問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~   作:しましまテキスト

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こんにちは、しましまテキストです。
お気に入りが250件突破しました。
ありがとうございます!

あと本作に評価をしてくださった方、本当に感謝感激です!
筆者からの好感度が上がりましたよ!

えっ、いらない?

…どうもすいません(笑)

さて、今年になってから初の本編です。
気合い入れて頑張りたいですね。

テストはいいのかって?

ハハハ、ナンノコトデショウ…

まあ、嫌な過去は捨て去って、新しい未来に生きましょう!

それでは今話もお付き合いください。


broken heart

心は硝子。

硝子は化粧。

それはありとあらゆる外的事象を取り込み、感情と言うフィルターを通して喜怒哀楽という様々な光を放つ。

 

心は硝子。

硝子は憧憬。

心という存在そのものが至高であるがゆえに、それは何よりも不可解で、何よりも尊く、誰もがそれに恋い焦がれる。

 

心は硝子。

硝子は硬脆。

何物よりも強く、何物よりも儚いそれは、その存在をもって諸人に真実を語る。

 

心を摩耗し続けた末路を。

感情さえ消え去った心の残滴を。

何も映さなくなった硝子の向こう側を。

 

そう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…砕けた心は二度と元には戻らない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほの暗い一室。

わずかに灯る光は小さなランタンのみ。

だが、それが今の彼には丁度良いのだろう。

わずかに諦観を含んだその顔には、さもありなんといった表情が貼り付いている。

 

そこはペルセウスから割り当てられた一室。

祖国が決戦前に一人になりたいと無理を承知で頼み込み、急ごしらえで用意させた小部屋だ。

唐突な依頼であったため、このようにろくな整備もされていない部屋になってしまったのだが、そんな事は関係ないといった様子で一人祖国は部屋に入っていった。

 

 

部屋自体は広さにして四畳半といったところか。

物が無ければもう少し広く感じるだろう等とくだらない事を考えながら、一室の中心あたりで祖国は周りを見渡し…

 

フッと、唐突に屈託のない笑みをこぼした。

 

必敗の戦いの前だからだろうか。

心なしか目に入る物全てが感慨深く映るような気がしたのだ。

 

”世界なんざクソッタレだと考えていたが、こうしてみると存外名残惜しいと思えるもんだな。”

 

自身の意外と女々しい一面に自嘲する祖国。

だが同時に悪い気もしないと、そうどこかで認めている彼もいたのだから、彼はきっと天性のツンデレなのかもしれない。

 

そして彼はその場でそっと腰を下ろすと、足であぐらを作り、その上で手を合わせる、いわゆる座禅のポーズをとった。

これから”会いに”行く相手を考えると何とも気が進まないが、最後の別れぐらいは告げてやってもいいだろう。

なんせ今から会うのは、彼が”過去に切り取った彼自身”なのだから。

 

祖国はフゥと一つ溜息をつくと、ゆっくりと瞳を閉ざし、自らの意識を暗い暗い深淵へと沈めていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識の最下層。

己の心象風景。

そんな場所があるなら、まさしくここがそうなのだろう。

祖国の意識が行き着いた場所は、そう思わせるには十分な程異質で、無機質で、そして無感動な場所だった。

 

陸地という物は無く、一面に広がる水面。

一寸先は光も通さぬ分厚い闇。

そしてそこに立つのは彼一人のみ。

ただそれだけの何もない空間が大宮祖国という人間の心のありようだと言うのなら、これほど虚しい事はない。

 

だが当の本人は、そんな事全く気にしていないかの様子のまま、彼以外聞き取れない程の小さな声で、ポツリと呟いた。

 

「いつ以来だろうな、ここに来るのは…。」

 

そう、来ようと思えば彼は何時でもここに来る事が出来た。

にも関わらず、祖国は”とある一件”を除いて、ここに来ることは決してなかった。

いや、本来ならば二度と来ようとも思っていなかったのだが…。

 

その理由が単にここに来るのが嫌だっただけなのか、あるいは…

 

『お前が俺を恐れているからだ。そうだろう?』

 

