問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
しましまテキストと申す者です。
このたびは毎度の事ながら、投稿がアホの様に遅れてしまいました。
一応事情はあるのですが、この場を借りてまずは謝罪をさせて頂きます。
(今回の投稿遅延理由はあとがきに書かせていただいております。)
さて、今回も地味な話ですが、お付き合い頂ければ光栄です。
出来る限り更新ペースも上げていきたいです。
それでは今話もよろしくお願いします。
”ーああ、本当によかった…。”
顔にこそ出していないが、祖国は心の中でほっと溜息をつく。
彼の心に溢れるその感情はこれから戦う常識外れの化物への恐怖でも、圧倒的暴力になげく弱者の嘆きでもない。
ただ純粋なる安堵。
仲間を守る事が出来たという達成感。
そして自らを犠牲にして勝ち得た虚しい満足感であった。
”これで黒ウサギたち”は”助ける事が出来た…。”
そう、祖国が先ほどアルゴールに持ちかけた提案。
参加者を祖国だけにするという内容に隠された彼の真意に、その場の誰一人として気づく事は無かった。
そして、それは祖国にとって幸運だったと言えよう。
なぜならそれは、祖国が”敗北を前提として”打ち出した考えであったが故に。
”後でバレたらハリセンじゃすまないかもな…。”
祖国は黒ウサギの手痛いお仕置きを想像しながら心の中でクツクツと笑う。
だが同時に、”生きて帰れたら”という前提がそこには付きまとう事を当然ながら理解していた。
祖国の真意。
それはギアスロールに書かれたもっとも危険な条項から仲間を遠ざける事。
そして祖国が尤も危険視した物…、
”3時間以内にクリア出来なければ参加者は強制殺害という一文。これがどの内容よりもぶっ飛んでやがる…。”
それがこの一文であった。
ギアスロールに示された第一条件が達成困難である以上、必然的に現実的なクリア方法は第二条件の謎を解く事になる。
三人寄れば文殊の知恵ということわざがあるように、参加者が多ければ多い程武力を用いない第二条件はクリアの確率が上昇する。
それを阻止するのがこの注意事項の役割であると祖国は考えていた。
”本来、正解確率ってのは人数と時間に比例する傾向がある。ゲーム開始時に不特定多数を参加者として巻き込むこのゲームにおいて、時間制限をつけるのは当然の流れだ。だが…、”
そこでいったん祖国は思考を中断する。
その表情には忌々しいとか、苦々しいといった言葉がピッタリ似合いそうな表情が貼り着いている。
まあ実際そう思っているのだから仕方がないだろう。
テーブルから手ごろな茶菓子を手に取って糖分を補給し終えると、再び祖国は思考の海へと沈みこむ。
”だが、最後の一文がこのゲームの難易度をありえないぐらい押し上げてやがる。まあ、アルゴール側の勝利条件が参加者の殺害、屈服である以上、全員殺害という結論に帰着するのも分からなくはないが…。それにしてもあんまりだろ…。”
当然の事ながら参加者側だけでなくホストマスターもゲームに勝利する前提で対応しなければいけない。
アルゴールのゲームにおいては、人数が多くかつ時間無制限ではプレーヤー側に大きなアドバンテージを与えてしまう事になる。
故にゲームルールに時間制限を設けるのも当たり前の対策といえよう。
だが同時に、考慮しなければいけないある問題も発生する。
そう、タイムアップ時に両者とも勝利条件を満たしていない場合、どちらが勝者となるのかという問題である。
個人間で行われるゲームとは異なり、魔王の開催するゲームにおいて基本的に”引き分け”は存在しない。
両者が条件を満たさない状態でタイムリミットを迎えた場合、どのような裁定が下るのか?
これがこのゲームの最大にして最悪のポイントであった。
魔王のゲームとは人類に対しての試練である。
下層から上層の魔王、はたまた人類最終試練まで、形や方法、影響の大小は違えどそれは人類への信頼の証であり、霊長としての進化を促す物だ。
そしてそれらは総じてクリアに厳しい条件を課す。
人類の進化を促す試練がそう安々とクリアされてはならない。
この不文律が魔王の試練を天災とまで言わしめる理由である。
ならば今回はどうか?
もちろん今回のゲームもこの考えの基づいて作成されている。
タイムアップした時点でどちらの勝ちかを決めなければいけない時、もし時間切れを参加者の勝利と見なすならば、これは最早ヌルゲーでしかない。
最悪ハデスの兜をかぶってじっとしてさえいれば勝利する可能性もありうるからだ。
あるいは数に物を言わせて物量で押せば、三時間以内にアルゴールが全員を殺しきれ無い可能性もある。
だがそんなものを試練と呼んでいいのか?
