鎮守府で毎日せっせと働く夕立ちゃん。
そんな彼女には大好きなお遊びがあった…?
果たして彼女に待ち受けるのは悪夢か、それとも…。



※賭け事(競馬)の描写有。オリジナル設定のもとお話が進んでいきます。またキャラ崩壊もしているので苦手な方はご注意を。

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がんばれ夕立ちゃん

 

みなさん、こんにちわ。はじめまして。

私の名前は夕立。白露型駆逐艦の夕立さんといいます。所属している鎮守府については…いろいろややこしいので秘密とさせてほしいっぽい。

 

今日の私は自分でも分かるくらいにご機嫌。だって今日は待ちに待ったお給料日だから。

約一ヶ月の間、海に繰り出してはヘトヘトになるまで戦いました。今日はそれが報われる日。カレンダーをめくる度に現れるこの日にち(月末締め翌月■日払い)がいとおしくていとおしくてたまらない。赤ペンでぐるぐる巻きにしちゃうくらい待ち遠しくて大好きです。

 

提督さんから手渡される茶封筒。重くもなってなければ軽くもなっていない、いつもと変わらない重量感だ。

 

でもいいの。そんなことはどうでもいいの。

 

息をきらして自室へと戻ると同僚の時雨が缶ビール片手に焼き鳥を頬張っていた。足元にはすでに空になって潰されたビール缶の山。どうして私のベッドで酒盛りしてるの、なんてもう聞かない。もう慣れた光景。

彼女は私と目が合うと聞いてもないのにヘラヘラと笑いながら言う。

 

「おかえり、夕立。相変わらず給料は増えてなかったよ、まあ予想通りだったけどね。むしろ減ったんじゃないかな?提督は怪我して動けなくなった時とか戦後に僕たちが苦労しない為にって言うけどさ、そんなの明日死ぬかもしれない僕たちにとって必要なのかな?天引きなんかしないでよ…。それより分厚くなった給料袋を頂戴よ…。そんな想いをさ、今日ぶちまけたんだよ、彼の前でね。そしたらさ、提督どうしたと思う?内緒だぞ、と言って懐から一枚お札を取り出して僕の手に握らせたんだよね。五千円札。津◯梅子さんが一枚…。それで缶ビールを買ってね。それだけじゃ物足りないからさ、焼き鳥も買ったんだ。もうなくなっちゃったよ、五千円札。可笑しいよね、夕立。どうしてお金は使うとなくなるんだろうね、僕はこれで哲学しようと思うんだ」

 

ぶつぶつ言いながら時雨はビールをあおる。

そんな彼女は隅に置いときます。それよりもこの手に握る封筒!いつものように丁寧に数えてみれば、なんと渋◯栄一が十三枚…。

 

うん、いつも通りっぽい!!

 

そして念願のお給料が手に入ったということは…?

 

つまり…?つーまーりー??

 

け・い・ば!

 

競馬っぽーーーい!!!

 

「よっこらせっと!!」

 

埃くさいベッドに盛大にダイブ。それからすぐに身を起こして隣でお酒臭くなっている時雨を片手で抱きながらもう片方の手でスマホをポチポチ…。

 

「シマカゼイッチバーンが単勝オッズ1.2ィ?これ、狙い目っぽい!この子を軸にして馬単!二番人気から八番人気の子に流すっぽい!!初戦だし、五百円ずつで!!」

 

スマホをポチポチ。時雨の胸をもみもみ。

 

ほろ酔いの彼女を抱きながらスマホ画面を睨む。軽快な音楽と時雨の激しい息遣いを耳にしながらその時を待つ。

 

ゲートが開いて各馬が出てきた…!シマカゼイッチバーンは良いポジションにいる…!勝った!勝ったぽーい!!

