問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~   作:しましまテキスト

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こんにちは、しましまテキストです。

お気に入りが130件を突破いたしました!
語彙力が無いため他にどういえばいいのか分かりませんが、本当に嬉しい限りです!

また他作品の方から次元を超えて茶菓子の贈り物も頂き、祖国君も大喜びです。
元ネタが知りたい方は、コメント欄をご覧ください。

さて、今回はガチバトルの少し前までいければと思います。
オリジナルのギフトゲームを考えているのですが、中々難しい物ですねw
まあ、ゆっくりとやっていきたいと思います。

それでは今話もお付き合いください。





天災

飛鳥へのアドバイスを終えた祖国は、次なる面談を開始するためにネクストターゲットである耀を探してした。

 

”今度久遠をこの写真でおちょくってやろう。”

 

と手に持つ端末を見ながらニヤニヤする祖国。

傍から見ればただの変態である。

まあ、小賢しいことに不可視の恩恵で見られる事はないのだが…。

 

”にしても、耀の奴はどこにいんだよ?”

 

と祖国は無駄に広い宮殿を恨めしく思いながらあたりを見まわす。

飛鳥は陽動であるため作戦上派手な戦いをする必要があり、それゆえに見つけるのにもそれほど手間はかからなかった。

だが耀は別働隊、つまり飛鳥程派手な動きは出来ない。

もちろん本命である十六夜たちを送り届けるためにそれは必要不可欠なのだが、同時に一度別れてしまえば見つけにくいというデメリットもあった。

 

”俺の予想だともうそろそろ見つかってもいいはずなんだけどな…。”

 

祖国はそう考えながらも、もう一度自分の思考に穴がないか再確認する。

 

”この宮殿は外から見た限りでは完全なるシンメトリー、つまり左右対称だ。そして飛鳥が陽動を行っているのは宮殿の左翼棟。ならば耀たちが向かったのは兵士が少なくなっている右翼棟のはずだ。”

 

だが右翼棟といえども、そこはペルセウスの宮殿。

尋常ならざるその広さに、最近運動不足気味の祖国は早くも身体のだるさを感じつつあった。

そんなバカ広い場所を素直にしらみつぶしに探していく訳にはいかないと考えた祖国はさらに思考を加速する。

 

”でだ、基本条件として耀は逆廻とリーダー、2人分のハデスの兜を入手する必要がある。んでもって逆廻の事だから、不可視の兵の配置の工夫にも気づいてる事だろう。なら奴らは見つかるリスクを最小限にするために、必ず配置領域のクロスポイントで戦闘を行っているはずだ。”

 

そう、そのクロスポイントこそ祖国が今目指している場所であった。

簡略化して説明しよう。

分かりにくい人は「田」という字を思い浮かべればいいかもしれない。

「田」という字には4つの小さな四角がある。

左上、右上、左下、右下の四角を順に便宜上、①、②、③、④としよう。

祖国が予測していた不可視の兵士の配置工夫とは、①~④の領域にそれぞれ一人ずつ不可視の恩恵を持つ者を配置するという方法だ。

例えば①の領域に2人も不可視の兵士がいれば、互いに視認できないため、ぶつかったり、最悪敵を取り逃がしてしまう可能性もある。

だが上の様にそれぞれ持ち回りの領域を設定すれば、基本的にトラブルになる事は皆無といえる。

ではこの配置をいかに逆手にとるか、という問題に移ろう。

最低条件として耀たちは2つのハデスの兜を入手しなければいけない。

ならば①~④を移動しつつ兵士から兜を入手するという方法はどうか?

もちろんNOである。

不可視の恩恵を持つ者がいる領域を移動するというリスクを冒すほど十六夜はバカではない。

では聡明な十六夜なら、リスクを極力回避しつつどうやって複数個の兜を手に入れるか?