断じて否である。
魔王たる者の試練が烏合の衆に敗するなどあってはならない事だ。
それは自らの権威を引き下げ、ひいては存在の神性を否定する蛮行である。
自らの内的宇宙を解放する主催者権限とは魔王にとってそれ程重要な物であるのだ。
ゆえに彼らのゲームが鬼畜仕様なのも当然の事。
今回ではタイムアップはホストマスターの勝利となり、ホストマスターの勝利条件を満たすために参加者を皆殺しにするというとんでもない結果となっている。
もちろん祖国はそこまで込み入った事情を知っていた訳ではないが、自分にとって大切な事はいち早く理解していた。
つまり仲間を一人でも多く守るためには、自分以外を参加者から外す必要があるという事を。
ゆえにこそ祖国はアルゴールに対して先ほどの提案をしたのだ。
あくまでも自分が全力で戦うための提案として。
自らが死ぬかもしれないという可能性を感じさせないための前向きな提案として。
”ま、それが同時に最善でもあるからこそ、だれも俺を疑わなかったんだろうけどな…。”
そして皮肉にもそれこそが祖国の最も生き残る確率が高い選択肢でもあったのだ。
黒ウサギたちが祖国の真意を見抜けなかったのは、祖国が嘘を言っていないからだろう。
嘘も言っていないが、真実も言っていない。
少なくとも祖国がそう思っているからこそ、祖国が嘘だと思っていない以上、黒ウサギがそれを嘘だと断じる事など出来るはずもなかった。
だが祖国の決断は同時に自らを捨て駒として切り捨てる事を意味する。
自分以外全員の安全を確保するために、祖国はアルゴールとのムリゲー臭ただよう戦いに臨まなければならないのだ。
常人ならばこれから死地に赴く重圧に眉ひとつ動かさないなど不可能であろう。
心の中に湧き上がる不安は常に身体を支配し、表情や雰囲気など何かしらの支障として現れる。
ゆえに100%気持ちを、ましてや自らの生死にかかわることなど、本来は隠し通す事は不可能なはずなのだ。
しかし祖国にはそれが出来た。
いや出来てしまった。
もし彼が他人に自分という人間を打ち明ける事ができたり、自身の気持ちを隠す才能がなければ、あるいは彼という存在はもっと人間らしさを持っていたかもしれない。
自らの弱さを他人に伝え、それでも他人と繋がる事を望んだなら、彼は人と人との有機的な関係を知る事ができただろう。
だが、彼はそれをしなかった。
いや、彼の才能が、彼を取り囲む環境が、彼の生きる世界が、それを許さなかった。
彼の中で人と人とのつながりは足し算でしかない。
どこまでいっても1+1は2でしかない無機的な関係でしかないのだ。
だから彼は今回も自らの思考にしたがって、一人で戦う事を選んだ。
人々のつながりの可能性を、1+1が100になる可能性を知らないからこそ、彼にはその選択肢しか残されていなかった。
たとえそれが彼自身の命を失う物であっても…。
ーそして大宮祖国は”信頼”を知らない。
「なあ、アルゴール。俺と”交渉”しようぜ?」
祖国の不敵な声が談話室に響く。
提案の話も煮詰まりこれ以上話す事は無いと思っていたアルゴールはウンザリとした表情を、祖国の意図が読めない黒ウサギたちは怪訝そうな表情をしている。
だが、そんな事を気にしていてはそれこそ話が進まないという物だ。
祖国は一向に構わないといった表情のまま淡々と告げる。
「別に難しい話じゃねーよ。ちょっとした取引をしようってだけだ。お前にとっても悪い話じゃねえよ。」
「まあ、話くらいなら聞いてやるし。」
渋々といった表情のままではあるが、一応アルゴールも祖国の話を聞く気はあるようだ。
にべもなく断られた場合を想定していた祖国は、思いのほか手ごたえを感じながら口を開く。
「端的に言おう、アルゴール。ゲーム再開までに少し時間が欲しい。」
「却下。」
あからさまに嫌そうな顔をして、祖国の申し出を一蹴するアルゴール。
彼女にとっては祖国との戦いが第一。
それを引き延ばそうなどという無粋な申し出を受け入れるほど彼女の気は長くは無かったのだ。
だが断られたにもかかわらず、祖国の表情に失望の色は無い。
それどころかまるで意に介していないかの様にアルゴールになおも語り掛ける。
「まあ、話ぐらい聞けって。もちろんタダでとは言わない。こちらもそれ相応の対価を支払おうじゃないか。」
「対価?」
祖国の予想外の言葉にアルゴールはわずかながら興味を示す。
目の前の人間が自分の望む物を持っているのか?
そもそも自らの望みを知っているのか?
