問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
お気に入りが320件を突破いたしました。
誠にありがとうございます!
さらに投票もいただきました。
ありがとうございます。
評価自体は1と低評価で、中々にショックでしたが、まあこれも愛情の内と割り切って頑張りたいと思います。
そもそも作品に興味自体もって頂かなければ、投票しようなんて思いませんもんね?
だから、これも激励の内という超ポジティブ思考でいこうと思いますw
あ、皆さんもよろしければ評価お願いします。
さて、今話はなんだかよく分からない話になってしまいました。
祖国君の使う武術の説明と、ゴーゴンの魔眼のネタバレ回なのですが、少し物足りなくて戦闘シーンも少し付け足してみました。
本格的な戦いは次話からです。
それでは今話もお付き合い下さい。
彩撃流拳闘術
それは身体科学、生体科学、生物物理化学などの見地から確立された最新の拳闘術。
極限まで合理を突き詰めたその流派は、開祖である黛剛健を初めとして世界中に数多の逸話を打ち立てる程の高名を成した。
武術で大成する事を志す者ならば一度はその門下に下るとさえ言われた、まさに至高の対人特化型拳闘術である。
彩撃流拳闘術は、その名の通り技名に”色”に関する言葉が必ずつけられる。
基本三色の白、青、赤を初めとし、有段色の黄、緑、紫、師範色の黒など、彩撃の技には必ずそれに相応しい色名がつけられていた。
ちなみにその安直な命名こそが祖国の名づけ嫌いの主な要因なのだが、まあそれは後々語る事にしよう。
さてこの彩撃流なのだが、上にも書いた通り色によってレベル分けがなされている。
基本三色を収めた者は正式に彩撃流の名を名乗る事が許され、同時に一個大隊が大手を上げて歓迎する程の好待遇が確約されていた。
有段色ともなれば各地、各組織からスカウトが絶えず、師範代などは最早語るまでも無いだろう。
それ程までに彩撃流を収めた者は対人格闘において無類の強さを誇っていた。
しかしスカウトに頼らざるを得無い程、彩撃流を名乗る絶対数が少ないのは何故か?
その答えは簡単。
彩撃流の門下生の内、実に9割以上もの生徒が基本三色の白さえ取得できず、その道を諦めるからである。
基本三色の内、最も単純で最も基本的な技、”白撃”。
その習得に近道は存在しない。
ひたすらに正拳突きを繰り返す、ただそれだけ。
雨の日も、風の日も、極寒の日も、灼熱の日も、その拳が休まることは無い。
その一突き一突きが無駄を削ぎ落とし、極限まで磨き抜かれた一撃が容易く岩をも穿つまで。
そしてそんな洗練された一突きを習得して、ようやく彩撃流の一歩を踏み出したと認められるのだ。
故にこそ、白撃習得には”才能”という物が多大に関係する。
習得するのに10年かかったという老達もいれば、たった一週間で自分の物としたという神童も存在する。
最初の関門にして、才能を選別するふるい。
それが基本色其の一、白撃の役割でもあった。
多くの門下生は早々にこの壁で挫折し、夢半ばで涙をのむこととなるのだ。
さて、そんな彩撃流にはいくつか奇妙な噂が残っている。
拳一つで山を打ち砕いた猛者がいるだとか、歴代師範代が残した奥義書がどこかに隠されているだとか、荒唐無稽な話から意外と現実味を帯びた噂まで様々だ。
その中の一つに、とある少年の話がある。
曰く、争いを好まぬ平和主義者。
曰く、まともに修行もしない怠け者。
曰く、茶菓子の選別眼は師範代をも超える。
そんな凄いんだか凄くないんだがよく分からない逸話が多い少年だが、武錬においても同様に数多の噂を残している。
