問題児たちが異世界から来るそうですよ?~えっ、俺も問題児?~   作:しましまテキスト

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こんにちは、しましまテキストと申すものです。

いまさらなんですが、チラシ裏って通常投稿と何が違うんですかね?
チラシ裏検索で探せば色々ヒットしますし、コメントも評価も普通にできますし。
私の場合は更新停止期間もあってチラシ裏に移行していましたが、違いとはいったい…。
どなたか詳しい方がいらっしゃたら、教えてくださると助かりますm(__)m

さて、今回は一章のゲーム解説(第29話)の時のように、オリジナル理論・解釈が多々あります。
それでもいいよーという方は、今話もお付き合いください。





怪我人と天才と幼女(前編)

 

 

 

 カタカタカタカタカタカタ…

 

 

 

 あいも変わらず機械音だけが正確に部屋内を反響する。

 アルキメデスが白夜叉を迎えに去ったその部屋で、祖国はしばし彼女の言葉を反芻していた。

 

 

『何ってそんなの、君の正体(大宮祖国)についてに決まっているだろう?』

 

 

 さも当然とばかりに告げられ言葉に、だがいまだに実感がわかない祖国。

 いったい自分の何が謎だというのか、本人はこれっぽちも理解できないでいた。

 

(…俺の正体って。そんなの大したモンでも無いだろうに。)

 

 自身の記憶を呼び起こしてみても、別段大したことをした覚えもない。

 せいぜいやった事といえば、子供の頃から従軍して戦地に駆り出されたり、師に巡り合ってからは武術の真似事をしたり、なんやかんやで戦争を終結させたりと所詮その程度だ。

 まったくもって凡庸(仮)な経歴に、いったい何の不満があるというのだろうか。

 

「……おんし……のだぞ!」

 

「…いやそれは………だと。」

 

 そんなことをツラツラと考えていると、扉の外側からわずかばかり話声が聞こえてきた。 

 詳細は分からないが、お互いに廊下を歩きながら何か話でもしているのだろう。 

 どちらも聞き覚えがある声で事を鑑みるに、どうやら無事合流して部屋に戻ってくる途中のようだ。

 

 そして数秒後、勢いよく開け放たれたドアの向こう側には、予想通り彼もよく見知った白髪美幼女とくたびれた服の科学者の姿があった。

   

「なんじゃ相変わらず小汚い部屋じゃのう。」

 

 開口一番にしてはいささか皮肉が効きすぎた白夜叉の言葉に、アルキメデスは苦笑して答える。

 

「勘弁してやってくれよ、ここは男所帯なんだ。それに君のところだってあの店員がいなければ一週間後には似たようなことになっているだろう?」

 

「ぐッ、それは否定せんが…。じゃが男所帯と言えど、おんしは仮にも女じゃろう!」

 

「私の恰好を見て、同じセリフが言えるのかい?」

 

「…うん、なんだ。すまんかった。」

 

「分かればいいのだよ。」

 

 決して威張れたことでは無いはずだが、どういう訳か偉そうに豊かな胸をはるアルキメデス。

 まあ彼女のよれた白衣やその下の私服を見れば、彼女の家事能力がいかに悲惨なものであるかは一目瞭然であった。

 白夜叉にスカウターがあれば「ピピピピ…、家事力…たったの5か、ゴミめ。」と辛辣な言葉を投げかけていたに違いない。

 

「祖国も元気そうでなによりじゃ。このタイミングでおんしが目覚めておるのは好都合だったの。」

 

「この恰好をみて元気そうに見えるなら眼科をおすすめするぜ。」

 

 アルキメデスとのやり取りで若干気まずくなったのか、助けを求めるように祖国へと話題をふる白夜叉。

 その意を汲んでか、祖国もその場を和ませようと軽口で対応する。

 

「ま、好都合ってのはお互い様だな、白夜叉。お前には色々と聞きたいことがあるからな。」

 

「分かっておる。今回のゲームの顛末についてであろう?どうやらアルクの奴からはまだ聞いておらんようだしの。」

 

「アルク?」

 

「ああ、白夜叉と私はかなり長い付き合いでね。最初の頃こそちゃんとした呼び名だったんだが、ここ最近はめんどくさくなったのかアルクと呼ばれることが大抵さ。」

 