 

結果

 

シマカゼイッチバーンが馬券内に来なかったので負け 。

 

……………。

 

 

………。

 

…。

 

「ぐわあああああああ!!!」

 

スマホをぶん投げて後ろにひっくり返る。ハァハァ言ってる時雨の背中を蹴り飛ばすと何故だか嬉しそうな声を出していた。

 

「わ、私のお給料…!夕立さんの大事な大事なお金がぁ!」

 

体を起こす。すり寄る時雨を押し退けてスマホをひろい上げる。結果は変わってない。負けは負け。まーけ♥️

 

「ま、まだまだっぽい!まだほんのり火傷したくらいっぽい!小破!小破に満たないっぽい!」

 

つ、次のレース。おっ!

スマホをポチポチしていると大湊でおいしいレースがあるではありませんか。

 

「ヤセンダイスキー!この子が出走メンバーの中で頭一つ抜けてるっぽい!しかも得意なレース場!騎手も初騎乗じゃないし、厩舎コメントも太鼓判押してるっぽい!!いけるぅ!いけるっぽーーい!!単勝!!単勝に五万ー!」

 

いつの間にか隣に来て上目遣いで甘えてくる時雨の頭を優しく撫でてやる。喜びの声をあげる彼女をよそに、さぁレースの始まりっぽい!!

 

結果

 

ヤセンダイスキーは惜しくも二着…。大外ぶんまわって疲れちゃったのかな?

 

……………。

 

………。

 

…。

 

「あんぎゃああああああ!!!」

 

おかねが溶けるぅ!!夕立の五万エーーーン!!汗水流して働いてやっと手に入れた大事な五万エーーーン!!!

 

「あ、いい…!そうやって髪乱暴に引っ張られるとすごく気持ちイイっ!!」

 

知らぬ間に時雨の髪を引っ張っていたっぽい…。力を緩めると物足りなさそうな顔でもっともっととせがんできた。

 

ちょっと!今夕立は忙しいの!!!

 

とは言え軍資金は……。

 

あ、あれ?不思議なことに札束の厚みは変わってないっぽい!

 

そ、そうだよね…!競馬場で買ってるんじゃない、ネットで買ってるんだから今日もらったこの現ナマがすぐ消えるわけじゃないっぽいよね??

 

じゃあだいじょーぶ!!(現実逃避)

 

それに偉い人が言ってたっぽい!

 

賭け事に於いて負けるというのは唯一賭け事を完全に止めてしまった時だけ!

 

賭け続けることが出来れば…!賭けて賭けて!死ぬまで賭けるのを止めなければ永遠に負けることはないっ!!

 

だから夕立さんはお馬さんで負けたことは一度もないっぽい !!

 

「あ、ああっ!この雑に扱われてる感がたまんないっ!お金とか将来とかもうどーでもよくなるっ!そうさ!偉大な哲人も崇高な神のような人だって…!僕を助けてはくれないっ!僕を救ってくれるのはただ一つ!この快楽だけさ!!だ、だからさ夕立!もっと!もっと!激しくいじめておくれぇ!」

 

ビクビク震える時雨。彼女のおかげで冷静になった頭は次のレースを見据えている。中◯第8レース。ダイテンシシグエルとムラサメトイイコトシヨーを軸にフォーメーションを組むっぽーい!紐抜けなんて許されない。トリガミに注意しつつも大胆に勝負!!

 

結果…!

 

見事!大勝利!!!

 

「夕立はやっぱり天才っぽーーーい!!!」

 

思わずガッツポーズ。夕立が勝利を確信したと同時にイキ果てた時雨は今は私の肩に顔を埋めてスヤスヤ寝息をたてている。

 

あとで優しくしてやるか。

 

さて、次のレースは…と戦いを挑み続けた夕立さん。本日中◯のメインレースを迎える頃には大破大炎上を起こし今にも沈みそうになっていた。

 

でも夕立さんは諦めない。だって諦めたらそこで負けだから。負け。負け。負け負け負け。まーけ♥️

 

(まだ死ねない…!)