そんなとりとめのない事を考えながらもアルゴールは目線で祖国に話を続けるように促すと、それに気づいた祖国も再び口を開く。
「ついでに最終確認だ。やっぱり復讐を止めるつもりはないか?」
「当たり前だし。アルちゃんはあいつらを絶対に許さない!」
アルゴールの鬼気迫る物言いに、祖国もやはりかという表情を浮かべる。
彼女の怒りを最も近くで感じていた祖国は、もとよりアルゴールが復讐を止めるなどとは考えていなかった。
彼が知りたかったのは、彼が対価として支払う物の有益性。
彼の対価がどれくらいの可能性でアルゴールに受け入れられるかという一点のみであった。
そして今の会話で脈ありと判断した祖国は、アルゴールの興味を引くような言い回しで問いかける。
「でもよぉ、このバカでかい箱庭からどうやって復讐相手を見つけるつもりだ?なんたって、お前が殺したがってんのは”たった二人”なんだからよ?」
「!?」
「ちょっと待って下さい!そんなはずありません!」
祖国の予想外の言葉にアルゴールは驚愕の色をうかべ、今まで空気だったジンは納得がいかないと抗議の声をあげる。
どうしてその結論に行き着いたのか、と。
自分の予想が間違っていると信じられないのか、あるいは解答に自信があるのか、ジンは自らの主張を祖国に述べる。
「そもそも箱庭の史実に基づいて考えれば、アルゴールが憎んでいるのは三千世界の神々かギリシャ神話群のはずです!」
箱庭史を詳しく知ってい者であれば、この結論に行き着くのは当然の事だろう。
幾星霜の戦いの末に彼女を封印した三千世界の神々。
あるいはたわいない口論から全面戦争となり、最終的にペルセウスと組んでアルゴールを暗殺したギリシャ神話のアテナ。
このどちらかをアルゴールの復讐対象と考えるのが筋というものだろう。
だが祖国の予想はそれを真向から対立するものだ。
セオリー通りに導き出された模範解答を、だが違うと完全に否定してみせたのだ。
そして祖国はジンの抗議を聞き終えると、ゆっくりと首を横に振った。
「それは違うぜ、ジン。何もかも史実から理解しようなんて考えは今のうちに捨てとけよ。」
そう、ジンは文章や文献に頼り過ぎている。
もちろん祖国はそれを悪い事だとは考えていないし、持っている知識量は多いに越したことは無いとも思っている。
だがそれだけに頼り過ぎるという事がいささか以上に危険である事を、祖国は経験上知っていたのだ。
ではどうしてジンの予想を祖国は否定し得たのか?
そもそも思い出してほしい。
祖国がアルゴールの様子から読み取った彼女の憎しみの原因は、身近な者の裏切りであったはすだ。
だが、ジンの解答の中にその様な者は一切存在しない。
三千世界の神々やギリシャ神話群はアルゴールの戦う相手でこそあれ、彼女の身近な存在という訳ではないのだ。
よってジンの予想が誤りである事はこのことから容易に判断できる。
ではアルゴールの本命は誰なのか?
これを考えるにあたって彼女はその発言の中で重要なキーを残している。
ーアルちゃんは”あいつら”を絶対に許さない。
この発言から、アルゴールが復讐したいと考えている存在は少なくとも2人以上である事は自明の理だ。
アルゴールの身近な者で、かつ2人以上の存在。
そんな者は、祖国の知る限りではただの一組しか考えられない。
そう、その者達こそ、
「お前の復讐対象はお前の姉妹。ステンノーとエウリュアレーじゃないのか?」
ゴーゴン三姉妹の長女と次女たるステンノー、エウリュアレーであった。
祖国の問いかけにアルゴールは俯いたまま答えようとはしない。
今の彼女の頭の中は目の前の男に対する警戒心と怒りであふれかえっていたのだ。
この男は知っているのか?
自らを甘言で惑わし、都合が悪くなった途端に裏切ったあの女たちを。
この男は分かっているのか?
あの女たちの裏切りによって、自分がどれほど惨めな状況へと貶められたのかを。
この男はそれを理解したうえで、それでもなお許せというのか?
自らを絶望の底に叩き落した奴らを忘れろというのか?
ーそんな事、出来るはずない!