 祖国の疑問にアルキメデスが補足説明を加える。

 どうやらアルクとはアルキメデスの愛称らしい。

 意外なところでの繋がりに驚くと同時に、どうして自身がアルキメデスの元へと預けられたのか祖国はようやく理解した。

 

「なるほど、旧知の仲だから安心して俺のことを預けられたってことか。」

 

「もちろんそれもある。が、今回にいたってはこやつらエウレカの助けがどうしても必要だったのだ。」 

 

「それって、こいつがさっき言ってた俺の正体とやらと関係があるのか?」

 

 何気ない祖国の疑問に白夜叉もアルキメデスもそろって首を縦に振る。

 二人の真面目な態度から察するに、己の正体とは自身の想像以上に厄介な問題らしい。

 

「この部屋に来るまでにどの程度まで話したのかは既にアルクから聞いておる。」

 

「白夜叉にあらましは伝えたがね。これから話す内容は君にも、そして白夜叉にも聞いておいて欲しいことだ。そしてそれこそが今回私が白夜叉から託された仕事(・・)でもある。」

 

 そう告げるアルキメデスは、いかにも科学者然とした面持で二人を見据える。

 そしてそれの視線がこれから彼女の告げる内容の重大さをそのまま表している事を、直感的に二者ともが理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に入って早々。

 

 まずー、と白衣を靡かせながらアルキメデスは口を開いた。

 

「そもそもの前提から話をしようか。祖国君も気になっていたように、君がケートスを打倒して意識を手放した後の話だ。」

 

「ああ。」

 

「まずアルゴールが君を殺さなかった理由だが、現状では不明でね。ただその時の回線が何者かによって妨害されていたり、その後のアルゴールの足取りがつかめていない状況から、第三者がアルゴールに接触して彼女を匿っていると推測されている。」

 

 アルキメデスの言葉に、祖国の表情が若干曇る。

 殺す価値もないと見逃されたのか、あるいは単なる気まぐれか。

 いずれにしても命がけの戦いを真っ向から否定したアルゴールの行動は、戦場を生き抜いてきた祖国からしてみれば侮辱に等しい行為である。

 

 そんな祖国の心情を察してか、扇をパチンと閉じながら鋭い眼光で白夜叉が釘を刺す。

 

「おさえよ祖国。おんしの気持は分からんでもないが、今は話を進める方が先決じゃ。」

 

「…別に、何も言ってないだろ。」

 

「そんな顔をして言われても説得力の欠片もないよ。まぁ、そちらの方は別で伝えなきゃいけない事もあるし、今はこちらの話を聞いてもらおうか。」

 

 本人はあのゲームの結末に納得が行かないようではあるが、今はそれを掘り下げるべき時ではない。

 その点は祖国も理解しているのか、相変わらず憮然とした表情ではあるが、一応アルキメデスの話を聞く気はあるようだ。 

 

 アルキメデスは乱雑に髪をかき上げると、やれやれといった態度で話を再開する。

 

「で、君が意識を失った後の話に戻ろうか。ゲーム盤を構成していたケートスが打倒されたことにより、君が呑まれた大海原も消失。これに関してだけは重体の君を探し出す手間が省けて助かったよ。」

 

「…その話を聞いていると、まるで俺を助ける前提で事が動いていたように感じるんだが?」

 

「その通りさ。そこに座っている白夜叉を含め結構な数の神霊、英霊があの戦いを注視していてね。なにせあの問題児が最盛期を超える力をもって蘇ったんだ、無理もない話さ。」

 

「あやつの厄介さは箱庭におる者ならば誰もが知っておる。だからこそ被害を最小限にとどめるためにも、ペルセウスの元締めである我々サウザンドアイズに出動要請がかかったのだ。」

 

「そういうことさ。いくらペルセウスの医療班が優秀でも限度がある。十六夜君の件もあったし、サウザンドアイズ直属の医療班及び討伐班がすぐに助けに入れるよう組織されていた訳だ。」

 

 互いに必要な情報を補足しあいながらも、言外にあくまでも保険のためだと告げる二人。

 ただでさえ不機嫌な祖国にこれ以上拗れられては堪らないという配慮だろう。

 

 そんな二人の配慮を知ってか知らずか、祖国は未だ不可解な点をアルキメデスに問う。

 

「…それで俺が助かったなら文句はねえよ。ただそこでどうしてアルキメデス(お前)が関わってくるんだ?」

 

「そこじゃ、私がアルキメデス(こやつ)を呼んだ理由は!こやつにはおんしが患っている病を解明するように頼んだのだ!」

 

