問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
何故かお気に入りが、30件ぐらい増えていますね。
本当にありがとうございます。
そして怖いです。
いったい何があったんでしょう?
あと、投票ありがとうございました。
心からお礼申し上げます。
さて、本格的な戦闘回です。
筆者の戦闘描写なんぞこんな程度なので、過度な期待は度遠慮ください<m(__)m>
心優しき方、今話もどうかお付き合いください。
「ッ、やってくれる…。」
未だ吹き止まぬ暴風の渦中。
舞い上げられる自身の身体。
砕け散った岩石が砲弾にも劣らぬ速度で飛来する状況の中で、祖国は忌々し気に愚痴をこぼす。
”まさか、こんな欠点があったなんてな…。”
自らのギフトの思わぬ弱点に動揺を隠せない祖国。
彼自身もこんな方法で防御を突破されるとは微塵も考えていなかったために、その心的影響は決して少なくない様だ。
通常、祖国のギフトを用いた回避方法は主に3つ存在する。
一つ、空間ごと相手の攻撃を切り飛ばす方法。
二つ、空間を転移して攻撃範囲から離脱する方法。
三つ、白夜叉戦で見せたサイコロ状の無敵フィールド、通称
だがこのどれもにメリット、デメリットが存在する。
一つ目の長所は演算の負担が少ない所だが、欠点として依然挙げたギフトの発動条件、座標設定、形状把握、同質化をクリアしなければ発動出来ないという点がある。
今回の場合、祖国は形状把握を行う前に既に竜巻に巻き込まれており竜巻全体を視認できていないのでこの方法は使えない。
二つ目もほぼ同様の理由で今回は不可。
空間の転移も一つ目と同様に転移先の座標を認識していなければならないが、竜巻に巻き込まれた現状で離脱場所を視認する事は至難の業である。
それに万が一座標設定がうまくいったとしても、今の彼は一瞬も気を抜けない切迫した状態にいた。
暴風は未だ威力を落とさず、巻き上げられた岩塊はおよそ生身の人間には耐えられない威力を有して不規則に、かつ四方八方から祖国に襲い掛かって来ている。
そしていくら彼の脳内処理スペックが優れていようとも、同時に数十か所の攻撃を全て切り取る事は不可能だ。
必然的に祖国は致命傷クラスの衝撃以外はすべて生身で受けざるを得ない事となる。
感覚で言うなら、全方位から飛んでくる150キロの剛速球を避け続けるのに近いだろう。
全方位からのアトランダムな衝撃を感知し、解析し、そしてカットするか否かを即座に判断する。
そんな極限の集中状態の中、転移の為に脳の演算領域を割けるほど彼の頭は人外染みた作りをしていなかったのだ。
ならば三つ目ならばどうだろうか?
三つ目の選択肢はこの中で最も脳に負担をかける方法だが、同時にそれを補って余りある凶悪性能を有している。
そう、”サイコロの外部から内部には干渉できないのに対して、内部から外部への攻撃は可能”という鬼畜性能を。
これは言い換えれば外からサイコロ内に入る事は出来ないが、中から出る事は出来るとも言える。
そして聡明な方ならばこれがいかほどに性悪かすぐに理解できるはずだ。
極端な例なら、サイコロ内部から銃をぶっぱし続けていれば負けないという事になるだろう。
なぜなら相手の攻撃はこちらに通じず、こちらの攻撃のみが一方的に相手様に向かう事となるのだから。
疑似ずっと俺のタ〇ン状態である。
だが今回においてはその性質が仇となった。
空間から出る事が出来るならば、
答えは簡単、落下である。
外部からの干渉を一切受けない代わりに、内部に発生した重力で自然落下する事は必定。
風という浮力を無くし、重力によって自由落下した彼は当然サイコロ内部からはじき出されてしまうだろう。
全く持って無駄な事だ。
結論として、現状において祖国には決定的な防御手段が存在しない。
致命傷クラスの巨大なダメージこそカットしているが、比較的小さな衝撃や非致命傷クラスの裂傷は甘んじて受けざるを得ない状況にあった。
”この状況で他の物をペーストする余裕もねえ。”
