チート能力をもらったのに、代償がでかすぎる件

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第1話

 異世界に転生すればこんなクソみたいな現実とはおさらばして順風満帆なチートライフを送るんだ

 

 

 そう思っていた時が俺にもあった。

 

 

「うっうげぇぇぇぇ、ゴホッゴホッ」

 

 

 クソみたいな代償。致命的な欠陥とともに手に入れた力は確かに絶大だった。

 

 

「お前また吐いてんじゃねぇよ!」

 

 

「ぐぼぉ」

 

 

 腹部に深々と剣が突き刺さる。いくら訓練用の木刀だからといって痛いものは痛い。

 

 

「はぁ、なんだよソレは。筋トレの一つでもしたほうがマシだろうに」

 

 

「これで戦うと決めたんだ。このくらいどうってことはない」

 

 

 剣を握る手に力を入れなおす。せっかくの力なんだから使ってなんぼだ。

 

 

「隙あり!」

 

 

「っ!性もねぇ!」

 

 

 無難な横薙ぎに対して相手は回避を選択。そして反撃として上段からの振り下ろしを行うところまで"視えた"!

 

 

「オロロロ」

 

 

「きたねぇ!吐くなバカ!」

 

 

 振り下ろされた木刀は、見事にゲロってる俺の頭にあたって甲高い音を上げた。

 

 

○☓△□

 

 

「ちくしょう、まだだめか……うっまだ気持ち悪い」

 

 転生して俺が得た能力は、敵を"視る"能力だった。視ると言うのは常人のソレではなく、『相手視点が視える』というチート能力だ。

 

 しかし代償は、とてつもない不快感が胃を刺激することである。おかげさまでダメにした練習着は少なくない。

 

 きっとこの世界の神はゲロフェチに違いない。そうに決まっている。そして天界で今日も元気にゲロる俺を見て嗤っているのだろう。

 

「少しは落ち着いたか?」

 

「師匠、すみません」

 

「さすがにゲロに慣れてきたわ。まったく」

 

 俺の目の前にいる、顔半分が焼けただれた男がにこりと笑う。残念ながら悲惨な傷口にせっかくの笑顔が台無しなほど怖い。

 

「なぁ、今からでもそのわけわからない能力に頼らない戦いをだな」

 

「でも師匠、チートですよロマンですよ!」

 

「そのチートとやらは知らんが、敵の目の前でゲロる戦法はやめたほうがいいぞ」

 

 ごもっともである。

 

「旦那様からはお前を最低限鍛えるように言われてるんだ。さっさと卒業できるようにだな」

 

「師匠、怖いんでしょう?得体のしれぬ力が」

 

「ああ、そりゃ怖い。だが負ける気もしない」

 

「別に師匠が手を抜いて一本取らせてくれればいいんですよ」

 

「旦那様がそんな緩い修練を見て許しをくださるとでも?」

 

「まぁ、ないでしょうねぇ」

 

 旦那様こと俺の父親は、それはもう根っからの武人である。母上が師匠をつけてくれるまでは愛拳指導という半ば児童虐待のような修練が行われていた。

 ちなみにチート能力と吐き癖もその時に目覚めた。

 

「とりあえず今日はもう終わりだ」

 

「師匠、ありがとうございました」

 

 俺はスカートの端を持ち上げ頭を下げる。師匠はそれで満足したようなので、俺は水浴びで汗を流すべくその場をあとにした。

 

 

○☓△□

 

 

 最初、旦那様に呼ばれたときは何かの冗談だと思っていた。

 

 

 まさか救国の英雄の下で仕事ができるとは

 

 

 しかしその内容。一人娘の修練について聞かされたときは、ぬるい仕事だと勘違いしていた。

 

「お願いします。師匠」

 

「師匠?」

 

「海外の言葉で、技を授けてくれる先生をこう呼ぶと聞きました」

 

「まあ呼び方は何でもいい。まずはいつもやってることを見せてくれ」

 

 筋トレにランニング。最初は普通の修練と大差なかった。歳の割には少しオーバーワークかもしれないが、英雄の娘ともなれば……と考えなくもない。

 

「師匠、対人戦をやりましょう!」

 

 生意気なやつだとは思った。傷こそあれど俺は戦争帰り。生半可な覚悟で挑んでいい相手ではない。

 

「あっ、師匠怖いんだ。まあ確かに俺みたいなか弱い嬢ちゃんに一本取られたとなると示しがつきませんもんね」

 

 

 そこまで言うならまずは力の差をわからせてやる

 

 

 そう答えたのが運の尽きだ。

 

 

 次にあったのは、ゲロを吐きながら笑う少女と、一歩も動けずに嫌な汗をかいた俺だった。

 

 熟練の戦士となっても、攻撃の前動作は発生する。もしそのすべてに、攻撃の発生前に対処されたら……結果一歩も動けないカカシが出来上がる。

 

 相手がゲロを吐いてることなんてどうでもよかった。問題は俺が、戦場の狂戦士だった俺が一歩も動けないほどに"完封"されたことだ。

 

 すべての思考が先読みされたのかと感じた。そして次の瞬間には、俺の死角に飛び込まれた。ゲロせずにあのまま続いていれば一本取られていただろう。

 

「チート能力と、その代償です」

 

 少女はそうゲロ吐きながら応えた。

 

 それが本当ならばとんでもないことだ。理論上は彼女に勝てる者は存在しない。

 

「うっやばいこみ上げてきた」

 

 この吐き癖さえなければ

 




作者はゲロフェチではないです

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