曰く、たった二年で基本三色と有段色、黄、緑を習得した天才。
曰く、総師範代と打ち合える数少ない人物。
曰く、黛剛健の直系にして今代最高の神童、黛壮健も一目置く怪物。
そして、噂はその少年の名はこう締めくくられていた。
ー茶菓子係り『大宮 祖国』と。
つーか、茶菓子係りって何だ。
~side 祖国~
目の前に突き出した拳を見る。
何てことは無い、ただの正拳突き。
基本中の基本であるがゆえに、その実力が一番反映されやすい白の拳だ。
非才の身ではありながらも、一度は武の道を歩んでいた事もある。
武術に対する知識は少なからず持ち合わせていると自負しているが、彩撃流に関しては別格だろう。
おそらく徹底的に合理を追い求めていくあの流派とは、個人的見解ではあるが中々に馬が合っていたと思う。
だからこそ飽き性な自分が嫌々ながらも続けてこられた理由でもあるのだが。
「酷いもんだ…。」
もう一度放った突きを見る。
無駄が多い。
削ぎ落としたはずの不合理がいつの間にか拳に纏わりつき、白撃本来の威力を減衰させている。
今の一撃を見たら壮健あたりが修行不足だと小言を言いに来るに違いない。
事実白撃本来の威力を知る者ならば、今の白撃がいかに拙いかすぐに見抜けるだろう。
なにせ本来の白撃は山をも貫くのだ。
”白撃・纏”
それが今の俺の一撃の名前。
彩撃流の技にギフトの威力を組み合わせた我流の拳闘術だ。
元々白撃は彩撃流の技の中でも貫通力に特化した物だった。
そこにギフト”カット&ペースト”でさらに威力を上乗せし、およそ生身の人間では発揮できない威力まで昇華させた拳。
それが白撃・纏の正体だ。
普通は威力が高すぎて滅多に使用しないんだが、白夜叉の同類ならば手加減は不要だろう。
あのふざけた耐久力を持つ奴らが、この程度でやられる訳も無いしな。
余談だが、白撃・纏は
知覚が鋭敏化されているおかげで、反作用のダメージも相手への攻撃へと転化できるからだ。
当然のことだが、いくら腕を磨こうとも拳という物理的な媒体を用いている以上物理法則と無縁ではいられない。
相手を殴れば手は痛いし、強く殴ればその分痛みも増す。
小学生でも知っている作用と反作用の原理だ。
だが直列型神経回路は衝撃をタイムロスなく切り取る事が出来る状態だ。
そして切り取った反作用を作用方面のベクトルとして貼り付ければ、単純計算で威力は2倍。
強く殴れば殴るほど、反作用が大きければ大きいほど、この直列型神経回路の恩恵が受けられる訳だ。
その分ギフトの併用と演算処理で脳に負担がかかるのだが、それを補って余りある凶悪さだし、何より相手はあのアルゴールだ。
現状では直列型神経回路を解除する訳にはいかないだろう。
「ふぅ…。」
緊張していた筋肉が弛緩する。
全身から力みが消えていく。
拳に痛みは無い。
上手く切り取れたようだ。
久しぶりの同時演算だったが、何とか無事に成功したらしい。
気を取り直してアルゴールが吹き飛んだ方向を見てみると、城壁を幾重にも貫いて外野まで貫通しているようだ。
「さすがは貫通力に特化した技ってか。でもまぁ壁にヒビが入ってる様じゃまだまだだな。」
そう、闘技場の壁にはアルゴールが激突した余波で多数のヒビが入っているが、それじゃまだ甘い。
力を効率的に伝導出来ていない証拠だ。
同じ条件でも師範代クラスが放つ白撃ならば、ヒビさえ入らずに壁を貫通させるだろう。
それだけ打撃時に無駄がないのだ。
これは圧力と面積の話と似ているだろう。
例えば常人が段ボールをグーで殴れば凹む程度だが針で刺せば穴が開く様に、同じ力でも一点にそれを集約出来れば貫通性能は向上する。