突然、祖国の心情を見透かすかの様な声が空間に響く。

腹の底から嫌悪感を抱くようなその声の主の姿は依然としてどこにも見えない。

だが祖国は初めから分かり切っていたかの様に、泰然とした態度を保ったまま一つ溜息をつくと、

 

「俺の心を勝手に見てんじゃねえよ。」

 

相も変わらぬ軽口と共に、彼が今立っている水面に”映る彼の姿”にしゃべりかけた。

 

 

そこにあるのは、何の変哲もない水面に反射した彼の虚像。

そう、そのはずであった。

 

しかし現に今、水面に映る彼のその虚像は大宮祖国という人間を知っている者ならば決して想像出来ないほどに…

 

 

 

 

 

 

…”冷たい”目をしていた。

 

 

 

 

 

 

それはこの世に救いなど無いのだと、人類とはかくも愚かな存在なのだと、人の善意は決して報われないのだと、そう悟った悲しい瞳。

 

人の善性を信じ、人の可能性を信じ、人の心を信じ、そして裏切られ続けた、絶望の果てに行き着いた者の瞳。

 

残酷な現実に挑み続け、そして敗北した、”かつての大宮祖国”の瞳がそこにはあった。

 

 

 

「よう、久しぶりだな。」

 

心の底から湧き上がるような不安に押しつぶされそうになりながらも、祖国は努めて冷静に”祖国”へと語りかける。

そんな祖国の心中を知ってか知らずか、いや恐らく知っているであろう”祖国”も、全く無表情のままに応答する。

 

『ああ、”あの時”以来だ。お前は意図的に俺を避けている様だったしな。ここに潜って来ること自体、片手の指で足りる程だ。』

 

「まぁ、そりゃな。お前は俺の…、いや大宮祖国という存在の”負”の部分だ。下手に手出しして、あの頃みたいに人を信じれなくなるのはゴメンだね。」

 

『確かに、大宮祖国の”負の側面”である俺を”切り取った”お前は、人を信じる事に特化した存在なのだろう。人類を信じ、仲間の為に全てを捧げる聖人の如き存在だ。だが…』

 

そこで”祖国”は言葉を一度切る。

だが彼のその目は、何も語らすとも分かるはずだと、その先は既に知っているはずだと、そう静謐に告げていた。

 

そして祖国自身もまた、その答えを知っている。

いや、むしろ”祖国”よりも良くその事実を理解している。

聖人の如き人生を送って来た”今の”大宮祖国だからこそ、その意味を誰よりも理解していたのだ。

 

「ああ、分かってる。今の俺では、………足りない。」

 

そう、足りない。

今の祖国では足りない。

悲しみを知って喜びを知るように、憎しみを知って慈しみを知るように、人は相反する感情を知って初めて本当の感情を知る。

人は己が知らない事を知って初めて、既知に対する真の意味を理解出来るのだ。

 

だが、大宮祖国にはそれが足りない。

己の汚い感情を、賤しい未練を、うちに秘めたる残酷性を、そのすべて”切り取って”心の奥底に封印した祖国では、真の尊さを、希望を、優しさを、何もかもを知る事が出来ない。

上辺だけの、薄っぺらい偽物。

それが今の大宮祖国の正体。

 

「それでも俺は二度と昔に戻るつもりは無い。俺はお前を絶対に認めない。」

 

ゆえに彼の言葉は何もかもが虚しく響く。

どれだけ綺麗な言葉を並べようとも、どれだけ理想に忠実であっても、どれだけ彼が崇高な理念を掲げようとも。

彼の言葉は決して本物にはなり得ない。

 

そしてそんな祖国の言葉は、

 

『フン、やはり所詮は贋作か…』

 

心底つまらなそうな瞳をした”祖国”の言葉と共に、虚空へと虚しく消えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、こんなところまでいったい何の用だ?』

 

しばしの静寂の後、先に口を開いたのは意外な事に”祖国”のほうであった。

あいも変わらず冷徹な瞳を向ける彼であったが、確かにその挙動からは突然の訪問に対する疑問の色もうかがえた。

まあ、自らを封印して時以来ほとんど来た事がなのだから、その疑問も当然といえは当然なのだが。

 