「…病だと?」

 

「白夜叉、話が進まないから少し黙っていてくれたまえ。」

 

 いきなりハイテンションに切り替わった白夜叉を面倒くさそうにアルキメデスが一刀両断する。

 さすがに言い過ぎだろうと祖国が白夜叉を見やるが、実際はそこまで気にしていなさそうだった。

 いったいこの二人の交友関係はどうなっているのやら、きっと自分には想像もつかない付き合いに違いないとコンマ2秒で思考を放棄した。

 

「コホン。それで祖国君、私が呼ばれた理由だったね。それはね、サウザンドアイズの治療班が総出で取り組んでも君の傷が一切回復しなかった、いやそれどころか治療やそれに準じるギフトを使用すればするほど、逆に君の身体組織が崩壊を始めるというあり得ない事態が起こったからだよ。崩壊に伴って身体中が黒い亀裂で覆われていくという極めて不可解な事態が、ね。」

 

「それは…」

 

「どうやらが覚えがあるようだね…。我々がサウザンドアイズに呼ばれた理由がこれさ。未知の現象に対する究明は常に我々が目指すところでもある。サウザンドアイズの医療班で手が付けられない病状を、白夜叉の伝手と独断で我々が引き受けることになったのさ。」

 

 どうやら過去に彼を苦しめていた病魔が今回も盛大にやらかしてくれたらしい。

 いつまでも隠し通せるとは思っていなかった祖国だが、まさかこれ程早く誰かに露呈するとは想像していなかった。

 面倒なことになったと内心舌打ちしながらアルキメデスへと会話を戻した。

 

「…そうかい、それでアレの正体は分かったのか?」

 

「当然だ。我々エウレカをなめないでくれたまえ…と言いたい所だが、今回に限っては既に知っていた(・・・・・・・)という方が正確かな。」

 

 その言葉に、白夜叉と祖国の瞳が驚愕で見開かれる。

 白夜叉はあの理解不能な病状がすでに解明されていた点に、祖国は長年彼を苦しめてきたアノ病気が完治しえるかもしれないという期待に。

 

 だが次に彼女から告げられた言葉は、二人の驚愕のさらに上を行くことになる。

 

 

 

「あの現象、我々が便宜的に"黒呪"と名付けたアレはーーーーーー厳密に言えば病ではない。」

 

 「「何(だと)!?」」

 

 意図せずして白夜叉と祖国の声が被る。

 祖国に至っては体を動かしすぎて激痛に苛まれているが、そんなことはどうでもいいとばかりに意地で噛み殺した。

 一方のアルキメデスは二人をその知的な目で見据えると、淡々とした表情で事実のみを端的に告げる。

 

「黒呪の正体、それはエウレカが2年前ほど前に立証した法則"世界の矛盾補正機構"、その中の現象の一部だよ。」

  

「…素人にも分かりやすく説明してくれると助かるんだが。」

 

 ただしそれが万人に歓迎されるとは限らないが。

 いくら自頭がいい祖国であっても、さすがにアルキメデスの説明は専門性が高すぎるようだ。

 はい?と呆れた声をあげなかっただけ褒めてほしい。

 

 かくいう白夜叉もこういった範囲は専門外なのか、ちゃんと説明しろと言わんばかりの眼光をアルキメデスに投げかける。 

 当の本人もさすがに省略しすぎた節を理解しているのか、分かっていると白夜叉に目配せして解説をし始めた。 

 

「さてどこから説明したものかね。話したいことを話せば小一時間はかかってしまう内容だが、せいぜい頑張って分かりやすくまとめてみようか。」

 

「よろしく頼んだ。」

 

「心得たよ。さて、祖国君。君は世界があまりにも"整然"としすぎていると感じたことはないかい?まるで超常の力が働いたかのように循環し、機能する環境サイクル。いったい誰が決めたと思うかのような惑星の自公転。いやそもそも人類が存続しているという事実自体が奇跡的だと、そう考えたことはないかい?」

 

「…まぁ、一度は。」

 

「そうだろう。かくいう私も同じ考えでね、古代ギリシャ時代には神々のおかげだなんて考えていたんだが…、ここ箱庭の存在を知って一つの可能性を考えた。ーーーーー箱庭という人智を超えたモノが実在するならば、我々の住んでいた外界にだって"世界の意思"と呼べるモノがあってもおかしくないと!」  