白撃もこれと似たような原理を応用しており、力の収束と極小の一点に伝導という2点がこの技のネックだ。
「ま、今反省しても意味ないし。タイムアップになる前にさっさと決着付けに行きますか。」
だがこれは一朝一夕で身に付く様な技術では無い。
少なくとも、今回の戦闘中でどうこうできる問題では無いだろう。
それこそ彩撃流門下生だった頃の様な、厳しい武錬が必要となる。
思い出しただけでゲンナリしてしまいそうだ。
まあー
「生きて帰れたら、それもありか。」
柄にもなくそんな事を考えながら、俺はギフトを使って荒野へと足を運んだ。
今思えばこれが俗にいうフラグだったのかもしれない…。
~side out~
どこまでも広がる寂寥たる荒野。
不毛の地という言葉がピッタリ似合いそうな大地に降り立った祖国が目にしたのは、ほぼノーダメージで健在なアルゴールの姿であった。
多少衣服が破けてはいるものの目立った外傷もなく、むしろその瞳には先ほどよりも強い闘気が宿っている。
猛禽類の如く研ぎ澄まされた瞳は、いまかいまかと強者の到着を待ちわびているようだった。
”チッ、予想はしてたけど無傷とはな…。少しへこむぞ。”
そんなアルゴールを見つめる祖国の瞳は、対照的に冷え切っていた。
冷静に、着実に、相手を分析するかの様に。
直列型神経回路を全身装甲で展開しながら、いつ再開の火ぶたが切って落とされても良いように身構える祖国。
微塵の油断もないその風貌にアルゴールはますます喜色を濃くしながら喋りかける。
「いやー、目覚めの一撃にしては効いたし。少年、本当に人間?」
「失礼な。俺ほど人間してる人間はそうそういないだろうよ。」
もう人間という単語の使い方が色々と間違っているが、そこにツッコミを入れる者はいない。
ツッコミ不在というある意味危機的なこの状況の中で、会話はドンドンと進んでいく。
「いやいや、ただの人間がアルちゃんのパンチを弾いたり、ここまで殴り飛ばせたりする訳ないし。てかさっきの一撃、金髪君の奴よりもチョー痛いんだけど!」
「ハハ、そりゃそうだ。」
祖国の言葉に怪訝な顔をするアルゴール。
まあ、とある事実を知らない者ならば、彼の言葉の真意を知る事は出来なくてもしょうがないだろう。
ーーー彼が白撃に貼り付けたエネルギーが、”逆廻十六夜のそれである”という事実を。
ペルセウスとのギフトゲーム前にテンションが跳ね上がった十六夜が「祖国、少し準備運動しようぜ!」という口実のもとノーネームのだだっ広い庭で暴れ回り、後で黒ウサギに説教され、例に漏れず祖国もそれに巻き込まれたという訳だ。
殆どの物的被害は十六夜が原因で、祖国はほぼ彼の攻撃のストックに努めていたのだが、目下問題児認定されている彼の言い訳が黒ウサギに信用される事は終ぞ無かった。
哀れなり祖国。
「まったく、どいつもこいつも俺を何だと思ってんだ。勝手にやれ問題児だの、やれ人外だの…、そういうのは
「少年も十分人間止めてると思うし。むしろ金髪君よりも人外じゃない?」
「ふざけんな!…つーか、そんな事お前が一番分かってんじゃねえの?」
唐突な祖国の言葉に、首を傾げるアルゴール。
この場でそんな事を言い出した祖国の思惑を探るも、まともな解答さえ思いつかない。
いや、
故に彼女は胸中の疑念を払拭すべく、ごく当然の言葉を口にする。
「………何言ってるか分かんないし。」
「とぼけんなよ。なんなら俺の口から言ってやろうか?」
「だから何の「ゴーゴンの魔眼」話を……」
途端にアルゴールの美麗な顔が驚愕で歪む。
自分の思考が読まれたのかとさえ錯覚する言葉に、瞬間的に彼女の口が凍り付いた。