恐らくその答えは”ある一点”に留まる事。

その一点こそ、祖国が目指すクロスポイント。

そう、それは①~④の全ての領域が交わるある一点。

「田」の中心点で「十」という2線が交わるその座標であった。

この点付近に十六夜たちは身をひそめ、耀は自身を囮に兵士を呼び出す。

五感の鋭い耀ならば不可視の恩恵を持つ相手でも十分に対処できるだろう。

四つの領域全てに接するその場所ならば、兜を入手できる確率も速度も4倍。

さらに無駄に移動しないため、知らないうちに挑戦資格を剥奪される危険性も激減する。

 

”とまあ、賢い逆廻ならこうするはずだが…。おっ、いたいた。ようやく見つけたぜ。”

 

となんとか目標を見つけた祖国は思考を中断する。

祖国のおおかたの予想どおり、耀はクロスポイント付近で戦闘を行っていた。

だが一つだけ祖国の予想以上だった事、それは、

 

”へぇ、見晴らしのいい中庭に誘いだして迎撃か。囮の役割をよく分かってんじゃん。”

 

より効率的に囮をこなせる場所を耀がチョイスしていた事だった。

囮がうまくいくとは、言い換えれば本命の成功率がグンと上がる事を意味する。

今回の場合では、十六夜たちへの意識をそらす事に成功したという事になる。

 

”戦闘スタイルも悪くない。ゲノム・ツリーの特性を生かした多種多様な近接戦闘。自分のギフトを理解した良い戦い方だ。”

 

と祖国は惜しみない賞賛を送る。

実際、鋭い五感とゲノム・ツリーを使いこなす耀に、ペルセウス兵は手も足も出ない。

戦闘技術自体は荒削りだが、それでも歴戦の戦士を相手に立ち回れている時点で彼女の戦闘センスの良さをうかがい知る事ができる。

そんな耀の安心感さえ感じられる戦いを、祖国は二階のバルコニーからまったりと眺めていたのだった。

 

数分後。

耀の周りにペルセウス兵の屍(もちろん死んではいないのだが)が出来上がり、戦闘が一段落ついた頃合いを見計らうと、

 

”ま、俺から特にいう事はないんだが…。普段偉そうにしてるし、こういう時ぐらいは一応レクチャーしてやるか。”

 

そんな事を考えながら祖国は、はぁと溜息をつく。

そしてギフトを使い耀から10メートルほど離れた場所に転移すると、

 

”あんまり気乗りしないんだがな…。ま、悪く思うなよ…”

 

内心ほんのりと罪悪感を感じながらも、

 

「…フッ!」

 

と突然特大の殺意を耀に向けて解き放った。

それは近くにいる耀はもちろん、ルイオスの元へ向かっている十六夜や、左翼棟で戦っている飛鳥、宮殿の最奥に鎮座しているルイオスにさえも明確な死を感じさせる程圧倒的な殺気。

彼の前に立つに能わない者ならばそれだけで正気を失ってしまう程の途轍もない殺意。

高々一人の人間が発する事の出来る殺意の領分を軽々を超えるその”死”に、宮殿内の全ての者がまるで死神に首元をつかまれているかの様な悪寒を感じずにはいられなかった。

 

 

そして、そんな出鱈目な殺意を一番近くで浴びた耀は、

 

「……………ぁ。」

 

と声にならない悲鳴と共に、その場に力なくしゃがみ込み、うなだれていた。

もちろん耀の精神力が弱い訳では断じてない。

祖国の殺気あてられ、目にはうっすらと涙を浮かべながらも、だがしかし辛うじて正気を保っている耀のメンタルは十分に賞賛に値するだろう。

そして眼前の耀の様子を見た祖国は思う。

 

”あ、やべ。やり過ぎた…。………ま、いっか。”

 

と。

 

いやダメだろ…。

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ようやく耀が正常な状態に戻り普通に会話が出来るまでになった。

…なったのだが、

 

「だから悪かったて。そんなに怒んなよ。」

 

「…。」

 

祖国のいきなりの暴挙に耀が不機嫌になるのはごく自然な事であった。

考えてみて欲しい。

いきなり何の脈絡もなく理不尽な程の殺気を突きつけられ、挙句の果てに自らの恥ずかしい状態をマジマジと眺められていたと知った時の耀の気持ちを。

これで怒るなをいう方が無理な話である。

祖国も多少やり過ぎたとは感じており、なんとか耀の機嫌をとろうと苦心している所であった。

 

「ちょっと近かったかな~。今度はもうちょっと離れてからやるから…。」

 

「…。」

 

祖国のもはや弁解にすらなっていない発言に耀はますます機嫌を悪化させていく。

そもそも殺気をぶつける事自体を全く反省しない祖国に耀が許しを与えるはずもない。

言えば言う程泥沼にはまっていく祖国は、ついに断腸の思いで最後の手札をきる。

 