何とか致命傷になる攻撃だけは回避しながらも、祖国の身体中には無数の傷跡が刻まれていく。
鋭く切り取られた岩盤は並みの刃物など容易く上回る鋭利さで、彼の白い肌に裂傷を残す。
切り裂かれた肌からは血が滴り、暴風が鮮血を容赦なく祖国から奪い取っていく。
”いってーな。貧血気味の人間からこれ以上搾り取るんじゃねーよ。”
案外余裕そうに見えるかもしれないが、これでも当の祖国は真剣である。
かつて自身が貧血のくせに粗品のジュースに目がくらみ献血した結果、血が足らな過ぎてぶっ倒れた過去を持つ彼にとってみれば中々に重要な点であった。
真面目な話をすれば、何よりも頭の回転に重きを置く彼にしてみれば失血は極力避けるべき事案でもあったのだ。
”だがまぁ、今この竜巻は抜け出せないとしても行き着く所まで行けば大丈夫だろう。”
かすかに垣間見た景色から上空が近いと判断した祖国は気を引き締めなおすと、来たるべき時に備えて防御を固めた。
間違ってもこれ以上酷い傷を負わない様に。
何事にも始りがあれば終わりもある。
たまに未完のままエタった作品などがあるが、それはそれで乙な物であると思う。
まあ、何が言いたいのかと言うと竜巻にも始りと終わりがあるという事だ。
そう、巻き上げられた暴風もいつかは拡散し、霧散する。
祖国が見通していた通り、地上から発生した竜巻は上空で形を崩し、崩壊を始めていた。
”ようやく終わったか。さて、これからどうするか…。”
暴風が収まり体勢を立て直した祖国は、暴風の浮力で限界まで上昇すると、そのまま上空で
一見すれば空中に浮いている様にも見えるが、もちろんこれも彼のギフトによるもの。
足元の空間を切り取り、遥か眼下に見える地面へと貼り付けたのだ。
これにより祖国は空中という点においても翼を持つアルゴールに劣らない機動力を実現していた。
”はぁ、アイツ超強いじゃん…。普通に近接格闘で一本取られるとか何時以来だよ?”
アルゴールとの近接戦闘を思い出し、祖国は苦々しい表情を浮かべる。
その表情には、彼が今まで味わったことの無い感情が色濃く映っていた。
大宮祖国の人生の中で、およそ全力と呼べるような戦闘は片手で足りる程の経験だった。
凡百の兵は言うに及ばず、一国をもってしても彼にギフトを使わせるには至らない。
極稀に現れる猛者も、彼の全力の前には成す術なく敗れ去った。
彼は常に勝者であった。
常勝にして不敗。
それが生きていくために不可欠な唯一の要素だったからだ。
だが今回、全力の戦いにおいて彼は負けた。
ゲームの中の、それも無数にあるうちの一つに過ぎないが、だが確かにその一瞬において祖国はアルゴールに劣っていたのだ。
ギフトは使った。
彩撃流の技も使った。
状態も万全だった。
それでも届かなかった。
そんな今まで経験したことのない事態にさしもの祖国も今更ながら動揺を禁じ得ない。
ざわめき立つ感情を必死に押し殺しながら、まるで自己暗示でもするかの様に祖国は眼下の脅威に対する策を思案する。
”近接でアイツとやるのはマズイ。身体スペックが違いすぎる上に、レフレクターにも反応してきやがった。となると白兵戦は圧倒的に不利か…。”
直近の戦闘でアルゴールは祖国がリフレクターを使う前提で戦闘を組み立てていた。
そしてそれを看破した上で祖国に反撃を仕掛けて来たのだ。
恐らくだが、彼女は幾千にも及ぶ莫大な戦闘経験から似たようなパターンを導き出して対処しているのだろう。
こと戦闘経験という点においては祖国もかなりの量だと自負しているが、アルゴールのそれは文字通り桁が違う。
そもそもの土台からして祖国はアルゴールに大きく劣っているのだ。
”ならわざわざ相手の得意分野で戦ってやる義理は無い。いつも通り相手をハメつつヒット&アウェイで行く。”
ざっくりとした戦略を決め終えるとほぼ同時に、暴風の渦が完全に崩壊を始める。
細かい戦略は詰めきれていないが、この後の展開はアルゴールの思考をトレースすれば大方予想可能だ。
ならばいつも通りそれを利用して対処していけば良いだけの事。