彼の少年の言いたい事は分かる。
いや、分からざるを得ない。
が、それは彼女以外は誰一人として知らぬ事。
生涯誰にも伝えた事の無い、自身のギフトに関する最奥の情報のはずだ。
それがバレているかもしれない。
その事実に、彼女の心中は一気にざわめきたったのだ。
そんな彼女を見下す様に、元凶がその口を開く。
「俺も色々勉強してきたからな。お前の伝承や伝記、やらかした事とかを掘り返して来た訳よ。そしたらさぁ、ちょっと興味深い事に行き着いたんだよ。」
「…へぇ。アルちゃんも知りたいなー。」
「いいぜ、教えてやるよ。」
ニヤリ、と悪い笑みを浮かべる祖国の顔は正しく問題児のそれに相違ない。
やはり彼はノーネーム問題児sの一角を担う人材に相応しいのだろう。
自身のあくどい笑みがモニターで垂れ流されている事も知らず、祖国は得意げに話を進めていく。
「お前に関する蔵書を手当たり次第に漁ってる時にな、ふと気づいたんだよ。書かれている本によってお前の特筆されている箇所がバラバラな事にな。」
「…それが何?書き手によって心象が変わるのは当然だし。」
「俺も最初はそう思ってたんだけどな…、でもアレは流石に不自然過ぎだ。不思議に思って同じ点にフォーカスしてる書籍別に分けてみたらアラ吃驚。ある法則性が見えて来たんだ。」
「法則性?」
「ああ、カテゴライズされたお前の特記事項は主に2パターンに別れていたんだ。一つ目はその身体能力に焦点を当てた物、もう一つはさっき言ったゴーゴンの魔眼を特筆していた物。どちらもお前が有するギフトの内で強力な部類だが、問題はそこじゃなかった。………お前が”誰に対して”ギフトを使ったか?それが一番の問題点だったんだ。」
祖国の表情に依然変わりは無い。
だが、アルゴールの表情は当初と比べ明らかに不信感が増している。
まるで話の全貌が見えてこない事に苛立ちが募っているらしい。
そんな彼女の内心が言葉となって荒野に響く。
「だったら何?言いたい事があるならハッキリ言えばいいし!」
「あっそう、ならハッキリ言わせてもらおう。お前のギフト、ゴーゴンの魔眼は……………
瞬間、アルゴールの表情が再び驚きで染まる。
嫌な予感を当ててしまった己の勘を呪いつつも、すぐに平静を装った彼女は祖国に言葉の真意を問う。
「どういう事?」
「そのままの意味だ。お前のゴーゴン魔眼は普通の人間には効かない。いや、正確には”霊格を持たない存在には効かない”と言うべきか。」
その言葉に対する衝撃は先ほどの比では無かった。
隠していた情報が看破されただけでなく、その詳細まで見破られたのだ。
祖国のゾッとするような鋭い視線を感じながらも、アルゴールは辛うじて心中に浮かんだ問を口にした。
「根拠は?」
「さっきも言ったが、お前が誰に対してどのギフトを使っているかが一番重要な点だ。お前と他の神や天使とかの戦いを書いた伝記ではゴーゴンの魔眼が非常に脅威として語られていたが、他愛もない話、例えばお前が村一個を滅ぼしたなんていう話ではお前の身体能力がメインで語られていた。----でもよくよく考えると、これっておかしいよな?」
そう言って祖国は、ポケットからとある物を取り出した。
それは何の殺傷能力も無い、我々もよく知るアレ。
搬送用の梱包に使われる、あの魅惑的感触のアレ。
プチプチシート、正式名称・気泡緩衝材であった。
とりだしたシートをプチプチと潰しながら、祖国は魅惑的な感触に酔いしれる。
一瞬いけない世界にトリップしそうになるが鋼の意志でそれを阻止すると、つぶれた気泡を見せつける様に話しかける。
「お前が村人を殺すのは、きっとこんな感じなんだろう。」
ープチン、プチン。