 

 外界で叫べば狂言と断じられて終わる話も、ここ箱庭を知れば一笑に伏すことなどできない。

 こんなファンタジーな世界があるならば、世界が個としての意思を持っていても何ら不思議ではないではないかと。

 ただ真実を探求することを身上とする彼女の瞳は、まるで楽しいことを楽しいと笑う子供のような純粋さであふれていた。

 

「もし世界に意思があり、星の内部機構を円滑にすすめる事を是とするなら!そこには必ず"取捨選択"があるはずなのだよ!環境変化である種が淘汰され、またある種が後の世を築いたように、星は常に不純物を取り除いて理想的な機構を完成させようとしているのさ!」

 

「…それが星の意思?」

 

「そう、そしてそれこそが黒呪の正体。世界が持つ矛盾を補正する機構が、矛盾を内包する大宮祖国という存在を淘汰しようとしているのさ。」

 

「ちょっと待て、アルクよ!」

 

 あまりにも行き過ぎた話に、白夜叉がいったんストップをかける。

 彼女の判断は間違いではない。

 

 なぜならアルキメデスの結論ではー

 

「こやつを蝕んでいる病魔は、世界そのモノの意思だと!?それではまるで世界が大宮祖国の存在を認めないと言っているようなモノではないか!?」

 

 大宮祖国はどうあがいても死す運命にあるはずなのだ。

 だがしかし彼はいまだここに存命し、さらに今回も黒呪に打ち勝ってみせた。

 強力なギフトホルダーとはいえ一介の人間が世界の意思に逆らって生き延びていられるはずがないと、白夜叉は彼女の仮説に反論を突きつける。

 

「そもそも、なぜこやつが世界から淘汰されねばならん?確かにこやつの外界での経歴は異常という他ないが、それでも今の話を聞く限り世界が淘汰するのは"矛盾"を抱えた存在のみのはずだ!こやつのどこにそんな要素がある!?」

 

 そう、世界が排斥するのはあくまでも世界が看過できないほどの矛盾を孕んだ存在のみ。

 ただの15歳の人間を世界が認めないなど、あまりにも異質なことではないか。

 

 そう必死に反論する白夜叉を後目にアルキメデスはカツカツと祖国に近づき、ゆっくりと人差し指を彼の胸に突きつけ、そして宣言した。

 

「"矛盾"ならあるじゃないか?目の前に特大の特異点を持った、この少年が。」

 

「何だと?」

 

 アルキメデスの言葉に、白夜叉の表情が怪しく曇る。

 パチンパチンと打ち鳴らされる扇子は、そのままの彼女の内心をありありと映して出していた。

 

 一方のアルキメデスはといえば、祖国の近くにある戸棚をごそごそと物色しながら何かを探しているようだ。

 使われないモノがごちゃ混ぜに詰め込まれた戸棚を物色しながら、彼女はまるで昼下がりのティータイムのような軽さで白夜叉に問いかけた。

 

「そういえば。彼のギフトを鑑定したのは君だったね、白夜叉。」 

 

 唐突に振られた話題に共通性が見いだせない白夜叉であったが、尋ねたれた質問には返すのが礼儀だ。

 いったい何をと考えながらも、アルキメデスの問いに応える。

 

「うむ、こやつを含めノーネームのメンバーをちょいと鑑定したが、それがどうかしたのか?」

 

「その時出た彼のギフトネーム、今も覚えているかい?」

 

「なにを今さら、"カット&ペースト"じゃろ?」

 

「そう、それが"矛盾"の正体だよ。」

 

 あまりにも軽々しく告げられた真実に、「は!?」と今度こそ二人とも呆けてしまっていた。

 アルキメデスの今の発言は、それくらい完全に想定外であったのだ。

 

 だが元凶のアルキメデスはどこ吹く風。

 「あったあった」とようやくお目当てのモノを戸棚から引きずりだすと、元いた己の席へと帰還して口を開いた。

 

「何を呆けているんだい、二人とも。それに祖国君ならまだしも、白夜叉は今までどれだけのギフトを目にしてきているんだい?アレはギフトとしても非常に異端…、いや取り繕うのは止めよう。そもそもアレはギフトとして成立するはずがない代物だ。」

 

「馬鹿な!現にこやつのギフトはきちんと作用しているだろう!?」

 