力で及ばぬのなら、智謀で打ち勝てばいいだけの話だ。
兎にも角にもこのままでは居られない。
自身が空中移動が可能という事実を隠すために一瞬で渦の中心に転移すると、再戦までの一時、祖国は静かに牙を研ぐのだった。
さて暴風を巻き起こした張本人であるアルゴールだが、実際のところ先ほどの攻撃はそれ程効果があるとは考えていなかった。
相手は星霊である自分を殴り飛ばし、あまつさえ謎のギフトで攻撃を跳ね返した男だ。
この程度の攻撃はなんらダメージになっていないだろうと、むしろこの後の展開をいかに有利に進めていくかについて考えていた。
最悪の場合、奥の手の使用も考える程に。
だからこそ、暴風が止んだ時に見えた彼の姿はその予想を色々な意味で上回るものであった。
身体中に残された切り傷に、ボロボロの服、そして未だ目に見えて衰えぬ闘争心。
なんとも反応に困るシチュエーションだ。
だがそんな事など容易に忘れてしまう程、次の祖国の行動は彼女の予想を大きく裏切るものであった。
”ッ!?…少年って慎重派だと思ってたけど、意外と安直なのかなっ!”
そう、そこにはクレーターの中心からアルゴールの元へと高速で迫りくる彼の姿があった。
ひとっ跳びに間合いを詰める彼の速度は正に神速。
踏みしめた大地が大きく陥没している事から、かなりの膂力を持っていることは容易に想像できる。
おそらく以前戦った金髪の少年、逆廻十六夜と同等かそれ以上の身体能力だろう。
確かに人間にしてみれば破格のスペックではあるが…、
”…まだ遅い。”
星霊たるアルゴールに通用する速度では無い。
先ほどの近接格闘も、技術こそあれ圧倒的に速度が足りていなかった。
アルゴールの身体能力をもってすれば、あの程度の攻撃をいなすことなど造作もない話であったのだ。
第三宇宙速度という非常識な速度で迫る祖国が拳を引き絞る。
研鑽されたその拳から放たれる衝撃は絶大。
星霊であるアルゴールさえも吹き飛ばしたそれは、常人ならば余波だけで絶命させるに至るだろう。
だがその軌道は単調。
アルゴールの反射速度をもってすれば逸らす事など朝飯前だ。
軽く30メートルはある間合いを瞬間的に詰める祖国をしっかりと視認しながら、アルゴールは迎撃の態勢に入る。
狙うは攻撃を躱した後のカウンター。
それも翼と拳を使った、多方面からの同時攻撃である。
目下、使用された祖国の技で最も厄介なのは間違いなくリフレクター。
威力や攻撃方法を度外視し完全にはじき返すそれは、星霊アルゴールをもってしても正面突破は難しいだろう。
だが、先程の突風で切り刻まれた祖国を見たアルゴールは一つの仮説を立てていた。
”多分、少年のあの技は複数同時に発動出来ない。なら身体の違う箇所を一斉に攻撃すればいいって事だし!”
そう、何故祖国が暴風の中でリフレクターを発動しなかった理由。
それを彼女は、祖国の技は同時展開出来ないからだと踏んでいた。
あれほど強力な技ならば何かしらの制約や発動条件があるのは当然の事である。
解答としては中らずと雖も遠からずと言った所だが、対処方法は中々どうして的確であった。
祖国の拳が放たれる。
音さえ置き去りにするその一撃をアルゴールは安々と見切り、眼前に迫る拳に右手を添えると、その軌道を右へと受け流した。
それとほぼ同時にアルゴールの左肘が祖国の鳩尾を、両翼が彼の両肩をそれぞれ穿つ。
自発的に力を込めた訳ではないが、高速で突っ込んで来る彼の速度を逆に利用した攻撃だ。
祖国はなんとか鳩尾への一撃は跳ね返すも、翼という視覚外からの攻撃は完全に切り取る事が出来ず、重心を崩され大地に叩きつけられてしまう。
辛うじて致命的な衝撃こそ切り取ったものの、それでも両肩へのダメージはかなりの物だ。
軋む身体に鞭うちながらも激突の寸前に受け身をとり衝撃を受け流すと、迫る追撃も紙一重で躱していく。
時には受け流し、時には躱し、また時には反撃さえ交えながら、両者の攻防は不可視の火花を散らす。
”チッ、悔しいがやっぱ接近戦じゃ不利か…。何とか一度距離を取らねえと!”