「確かにお前程の力を持つなら、そこら辺の奴を殺すなんざ訳ないだろうが。」
ープチン、プチン、プチン。
「いいかげん、飽きて来たな。」
そう言うやいなや、プチプチシートを雑巾の水を絞る様に捻りあげる祖国。
当然シートは耐えきれずにプチプチと音を立てながら潰れていく。
ヘニャヘニャになったシートを広げると、大分広範囲を巻き込んだのか生き残っている気泡の方が少ないようだ。
「つまり、こういう事だ。お前が身体能力で村人をプチプチ潰して行く描写は多々あれど、村人を魔眼で石化させた描写は一度も無い。それも一度や二度ならともかく、目を通した蔵書全てがそうだった。いくら何でも不自然過ぎるよな?普通なら途中で飽きて、もっと効率的に相手を戦闘不能に出来る石化の魔眼を使うはずだろ?ちょうど俺がさっき気泡を一気に絞り上げたようにな。にも関わらず、蔵書のお前は決して魔眼を使わなかった。どうしてだろうな?」
祖国の問いかけにアルゴールは答えない。
いや、答えられない。
不用意な言い訳や解答は自らの首を絞めるだけだと、彼女自身これまでのやり取りから感じ取っていたからだろう。
だが祖国の主張も的を射ている。
いくら相手が弱かろうとも、有象無象の処理には時間がかかる。
最初こそ苦ではないかもしれないが、慣れてしまえばルーティン・ワーク、悪く言えば作業ゲーだ。
より効率的な方法で相手を屠ろうという考えに行き着くのは当然の帰着と言える。
なのにアルゴールは魔眼を使わなかった。
見るだけで対象を石化できるというならば、それほど効率のよい方法は無い。
いや、むしろ使わない方が非合理的とさえ言えるだろう。
そしてその非合理にこそ、魔眼の秘密を解く鍵である。
祖国はそう睨んだのだ。
「考えられる可能性は三つ。一つ、お前が凄い根気強い奴でプチプチ殺すのも苦にならない場合。二つ、魔眼にはそれ相応の代償が必要で格下相手に使うなんて割に合わない場合。そして三つ目、----------そもそも魔眼が村人相手に効かない場合。」
そう、使わないのでなく使えない。
使った所で効果が無いのならば、村人に魔眼を使わない理由も納得できる。
「一番目の可能性はお前の性格を鑑みるにまず無いだろう。二番目の可能性が中々払拭できなかったんだが、それもさっき解決済みだ。」
「さっき?」
「ああ、だってお前ルイオスを魔眼で石化させたよな?お前の実力なら苦も無く倒せる相手にわざわざ魔眼を使ったんだ。これで二番目の可能性もボツだ。」
「チッ…」
自分の失態に毒づくアルゴール。
隷属から解放されて調子に乗っていたのが仇となった事に苦虫をかみつぶした表情になる。
そしてその表情は次の祖国の言葉により一層濃い物となった。
「おいおい、後悔するのはまだ早いぜ。なにせお前がルイオスを石化してくれたおかげで、俺はさらに魔眼を考察する情報が得られたんだからな。」
アルゴールの失策は可能性の絞り込みを可能にしただけでなく、魔眼の秘密さえも導くヒントだったと告げる祖国。
その表情には慢心も嘲笑もない、ただ力強い確信が浮かんでいる。
なにより今、この現状こそがその証明であるが故に。
「お前の魔眼は神には効いても人には効かないと分かった。ならばこの両者の違いは何かを考えれば、必然的に魔眼が何に作用しているのかが分かるはず。が、神と人の違いなんてあり過ぎて分かる訳がなかった。……………お前がルイオスを石化するまでな。」
祖国の仮説は以下のような物だ。
神には作用する魔眼がただの人には作用しない理由。
それは魔眼が、神が持っていて人が持っていない要素、その何かしらの要素αに働きかけているのではないか?
