問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~ 作:しましまテキスト
あとがきに色々書いてあるので、読んで頂けると嬉しいです。
それでは今話もお付き合い下さい。
遥か遠く。
戦場にはられていた結界が解け、割れていた海があるべき姿を取り戻していく。
灼熱の地獄と化していた地が再び海の底に沈みこむ様子を眺めながら、アルゴールはフムと思案する。
”あーあ、なんかすごい中途半端。こんなんで倒しても後味悪いし。”
自分が招いた結果でありながらこの思考。
まずもって祖国があの激流に呑み込まれて生存しているかどうかすら怪しい状態で、なお後味云々が真っ先に思い浮かぶあたり流石は箱庭の問題児といったところか。
なんとも現金というか、彼女ほど魔王らしい魔王もそうそういないだろうとさえ感じさせる。
そんな魔王然とした彼女の感想が、だが至極まっとうな物である事も残念ながら事実であった。
実際こうして完全体になってまで祖国との戦いを所望していた彼女にしてみれば、こんな結末はなんとも不本意なのだろう。
当然それを差し置いても彼女の願望はゆるぎない物ではあるが、漁夫の利のような形でこのゲームを終結させる事は些か抵抗があったようだ。
「どうしたもんかなー。」
黒く光る月の中で、所在なさげに呟くアルゴール。
もはやこの殻も用済みなのだがこれはこれで居心地が良い。
とりあえずはしばらくの間様子見に徹しようと、再度彼女は遠方に視線を移した。
「ほぉーんと、どうしたものかしらぁ♡」
「ッ!?」
ちょうどその時だ。
唐突に背後からいやに特徴的な声が響いた。
瞬間的に振り返るアルゴール。
いつからそこにいたのだろうか、彼女の視界に入ったその二人の姿は大胆にも目と鼻ほどにしか離れていない。
あまりにも異常な事態に、アルゴールの警戒心も最大まで引き上げられる。
「あらぁ~、そんな怖い顔してどうしちゃったのぉ?可愛いお顔がだいなしよぉ♡」
「馬鹿が、ゲーム中にいきなり乱入したんだ。警戒して当然だろう。」
まるでアルゴールの事など取るに足らないかの様に振る舞いながら、正体不明の二人組は勝手に話を進めていく。
いや実際そうなのだろう、彼等の態度や仕草からは一切アルゴールへの警戒が伝わってこないのだ。
そして彼等がそんな余裕を持っていられる理由、それはー
「…お前たち、いったい何者?」
この完全体アルゴールをもってしても絶対に敵わないと、そう感じざるを得ないほどの圧倒的な力量差がそこにあったからだ。
尋ねた声はわずかにではあるが震えていた。
当然だ。
こんな化物は過去を遡っても片手の指で足りるほどしか拝んだことは無い。
特にヤバいのは黒のゴスロリ衣装の少女だ。
この少女とだけは何があっても敵対してはいけないと、そう本能が絶えず警報を鳴らしていた。
「だとさ、答えてやるといい。俺は貴様が急にここに来ると言いだして、しぶしぶついて来ただけだからな。」
「んもー、それじゃ私がわがままを言っているみたいじゃないのぉ。」
「そう言っている。」
彼女の警戒とは裏腹に、相も変わらず気の抜けた会話を続ける二人。
傍からみれば夫婦漫才に見えなくもない会話だが、当事者のアルゴールは一瞬たりとも気を抜く事が出来ないでいた。
そしてようやく彼らの会話が一区切りついたのか、コホンと少女が咳払いをする。
あどけなさが残る顔に美しい笑みを浮かべながら、少女は喜々としてアルゴールに喋りかけた。
「それじゃちゃっちゃと用件を済ませてしまいましょう。と、その前に♡」
そう言うや否や、彼女は片手の指をパチンと弾いた。
途端、ブチッとまるで何かの線を切断したような音が空間に木霊する。
「趣味の悪い覗き見にはここで退場してもらいましょう。」
「…なにしたの?」
「大した事じゃないわぁ~。ただテレビ越しに私たちの言動を観察している質の悪い神様がいたものだから~、ちょちょいと回線を切断させてもらいましたぁ★」
それのどこが大した事がないんだと毒づくアルゴール。
少なくともそれは切断系統のギフト、しかも視認できない事を考慮すると概念か何かに作用するレベルの高位恩恵にあたるはず。
それを惜しげもなく晒すあたり、この少女にとってはそれすらも取るに足らない事らしい。