 

スマホを操作する指が震える。気持ち悪い。

 

でもそれでいい!それがいい!!

 

中◯のメインレースは本日の夕立さんの勝負レース。

 

だってそうでしょ?

 

「ナイトメアズソロモン!この馬が負けるわけないんだから!!」

 

本日提督さんから頂いたお給料。その三ヶ月の額をナイトメアズソロモンの単勝にベットする。貯金がなくなる?それがどうしたというの?だって勝てばいいんだから。ちょっと口座からお出かけして多くなって帰ってくるだけなんだから。単勝二倍なら本日の損害を優に回復出来る。大破炎上なんてなかったことになる。まくれる。人生大逆転。

 

「万一にでも負けたら時雨の隠し撮りを艦娘ファン倶楽部の誰かに高値で売りつけよう。そうすればチャラっぽい…。まあ、負けないけど。私、最強だから」

 

高陽感からそんなこと言ってみるけどすぐ口を閉ざした。

スマホの画面には旗を振るおじさん、壮大なファンファーレ。

 

勝負の時、果たして結果は…。

 

……………。

 

………。

 

…。

 

ナイトメアズソロモン、中◯競馬場にて馬群に消える…。

 

あ、ふつーに負けっぽーい☆

 

「あ、あしたからどんぐりたべてくらさなきゃ」(大混乱)

 

肩に寄りかかっていた時雨をそっとベッドに寝かせて自分もその隣に横になる。

 

天井を眺めていると目が染みる。そのうち前がよく見えなくなった。

 

いつもこうだ。口では偉そうにいいながらやっぱり負けは負け。時雨も言ってたじゃないか、お金は使えば減るものなんだ。何度もやめようって思った。お給料もらったら大事に貯金するなり、姉妹でお出かけするなり、美味しいご飯食べるなりに使えばよかったんだ…。ギャンブルなんてやめようって、そう決めたじゃないか…。

 

「ウッウッウッ…」

 

涙が止まらない。拭っても拭っても止まってはくれない。

 

「…大丈夫かい?」

 

ふと声が聞こえて、だけど情けなくて恥ずかしくてその声の主を見れなくて。ただ子どものように泣きじゃくっていると不意に頭を撫でられて次いで優しく抱きしめられる。

 

「よしよし」

 

堪えきれなくなって彼女の体にすがりつく。暖かな感触を逃がしたくなくて強く強く抱きしめる。少し弱いくらいの力で抱きしめ返されて、背中に回った手に撫でられる。それがなんとも心地よい。なんだか眠くなってきちゃったよ。

 

「やまない雨はないからさ。きっと僕たちなら大丈夫」

 

彼女の声を聞いて気が遠くなって。

 

そして夕立さんは眠る。深海へと沈んでいく。でも冷たくなんかない、むしろ暖かい。

 

ああ、もう賭け事なんてやめよう。時雨にも優しくするんだ…。今度お給料もらったら時雨とお出かけして、ご飯を食べて…。最後は夜景の見える綺麗なホテルでたくさん愛しあおう。

 

………………

 

…………

 

………

 

……

 

 

あれ、そういえば今日はまだ高◯競馬あるよね??

 

こうしちゃいられないっぽーい!!!

 

夕立は…!夕立は還ってきたぁ!!!

 

「高◯第7競争、シラツユサン!この子に決ーめた!だから時雨、お金を貸すっぽい!!!」

 

こうして夕立さんの戦いはまだ続いていく。

 

その戦いはおそらく、いやきっと彼女が命を燃やし続けて消えるその日まで終わることはないのだろう…。

 

夕立さんは笑って言う。

 

戦い続ける限り、立ち向かい続ける限り、人生は終わらない、と。

 

彼女の言葉は今を生きる私たちに何を問いかけているのか。

 

そして彼女は今日も戦い続ける…。

 

♪~サ◯サーラ

 

ザ・ノ◯フィクション『博打と共に散ったある艦娘の一生』より。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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