そしてそのαは神と人の違いを考えれば導けるはず。
だが、ここで問題が発生した。
神と人の違いという問いに対して、複数の解答が存在したのだ。
それこそ神という存在の定義いかんによっては無限に等しい程に。
そこで登場するのがルイオスだ。
「ルイオスという存在は非常に有意義なサンプルだった。アイツの祖先、元祖ペルセウスはギリシャ神話の主神と人間の間に生まれた子供らしいが、アイツ自身は違う。アイツが何代目だったかは流石に知らないが、代を追うごとにペルセウスに流れる神の血は薄まり、今代に至っては搾りかすみたいな物だ。つまりルイオスは限りなく人間に近い神サイド、いわば人間と神の境目的なポジションにいる訳だ。」
彼の言う通りルイオスの存在、いや正しくはルイオスが石化される要因αを持っているという事実は今回において非常に重要であった。
神と人間というブレ幅の大きい二者の間に位置する存在。
これ程良いサンプルはそうそう居ないだろう。
イメージならば数直線が良いだろう。
1から100の数直線で、人間が1、神が100とする。
神と人の子である初代ペルセウスはさながら中間の50、そして代々神の血が薄まっていく事は限りなく人サイドの1へと近づいて行く事を意味する。
ルイオスが何代目かは知らないが、数直線で言うならば精々5程度と言ったところか。
つまりルイオスという存在は、人間と毛が生えた程度しか要素的な差異が無いのだ。
「限りなく人に近いはずのルイオスはゴーゴンの魔眼で石化が可能だった。つまりルイオスを要素別に区分して、そこから人間が持つ要素を引けば石化要因αの候補が導ける訳だ。数学で言うなら要素の部分集合ってところか。」
ルイオスを構成する要素を全体集合とし、そこから人間が有している要素を引けば残りはルイオスしか持っていない要素のみ。
そこからさらに常識的要素と他サンプルをすり合わせて考えれば、ある程度の解答まで絞り込むことが可能だ。
「残った可能性はいくつかあった。物的な要因ならば、アイツが持つ神霊殺しの鎌ハルパーやハデスの兜。付随的要因ならば、コミュニティの長という地位やペルセウスという組織そのもの。だが、どれも決定打に欠けるし、そもそも他の神や天使たちはそんな物持たなくとも石化条件をみたしていた。ならば石化要因は外的な物ではなく、ルイオスという存在に起因するもの、ルイオスを構成する内的要因の可能性が高い。」
「なるほど、それでアイツの霊格に目を付けた訳か。」
「ああ、今でこそ無きに等しいが曲がりなりにも主神の子孫だ。霊格という要素ならば間違いなく持っている。ていうか、それ以外であのボンボン坊ちゃんと人間の要素的な違いなんて思いつかなかったしな。」
「それって、遠回しにアイツがしょぼいって言ってるよね?」
「ハハ、違いねえ。」
アルゴールの思いのほか鋭いツッコミに苦笑する祖国。
彼としてはその様な思惑は微塵もなかったのだが、よくよく考えれば彼女の言う通りだ。
存在レベルでdisられたルイオスも中々に哀れな物だ。
「ま、アイツという存在のおかげでここまで来れたんだ。しょぼい奴でもしょぼいなりに役に立ったんだから文句ねえだろ。」
もはや言いたい放題である。
フォローどころか止めをさしにかかる祖国に画面の向こうのペルセウス兵たちは涙目である。
かく言うノーネームメンバーも、祖国のギリギリをブッチして完全にアウトな発言に頬を引きつらせている。
「と、まあこんな感じでお前のギフトに対する考察は終わりだ。これらの事からお前のギフトは”視た対象の霊格を石化させる”、あるいは”視た対象の霊格を介して相手を石化させる”ギフトって推察した訳だが………、何か訂正があるなら聞いてやるぞ?」
「いや別に。…てか少年、本当に頭大丈夫?」
「あ?何で正解者が貶められてんだ?つーか、もっと別の感想あるだろ!」
拗ねた様に不機嫌な顔をする祖国と、クツクツと笑うアルゴール。
きっと出会い方さえ違えば良い飲み友達にでもなれたであろう二人が、しかし戦場にて相見える皮肉。
世界の神という者はどうも性悪な気がしてならない祖国であるが、箱庭においてはそれも必然なのかもしれない。
だがそんな感傷はこの場では百害あって一利なしだ。
緩みかけた気を一転して引き締め直すと、
「ま、そういう訳だから、人の顔色伺いながら戦うの止めたら?」
冷やかな眼差しと、最大限の侮蔑を込めて言葉を送った。