「では仕切り直しまして、まずは自己紹介からねぇ。私の名前はティレス。ティレス・バッドイーター。下の名前は嫌いだからティレスって呼んでちょうだいねぇ♡そしてこっちのムスッとした表情したのが…」
「H.C.アンデルセンだ。しがない執筆家をしている。」
「もー、人の紹介に割り込むなんて無粋な人ね。余裕のない男性はモテないわよぉ?」
「ふん、下らん。貴様の紹介は御託が多いんだ。さっさと進めろ。」
あらあらと笑うティレスという少女に、眉を顰めるアンデルセン。
あっという間に二人の空間が出来上がってしまうのが最早デフォになりつつあるが、アルゴールの頭の中では既にそんな事を気にしている余裕はなかった。
彼女の思考を占めていたモノ、それは目の前の男、かつて人類最巧と謳われた詩人であったのだから。
「アンデルセンって、もしかしてあの?」
「ええ、貴方が想像しているアンデルセンで間違いないと思うわぁ♡こちらでしかめっ面を浮かべている男こそ、人類最巧と呼び声高い詩人!そして今回貴方のゲームをリメイクした張本人でーす★」
予想だにしなかった事実にアルゴールも動揺を隠せない。
彼女自身もどうして己の霊格がここまで跳ね上がっているのか疑問には思っていたのだが、まさかここまでの大物が絡んでいるとは思ってもいなかったのだ。
だが考えて見ればいくつか納得のいく点もある。
今回の様に大規模なゲームリメイクに関してはそれこそ詩人の助力は必要不可欠だ。
特に巨龍を従えるほどのゲームギミックを見事に内包した改変など、生半可な詩人では絶対に成しえないだろう。
「それで…そんな大御所引き連れて、いったい何の用?」
背中に嫌な汗が流れ落ちるのを感じながら、アルゴールは努めて冷静に問いかける。
彼女の願いをかなえるためにも、なんとしてもここは無事に切り抜けねばならない。
この化物二人を相手に勝ち目など見えないが、それでも今のアルゴールならば片腕一つ犠牲にすれば逃げ切るだけの自信はあった。
「だからぁ、そんなに警戒しないでちょうだい。何も取って食べちゃおうなんで考えてないわぁ♡」
「じゃあ一体…?」
「んー。端的に言うとね、貴方と取引しに来たのよぉ、変光星の悪魔さん♪」
「取引?」
怪し気な少女の言葉に怪訝な表情を浮かべるアルゴール。
彼女の反応も当然だ。
人類最巧の詩人と、さらにはそれさえ凌駕する異質さを放つ少女。
そんな二人がいったいアルゴールに何を求めているのか、少なくとも彼女自身は考え付かなかった。
「ええ、貴方にとっても悪くない内容のはずよぉ。」
「それは中身を聞いてからじゃないと何とも言えないし。」
「ふふ、それもそうねぇ。それじゃ星霊さんーーー
ーーーーー私たちの仲間にならない?」
「…は?」
「もちろんタダとは言わないわぁ。もし貴方が仲間になってくれるというなら、貴方が望むモノ全て私たちが準備しましょう。力でも、名誉でも、何でも、貴方が欲する一切合財を与えましょう。どう、悪い話ではないでしょう?」
「…………。」
その口から洩れる甘美な響きが、アルゴールの精神を揺さぶりかける。
いきなり告げられた話にしては、あまりにも怪しい勧誘だ。
だが、それを差し置いてもその誘惑は抗いがたい魅力に満ち満ちていた。
少なくとも祖国との交渉以前に持ち掛けられたなら、ためらいもせずに首を縦に振っていただろう。
「悪いけどその必要はない。アルちゃんが欲しい物は、あの少年を殺せば手に入るし。」
だが今は別だ。
彼女が望むモノ、ステンノーたちの情報についてはゲーム前の取り決めによって入手の目途は既にたっている。
後は海に沈んでいるであろう人間を探し出して止めをさす、それだけでいいのだ。
故にわざわざこんなあからさまに怪しい取引に応じる必要性は、彼女にしてみれば皆無といっていい。
「そういう事だから、今回の話は無かったことにして…」
「ハァ…。ティレス、本当にこんな脳筋を仲間にするつもりなのか?いい加減、聞いていて呆れ果てそうなんだがな。」
「言葉がキツイわよぉ、アンデルセン。ここは私に任せてちょうだい。」
アルゴールが勧誘を蹴ろうとした瞬間、それを遮るように男のいらだたし気な声が響いた。
次いでそれをたしなめる少女の声。
内容から察するにアルゴールは何か決定的な間違いをしているようだが、彼女がそれを考えるよりも速くティレスと名乗る少女が口を開く。