「分かったよ。白夜叉からくすね…、頂いた白金屋の超絶品カステラを一口やろう。だから機嫌をなおせ。」

 

全く原因を分かっていない祖国の発言に耀はやれやれといった様子で首を横にふると、

 

「半分。」

 

と祖国に交渉を開始した。

…ていうか許すのかよ。

 

「なっ!半分だと!?こっちが下手にでれば調子に乗りやがって!」

 

「こっちは被害者。本来なら全部貰ってもいい所を半分で妥協してる。それとも祖国は被害者に誠意を示せない人?」

 

耀の痛い所を突く言葉に顔をしかめる祖国。

状況的にどう見ても悪役は祖国であるため、これ以上の駄々は自らの沽券に関わると判断した祖国は深々と溜息をつくと、

 

「分かったよ。帰ったら半分やるから許してくれ。」

 

と心底疲れたといった様子で耀の折衷案を受け入れた。

祖国からの言質をとった耀はさっきまでの不機嫌はどこへやら。

茶菓子好きの祖国が一押しするカステラを半分も手に入れた事にすっかり機嫌をよくしていた。

 

「はぁ、気の迷いでちょっとレクチャーしてやろうなんて思うんじゃなかったぜ…。」

 

「レクチャー?」

 

耀は祖国の何気ない呟きに疑問を呈す。

 

「ああ、別に何の理由もなくお前に殺気をぶつけたりなんかしねーよ。」

 

そう、祖国の行動には何かしらの考えがあった。

もちろん祖国の事を信頼している耀も、祖国が理不尽に殺気をぶつける様な人間ではない事ぐらい理解している。

それゆえに祖国の行動の理由が未だに分からなかったのだ。

 

「そもそも祖国はどうしてあんな事したの?」

 

「まあ、なんだ。お前の戦闘に関しては特にいう事はない。技術は未熟だがセンスはあるし、実際にペルセウス兵相手に傷一つ負っていない。お前の五感の鋭さと相まって、近接戦闘では非常に高いレベルにある。」

 

「じゃあ…」

 

「だが、その五感が逆に足を引っ張る可能性もある。」

 

「どういう事?」

 

「お前は何て言うか…、久遠と真逆で勘がいい。つまり殺意や敵意に敏感すぎるんだ。裏を返せば、もしお前のキャパシティ(容量)を越える殺意を向けられたら、それこそ戦うまでもなく戦闘不能になる可能性が大きい。」

 

「さっきみたいに…?」

 

「ああ、お前の五感は武器であるとともに弱点。いわば諸刃の剣って奴だ。そこんとこを理解していて欲しかったんだよ。」

 

「…分かった。」

 

祖国の説明でやはり彼が考えも無しに酷い事をするような人間ではない事を再認識した耀。

だが同時に、祖国の発言で別の疑問も発生する。

 

「じゃあ、私はどうやってその弱点を克服すればいいの?」

 

「そうだな…。考えうる方法は二つだ。一つ目は自らの意志で五感をon、off出来る様になる方法。だがこれは余りお勧めしない。」

 

「うん。五感をoffにするって事は一切の認識を絶つという事。そんな事をしたら戦闘が成り立たない。」

 

「その通りだ。ならば必然的に二つ目になるな。二つ目の方法は、お前自身のキャパシティの拡張、つまり殺気に対する耐性を上げるという方法だ。」

 

「耐性の向上…。具体的にはどうすればいいの?」

 

「慣れろ。」

 

「…それだけ?」

 

「それだけだ。」

 

祖国のあんまりな解答にどう口を開いていいか分からない耀。

言いたい事だけ言って肝心な所は丸投げでは耀が納得できないのも当然であった。

祖国も自分の言葉が足りなかったと思い直し補足説明をする。

 

「別にいじわるで言ってる訳じゃないぞ。実際にこればかりは自身で体感するしかないんだよ。」

 

しかしなおも祖国に不服そうなジト目を向けてくる耀。

女性経験がそれ程豊富ではない祖国はどうしたものかと思案し、

 

「はぁ、分かったからその目を止めろ。」

 

と、とうとう耀の態度に折れたのだった。

 