そうだ、許せるはずが無い。
許せるはずが無いのだ。
たとえ千の英雄が立ちはだかろうとも、万の神群が行く手を阻もうとも、この憎しみは止まらない。
必ずやこの手で憎き奴らの喉元をかき切って見せる。
もし、それでも邪魔をするというのなら…。
「アルちゃんはあいつらを絶対に殺す!それを邪魔するというのなら、誰であろうと容赦はしない!」
祖国の質問に暗に肯定しながらも、止めたければ実力で止めてみせろと告げるアルゴール。
その美しい双眸に宿る憎悪は歴戦の英傑ですら怯ませるほどの力強さを有し、真っ直ぐと祖国を見据えていた。
そしてその視線の先。
彼女を止めんとするその男もまた、静謐な瞳で彼女を見つめていた。
相も変わらずその瞳は何も読み取る事の出来ぬままだ。
そして、いやだからこそ次の祖国の発言をアルゴールたちが予想できなかったのも当たり前であった。
「ああ、知っていたさ。お前を言葉では止められない事はな。」
祖国の言葉に一同が一斉に腑に落ちないといった表情をしている。
だがその感情はものの数秒後に更なる驚愕によって塗り替えられることになる。
もちろん祖国の言葉によって。
「だからこそ俺の対価にも価値がある。…俺が差し出す対価は情報、ステンノーたちの居場所だ。」
「「「!?」」」
驚愕。
祖国ほどの読心術を持つ者でなくとも分かるほどに、今のアルゴールの表情はその感情でいっぱいであった。
だが祖国の言葉は止まらない。
今がチャンスとばかりに自らの対価の有益性をアルゴールに語り掛ける。
「まあ正確に言うなら、そいつらの居場所を知る手段なんだがな。」
「手段?」
「ああ、俺は白夜叉に…、いやお前には白夜王と言った方がいいか。白夜王に一つ貸しがあってな。その対価として人探しを依頼しているんだ。」
祖国の言葉に未だ要領を得ない表情をするアルゴール。
反対に黒ウサギとジンは祖国の対価の全貌を理解したようである。
こちらを見つめる黒ウサギに目で心配するなという合図を送ると、祖国は言葉を続ける。
「だが俺の依頼はまだ完了していない。ならば途中で捜索対象を変更する事も可能って事だ。この意味が分かるな?」
「なるほどね。つまりそれで捜索対象をあいつらにすればいい訳か。」
アルゴールの言葉にわずかに笑みを浮かべながらその通りと告げる祖国。
祖国が持つ捜索”権利”をアルゴールに完全譲渡する事。
それが祖国の対価の正体だ。
そしてこの対価は、もちろんのことながらアルゴールには非常に魅力的のものに映った。
なにせ殺したい程憎む相手の居場所を知ることが出来るかもしれないのだ。
この広大な箱庭から特定の人物を探し出すなど、いかに原初の悪魔たるアルゴールでも骨の折れる作業である事には間違いない。
それに自らの復活を知れば、もちろんステンノーたちが姿を隠す事も視野に入れなければいけなくなる。
アルゴールが可能な限り早く彼女たちを見つけなければ、時間を追うごとに目的達成はどんどんと難しくなっていくだろう。
これらの事を総合的に考えれば、祖国の申し出は決して悪い物ではない。
それどころか、アルゴールにとってみれば願っていない好条件だ。
祖国にゲーム開始まで多少の時間を要求されるだろうが、長い目でみればそれも微々たるものだ。
だが、ここでがっついてはこの男の思う壺だとアルゴールは自らを戒める。
そして外面上はあくまでも冷静を装いつつ、祖国に尋ねる。
「確かに情報源が得られるのは嬉しいけど、白夜王って情報収集に長けてたっけ?アルちゃんのイメージだと、脳筋って事しか思い浮かばないし。」
「その点は大丈夫だ。」
まさかアルゴールにまで脳筋認定されていると思わなかった祖国は、内心爆笑を必死に堪えながら言葉を続ける。
「さっきも言いかけたが、アイツ今は白夜王じゃなくて白夜叉って呼ばれてんだよ。どうしてだか分かるか?」
「夜叉…?って事はまさか!?」
アルゴールが結論を口にするよりも早く祖国は首を縦に振り、その予想が正しい事を示す。
だが、それを導き出したアルゴールは未だに自身の結論が信じられないといった様子だ。
それほどまでに彼女にとって白夜王とは絶対的な存在なのだろう。
「お前の予想通り、今のアイツは自ら仏門に帰依して意図的に霊格を下げている。フロアマスターとして活動するための条件だそうだ。そして現在の白夜叉の所属はサウザンドアイズ。これでもう十分だろ?」
「…っえ!?うん、サウザンドアイズなら情報収集能力も問題ないし。いいよ、その条件のんだ!」
半ば動揺気味ではあるが、そんなアルゴールの声とともに、とうやく長い長い審議決議が終了した。
互いが互いの欲しい物を手に入れる事が出来たためか、どことなく二人とも満足気な表情でその場を去るのだった。
読了ありがとうございます!
やはり地味な話になってしまいました。
筆者の拙筆さがモロに出てますねw
さて今回の遅延理由ですが…
挿絵を描こうとしたんですw
そして案の定挫折というorz
まあ紆余曲折あってこうなりましたw
遅れてしまい本当に申し訳ないです。
誤字、脱字、感想、意見、批判等、受け付けております!
それでは今回はこれにて。