事じゃない。互いの存在に斥力を貼り付けて相互干渉させただけだ。まあ名前が無いのもなんだし、”マグネティック・フォートレス”とでも呼んどくか。」

 

「…毎度思うのだけど、あなたは他人に理解してもらおうという気はあるのかしら?」

 

「簡潔な説明で相手が理解してくれれば手間が省けるだろ?」

 

「相手が分からなければ二度手間よ?」

 

「それもそうか。」

 

と祖国はそれは思い至らなかったという表情をする。

もちろん飛鳥には見えないのだが。

 

「まあ簡単に言うなら、そうだな。磁石のN極とN極を近づけたら反発するだろ?それと同じようなもんだ。」

 

「ペルセウス兵にN極の性質を貼り付けて、私たちにも同様のを貼り付けたという事かしら?」

 

「ご名答。賢い奴は好きだぜ?」

 

「でもそれでは近くにいる私たちも反発しあうはずじゃないの?」

 

「正確に言うなら、俺がN極を貼り付けたのは俺たち自身ではなく、俺たちの周りの空間だ。俺らを中心に直径3m程度の同心円状の空間が強いN極を帯びていたんだ。」

 

「なるほど、だからその空間内にいる私たちは無事なのね?」

 

「そういう事。そして俺たちの空間に反発して兵士が吹っ飛んだって訳だ。」

 

相変わらず底が知れない祖国のギフトの応用性に、頼もしさを通り越して一種の恐れさえ感じる飛鳥。

それはただ単に力ではない。

きっと飛鳥が祖国と同じギフトを持っていても彼ほど十全には使いこなせはしないだろう。

カット&ペーストというギフトは大宮祖国が使ってこそ真価を発揮する。

ギフトを理解し、それを使いこなす祖国の圧倒的戦闘センス。

それこそが祖国を強者たらしめる最大の要因。

そして、そんな自分に持ちえない物を持つ祖国に飛鳥は憧憬の念さえいだきつつあった。

だがそんな内心をプライドのみで一気にかみ殺すと、飛鳥は祖国になるべく自然な態度で尋ねる。

 

「それで、いったい何をしに来たのかしら?」

 

「おいおい、そりゃねえぜ。わざわざ後ろに接近していたペルセウス兵を退治してやったてのに。」

 

気づいていたかと言外に問う祖国の言葉に、飛鳥は驚きと接近に気付けなかった自身のふがいなさを噛みしめる。

 

”まったく…、足りない物だらけじゃない…。”

 

そんな苛立ちにも似た感情を抱きながらも、飛鳥は接近に気付かなかった事を示すために首を横にふる。

きっと自分の不甲斐ない戦いに幻滅している事だろうと、飛鳥は内心少しメランコリーになりながら祖国の次の言葉を待つが、

 

「ま、こればっかりは慣れだしな。」

 

という意外な返答が返ってきたことに、飛鳥は今日何度目か分からない驚きを覚えた。

 

「慰めならいらないわ。」

 

「別に慰めてるつもりは無い。そもそもお前は上辺だけの言葉は嫌いだろう?」

 

という祖国の言葉に、つくづく人をよく見ているなと感心する飛鳥。

だがそんな事を知る由もない祖国は、淡々と飛鳥につげる。

 

「だから俺は思ったことしか言わねえさ…。さて、単刀直入に言おう。今のお嬢様に最も足りていない物は、俺が見た限りでは2つある。一つは戦術の幅、もう一つは危機察知能力だ。」

 

「ええ。」

 

「だがこれらは本来経験に基づいて自らで鍛え、試行錯誤し作り上げていく物だ。決して人から教えられるような物じゃない。」

 

「それじゃ…」

 

「ああ、だから俺は今回ヒントだけを伝えよう。」

 

「ヒント?」

 

「そう、ヒントだ。つまり俺の言葉を生かすも殺すもお前しだいって事だ。」

 

そんな祖国のステキな挑発に、

 

「いいわ。あなたの想像以上の答えを見せてあげるわ!」

 

と3大問題児の一角である彼女が反応したのは、まあ当然の結果だろう。

 

「それじゃまず一つ目のヒントだ。お嬢様はトランプの大富豪ってしたことあるか?」

 

「ええ、あるけど…。それが何かしら?」

 

祖国の言葉に関係性を見いだせない飛鳥は怪訝そうな表情をする。

 

「そうか、なら話が早い。設定はプレイヤー2人、お互い手札は10枚。さて、お嬢様ならまずどうする?」

 

「とりあえず、一番少ない数字を…。」

 

「あー、ダメダメ。それじゃ話にならないぜ。」

 

祖国の即答に困惑する飛鳥。

まさか初手から間違えるとは思っていなかったのか、反論も出来ずにいる飛鳥に祖国はやれやれといった表情で告げる。

もちろんこれも飛鳥には見えていないのだが。

 