「俺の心が読めるんだろ?なら俺の用件も分かっているはずだ。」

 

『バカめ、他人の心が読めるはずが無いだろう?お前と同じで推察したにすぎん。』

 

「ハッ、もとは同じ存在だったていうのに”他人”とはな。皮肉な話だ。」

 

『くだらん戯言はいらん。さっさと用件を言え。お前もここに長居したくは無いだろう?』

 

祖国の精一杯の虚勢を鼻で笑う”祖国”。

今彼の目の前にいる偽物が何の用でここにいるのかは知らないが、くだらない話をするためにわざわざここに来たというならば相手にする価値もない。

自らの負の部分に恐怖し身の丈にあわない態度をとる存在に、まるでゴミを見るかのような態度のまま”祖国”は再度問いかける。

 

『生憎と俺にはよく吠えるだけの犬をかまってやる時間は無いんだ。用件が無いならさっさと帰る事だ。』

 

「………チッ、分かったよ。今はまだ、お前に勝てそうもないしな…。」

 

そして祖国はゆっくりと今回の経緯を”祖国”へと説明し始めた。

 

仲間を取り戻すためにペルセウスと戦った事。

その途中でイレギュラーが発生し、これから一人で戦わねばならない事。

その戦いで自分が生きて帰れる可能性が限りなくゼロである事。

そして最後になるかもしれないからと、一応”祖国”に別れの挨拶を告げに来た事。

 

祖国がその一つ一つを大雑把ながらに説明し終え、フゥと一息ついた瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フッ、フハハハハハハッ!』

 

唐突に遠慮のない笑い声が空間に響きわたった。

それはまるで侮蔑のような、嘲笑のような、憐れみのような、そんな笑い声。

大宮祖国の命を賭した英断に対する侮辱に他ならなかった。

 

「…何がおかしい?」

 

いきなりの反応に少々狼狽しながらも、自らの決断を笑い飛ばされた祖国の態度にはまぎれもない怒気が満ちていた。

並みの者ならばそれだけで戦意をそがれ萎縮してしまいそうなほどの怒気。

 

だがそれ程の感情の奔流を受けながらも、やはり”祖国”の口元から笑みが絶える事は無かった。

 

いやらしくつり上げられた口元が開く。

値踏みするような目線が祖国をとらえる。

その何もかもが祖国に言いようのない嫌悪感を抱かせる。

 

”気に入らねえ、何もかもがだ!”

 

祖国と”祖国”はコインの表裏だ。

決して相容れる事は無い。

そんな事は祖国もここに来る前から納得していたはずであった。

 

だが現状の前にはそんな物何の役にも立たない。

理論をすっ飛ばして湧き上がるこの感情は、決して抑えることなど出来ない。

ここは、この場所は、自らの心の奥底なのだから。

 

「お前に何が分かる!人に絶望し、人を殺す事に何の抵抗も感じないお前が!誰かを守りたいっていうこの感情を笑う資格があるっていうのか!!!」

 

祖国は激情のままに問いかける。

たとえ相手が誰であろうとも、自らの胸の内に宿るこの感情は否定させない。

そんな万感の思いを持って発された言葉は、

 

『クククッ、哀れだなぁ。』

 

だがやはり”祖国”に届く事はなかった。

それどころか、祖国に向けられる笑みは一層深く、一層不気味な物へとなっていった。

まるで祖国の中の不安を掻き立てるかの様に。

 

『そうやってお前はいつまで報われない戦いを続けるつもりだ?』

 

「………何だと?」

 

『考えてもみろ。お前の価値とは何だ?容姿か?カリスマか?それとも財力か?どれも違うだろう?お前という存在に見いだされてきた物はいったい何だ?』

 

「それは……。」

 

『とっくに分かっているはずだ。お前が周りから慕われ、求められてきたのは単に、その力だけだ。世界にとって大宮祖国の存在意義は”武力”に過ぎないのさ!』

 

「そんな事は無い!」

 

『いいや、違わない。だからこそお前は、いや俺たちは、常に戦いの中にいるのさ!今が良い証拠だろう?』

 