「そう、それこそが彼が根本的に孕んでいる矛盾なんだよ。成立するはずがない力をギフトとして所持し、あまつさえ十全に使いこなしている。こんなバカげた矛盾、世界が放置する訳がないだろう?」

 

「話に割り込んで悪いが…専門的な事はよくわからなくてな。俺のギフトがそもそもギフトとして成立していないってどういう意味だ?」

 

 白夜叉とアルキメデスの討論が白熱していく中、今まで沈黙に徹していた祖国がふと冷静に疑問を差し挟んだ。

 今まで釈然としない表情をしていた白夜叉も、確かにと頷くとアルキメデスに説明を求めるような表情を向ける。

 

「そうだね、確かにそこもちゃんと説明しなきゃならないだろう。」

 

 そう告げたアルキメデスは白衣の内側からメモ用の紙切れを取り出すと、何事かをサラサラと書き記していく。

 それ自体はさほど時間はかからない作業だが、時間短縮のためかそれと並行してアルキメデスは白夜叉へ質問を投げかける。

 

「白夜叉、先ほど君にした質問だがね。もう一度彼のギフトネーム"カット&ペースト"について問おう。君はこの名前を聞いたとき何も疑問に思わなかったのかい(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「何が言いたい?」

 

「本来、彼のギフトネームはこうあるべきなのだよ。」

 

 そういって彼女は祖国と白夜叉にもしっかりと見えるようにメモ用紙を差し出す。

 

 そしてそこにはただ二つの単語が、しかし同時に彼らが気づかなかった事実が、実に端的に書き記されていた。

 

ーーーーーー『"カット" "ペースト"』と

 

 その紙を見た瞬間、白夜叉が驚嘆と合点が入り混じった声を上げた。

 

「そうか!確かにその通りだ!本来相反するはずの二つのギフトが"&"記号で並列して扱われることなどあり得ない!」

 

「そうさ。そんなことをすればギフトが本来の機能を正常に発揮しないのはもとより、様々な齟齬が生じることになる。特に今回のケースは致命的だった。なにせ"カット"と"ペースト"という、言ってしまえば真逆の効果を持つ単一のギフトを無理やり合成しているんだからね。これではマクロ的な目線でみれば極論"何もしていない"と同義なのさ。」

 

「うむ…、確かにおんしの言う通りだ。どうして鑑定したときに少しも違和感を抱かなかったのかの。」

 

 アルキメデスの指摘に、腕を組んで考え込む白夜叉。

 いくら彼女自身が鑑定は専門外とはいえ、数百ではくだらないほどのギフトを見てきた彼女ならば気づいてしかるべきの違和感であった。

 

 祖国も二人の会話の全貌を理解できたわけではないが、多少の問題点は理解できたようだ。

 確認と補足説明を求めて、ガサゴソと先ほど戸棚から取り出した缶詰の中身をあさっているアルキメデスに言葉を投げかけた。

 ちなみに彼女がさっき必死こいて探していたのはどうやらクッキーのようだ。おいしい。 

 

「つまるところ、世界が補正しにかかってるのは俺のギフトってことでいいんだな?なんかよく分からんがこのギフトが欠陥持ちで、世界の意思とやらはそれが容認できんと。だからその持ち主である俺を黒呪なんていう方法で殺そうとしたと。」

 

「ああ、その解釈で構わない。君にも分かりやすく説明するとね、ギフトというのは人間の手では成しえない事を成す超常の力なんだ。発生の仕方で差異こそあれ、それがギフトと認められるモノならば大なり小なり世を変える力を持つ代物だ。」

 

 だけどねー

 

 そう言うとアルキメデスは手に持った缶詰の中から一枚のクッキーを取り出し、祖国へと差し出す。

 しかしそこは流石に現代っ子の大宮祖国、賞味期限とか管理方法とか絶対ヤベェやつだという判断から、その差し入れを首を横に振って断った。

 そんな祖国のリアクションは予想通りだったのか、なぬ食わぬ顔でアルキメデスはクッキーを缶詰に差し戻すと、一言ーーー

 

「君のギフトは言ってしまえば今のやり取りと本質的には同じなのさ。」

 

 実に完結な言葉ですべてを一刀両断した。

 

「当然これはかなり単純化した例だけどね。さっき差し出したクッキーが君の"カット"した事象、そしてこの缶詰は君が事象を切り取った世界だとしようか。そう考えるとどうだい?」

 