「一つ勘違いしているみたいだから、まずそこを正しておきましょうか。貴方が祖国君と交わした契約『自身の持つ権利の一部譲渡』だけれど、確かにこの中にはサウザンドアイズへの捜索権が含まれているわぁ。けれどね、その契約の中には、いえ、その権利の中のどこにも”サウザンドアイズの捜索の正当性”を保障するモノが明言されていないのよ。」
「…つまり、何が言いたい訳?」
「だからね、極端な話サウザンドアイズがギリシャ神群と結託して情報操作し、貴方を望んだ場所におびき寄せる事も可能って事よぉ。」
「!?」
ティレスの意見は極端すぎるにしても、サウザンドアイズが魔王に有利になる情報を素直に差し出す確率は低い。
恐らくは捜索段階で可能な限り時間を引き延ばし、その間に天軍に魔王の討伐依頼を出すのが現実的なところだろう。
どちらにしてもアルゴールの目算ほど事が容易く運ばない事だけは確実である。
「それにねぇ、さっきも言ったけれど今までの戦いはぜーんぶ覗き見されてたのぉ。つまり魔王アルゴールの復活は上層部にしてみれば周知の事実ってわけ。ならそういった関連の有力コミュニティが何かしらの行動をとっていてもおかしくないと思わない?」
「…天軍が既に動いているってこと?」
「その可能性は高いと思うわぁ。少なくとも今回のゲームに関わっていたペルセウスとその親玉サウザンドアイズは善神側だから、貴方をみすみす見逃すマネはしないでしょうねぇ。」
「…チッ。」
「加えて貴方と因縁深いギリシャ神群の事よぉ。あそこはまず確実に敵対行動に出るでしょうねぇ。それこそステンノーとエウリュアレーなんか、もうどこかに逃げ込んでるかもしれないわよぉ?」
次々と告げられる不都合な事実にアルゴールの表情が曇る。
彼女自身そこまで頭の出来が良くない事は自覚していたが、ここまで目算が甘いとは思いもしなかった。
アンデルセンが彼女をこき下ろしたのも、この事実を知っていれば当然の事だったのだ。
「ふふ。…さてとぉ、それじゃあ星霊さん。現状把握はここまでにして、もう一度貴方の答えを聞かせてもらえないかしらぁ?」
そんなアルゴールを愉快そうに見つめながら、少女は蠱惑的な瞳でアルゴールに問いかける。
ーこのまま朽ちるかそれともこの手を取るか、と。
既に状況は逆転した。
祖国の提示した条件に穴がある以上、それにこだわるのは愚策中の愚策。
かと言ってアルゴールにこれといった名案がある訳でも無い。
このまま何も手を打たなければ上層の連中によってアルゴールの旗色がどんどん悪化していくのは火を見るよりも明らかであった。
「仲間になるって、具体的な内容は?」
だからこそアルゴールがその誘いになびいてしまったのも当然のこと。
唯一提示された条件を吟味するために、今度はアルゴールがティレスに問いかけた。
「そうねぇ、実は別段これといって明確な策がある訳でもないのよねぇ。一応私がトップって事になってるから私の言う事には基本的に従ってもらう予定だけれど、それ以外で貴方に何かを求める事はないわぁ♡」
「そう…。そもそもお前たちは一体何のために行動しているわけ?」
「それはぁ………、まだ言えないわねぇ。ただ現状で言えるのは、私たちの存在は公には認知されてはいけないという事、そしてその性質上少数かつ精鋭で行動する必要があるという事よぉ♪」
「そういう事だ。だからこそ俺はこんな脳筋を引き入れるのは自殺行為だと言いたいんだが?こいつのミスで俺たちの存在が知れたらどうするつもりだ、ティレス?」
「その時はその時よぉ♡それにそんなに心配なら貴方が面倒見てあげればいいんじゃない、アンデルセン?」
一向に耳を傾けようとしない少女に対し、やれやれとこめかみを抑えるアンデルセン。
こうなっては手が付けられないとばかりに、明後日の方向を見やって思案に暮れてしまっている。
そして当の少女はというと、そんな事既に関係ないとばかりにアルゴールに詰め寄っていた。
「それでどう?私たちの仲間になる気になったかしらぁ?」
「…一つだけ聞きたいんだけど。欲しい物全てを与えるって、本気で言ってる?」
「ええ、本気よぉ。貴方が望むなら主神の座でも、外門二桁の地位でも、なんだったら現存する全てのコスモロジーを収集しても構わないわぁ♪もちろん貴方が知りたくて知りたくてしょうがない姉たちの行方もね♡」