だが、その攻防も徐々に均衡が崩れ始める。
アルゴールの圧倒的な身体能力の前に、だんだんと防戦一方になっていく祖国。
彼の思惑も虚しく、アルゴールは自身の戦いやすい間合いを一向に崩さない。
祖国もギフトを上手く活用して決定打こそ回避しているが、このままでは捕まるのも時間の問題だ。
必死に現状を打開しようと聡明な頭脳をフル回転させるも、
”やっぱギフトの正体隠して出し惜しみしてちゃ無理か。なるべく情報は与えたくないんだが…、やむを得ん!”
そう心に決めるやいなや、祖国はすぐさま行動に移った。
目の前で放たれたアルゴールの翼撃を掻い潜りながら、彼女の懐へと潜り込む。
同時にアルゴールの足元の地面を全力で踏み抜きバランスを崩すと、彼女の腹部めがけて全力の白撃・纏を打ち放った。
だが、その程度の攻撃はアルゴールも予想済み。
そもそも今までの戦闘で使われた技が打撃のみである以上、祖国の攻撃パターンは予測しやすい部類に入る。
打撃が躱されるのなら、それを当てるための状況を作るのは基本中の基本である。
体勢を若干崩されながらも、アルゴールに焦燥の色は見えない。
体勢的に不利な状態ではあるが所詮はその程度だ。
確かに洗練された一撃ではあるが、彼女の身体スペックをもってすればこの程度のハンデなど意味をなさないのだから。
アルゴールは放たれた白撃を完全に見切ると、軽く後ろにバックダッシュする事で攻撃範囲から逃れ、同時に地面を蹴りあげる。
ひび割れた地面が一瞬でえぐり取られ、巨大な土砂津波となって祖国を完全に呑み込むー
ーそのはずであった。
「なめんじゃねえぞ、アルゴール!!!」
ーまるで津波を
”マズイ!”
一瞬判断が遅れてしまった自身を呪いながらも、アルゴールは辛うじて防御の構えを取る。
先ほどの攻撃が効かなかった以上、互いの間合いに変化は無い。
既に攻撃準備を終えている祖国を迎え撃つには、流石のアルゴールも時間が足りなかった。
結果として彼女には防御以外の選択肢は存在しない。
が、それは悪手だった。
ードゴォォォォオオン!!!!
およそあり得ない爆音と共に、アルゴールの腕に白撃が突き刺さる。
「ーグハッ!…くっそ…。」
同時にガードしたはずの衝撃がアルゴールの身体をいとも簡単に貫くと、堪らず彼女は苦悶の声を上げた。
祖国の白撃・纏は貫通性能に特化した一撃。
いくら星霊といえど、ガード貫通という性能までは無効化できない。
防御を越えて突き刺さる衝撃に足の踏ん張りがきかないアルゴールは無様にも彼方へと吹き飛ばされてしまう。
”…チクショウ!いったい何が!?”
勢いに負け吹き飛ばされながらも、両翼を使って勢いを削ぐアルゴール。
瞬間的に被害を最小限に押しとどめた彼女は現状を理解しようと思考を働かせようとしー
「おいおい、どこ見てんだよ?」
ー更なる驚愕が彼女を襲った。
先ほどまで眼前で拳を打ちだしていたはずの祖国が、既に彼女の背後に回り込んでいたのだ。
”…なっ!?ちょっと早すぎない!?”