そしてその言葉に込められた意味を悟ったのか、アルゴールも一転、星霊の名に恥じぬ威圧感を放つと、
「ハァ、やっぱり少年はーーーーーーー殺りにくい。」
彼女以外聞き取れない様な、蚊の鳴く程度の声で、ぼそりと小さく呟くのだった。
そして二人の姿が掻き消えた。
爆ぜる大地は瞬時にクレーターと化し、巻き上げられた大地は余波のみで粉々に吹き飛ぶ。
地盤が砕け、大気が揺れ、世界が軋む。
前座を終えた二人のエンジンはすでに十分すぎるほど暖まっている。
全力全開、二人のぶつかり合いが荒野一帯の全て揺り動かした。
祖国の白撃・纏がアルゴールを襲う。
貫通性能に特化したその拳は、下手なガードでは抑えきれ無い程の威力を秘めている。
いかに星霊と言えど、研鑽されたその一撃をまともに受け切る事は至難の業だ。
しかし、その程度の事はアルゴールにとって先刻承知。
ガードが不可ならば、ガードしなければ良いだけの話だ。
突き出された祖国の拳を一切の迷いなく左手で下から跳ね上げると、がら空きになった右脇へとカウンターで強烈な蹴りを放つ。
が、今の祖国の速度は並みの反射を凌駕する。
武錬の跡も無い単調な攻撃など何ら脅威になりえない。
彼の視覚が情報を認知するやいなや、跳ね上げられた右腕を瞬時に引き戻し、アルゴールの蹴りを右ひざと右腕で上下で挟み込んだ。
同時にアルゴールの蹴りに込められていたエネルギーを切り取り、挟み込むエネルギーへと転化する。
蹴りが止められただけでなく左足まで封じられたアルゴールは瞬間的に困惑するも、すぐさま切り替えて攻撃に転じる。
左足が祖国を起点に封じられているならば、逆にそれを利用する。
自身が使えないのは左足のみだが、相手はそれを維持するために右腕と右足を使用している。
相対的に見れば断然こちらが有利だ。
瞬間的に相互の状況を判断したアルゴールは、星をも砕く膂力でもってその右腕を祖国へ向かって突き出す。
当然
対する祖国も瞬時に状況を再計算する。
右半分が使えない以上、状況は圧倒的に自分が不利。
かといって右を疎かにすれば、彼女の膂力は容易に彼の防御を突破するだろう。
眼前に迫る拳を見る。
左半身だけでの防御では間に合わない。
ならば…
”ちっ、リフレクター”
苦渋の決断でリフレクターを発動する。
乱発は後々の演算に負荷がかかるので使用は控えるべきなのだが、状況が状況だけに致し方ない。
命と後の負荷を天秤かける程祖国も愚かでは無い。
ーキィィィンンン
眼前に迫っていた拳が彼の眉間に触れるやいなや、一切のダメージを与える事無くはじき返される。
全てが予定通り。
拳が弾かれた反動でバランスを崩すアルゴール。
瞬間、彼女の足から力が抜けるのを確認した祖国は、右半身の拘束を解くとアルゴールの脇腹へと回し蹴りを放つ。
だが弾かれる事はアルゴールにとっても予定通りだ。
弾かれたエネルギーを利用して身体を半回転させると、身をかがめる事で攻撃の軌道線上からずれ、振り向き際に両翼で暴風を巻き起こした。
巻き上がる突風は祖国のかつて巻き起こしたソレと比較しても何ら遜色ない威力を有しており、もはや暴風に近い力の奔流は祖国のみならず地盤さえ巻き上げながら天へと昇って行く。
自身の攻撃を避けるどころか逆にリフレクターを予想されてた祖国は一瞬の驚愕から回避行動が遅れ、爆風を避け切る事が出来ない。
刹那、時速3桁を誇る暴風が一瞬にして祖国を呑み込むと、まるで紙切れを舞い上げるかの様な勢いで軽々と天へ吹き飛ばした。
数十秒後。
ようやく暴風が収まり、嵐が止んだ。
削り取られた大地は岩盤ごと吹き飛び、舞い上げられた土塊は粉々になって舞い落ちている。
舞い上げられた土埃が薄らと天を覆い、星光が届かぬ大地はまさに暗雲低迷といった様子である。
そしてその中心。
岩盤さえ削り取られたクレーターの最深部。
そこには身体中に細かい切り傷を負い、お気に入りのパーカーを失いながらも、だが目には依然として燦爛とした闘気をみなぎらせる大宮祖国の姿があった。
to be continue
読了ありがとうございます。
さて、問題児シリーズ最新刊が5月に発売ですね。
凄い待ち遠しいです。
ええい、角川、さっさと発売せんか!
とまあ、おふざけはさておき、両生類先生本当にお待ちしておりました。
これからも面白いお話を期待しています。
感想、意見、質問、批判、それから評価も、どんどんお待ちしています。
それでは今回はこれにて。