「…………………はぁ、分かった。お前たちの甘言にのってあげるよ。」
そしてとうとうアルゴールが折れた。
客観的に見てティレスの申し出は悪い話では無い。
秘匿性が高いという事は、その分正体や居場所が察知されにくいという意味だし、なにより祖国との契約に仕掛けられたトラップを知ってしまった以上、彼女にとれる選択肢はほぼ無いも同然。
そんな中で命令遵守という制約はあるものの一定の安全性が確保されている彼女の申し出は渡りに船であった。
なにより本来ならば”アルゴール程度”必要とさえしないだろう二人が、曲がりなりにも取引の体を成して来たのだ。
力づくでいう事を聞かせるという手もあったにも関わらずそういった手段をとらないあたり、まだアルゴールに一定の配慮を示していたのだろう。
「あらあらあらぁ、本当にいいのねぇ?念のためにもう一度言っておくけれど、これは純然な取引。別段強要するつもりはないのよぉ?」
「いいよ、今更。別に他にあてがある訳でもないし。」
「そう、なら良かったわぁ♡アンデルセンも異論ないでしょう?」
「勝手にするといい。」
「ありがとぉ、貴方のそういう所好きよぉ♪」
喜色満面で二人に告げるティレス。
その仕草だけを見れば、無邪気にはしゃぐ年頃の女の子そのものだ。
少なくとも、この可愛らしい少女が片手間で神霊をダース単位で消し飛ばすことが出来る化物だなどとは、箱庭の神々でさえも思いもよらないことだろう。
そしてそんな見惚れる様な笑みを浮かべながら、少女はアルゴールの方へと向き直ると、
「それじゃ改めてぇ、ようこそー■■■■■■へ♡」
その言葉を最後に、空間から三人の姿は完全に掻き消えたのだった。
*
『まったく、無様な事だな。』
一面に広がる水面に一寸先も見通せない暗闇。
その中から酷く耳障りな声が語りかける。
『あれだけ啖呵を切っておきながらこの始末。その上いやしくも生き延びたその悪運。ああ、どれをとっても最悪だ。』
返事は無い。
ただ死んだように横たわるその身体は微動だにせず、水面を見返すその瞳は力なくうなだれているだけだ。
生気のないその姿を見れば、おおよその人間はそれを屍と判断するだろう。
そんな死体に鞭打つように、不愉快な声は依然として彼に語りかける。
『それで、どうだった久々の
「…黙れ」
『戦闘中の甘美な陶酔、雑魚を駆逐した時の爽快感、そして何より殺した時の背徳感!実に素晴らしい刺激だったろう?』
「…黙れ」
『ああ、これではお前が”こっち側”に来てしまうのも時間の問題だろうな。ならばどうだ、いっそのこと全て俺に預けてみないか?』
「黙れって言ってんだろっ!!!」
瞬間、死んだように淀んでいた瞳が激情で染まる。
一気に沸点まで到達した感情にまかせると、彼は無造作に水面を殴りつけた。
バシャン
舞い上がった激しい水しぶきが虚空へと消える。
そしてそんな姿を見つめていた”彼”は、やれやれといった表情で再び口を開いた。
『…はぁ、まったく手のかかる奴だ。-----存外以上に動けるじゃないか。』
「………。」
『さあさあ店じまいだ。動けるならさっさと出て行くがいい。そんな辛気臭い面を見せられるこっちの気も考えて欲しいもんだ。』
「…なぁ。」
『店じまいと言ったはずだぞ。それ以外の言葉は聞く耳持たん』
「俺たちは間違っていたのか?」
その質問は唐突に。
邪見に追い払おうとする”彼”を無視して、一方的に問いかけられたものだった。
ー彼等の軌跡を問うたソレ
彼等が辿って来た道のりは、彼等が成して来た所行は、はたして正しかったのかと。
平和という言い訳の元に、正義という不平等をかさに、彼等が切り捨てた命は意味があったのだろうかと。
なぜ今そんな疑問を口にしたのか、彼自身も分かってはいなかった。
ただ一つ言える事。
それは彼が、大宮祖国の中の何かが、この箱庭に来て、そして大きな試練を乗り越えた事で、少しずつではあるが確実に変わりつつあるという事であった。
そして、そんな彼のすがる様な問いかけは、
『………知ったことか。』
案の定”彼”によってにべも無く切り捨てられた。
実に面倒臭いと表情で語りながら、今度は”彼”の方から問いかける。
『例えばだ。俺たちのしてきた事が間違っていたとして………それでいったい何だと言うんだ?悔いた所で結末は変わらないし、俺たちが切り捨てた命も戻りはしない。』