「…だが、それでも俺はこの力が必要とされる限りは、その人のために力を揮うだけだ。」

 

『ハァ、だからお前は哀れなんだよ。他者のために力を揮い、他者のために命をなげうち、そして最後は守って来た者によって捨てられる。俺たち大宮祖国の人生はいつだってそうだったろう?』

 

「………。」

 

『断言しよう。もし今回生き残る事が出来たとしても、お前は遠くない未来に存在そのものを疎まれ、そしてノーネームを去る。それでもまだお前は他人のために戦うのか?』

 

 

最後の問いかけに答える気力は、もう祖国には残されていなかった。

たった数秒の舌戦。

だがそれだけで、祖国の中の”小奇麗な”価値観にひびが入るのには十分であった。

 

”そうか、だから俺は奴をここまで拒絶していたのか…。”

 

ここになって初めて祖国は理解した。

なぜ”祖国”にここまで嫌悪感を…、いや恐怖を感じていたのかを。

それはきっと本能的なアラームだ。

”祖国”に会えば、きっと今までの自分の価値観が、信じて来た物が、すべて否定される事を祖国はどこかで理解していたのだ。

理解していてなお認めようとはしていなかった。

 

だが、実際に会って認めざるを得ない。

祖国と”祖国”とでは、何もかもが違いすぎる。

味わった絶望も、過ごした孤独も、背負った罪も。

今まで祖国が感じて来た仮初の優しさや、絆などでは補いきれ無いほどに、”祖国”の感情は淀んでいる。

そして彼の絶望の前には、祖国の信念などゴミ同然であるということも。

 

 

 

 

 

そして祖国は…

 

 

 

 

 

 

 

それでも諦める事が出来なかった。

 

今まで歩いてきた道を、助けて来た人々を、感謝されてきた事を、すべて偽物だと投げ捨てる事など祖国には出来なかった。

 

それは甘えかもしれない。

あるいは執着かもしれない。

はたまた泡沫に消える幻想かもしれない。

 

だがそれでもいい。

それが自己満足であろうとも。

こんな所で諦める事だけは、絶対に認める訳にはいかなかった。

 

”俺はきっとこの結末を知っていた。知っていてなお、俺はここに来る事を選んだんだ。”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、それでも俺は他人のために戦うよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”だからこそ俺は、俺の信じた道を行く。それがアイツとの、真由との約束なんだよ。”

 

そう、それは彼の人生におけるたった一つの約束。

彼が恩師、安里真由と交わした唯一の契り。

 

ー人をもう一度信じて欲しい。

 

それを違うことなど、祖国には出来ない。

ただ、それだけの理由だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそんな祖国の答えに、

 

『ククク。まあ精々死なないようにする事だ。』

 

相も変わらず”祖国”は、何も読み取る事のできない表情で答えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祖国が空間から去った後、そこには水面に映る”祖国”の姿があるだけだった。

そしてその姿も、祖国が去った後から徐々に薄くなっていっている。

彼がこの深層心理の空間に顕現していられる時間も残りわずかなのだろう。

 

だが、そんな事は今の彼には関係ない。

彼の表情には、祖国には決して見せないであろう程の笑みが張り付いていたのだ。

それは久しぶりの邂逅のためか、あるいは…

 

『ククク、ようやく始まるのか。とは言え、人を殺める事も出来ない分際で、今回の戦いに勝てるとは到底思えんが…。まあ、どちらに転ぼうが結末は同じことだ。』

 

そしてその言葉を最後に、薄暗い空間には再び静寂が訪れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます!
相も変わらす進まないですね(笑)

今回はもしかしたら読みにくかったかもしれません。
それは筆者の責任ですので、分かりにくかった点、改良点等ございましたら、感想欄までお願いします。
一応、補完説明は数話後に上げる予定です。

補足までに、文中に登場する
祖国=通常の祖国君です。
”祖国”=深層心理に映る、もう一人の祖国君です。
遊〇王の主人公とファラオみたいな感じで考えてもらえれば分かりやすいかな?(笑)

それと感想、批判、意見等も受け付け中です。
御用の方は、同じく感想欄までお願いします。
それでは今回はこれにて。
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