「お嬢様はまず自分の手札を”知る”必要がある。」

 

「そんな事はもちろん…」

 

「出来ていないから言っている。」

 

そう、飛鳥はもっと知る必要がある。

自らのギフトという”手札”を。

自らのギフトが何なのかを。

自らのギフトで何が出来るかを。

自らのギフトでどんな組み合わせが作れるのかを。

 

ー自らの手札、つまり戦術の幅をもっとよく”知る”必要がある。

 

勿論きれる手札は多い方がいい。

そのためにも考えなければいけない。

自らの恩恵が世界にどう干渉しうるのかを。

自らの手札を増やすために日々思考を重ねなければならない。

しかし今の飛鳥には圧倒的にそれが足りていない。

 

ーつまりは考える事。ただそれだけ。

 

考えて、考えて、考え抜く。

それしか出来ないゆえに自らを知り、それしか出来ないゆえにどこまでも強くなれる事を、祖国は身を持って知っていた。

 

そして祖国は自らの考えを、思いを、そのまま言葉にする。

 

「ま、つまり頭使えって事だよ。」

 

いつも通りの茶化した態度で、うざったくそう言う祖国の表情を飛鳥が視認できなかったことは、不幸中の幸いだろう。

これが飛鳥の琴線に触れると祖国は分かっているのだろうか?

 

いや、残念系人類代表の祖国に少女の心の機微が分かるはずが無かった。

 

そして遠回しにノータリンと言われた飛鳥は目に見えて態度を悪化させるが、祖国の様子はどこ吹く風。

 

「じゃ、二つ目のヒントな。」

 

とさっさと話題を変えてしまう。

どこまでいっても変わらない祖国の奔放さに飛鳥は少し頭痛を覚えながらも素直に頷く。

 

「まあ、二つ目はそれこそ自分で経験するしかないしな…。」

 

と祖国にしては珍しく言葉を濁す。

 

「なにか言いにくい事なの?」

 

「いや、どう伝えた物かと思ってな…。強いて一番近い言葉で伝えるなら”勘”か?」

 

「悪いけどオカルトは信じていないの。」

 

「箱庭来といてオカルト信じてないのかよ?」

 

祖国の最もな発言の言葉を詰まらせる飛鳥。

 

「まあ、勘て言ってもただの勘じゃない。圧倒的戦闘経験に基づいた、それこそ未来予知に比する刹那的なインスピレーションだ。」

 

「…?」

 

「例えばさっきのペルセウス兵の背後からの攻撃も、視覚以外の何らかの要因で知る事ができるって事だ。」

 

「それがあなたの言う”勘”?」

 

「そうだ。殺気とか敵意への反応と言い換える事もできるな。本来五感以外では知りえない情報を経験から帰納法的に導き出す事。それが”勘”だ。」

 

「でもそれじゃ、今の経験が足りない私ではどうしようもないじゃない。」

 

「ああ、確かにそうだが。だが視覚だけが全てではないという事だけは分かっておいて欲しかった。戦場を俯瞰的に”感じる”という事を出来るだけ意識してくれ。」

 

「分かった。出来る限り善処してみるわ。」

 

とアドバイスを聞き終わった飛鳥は自らに足りない物を自らでつかむために、自身の足で戦場に戻って行くのであった。

 

 

 

全体的に見てみれば比較的真面目だった祖国のアドバイスを飛鳥が頭の中で反芻していると、

 

「いたぞ、ノーネームの小娘だ!なっ、我々の仲間がこれほどやられているとは…。」

 

宮殿の奥から騒ぎを聞きつけたペルセウス兵が続々と現れてきた。

 

数分前に、

 

「じゃ、お嬢様。あとは頼むぜ!」

 

と言い残して去っていったため、祖国は既にここには居ない。

 

だが、今の彼女にはその程度の事は眼中になかった。

ただ彼女の頭の中には祖国の2つのヒントがあるのみ。

 

ー考えろ。そして感じろ。

 

そんな抽象的極まりない事を要求された飛鳥は、だが不思議と悪い気分ではなかった。

 

”見てらっしゃい。いまにぎゃふんと言わせてあげるんだから!”

 

とまだ見ぬ祖国の驚愕の表情に思いを馳せる飛鳥。

そして彼女は次々とやってくるペルセウス兵を見て不敵に微笑むと、

 

「いらっしゃい。私のための実験台になってもらうわ!」

 

と、高らかに宣言したのだった。

 

 

 




読了ありがとうございます。

久しぶりの投稿でまた無い腕が下がった気がしますw
本格的な戦闘は…、筆者のスピードを考えると次の次ぐらいかと。

批判、感想、意見お待ちしています!
それでは今回はこれにて。
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