「確かにイメージはしやすいが、それと俺のギフトが矛盾してる事とどう繋がるんだ?」

 

「いい質問だ。まあ、君の本来のギフトネームが"カット"と"ペースト"だったら何の問題もなかったんだがね。だがどういう訳か"&"で結ばれてしまったために、君のギフトはその性質上ある制約を受けてしまったんだよ。」

 

「制約?」

 

「そう。君のギフト"カット&ペースト"はね、"カット"した事象は必ず(・・)世界へと"ペースト"し直さなければいけないんだ。さて、この意味が分かるかい?」

 

 意味ありげなアルキメデスの問いかけに、遅まきながらようやくと祖国も納得がいったらしい。

 なるほど、だから彼女は先ほどの白夜叉とのやり取りで「何もいていない」などと表現したのだろう。

 

「なるほど、つまり俺のギフトはカットしたものを必ずどこかしらにペーストまでが能力なんだな?あんたの例なら、差し出されたクッキーを突き返すまでが効果のうちってことだ。だがその場合、缶内部の総量はクッキーが取り出される前と突き返した後で変化がない。言い変えれば、俺のやった事は大局的な目線で見て缶の総量に一切影響を与えていないって訳だ。」

 

「ああ。君の力は世界から事象を"取って戻す"、そこまでが一連の動作として制約付けられている。マクロ…もとい長期的な目線から観測すれば、質量的にもエネルギー的にも世界になんの影響も与えていないのさ。そんな中途半端な力がギフトとして成立している矛盾、それが世界の意思の排斥理由になったんだろう。」

 

「…何となくは理解した。ちなみにギフトかそうじゃないかの基準って何かあるのか?」

 

「一つの基準としては、外界の物理法則であったりエネルギー法則を著しく逸脱した事象を起こせるかどうかってのがあるね。当然これ以外の測定基準や違ったベクトルの恩恵もあるけど、そのどれもがやはり人類では成しえない現象を司るレベルなんだよ。」

 

「つまり俺のこのギフトもどき(・・・)は、そのどの条件もクリアしていないって事だな。」

 

「そのはずなんだけどね。どうしてか白夜叉のギフト鑑定でも反応があったみたいだし、まるで訳が分からない。ああ、実に興味そそられる存在だよ、君は!」

 

 最後の方の言葉は華麗にスルーし、渋い表情のまま祖国は再びベッドへともたれかかる。

 さすがにアルキメデスに告げられた内容は胆力に定評がある彼にもきついモノだったようだ。

 ふぅ、と一息大きな深呼吸をすると、疲れきったような表情で天井を仰いだ。

 

 そんな彼の様子を見ていた白夜叉だが、ふと思い出したように未だ怪しいテンションのアルキメデスに問いかけた。

 

「じゃがアルクよ、結局この小僧が世界の意思に反して生き残れたのはなぜなのだ?言っては悪いが、世界の排斥力なんぞ人間一人がどうこう出来るモノとは思えんがの。」

 

「それだよ白夜叉!!!それこそが今回君に伝えたかった事なんだ!!!」

 

 もともと怪しかったアルキメデスのテンションが、白夜叉の質問を聞いた瞬間一気に天元突破した。

 ハァハァと息を荒げながら、すごい勢いで白夜叉へと詰め寄る。

 およそ結婚前の女性がすべきではない恍惚とした表情でもって、一言。

 

 

 

 

「白夜叉!!!…彼を私の実験体(ペット)にしてもいいだろうか?」

 

「「いいわけあるか!!!」」

 

 本日2度目のシンクロと共に、祖国は一刻も早くこの施設から逃げ出さねばと決意を新たにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

        




書いているうちに文字数が膨らんでしまったので前後編に分けさせて頂きました。
後編も半分ぐらいはプロット出来ていたりするので、なるべく早く(※主観)投稿したいと思います。

やー、やっぱりオリジナル要素はどうやって説明したらいいか悩みますね。
願わくば、読者の皆様に言いたいことが伝わっていますように…。

でもまぁ、問題児シリーズって結構謎解き要素強いですし、原作読んだり見たりされてる方なら大丈夫なはず!(責任放棄

何か分からない点や、原作との矛盾点などございましたら、お気軽にコメント欄までよろしくお願いいたします。
それ以外でもコメント待ってますので、気が向いたら書き込んでやってくださいm(__)m

それでは、次話でお会いしましょう。
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