そんな彼女の驚愕を後目に、再び祖国が拳を振るう。
減速しているとはいえ、吹き飛ばされた直後では流石のアルゴールも体勢を立て直す事が出来ない。
防御する事も叶わず背後を完全に打ち抜かれた彼女は、あまりの衝撃に地面に叩き付けられる。
砕け散った地面は余波で軽々と捲れ上がり、一撃でアルゴールを中心とした巨大クレーターと化していく。
「まだまだぁ!!!」
だがまだ足りない。
星霊たる彼女を追いつめるには決定的に威力が足りない。
事実、背後からの強襲では確かに拳は直撃したにも関わらず、さほどダメージが通っていない様には見えない。
だからこそ、祖国は追撃の手を緩めない。
ー持てる力の全てを込めて
ー有する技術の粋を集めて
ー脳が焼き切れるかと思う程の激痛さえ耐えて
彼はその拳を振り下ろした。
”これで止めだ、アルゴール!-白撃・重纏!!!”
瞬間、まばゆい程の極光が世界を包む。
今までの白撃とは比べ物にならない程の威力を秘めた一撃。
触れるだけで全てを壊し、余波だけで全てを砕くそれは、大陸一つ程度なら容易く沈める事が出来る代物だ。
そして遮る物全てを打ち壊すその一撃は、荒れ果てた荒野を砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、砕き、何もかも砕き尽くしー
ーそして大陸が二つに裂けた。
~side 黒ウサギ~
「すごい…。」
画面の向こうに映し出される光景に思わず言葉がこぼれてしまいました。
恥ずかしくなって周りを確認してみると、やはり皆さん同じ感想を抱いていらっしゃるようで安心しました。
私たちを案内してくださった幹部兵士さんなんか、さっきから口が開きっぱなしになってますし。
「本当にアレは人間なのか…?」
戦いを観戦しているうちの誰かが、その場全員の気持ちを代弁したような問を口にしました。
かく言う私も、本当に祖国さんが人間なのか自信がなくなってきています。
それ程までに画面の向こうで行われている戦いは常軌を逸したものでした。
黒ウサギも自慢ではありませんが自分の実力にはそこそこ自信があります。
ですが、あれは流石に無理です。
ていうか魔王アルゴールの速度もあり得ませんが、その速度に反応出来る祖国さんも大概です!
なんであんな速度に対応できるのですか!?
そもそも、どうして十六夜さんと同じくらいの速度で移動してるんですか!?
もう、あの問題児様には驚かされてばっかりです。
「本当にすごいわね。あれが祖国君の実力…。」
隣で食い入るように画面を見入ていた飛鳥さんも、祖国さんの規格外っぷりに驚きが隠せない様ですね。
しかし、それもそうでしょう。
彼女にしてみれば二人の戦いは未知の領域。
特に近接戦闘においては黒ウサギでも目で追うのがやっとなのですから、飛鳥さんには二人が現れてはすぐに消えている様に見える事でしょう。
それ程までにあの二人の戦いは次元が違うのですから。
「YES。白夜叉様の時とは完全に闘い方が違いますが、これが祖国さんの本気という事でしょう。魔王アルゴールの前では生半可な攻めは逆効果になりますから。」
「なるほどね。確かに白夜叉に効かなかった攻撃をアルゴールにしても結果は見えているものね。時間制限がある以上、非効率だわ。」
「その通りでございます。」
飛鳥さんの言う通り今回のゲームでは制限時間が設定されているため、白夜叉様との時の様に悠長に闘っている暇はありません。
今回祖国さんが自然災害をあまり多用せずに白兵戦にこだわっているのは、きっとその事を考慮したのでしょう。
そもそも、星霊であるアルゴールに自然災害クラスの攻撃が効くとも思えませんし。
それにしても飛鳥さん、最近妙に物わかりが良い気がします。
いえ、元々聡明な方ではあるのですが、なんだか最近は特にゲームに関する造詣が深くなっている様な…。
誰の影響なのでしょうか?
