かわいらしいショタトレーナーくんと、悩みがあるカラミンゴのお話。

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カラミンゴとかわいいショタトレーナーくん

 

 

 

 

小さなころからやけにポケモンに好かれない体質だった。

 

ベビーカーで散歩をすれば、大人しそうなガーディに吠えられ、夏休みに海へ入ればメノクラゲに襲われる。

ニャース好きのネコポケモンアレルギーとはよく聞く話だけれども、僕はポケモン好きのポケモン嫌われ人間なのだ。

 

そんなわけで今日のパルデア、グレープアカデミーというパルデアの学園に通っている僕は、宝探しという課外授業の途中である。

 

宝探しとは文字どおりのもので、数日前に白いヒゲを伸ばした校長先生がおっしゃっていた通り、人でも金でもポケモンでも食べ物でも勉強でもなんでもいいから自分だけの宝物を手に入れるという課外授業らしい。

 

規律が重んじられる学園としてはなんともフワッとしたものだと思わなくもないが、これが保護者には人気らしく数十年も前から長く長く続いているんだそう。

ポケモンリーグという巨大な組織も協力しているらしいが、なかなかに危険であるし、ケガ人が出てこないわけでもない。そろそろ古い習慣というものから抜け出すタイミングではないだろうか。

 

そんなことを考えてしまうのは先ほど説明した通り、自分がなぜかポケモンに好かれない体質だというのもあるが、ついさっきまで絶賛ポケモンに襲われていたからというのもある。

 

 

「あ〜疲れた...ありがとうエルレイド、戻っていいよ」

 

唯一のポケモンである彼を労い、さすがにキズが目立ち始めたモンスターボールにしまい込む。

 

エルレイドは、数少ない僕のことを攻撃してこない素晴らしい相棒でありボディーガードだ。彼がいなければ何回死んでいたのかわからないほどには守られている。

 

前提として自分がポケモンに攻撃されやすいというのは十分認識していたが、この沼地にはとくに攻撃的なものが多いように感じる。

ひとまず先ほどのポケモンたちからは逃げ切ったので、まわりに誰もいないことを確認すると、乾いていた地面に腰を下ろし、バッグから水筒をとりだした。

 

首に巻いていたタオルで額のあせをぬぐってため息をつく。

 

なんでボクはこんなにも嫌われるのか見当もつかない。こんなにもポケモンを愛しているというのになぜなんだろうか?

 

身だしなみもそれなりに整えているし、歯も磨いた。練習した笑顔だって完璧だというのに。

 

そんなことをぼやきながら今後の予定を頭の中から掘り起こす。そうだ、ジムだ。そろそろ四つめのジムに向かおうとしていたのだ。

 

ジムをクリアしていけばいくほど、自分を認めてくれるポケモンが増えていくとよく聞かされたことがある。どんな凶悪なレベルの高いポケモンだろうと、トレーナーの実力を認めれば万事OKだとどこかのテレビ番組で強そうなヤツが話していた。

 

自分はきっと実力不足なのだ。ならばポケモンに文句は言えないと、バッジのコンプリートをこのエルレイドとともに達成してやろうと誓ったのではないか!

 

さぁならば立ち止まっている暇はない。バッグに再び水筒をしまいこんで立ち上がり、次のジムへと歩んでいくのだ。

 

 

カタリ

 

「ん?」

 

なんだかバッグの中の空のモンスターボールがユラユラと動いた気がするぞ?

どうせ誰も言うこと聞いてくれないからと自暴自棄になってほとんど買っておかなかったボールだ。

 

襲われたときの頼みの綱であるエルレイドはしっかりと腰につけているから違うし、他のポケモンなんてゲットした記憶はない。

 

それを確かめるように持ってみると、なんだかほんのり暖かい気がする。微々たる差だがほかのボールと比べて重みもある。

 

「おいおいおい」

 

もしや我が世にも春が来たのではないか?苦節数十年、バッジ集めの甲斐もあり、ついにポケモンから愛されるだけではない。

 

(憧れの自分からボールにポケモンが入ってきてくれるシチュエーションがついに到来したのでは!?)

 

そんなことを一瞬でも想像してしまえばもうバクバクと心臓が騒ぎだして止まらない。ポケモンを探そうと木に登りすぎてぜんぜん降りれなくなった時なんて比じゃないほど興奮している。

 

フンフンフンと鼻息が荒い、はやる心を押さえつつ、ゆっくりと空だったはずのモンスターボールを繰り出した。

 

「クエェェェ!!」

 

「お〜〜!!!」

 

「クエックエッ、クエー!!」

 

ピンクの体に細く白い足、片足で立つ姿に、意図的に絡ませたながーい首!

 

間違いない!ひこう、かくとうタイプのシンクロポケモン、カラミンゴだ!!

 

もう涙が滲んでくる。まさか2匹めのポケモンを手に入れるだけではなくバトルを介さない形でポケモンに認められるとは!

 

「エルレイドこれ見てよ!!」

 

体が勝手に鼻歌にスキップまでしてしまう、顔合わせに繰り出したエルレイドともスムーズにあいさつしていて相性も十分良さそうだ。

 

「ふんふふ〜ん♩」

 

おそらく今年で1番口角が上がっているだろう。

 

なんだか視界のはじで先ほど襲ってきたポケモンが再び近づいてきたのが見えたけれど、いまのボクにはまったくストレスでもなんでもない。

 

なんならこんなことは何百回も経験してなれているし、カラミンゴとエルレイドとボクの絆を試すのに絶好の機会だ!

 

「さぁいくよ!エルレイド!カラミンゴ!」

 

「クエックエッ!!!」

 

「エル......」

 

(エルレイドがちょっとテンション低そうだけれど、まぁ大丈夫だろう!)