「といっても俺が言える事なんてほとんどないが…。そうだな、キャパシティを上げる手っ取り早い方法は、自分より実力が上の相手と戦う事だ。実際の戦いの中で常習的に相手の殺気を受け、それに慣れていくほかないな。」

 

「格上の相手と?」

 

「ああ、だが実力が離れすぎてもだめだ。さっきみたいになるだけだからな…。丁度いい相手との戦闘が一番いい方法だ。」

 

祖国の言葉に耀は少し悲しそうな表情で俯く。

先ほどの殺気を受け止めきれ無かった時点で、祖国と耀は戦うまでもなく優劣が決定していた事になる。

いくら信頼されているとはいえ、自分と祖国の実力が近くなるわけではない。

未だに天と地ほどの力量差が存在する二人の関係が変わるわけでは無いのだ。

 

”私本当に祖国にふさわしい人になれるのかな…。”

 

改めて大宮祖国という男との差を実感し、自信喪失気味な耀。

祖国はあからさまに凹んでいるその様子を見ると、

 

”ったく、本当にしょうがねえな。”

 

と内心で愚痴をもらすと、耀に歩み寄りいきなり頭をガシガシとなで始めた。

祖国の当然の暴挙に耀が困惑していると、

 

「ガ、ガンバレ。」

 

と祖国のとてつもなくぎこちないエールが聞こえてきたではないか。

不可視の恩恵で顔は見れないが、今祖国がどのような表情をしているのか耀には鮮明に想像できた。

そんな祖国の態度がおかしくて、だが心の底から嬉しくて、

 

「うん。頑張る。」

 

と耀は満面の笑みで頷くと、

 

「でも祖国、レディーの頭を無許可で触るなんでマナー違反。」

 

といつも通りの軽口を叩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや逆廻たちはどうした?」

 

耀に粗方のアドバイスをし終えた祖国は次なる対象の位置情報を問う。

 

「十六夜とジンには先に兜を渡したから、もう先に行ってるはず。そろそろルイオスの所に辿り着いてるかも。」

 

「そうかい。まあアイツには本当に教える事とか無さそうだし、別に急ぐ必要も…」

 

祖国が次の言葉を告げようとした瞬間、

 

ー祖国は途轍もない寒気を感じた。

 

言うならばそれは”死”の具現。

まるで”死”がむこうから足音を立てて迎えに来るような恐怖。

先ほどの祖国の殺気とは完全に質が違うその殺気は、さしもの祖国さえ不気味さを感じざるを得ないほどの物であった。

これはマズイと判断した祖国は、殺気に敏感な耀を抱き寄せると、白夜叉の太陽フレアを防いだのと同じ方法で殺気から自身と耀を守る。

 

「祖国、これって…。」

 

耀が不安そうな声で祖国をみると、

 

「ああ、これはちょっとヤベエかもな…。」

 

と珍しく祖国も焦燥の色を表情に浮かべる。

 

「この殺気は…宮殿の奥の方からか!」

 

「そっちには十六夜たちが…。ていう事は、この寒気は黒ウサギが言ってた魔王アルゴールの物?」

 

「分からねえ。白夜叉から聞いた話だと、今は霊格が圧倒的に縮小してるからそれほど脅威ではないとか言ってたが…。」

 

事態が全く呑み込めない二人。

だが運命はさらに負の状況へと加速していく。

 

その異変に先に気付いたのは耀だった。

 

「祖国見て!空からギアスロールが!」

 

「あ?」

 

祖国が空を見上げると、そこには確かにギアスロールが、しかも白と黒の二種類という奇妙なコントラストが出来上がっていた。

 

祖国が一瞬だけ空間をつなぎ落ちてくる二種類のギアスロールを手に入れると、まず白い方から眼を通す。

 

「えーなになに。

『ギフトゲーム”Fairytail in Perseus”

上記のゲームがクリアされた事をおしらせします。

勝者:ノーネーム

達成条件:ゲームマスターの打倒。

主催者側は速やかに恩恵の授与に移行してください。』

てことは俺たちの勝ちじゃん。やったな耀!」

 

祖国は陽気な発言とともに、かぶっていたハデスの兜を脱ぎ棄てる。

(後で聞いた話だと、あの兜、かなり臭かったらしい。)