そんな事を考えている間にも戦いはどんどん激化して行きます。
二人とも全力を尽くしている様ですが…、やはりアルゴールの方がまだ余裕がある様に思われます。
その証拠に互いに決定打こそもらっていませんが、やや祖国さんの方が押され始めてしまいました。
「厳しいな。」
隣の幹部兵さんが苦々し気な表情で呟きました。
飛鳥さんも祖国さんの手番が減っているのが分かるのか、心なしか表情が厳しくなってきています。
かく言う黒ウサギも、きっと後で見れば酷い顔をしているのでしょうね。
部屋にいる全員が祈るように画面を見つめていたその時、突然祖国さんが反撃に転じました。
今までとは全く違う攻撃パターンで、まるで別人の様にアルゴールを圧倒していきます。
空間をまたいだ攻撃透過に、瞬時に彼女の背後を取った空間転移。
どれもこれも初見殺しの反則くさい能力ですが、祖国さん曰く脳への負担がシャレにならないからあまり乱用は出来ないそうです。
そしてそんな技をこの場で使ったという事は…、
「畳みかけて来たな。」
そういう事なのですね。
祖国さんは、この一連の攻撃で勝負を決めるつもりなのでしょう。
このまま戦ってもジリ貧は目に見えていますし、その判断は正しいと黒ウサギも思います。
ただ、アルゴールを倒しうる威力の攻撃を祖国さんが持っていればの話ですが…。
ーですが、そんな黒ウサギの心配は杞憂だったようです。
瞬間、祖国さんの振り上げた腕に極光が灯りました。
溢れる力の奔流が、暴力的なエネルギーが、世界を白く染め上げていきます。
その場にいる誰もが分かる、いや分からざるを得ない程に。
そう、あの一撃は神をも屠る一撃なのだと。
ーゴゴッゴゴゴッゴゴゴッゴゴゴオ
世界が軋む音と共に、それは振り下ろされました。
未だ地に叩きつけられたままのアルゴールに避けれる道理はありません。
収束したその力は、敵を、大地を、岩盤を、すべてを穿ち、尚もとどまる事を知らずに世界を犯していきます。
世界の悲鳴が地震となり、大地の血潮がマグマとなり、大気の涙が風雨となる。
そんな地獄という言葉さえ生ぬるく感じる様な景色が、画面の向こうには広がっていました。
そんな時です。
突然、飛鳥さんが何だか焦ったような表情で口を開きました。
「ね、ねえ黒ウサギ?一ついいかしら?」
「なんでございましょう?」
「一応確認なんだけど、画面の向こうもココも
「………そうでございます。」
「………マズくないかしら?」
「………大変マズいですね。」
黒ウサギの最後の言葉が切っ掛けだったかのように、ペルセウスの大宮殿にも地震の余波が訪れました。
並みの地震ならいざ知らず、大陸を砕く一撃の余波は軽々と宮殿を破壊していきます。
無駄に広いおかげで黒ウサギたちのいる左翼棟には未だ大きな被害は出ていませんが、それも時間の問題でしょう。
………。
ていうかヤバくないですか!?
これ結構マズいパターンじゃないですか!?
黒ウサギたちも巻き添えになるじゃないですか!?
「各人、急いで持ち場に着け!!!今すぐゲーム盤から離脱するぞ!!!」
「「「りょ、了解!!!」」」
事の重大さを悟った幹部兵が周りにいた兵士に指示を出すと、それに従い部屋にいた一般兵もすばやく各々の役割を果たしていきます。
さすが腐っても五桁のコミュニティですね。
各人が非常に優秀でいらっしゃいます。
って、そんな事を考えている場合じゃありません!!!
黒ウサギも出来る事をしなければ!!!
「すいません。黒ウサギも何か手伝える事は?」
「おお、ありがたい。では黒ウサギ殿には負傷者の運びだしと避難をお願いしたい。幸いこちら側は軽傷者が多い。重症の者も今医務室にいる分だけだ。」
「分かりました。では、黒ウサギはそちらに。」
「頼んだ。」
手短に分担を決めると、飛鳥さんには一言自力で避難する様にお願いしてから廊下に飛び出しました。
全く、祖国さんったら、ずいぶんと物騒なプレゼントをしてくれやがりますね?
フフ、フフフフフフ。
アトデタップリトオセッキョウナノデスヨ…。
ですからー
ーですから、どうか、無事に帰ってきてくださいね。
一抹の不安を胸に抱えながら、黒ウサギはそう祈らずにはいられませんでした。
読了ありがとうございます。
いやー、戦闘シーンって難しいですね。
なにかアドバイス等ございましたら、コメント欄までよろしくお願いします。
あと、今更ですが、活動報告を始めましたw
そこ、遅いとか言わない。
指摘されるまで知らなかったんですよ!
感想、意見、質問、批判等ございましたらコメント欄までお願いします。
それでは今回はこれにて。