 

僕は新たな仲間であるカラミンゴの築く物語と、まだ見ぬポケモンたちとの出会いに心を踊らせつつ、野生のポケモンへと飛び出した!

 

 

 

 

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

 

 

(あぁ暇だ......)

 

水辺でダラダラと水分補給しつつ、カラミンゴは脳内で愚痴を吐いた。

 

この沼地とは生まれてからの付き合いで住みやすい、だからこその不満であった。

 

この場所には未知がない。南に歩けば水がある、西に歩けば腹を満たすきのみがある。東に歩けばウパーがいる。

 

知り尽くした環境は安全だけれども、刺激というものがなんだか足りていないのだ。

 

はじめはよくやっていたナワバリ争いも、しばらくすれば鳴りを潜めた。ワタシがあまりにも強かったからだ。

 

種族としても、個体としても、争いに優れていたワタシの才能は、不幸なことにワタシを争いから遠ざけていた。

 

まぁつまり、強すぎると喧嘩すらできないということだ。

 

あぁ無情、数少ない楽しみであったここにくるニンゲンも、最近では少し相手すれば跳ねるように逃げていく。

 

(ワタシは群れのリーダーなんてしたくはない、争いだけでいいと言うのに...)

 

そう嘆いていれば、近くに何匹ものカラミンゴと、ウパーに追いかけられている黒髪黒目の小さなトレーナーが目に映った。横にピッタリとつく人型のポケモンは、おそらく彼のポケモンだろう。

 

(なぜあのニンゲンはこんなにも追われているのだ?)

 

こう疑問を持つのも自然だ。やつらの本質は臆病で計算高い。いまのワタシに勝負を挑まないように、利益のない、勝ち目の薄い争いは極力避けるはず。

あの人型ポケモンとのバトルには勝算が薄いと、なぜわからないのだろうか?

 

「クエッ!」

 

ひとつ鳴き、静かに羽ばたきながら人間の死角にゆっくりと近づく。

 

その全身と、動いた顔がはっきりと目に映った。

 

(なるほど......!)

 

そういうことかと、今までの状況に合点がいった。

 

優秀なポケモンの賜物か、まわりのポケモンをほとんど警戒していない彼の油断し切った雰囲気、緩慢な身のこなし。

 

そしてあの貼り付けたような、平和ボケしたニヤリとした気持ちの悪い笑顔。

 

ここまでわれわれ野生のポケモンを舐め切った男を、カラミンゴは見たことがなかった。

 

(悪意はないのだろうが、恐ろしいほど神経を逆撫でするな。いや、待てよ?)

 

とある作戦を思いつけば、彼がポケモンをボールに戻すのを見計らいバッグに近づく。ここまで近距離でも気づかないニンゲンに対しては、流石としか言いようがない。

 

中に入ったモンスターボールにクチバシを押し付け、吸い込まれるように中に入った。ユラユラとボールが揺れ、ポンと施錠の音が鳴る、それでも彼は気づいていない。

 

 

(上手くいくだろうか?)

 

しばらくすれば、やっとボールの存在を認識した彼がワタシを繰り出す。横にはあの人型のポケモンもいた。

 

 

「ふんふふ〜ん♩」

 

人間の鼻歌が聞こえる。

 

 

「悪意がないのはわかるのですけど...?どうしてウチのご主人のボールに?」

 

そう話しかけてくるのは人型のポケモン。先ほど確認したとおりなかなか強そうだ。

 

「それは当然わかるだろう、君もじゃないのか?」

 

「まぁなんとなくわかりますけど、ボクは違いますからね!」

 

 

「なんと!キミは強い相手と争いたいから、この油断し切ったニンゲンの仲間になったのではないのか!?」

 

 

「違いますよ!ボクはこの意味わかんないくらい危なっかしいご主人を守りたいだけです!!」

 

(はぁ〜、世界は広いな。ここまで世話焼きな生物もいるのか......)

 

そう感慨に浸っていれば、先ほどこのニンゲンを襲った、いや、人型ポケモンの言葉を借りるのならば、『ご主人』を襲ったポケモンたちが、またしてもこちらへ近づいてくる。

 

「さぁさぁさぁ!相手がくるなら全力で『ご主人』をお守りしないといけないなぁ!!」

 

久しぶりの争いだ。ワタシはこの男との新たな地への冒険と、まだ見ぬ強者とのバトルに心を躍らせつつ、一目散に飛び出した。

 

 

「はぁ〜絶対ぬか喜びしてるよこのユルユルご主人...」

 

そんなエルレイドのぼやきは、満面の笑みを浮かべるトレーナーにはまったく聞こえていない。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 







トレーナーくん

生まれた時からポケモンが大好きなのに嫌われてる可哀想でかわいい子。家族から愛情をもって育てられたため、何度も襲われているにも関わらずほぼ危機感がない。生まれた時からいっしょにいたエルレイドがいないと割と余裕で死ねる。

油断し切ってるだけで、エルレイド1匹で簡単にバッジを集めているくらいにはトレーナーとして優秀で知識もセンスもあるが、ただホントに野生のポケモンを舐め腐ってる。

カラミンゴ

性格ゆうかんの戦闘狂。沼地のヌシとしてパルデアで噂になるくらい強く、「このトレーナーと一緒なら自動的にポケモンが襲いかかってくるのでは?」という発想のもと手持ちへとなる。

エルレイド

性格まじめの世話焼きさん。ラルトスだったころから一緒で、サイコパワーでご主人があまりにもポケモンを舐めていることを知る。
もちろん苦労はしているけれど満更でもないし、なんだかんだトレーナーくんもエルレイドのお世話が大好きなのでどっちもどっち。


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