「けど…」
『ま、今のお前には何を言っても無駄だろうな。少なくとも、誰かの答えにすがっているうちは。』
「………。」
”彼”から放たれる言葉は往々に厳しい。
だがそれ以上に彼が感じたそれは。
言外に含まれた”彼”からのメッセージは、確かに彼へと届いていた。
そう。
それは決して誰かに与えられるものでは無く。
”彼”でも、かつての師でも、ましてや他の誰のものでもない。
彼自身の、大宮祖国なりの”答え”を、これから先探していかなければならないのだと。
そしてその先にしか、きっと彼の納得のいく結末はないのだと。
”彼”はそう告げていた。
そんな”彼”の言葉に、ようやく何か決心したのだろう。
少し気だるげながら、だがしっかりとした足取りで、彼は再び水面に立ち上がった。
「じゃあ、俺そろそろ戻るとするわ。」
放たれる言葉に濁りはなく、そしてその瞳に最初の様な無気力さは無い。
あるのはただいつも通り、不遜で不敵なその表情。
いかにも大宮祖国な大宮祖国が、そこには佇んでいた。
『是非ともそうしてくれ。いい加減こっちも休みたい気分なんでな。』
「そうかい、邪魔して悪かったよ。」
相も変わらず放たれる言葉は厭味ったらしいが、今はそれが丁度いい。
”彼”への嫌悪は決して消える事は無いだろうが、それでも今なら、ほんの少しくらいならば呑み込んでやれる気もする。
そんならしくないも感情を抱きながら、彼は一歩足を踏み出すのだった。
そしてその数刻後、サウザンドアイズ支店で目覚めた彼の第一声が「甘い物が欲しい」であったり、
彼の休養中、さんざん看病していた黒ウサギや耀、飛鳥、店員への感謝を差し置いて、白夜叉が持ち込んだ茶菓子に彼が大いに感激したり、
それにプッツンきた彼女たちが、言葉にするのも恐ろしい形相で祖国に説教をたれたりと、
彼の人生には意外と身近な災難が待ち受けていたのだった。
読了ありがとうございます。
中の”彼”はツンデレ。
はっきり分かんだね。
<言い訳フェイズ>
さて。
おそらく、というより確実に多くの読者様方はアルゴールとの直接対決を望んでいたでしょうが、それは後日に持ち越しです。
なかには納得されない方もいらっしゃるでしょうが、この展開は最当初から予定していた事ですので、変更する予定は今のところありませんので悪しからず。
<補足>
前話に続き、今回も少々説明をば。
作中の祖国君の自問シーンですが、ここは彼の背景をほぼ説明していないので、この場をかりて補足させて頂きます。
まず祖国君は元いた世界では日本国軍に所属しており、幼いながらに戦争に駆り出されていました。もちろんその背景には、彼のもつ超常的な力(ギフト)を利用しようという大人たちの魂胆があったわけですが。
それはともかく、彼はそのギフトの汎用性もあり、もといた世界ではほぼほぼ無敵。ゆえに戦場においても命の危機にさらされる事もほぼなく、命のやり取りという事に関する認識をいまいち掴み切れていませんでした。
しかし今回、星霊、巨龍という人外との戦いを経て命の危機を幾度も感じ、さらにはそれに対する根源的な恐怖を知ったことで精神的に一歩前進。同時に今まで彼が殺めてきた人々も同じような感情を抱いたのではないかと思い至り、人を殺す事の意味を遅まきながら考え始めた次第です。
そしてそれに対する答えは、作中にある通り。
<最後に>
ここまで長々と書いて来た今作、お読みいただき本当にありがとうございました。
思い返せば一年前、なんか面白いアイデア浮かんだから書いてみよという安易な発想から始まったこの話。
処女作のくせに色々詰め込んだ挙句、消化不良気味の文章たち。
筆者の文才の無さがヒシヒシと伝わる迷作を、よく最後まで読んで頂いたものだと…。
読者様方の忍耐力には感服の極みであります。
そして気付けば500件を超えるお気に入りもいただいており、本当に感謝の意が絶えません。
さて第二巻分に関しましては、筆者のモチベーションやら後は今までの手直しやら、色々たまっている問題を解決してから臨むつもりです。
が、何分才能乏しい身。
果たして生きて帰って来れるか、その結末は神のみぞ知る所であります。
それでもまぁ、気長に待つよって方は、次アップした時読んでくれると嬉しいです。
それでは皆様。
またお会いするかもしれないその日まで('◇')ゞ