だが、そんな祖国の発言を聞いても耀は反応するどころか、一層顔を青ざめさせている。

何事かと祖国が耀の持っているもう一枚の”黒い”ギアスロールを覗き込み、その内容を朗読する。

 

「えーと。

『ギフトゲーム名”The Venus with Andromeda”

・プレイヤー一覧:宮殿内に生存している全ての参加者

・ホストマスター側勝利条件:全プレイヤーの殺害、及び屈服

・プレイヤー側勝利条件:

 一:ゲームマスター 星霊アルゴールの打倒。

 二:天地をつなぐ逆理を暴け。

・プレイヤー側注意事項:

 ・本ゲームは開始から三時間後に自動的に終了となります。

 ・本ゲームが自動終了した場合ホスト側の勝利と見なし、その時点でゲームルールに乗っ取り参加者をすべて殺害します。

 

 宣誓:上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                         ”       ”印』。

…意味わかんねえ…。」

 

いきなりやって来たゲームの理不尽さに、さすがの祖国も動揺を隠しきれない。

 

”黒ウサギが魔王を天災と言ってた理由がようやく分かったぜ。こんなアホみたいなゲームに強制参加させられるんだから、理不尽以外の何物でもないな…。”

 

だがそんな事を考えていられるのも祖国だからこそだろう。

現に隣の耀はゲームの理不尽さ、でたらめさに心が萎縮していまっている。

齢10余年の少女にとっていきなりの死刑宣告はかなりこたえる所があったのだろう。

 

”ま、いきなり余命3時間宣言されたら無理ないわな。”

 

と祖国も耀のもっともなリアクションに首肯する。

 

”だが、こんな調子じゃとても参戦させられないな。しょうがないが置いていくか…。”

 

そう心の中で結論付け、祖国は口を開く。

 

「じゃあ耀は飛鳥と合流してくれ。」

 

「祖国はどうするの?」

 

「俺か?俺はとりあえずアルゴールの所に行くわ。逆廻が心配だしな。」

 

「私も一緒に行く。」

 

この場面では一番聞きたくなかった耀の発言に顔をしかめる祖国。

いくら祖国といえども、これ程不気味な殺気を発する存在を相手に、仲間を守りながら戦うのは厳しい所があった。

ゆえに祖国は決断しなければならなかった。

 

”いくら綺麗な言葉で言った所でこいつは聞くまい。ならば分かりやすい言葉でダイレクトに言うしかないか…。はぁ、本当に損な役回りだぜ。”

 

心の中でまで溜息をつくをいう芸当を会得した祖国は、一切の感情を切り捨てて、一切の慈悲もなく耀に言い放つ。

 

「来るな。足手まといだ。」

 

「でも!」

 

「邪魔だと言っている。」

 

「…!」

 

祖国の手厳しい言葉に、だがそれでも耀は下がろうとはしなかった。

ここで下がれば、気持ちでまで下がれば、一生祖国と対等など言えない気がしたのだ。

耀は怯える心を奮い立たせ、あらんかぎりの勇気をもって言葉を紡ぐ。

 

「祖国は言った、私を信じると。なら私を信じて一緒に連れて行って欲しい。戦闘では役に立たないかもしれないけど、サポートくらなら…」

 

それが彼女の、春日部耀の全身全霊の言葉であった。

そして彼女の気持ちを聞いた祖国は、本当に本日何度目か分からない溜息をつくと、

 

「先に言っとくぜ、耀。ありがとう。そしてすまない。」

 

と耀の瞳を真っ直ぐ見つめたまま謝罪した。

 

そしてー

 

次の瞬間、耀の腹部を痛みを感じる暇がない程の強打が襲った。

 

「そ…こく、どうしt…」

 

耀はその攻撃の張本人である祖国に途切れていく意識の中で必死に問いかける。

だが祖国が耀の方に振り返る事は無かった。

彼は自らの背を耀に向けたままヒラヒラと手を振ると、

 

「悪いな、耀。恨んでくれても構わないぜ。」

 

とだけ言い残すと宮殿最奥の魔王を倒すべく、一人歩き去るのだった。

 

 

 




読了ありがとうございます!

次回からオリジナルゲーム開始です。
もしかしたら矛盾があるかもしれませんが、そこはまあ、暖かい目で見てください。

批判、感想、疑問、タイトル変更の案等ございましたら、コメント欄までお願いします。

それでは今回はこれにて。
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